登録日:2014/04/02 (水) 23:10:29
更新日:2024/07/10 Wed 18:22:27
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先にいっておく!!緊急事態(エマージェンシー)だ!!
オペレーション・タイトロープとは新谷かおる氏によるコミック、
エリア88内で立案及び実行された作戦である。
後に数々の作品でオマージュされているので、
なんとなく知っている紳士淑女のアニヲタ諸氏は多いだろう。
この項目ではその元ネタであるエリア88のオペレーション・タイトロープを解説する。
この作戦が行われたのは文庫版6巻収録「地獄への100マイル」から「88魂」で、立案そのものは「魔の山へ」。
砂漠空母との決戦で大幅な戦力ダウンを被ってしまった
エリア88外人部隊だが、アスラン正規空軍編入を経てなんとか人員を確保することには成功していた。
使用していた砂漠基地が使用不能になったため、エリア88保有のギリシア訓練基地に身を寄せる形で新米の訓練や人員分配に追われていたが、
その最中正規軍と反政府軍が交戦開始。
そこで基地司令のサキは必要最低限の人員だけを建設途中の山岳基地へ移動。他のパイロット達の移動も開始させ、本格的な戦力拡充を始めた矢先だった。
ある夜。
エリア88の燃料を賄っているゲールの製油所が反政府軍によって爆破され、その一報は即座に就寝中のサキへ届いた。
その損害は甚大で機能回復には1ヶ月掛かるとサキは告げられるが、折り悪く山岳基地には1週間分しか燃料のストックはない。
緊急事態の為、他の製油所からも優先的に燃料を回してもらう手筈は整えるものの、部隊の全力出撃はおろか部隊全体を一度に動かすとなるととても足りるわけがない。
副官のラウンデルから「最小燃料で発進させて空中給油で賄う」という手段も考えられたものの、焼け石に水。
このジリ貧が目と鼻の先に突きつけられた状態で、ラウンデルは最終手段として一つの作戦を呟いた。
「じゃあ、もう…敵さんのをかっぱらうしかありませんな…」
現在山岳基地の付近に展開中の正規軍地上部隊の前方100km地点、山岳基地から250km先に敵の燃料集積所がある、それを襲撃し、燃料を鹵獲するしかない、と。
残りの燃料で行ける範囲にあり、更に近辺で最も大規模な燃料集積所だが地上部隊は途中にある150kmにも及ぶ谷のせいで手出し出来ておらず、
何度も正規軍による制圧作戦が行われたものの、谷を突破出来た航空機は1機もない。
正規軍レベルではこの天然の要塞を突破するのは不可能だが、外人部隊ならできるとラウンデルは告げた。
そして制圧できれば3ヶ月は反政府軍の進行を食い止めることができるが、外人部隊レベルの実力があっても15%の損害は覚悟しなければならないとも告げる。
サキはそれを承認。"空の銀狐"と恐れられた知将ラウンデル自らもその制圧作戦に出撃するという言葉に作戦立案をラウンデルに一任。
善は急げと言わんばかりに早速中隊指揮官の真達4人を呼び出し、作戦概要を説明することになった。
ラウンデルによる説明をまとめるとこうなる。
作戦概要
- 展開中の地上部隊の前方100km地点から先に広がる渓谷地帯を少数精鋭部隊で強行突破、その先にある反政府軍保有の大型燃料集積所を電撃強襲し燃料を奪取する。
- 部隊は各部隊4人編成。攻撃目標は反政府軍燃料集積所保有の飛行場及びレーダー施設。
- 敵の索敵レーダーは谷の中には無いため、谷の中を突破する。ただし昼間は地上監視員や航空機に発見される危険性があるため、作戦決行は作戦立案の翌日の夜。
- 谷の中には難所がA~Eの5箇所あるが、地表下の約250m地点に幅25m、高さ15mのピンポイントにギリギリ航空機が通過できるトンネルが形成されている為それを通過していく。
- 地表約250m地点のトンネル内部を0高度とした場合、上下5mが許容限界。オーバーした場合もちろん岩肌に激突して墜落。
- 22時に襲撃部隊は到着及び攻撃開始。23時には正規軍ヘリ部隊が降下し集積所を奪取する為、それまでに敵の殲滅を行わなければならない。
作戦成功の暁には燃料が手に入る、制圧に成功した場合、敵の進行を3ヶ月は確実にストップできるといったメリットこそあるものの最低でも15%の損失は覚悟しなければならず6人に1人はあの世行き。とハイリスクハイリターンな作戦を実行せざるを得なかった。
これだけ羅列してなお恐ろしいのは、上記の説明はほぼ全てがあくまで外人部隊の実力で叩き出した確率であり、正規軍の実力では怖くて確率は出せないというところだろう。作戦の実行そのものが文字通り命知らずの大馬鹿野郎共にしかできない作戦なのだ。
…谷の中のトンネルさえ突破できればこっちのものではあるが、ほぼ無理難題である。
ただ呼び出された4人は「夜にやる」と言われて流石に「無理ゲー」と言ったものの、それを言われる前は「ギリギリすぎる」「ちょっと岩に接触したらアウト」
と言っていただけで「無理」とは一言も言ってないのが恐ろしい。流石88古参メンバーというかなんというか…
ちなみにトンネルの大きさを実際に出撃した機体で比較するとこうなる。
トンネル:幅25m 高さ15m
クフィル:翼幅8.21m 全高4.55m(C2のデータ)
A4スカイホーク:翼幅8.83m 全高4.57m
F-20タイガーシャーク(真搭乗機):翼幅8.13m 全高4.22m
F-14トムキャット:翼幅(全幅)主翼後退角20度→19.54m 全高4.88m(後退角68度→11.65m 後退角75度→10.15m)
ホーカーシドレー・ブラックバーン・バッカニア(ラウンデル搭乗機):翼幅
13.4m 全高4.97m
A-10サンダーボルトⅡ(OVA版のみ登場):翼幅
17.42m 全高4.42m
F-105Dサンダーチーフ(OVA版のみ登場):翼幅10.65m 全高5.99m
F-4EファントムII(OVA版のみ登場)翼幅11.71m 全高5.02m
F-5EタイガーII(OVA版のみ登場)翼幅8.13m 全高4.06m
F-18ホーネット(OVA版のみ登場)翼幅11.43m 全高4.66m
バッカニアかなり全幅広いじゃねぇか。これで出撃すると言い出したラウンデルは正気か?
各部隊からの精鋭4名ずつの20機編成で出撃し、途中レオンハルト機が岩に激突して墜落するアクシデントが発生したものの順調に侵入していた。
が、一方山岳基地でもアクシデント発生。真は自身の部隊で最も目にかけていたキム・アバを置いてきていたのだが、彼が爆装したスカイホークで勝手に出撃していた。
もちろんコントロールは制止したが、緊急用のシャッターを降ろして止める間もなく飛び立ってしまった。
本人的には訓練の成果の発揮と上官である真の役に立ちたくての無断出撃だったのだが、作戦詳細を知らなかったのか谷間を通過せずにそのまま基地へダイレクトアタック。
更に谷の内部に設置されていた自動警戒装置が作動したことにより侵入が露見し、キムが攻撃隊より先に到着してしまった為に襲撃がバレてしまう。
キムは勝手に爆撃開始し、目標到達直後、爆撃隊の先頭を切っていたミッキーが敵に捕捉されたが爆弾を投下し身軽になったキムが援護した為事なきを得ている。
帰投後結果的に作戦は成功、キムの介入で損失はレオンハルト1人で済んだため無断出撃は不問にされかけたが、
ラウンデルが半泣きになりつつ軍の規律が維持できないと言ったので1週間独房入りを命じられた...が、部隊の面々が片っ端から(独房の番兵ですら)差し入れを渡しまくったので独房入りと言うよりももはやただの1週間のバカンスのような何かとなっていた。
鬱展開やしんみりした終わり方の多いエリア88の各エピソードにおいてかなり明るい〆となっているのもこのエピソードが人気であるうちの1つといっても過言ではない。
OVAでは攻撃隊に時期的に参加していないグエンがF-105サンダーチーフで、原作漫画において「おんぼろスカイホークじゃなくてトムキャットでやりたかった」と嘆いていたミッキーが念願叶って
F-14で参加。
爆撃隊にグレッグが
A-10(本人曰くフルペイロードすれすれ)で、まだ生存していたキャンベルがA-4で参加している。
砂漠空母編、ギリシア訓練所編、山岳基地編をダイナミックにカットするなどストーリーがかなり前後しているのでキムは参加していない
またラウンデルも登場していないため先頭はシンが務めている。
この際渓谷突破後のシンの台詞は原作には無いものだが傭兵部隊としてなかなかに味のある台詞で必聴である。
(ストーリーに違和感はなく、ギリシア訓練所はこの作戦後に出てくるが。ちなみに原作でのグエンの88加入はタイトロープ後)。
またアスラン正規軍編入もされていないので報酬も支払われており、危険度故に「報酬は平時の3倍、更に未帰還者の分は生還者での山分けも可」という扱いになっている。
(OVA1巻でいつもの報酬の倍が2万ドルとされているので、いつもの3倍というと3万ドルということになる)
この作戦が立案実行された理由も、反政府軍の進行を停止させるためというものに変更されている。このため攻撃目標は燃料集積所を含めた施設全域となった。
渓谷突破後の展開も大きく異なり、突破後に攻撃隊と爆撃隊の二手に分かれた直後に爆撃隊が潜んでいた
ハリアー隊の強襲を受ける。
爆撃隊側は既に爆撃コースに入っていたので方向転換もままならず、真達攻撃隊が援護に回るがその背後にもハリアー隊が。潜んでいた総数は凡そ20機近く。
グエンが緊急脱出した敵パイロットを機銃で射殺するアクシデントこそあったものの真達の援護でハリアー隊は壊滅。
キャンベル、グレッグが無事だったためそのまま施設の破壊及び航空部隊の壊滅を敢行、無事成功した。
なおハリアー隊の強襲とグエンの射殺シーンが追加された理由は恐らく尺の都合だが、ハリアー隊強襲の元ネタは文庫版6巻収録の『稜線の悪魔』及び『マウンテン
ゲーム』であり、輸送隊が敵のVTOL機に壊滅された話。
グエンの射殺シーンの元ネタは同じく文庫版6巻収録の『人食い虎』であり、こちらのシーンの追加理由はグエンの非情さを印象付けるためと思われる。
指揮は真が執っており、原作では犠牲は1機のみだったが確認できる参加数が16機で渓谷突破中に6機、更に突破後には5機撃墜、
損害が計11機と被害が単純計算11倍になっている。
アタック時に確認できる残存機は攻撃隊5機、爆撃隊は5機の計10機、差し引きすると参加した命知らずは16人となる。15%って…なんだっけ…?
ちなみに描写を見る限りミッキーはトムキャットの後退角全開の20度で渓谷を突破している。くどいようだが、もう一度比較してみよう。
トンネル:幅25m 高さ15m
F-14:全幅19.54m(主翼後退角20度) 全高4.88m
F-105D:翼幅10.65m 全高5.99m
A-10:翼幅17.42m 全高4.42m
こいつらの血管には本当にジェット燃料が流れているのだろうか…
追記修正はフルペイロードすれすれのA-10で渓谷突破してからでお願いします。
- 数値やデータを並べられたうえで改めて見ると本当にバケモノ揃いだなエリア88の古参メンバー… -- 名無しさん (2014-04-03 00:02:55)
- 古本屋に行ったんで探して読んでみた。…作戦を立案する方も、作戦を遂行する方もどうかしてる… -- 名無しさん (2014-04-06 13:07:37)
- ぶっちゃけ元ネタは明らかにスターウォーズ。EP4と5。 -- 名無しさん (2014-08-10 16:43:54)
- ↑2作目か -- 名無しさん (2015-03-06 23:06:35)
- こんな命を賭けた無理ゲー、いくら報酬積まれてもやりたくないよ!!(汗 -- 名無しさん (2016-03-09 19:41:41)
- トムキャットの後退角75度は地上時のみで、飛行中は68度が限界だぞ -- 名無しさん (2016-05-14 12:42:46)
- アニメ版でもこの作戦はやってた。 -- 名無しさん (2017-05-20 20:55:17)
- アニメ版?あったっけ?そんなの? -- 名無しさん (2019-01-07 09:26:12)
- 低速で飛べるA10のほうがマシなんだろうか というかそのトンネルいつのまに調べてたんだろ -- 名無しさん (2021-03-02 18:33:18)
- ↑反政府軍の勢力下と言っても、元からアスランの国土なんだから地形とかのデータは一通り持ってるんじゃない? -- 名無しさん (2021-09-06 21:35:00)
- タグが一つ増えたな -- 名無しさん (2022-05-27 14:23:51)
最終更新:2024年07月10日 18:22