風見豊

登録日:2014/08/08 Fri 13:53:49
更新日:2025/05/01 Thu 19:02:56
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風見(かざみ) (ゆたか)とは、『逆転検事2』の第3話「受け継がれし逆転」に登場する人物である。
名前の由来は「風味豊か」だろう。

年齢は54歳。18年前は36。
左目に刀傷のような傷痕がある、隻眼のパティシエ。真っ赤な帽子と服を着用している。
その顔立ちや「ワシ」という一人称、人の名前に「~~どの」をつけて呼ぶなどの古風な口調、履物も靴ではなく草履なのも相まって、全体的に侍のような風格がある。
会話中に瞑想をする事もしばしば。
パティシエとしての知識から、馬堂刑事の頼みを受けて捜査に協力していたところ、御剣信弁護士と、当時彼の助手だった信楽盾之と出会う。

世界一のパティシエ「テンカイチ」こと天海(てんかい) 一誠(いっせい)が18年前に主催した、お菓子コンテストの参加者のひとりである。
飴菓子作りを得意分野にしており、コンテストで天海に勝って、世界一のパティシエの座を手に入れようとしていた。
腰には常に飴ポンプを下げており、これで飴に空気をいれ、思い通りの形を作ることができる。
ただ、ポンプのせいで頻繁に火傷や生傷を負っているようで、赤い服を着ているのも、いつ汚れてもいいようにという理由から。

お菓子の知識は豊富で、味も良いものの、18年前はデザインセンスが未熟だった。
本人は龍や狼を作ったつもりでも、傍から見ればタツノオトシゴや子犬になっているようなことも。
御剣弁護士も信楽も、デザインセンスが無いことに異議なしと言うほど。
自身の取り調べにあたった狩魔豪検事には、彼にそっくりの飴を作ったものの、当の狩魔本人からすると「思い返すのも腹立たしい」出来栄え。

この欠点については自覚していて、後に西鳳民国にて修行を重ね、当時からは想像もつかないほどきめ細かな飴つくりに成功している。
その成長ぶりには、信楽も拍手を送っている。

一児の父でもあり、曰く「ワシの作る菓子が大好きな、ジマンの息子」。
18年前は小学生で、コンテストでも、準決勝戦までは毎回遊びに来ていたらしい。

第3話では、現代の話になった最初から毒ガスを吸い、意識不明に陥るシーンで登場する。
そのため現代パートは中間まで風見が抜きで話が進む。不憫。

18年前に比べると髪は白くなり、肌は焼け、後ろ髪が伸び、顔には横一文字の傷が増え、腕にも無数の傷跡が見えるなど、容貌が変化している。
帽子は変わらず真っ赤なものだが、上着は茶色の着流しのようになっている。
息子の小学校の入学式でも同じような服を着ているが、腕を上げるにつれて怪我を負うことが減っていったため、赤い服を着る理由がなくなったのだろうか。
腕の傷は「未熟だった自分を忘れぬため」残しているという設定がある。


これより先、ネタバレには注意しておくことだな。
















実は彼の息子と、コンテスト中に発生した殺人事件「IS-7号事件」の被害者・氷堂伊作の息子は同級生。
その縁で、風見と氷堂も付き合いがあった。

氷堂との繋がりはそれだけに留まらず、そもそも風見は、裏で氷堂と手を組んでコンテストの優勝を狙っていた。
氷堂の正体は、素顔を公表せずフランスで活躍していた彫刻家「ポール・ホリック」で、活動に莫大な金がかかるため、大金を欲していた。
そこで、天海に勝って世界一のパティシエになろうとしていた風見と、優勝賞品である「究極のレシピ」を換金したかった氷堂は手を組むことにした。
前記のように風見はデザインが弱く、氷堂は菓子作りの素人。お互いの弱点を補い合っての協力関係である。

が、氷堂は決勝戦の審査中、死体となって発見される。
彼との付き合いが知られて、動機面であらぬ疑いをかけられることを恐れた風見は、警察による捜査の最中に氷堂の部屋に忍び込み、入学式で撮られた写真を盗むこととなった。



以下、さらなるネタバレに注意。





















IS-7号事件の真犯人。



事の発端は決勝戦の前日のこと。

実は風見は味覚障害の一種であり、味を一切感じられなくなる「味覚消失」に陥ってしまっていた。
そのため、何としても優勝賞品の「究極のレシピ」、すなわち当時未発表だった味覚障害の治療薬の調合書を手に入れる必要があった。
レシピを金に換えようとしていた氷堂と手を組んでいたのは上記の通りだが、どちらか優勝してもレシピを共有する約束になっていた。
しかしその決勝戦の前日、氷堂は風見に菓子を作らせ終えた時点で彼を裏切り、協力関係は終わりだと一方的に言い放った。
そのため風見はこっそりとレシピの内容を写真に収めようとしたが……


もしやとは思っていたが…
お前、味覚障害だったのか


氷堂に事情がばれてしまい、その上口止め料まで要求してきた。
殴りかかろうとしたところ氷堂に突き飛ばされ、頭を岩塩ランプにぶつけ血を流し、更に暴言を吐かれたことで遂に殺害に及んだというイキサツ。

「ワシの障害になる者を生かしておく理由などない」等の発言からも分かる通り、本性は極めて自己中心的
世界一の菓子職人に上り詰めたのは本人の努力の賜物であり、菓子道を究めんとする志は本物なのだが、そのためには息子さえも重荷やしがらみのように扱い、行方不明になったことにもまるで興味を示さない。
この身勝手さは、「そんなプライドのために殺人を犯す気持ちなどわかるはずがない」と御剣からも一蹴されている。

天海のことは菓子職人として尊敬しており、罪を着せるつもりはなかったと述べている。
しかし、間接的に彼を表舞台から追放して18年間も冤罪で苦しめたことや、今は自分が世界一のパティシエとなっていることを申し訳なく思う様子は皆無。
加えて、「ニセモノの菓子でコンテストを汚した」という理由で薬剤師のデリシー・スコーンに罪を着せる工作を行っており、その点にも彼の自己中心さががうかがえる。

ちなみに息子がコンテストに来ていたのは、味覚障害になった風見の代わりの味見係である。
決勝戦の時は氷堂の手によって息子の行方が分からなくなっているが、本人は「味覚が戻った以上、息子などどうでもよい」とまで発言している。
現代の風見は18年前に比べて容貌が大きく変化しているが、寡黙だった18年前に比べて高笑いを多用するなど表情も露悪的で攻撃的なものが増えており、罪を犯して逃げ続けたため歪んでしまった性根が現れているかのようである。


話が進めば進むほど彼の非道さが露わになり、早く逮捕だ!と誰もが思っただろう。だが、そうはいかなかった。

風見「貴様らにはワシを裁くことはできん!」

ワシが氷堂を殺害したのは、今から18年も前のことなのだ。
この国の殺人罪は、15年で時効になるのだろう?
つまり、ワシを逮捕するのは不可能だと言うことだ!
時効が過ぎているからこそ、罪を認めてやったのだ!



そう、スデに時効が過ぎてしまったからこそ風見は罪を認め、それでいて余裕綽々の態度だったのだ。
犯人の国外逃亡中は時効が停止となることから、西鳳民国での修行期間によっては罪に問える可能性があったものの、期間は3年であり、それでも4か月ほど足りなかった。

もはや勝ち逃げは決まったかと思われたが、御剣は天海が「共犯者」として起訴され有罪となったことから、「共犯者の起訴から結審まで時効を停止する」というもう一つの原則が適用されることを指摘。
裁判が判決までに1年かかったことにより、IS-7号事件の時効は15年ではなく19年となり、まだ成立していないことになる。
天海の冤罪を理解しながらも、「天海と風見は共犯」という論理で追い詰める矛盾した手段だったが、これによって遂にお縄となった。

真犯人特有のブレイクモーションは、飴ポンプで風見自身をかたどった像をつくり、それを切断するもの。
これまでの修行もなくなった、文字通り「空っぽ」という皮肉な演出に仕上がっている。
スタッフによると、追いつめられて観念したのか、「自分の手で自分の菓子道を終わらせる」という意味もあるという。


ちなみに前記のように氷堂も氷堂でクズであり、元々金にがめつい人間であることが分かっている。
風見との言い合いの際の言動や彼も風見に暴行を加えていたこと、そもそも彼が裏切らなければ事件は起きなかったことから、人によっては風見以上のクズ・元凶(ある意味風見も被害者)だとの意見も多い。
風見の言うように、殺されても自業自得と言えてしまう。

つまりこの事件はクズ二人の喧嘩である。
この辺は『逆転裁判2』の王都楼と藤見野の関係を彷彿とさせる。


余談


不正をしたのは菓子職人にとって致命的である味覚障害を治したいがためであり、また殺人に至るまでの経緯は氷堂の行動があまりにも度を過ぎていたため、その点では情状酌量の余地がある。
しかし、18年間他人に罪を着せて逃げ続けたことや真実を暴かれた後の彼の言動は醜悪で、信楽も「レイジくん。オジサンさ…ひさびさに、本気で怒ってるよ」と述べるほど。
だが、このどうしようもなさすぎる悪行により、キャラも立ち筋も通るキャラクターとなったため人気は決して低くない。

スタッフによると「信頼していた相手に裏切られて人を信じられなくなってしまった」らしい。息子のことを氷堂に与して裏切ったと思い込んで見捨てるというのも極端にも感じるが。
だが後の息子の回想や、風見の「ワシのお菓子を食べるのが好きな息子だった」という発言にウソがなければ、少なくとも息子の視点では当時は尊敬できる父親であり、よく慕っていたようだ。
(氷堂のほうは息子を脅して誘拐をさせるという行為に出ており、事件以前から父親として問題があったのではとうかがえる)


第3話の事件である「IS-7号事件」だが、これは御剣信弁護士が狩魔検事の経歴に傷をつけた事件のことである。
要するにこの事件があったことで「DL6号事件」が発生したともいえる。

もっと極端な言い方をすれば、直接的な責任はDL6号事件の犯人である狩魔検事にあるのは尤もだが、
元はと言えばこの風見のせいで、御剣信も綾里千尋も死亡し、灰根高太郎の人生もめちゃめちゃになり、
綾里家の地位もどん底に落ちて、ゴドーの人生も歪み、怜侍も弁護士ではなく検事としての道に進んだことになる。


この人物のせいで逆転シリーズ全体に大きすぎる影響が出てしまったと言える。
ただ、 彼がいなければ成歩堂龍一が弁護士になることはなかった とも云えるわけで・・・
もっとも、風見本人が言うように(本人が言うなという感があるが)、殺害されても仕方ないと思われるような氷堂の所業、氷堂の死体と気付かずにそれを隠して捜査を混乱させてしまった緒屋敷司、さらにその死体消滅を隠蔽して狩魔を陥れた一柳万才など、
様々な要素が絡み合ってDL6号事件のきっかけとなったのであり、風見一人だけが元凶であるという言い方は適切ではないだろう。


そして彼らの息子たちの人生をも大きく歪ませることとなってしまった。

なお、前述した「この国の殺人は15年で時効になるため、逮捕できない」と言っていたが、これは現在の所1989年以前に限られてしまう。
2005年に「最高刑が死刑」のものは時効が25年に延長され、本作発売時には至っては「最高刑が死刑」の中で「人を死亡させる事で既遂になる」のであれば、既に時効が廃止されていた。
そもそも、時効は迎えても「起訴できない」だけであり、逮捕はできる。

殺人罪の時効がキーワードとなった初代逆転裁判の発売年は2001年であり、その当時はまだ時効が15年であった。
逆転検事2の作中では初代から2年程度しか経過していないため、逆転世界ではまだ廃止されていないのであろう。

時効に対する説明は「逆転裁判」で「その件が無かった事になる」という説明で済まされていた事を考えると、時効後であれば自首してきても警察は相手にしないのかもしれない。


追記・修正は西鳳民国にて3年間修業をしてからお願いします。

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最終更新:2025年05月01日 19:02