母をたずねて三千里(アニメ)

登録日:2014/03/31 (月) 08:05:12
更新日:2023/10/04 Wed 19:28:34
所要時間:約 5 分で読めます




『母をたずねて三千里』とは、フジテレビ系の世界名作劇場枠で放送されたテレビアニメである。
放映期間は、1976年1月4日から同年12月26日まで。全52話。
原作は、エドモンド・デ・アミーチスの "Cuore" (『クオーレ』)中の Maggio (5月)の挿入話 "Dagli Appennini alle Ande" (アペニン山脈からアンデス山脈まで)。


あらすじ

1882年、イタリア・ジェノヴァに暮らす少年マルコ・ロッシは母と父、そして兄とそのペット・アメデオと共に幸せに暮らしていた。
しかしある日、父の仕事の都合から、母・アンナがイタリアから遠く離れたアルゼンチンへ出稼ぎに出ることを知る。
お母さんっ子のマルコはそれを悲しみ、別れの寸前まで拗ねて口をきかないほどであった。
別れの際に仲直りし母を送り出したマルコ。
アルゼンチンにいる母とは手紙でのやりとりをしながら、家ではしっかり家事もこなし、仕事がどんなものかも覚えたマルコだったが、
あるときを境に、定期的に送られてきていた母からの手紙が、パッタリと途絶えてしまう。
病気かもしれないと心配して手紙をよこすも、その返事さえ返ってこない。そのことを不信に思ったマルコは、ついに単身アルゼンチンに行く決意をする……


概要

イタリアの少年マルコ・ロッシが、アルゼンチンに出稼ぎに行ったっきり音信不通になった母アンナ・ロッシを訪ねるため、アルゼンチンへ自ら旅に出る物語である。
南米へと向かう船に乗船するまでの日常ドラマと、渡航したのちの旅行記にストーリーは大別されるが、
終始主人公の行動を客観的に描写する姿勢が貫かれており、ほかに例をみない記録映画風、ロードムービー形式のアニメーションとなっている。

展開としては主人公(マルコ・ロッシ)は旅の途中、何度も危機に陥り、そこで出会った多くの人に助けられ(たまにマルコが助けることもある)、
その優しさに触れながら成長していくというものになっており、人々の優しさと、それに対する感謝の気持ちが、物語のテーマのひとつとして貫かれている。
また、機械導入による人的労働力の削減や、医療と貧困といった要素が作品の裏のテーマになっていることも特徴である。

また、後にジブリの主要メンバーとなる高畑勲・宮崎駿のコンビが『アルプスの少女ハイジ』に続いてタッグを組んだ作品でもあり、
監督である高畑はもちろんのこと、場面設定・レイアウトの宮崎も全話に渡って作品に関わっている。

主な登場人物

●マルコ・ロッシ
CV:松尾佳子
物語の主人公。年齢は9歳。元気で働き者、親切で他人想いと基本的には“良い子”なのだが、頑固で気分の上がり下がりが激しいところがある。
結構ネガティブで、母探しの道中ではやけっぱちになってふさぎ込んでしまうことも多い。
年齢ゆえか、なかなかのお母さんっ子で、母からの手紙が途絶えてからは父に何度もアルゼンチン行きを懇願する。
ピーマンが嫌い。

●アンナ・ロッシ
CV:二階堂有希子
マルコの母。アルゼンチンに渡った時点で38歳。時代も時代だからか、なかなかにふくよか。包容力がある、母親らしい性格。
夫・ピエトロの仕事の都合で借金することになり、それによりアルゼンチンに出稼ぎに出ることになるが、
向こうで頼りにしていたいとこのメレッリに騙され、ジェノバと音信不通になってしまう。

●ピエトロ・ロッシ
CV:川久保潔
マルコの父にして診療所の事務長。45歳。性格は穏やか。
診療所を経営してはいるが、貧しい人の為に無料で診察できる診療所を作ろうとして借金をしており、
生活費を稼ぐ為にアンナを出稼ぎにアルゼンチンへと送る羽目になる。
家族を深く愛しているがゆえに、自身の都合で母と別れさせてしまった息子・マルコへ負い目を感じている。

●トニオ・ロッシ
CV:曽我部和恭
マルコの兄。鉄道学校で機関士の見習いをしている。
マルコとは仲がよく、学校へ行く際に飼っていたアメデオを彼に預けている。

●アメデオ
CV:発泡スチロールの音(らしい)
ロッシ家が飼っているサル。体がかなり小さく、手のひらに乗せられるほど。劇中ではマルコの頭や肩に乗っていることが多い。
少なからず人語や人の感情を理解しているようで、マルコに怒られた際には縮こまったり、芸を求められればそれに応じたりしている。……が、基本的にはやんちゃ。

●ペッピーノ
CV:永井一郎
人形劇の旅芸人であり、ペッピーノ一座の座長。3人の娘を持つシングルファーザーだが、性格はかなりのお調子者で娘達には度々その軽口を咎められている。
一座含めた芸の出来は悪くないようだが、不景気ということもあって稼ぎは芳しくない様子。
マルコの住むジェノヴァに興行に来るところから始まり、後にマルコの旅に大きく関係する人物となっていく。

●フィオリーナ・ペッピーノ
CV:信沢三重子
ペッピーノ三姉妹のうちの次女。どことなく影があり決して明るいとは言えない女の子。
友達もいなかったが、ひょんなことからマルコと知り合って、少しずつ明るさを取り戻し、次第にはマルコを励ます立場へ変わっていく。
一座ではシンバルを鳴らす係でしかなかったが、あやつり人形の腕をマルコに褒められ、一座の興行でもそれを披露するようになる。

●コンチェッタ・ペッピーノ
CV:小原乃梨子
ペッピーノ三姉妹の長女。グラマーな美女。

●ジュリエッタ・ペッピーノ
CV:千々松幸子
ペッピーノ三姉妹の三女。幼女であり、あまり喋らない。

●エミリオ
CV:北川智繪→駒村クリ子
ジェノヴァでのマルコの友達兼兄貴分的存在。若いながら家のために働いていて、職を探すマルコに仕事を紹介してやったりする。
ジェノヴァ編でのマルコの相棒とも言える。

●フランシスコ・メレッリ
CV:梶哲也
アンナのいとこで一連の物語の元凶
……なのだが、実は本人にもこうしなければならない事情があった。ある意味、この作品のテーマを象徴する人物の一人とも言える。

●ばあさま
アメデオに次いでこの作品の重要な位置にいる動物。20年以上生きている老ロバ。オープニングにも登場するロバはこのばあさまである。


余談

●小説の中の短編的作品をもとにしているので、内容はかなりオリジナル要素が詰め込まれている。ペッピーノ一座はその代表格。

●後に『ガンダム』を監督する富野由悠季も、この作品のレギュラーとして数多くの回で絵コンテを描いている(当時の名義は富野喜幸)。
この作品の前後から連続して監督業を続けていくため、『三千里』は“さすらいのコンテマン”最終期のコンテを数話に渡って楽しめる貴重な作品と言えるかもしれない。


『アニメ名場面特集』などの特番でよく名前が挙がるため、知っているという人は沢山いるが、
当時の放映を見ていたとても大きなお友達以外の人には、実際に最初から最後まで見たという人は少ないのではなかろうか。
誇張のないリアルな人間ドラマと素朴な演出で描かれる物語からは、等身大の喜怒哀楽が感じられるはず。
日本のアニメが文化として独自の発展を遂げてきた今こそ是非見て欲しい、珠玉の作品である。


追記・修正は最低三千里(11781キロ)を踏破してからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • アニメ
  • 名作
  • フジテレビ
  • 世界名作劇場
  • 宮崎駿
  • 高畑勲
  • 懐かしのアニメ
  • 日本アニメーション
  • イタリア
  • アルゼンチン
  • 母をたずねて三千里
  • 小田部羊一
  • 70年代テレビアニメ

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年10月04日 19:28