ブラウニング オート5

登録日:2015/02/10 Tue 13:04:50
更新日:2025/09/25 Thu 08:38:48
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性能

全長:1270mm
重量:4.1kg
銃身長:28インチ(711mm)
使用弾薬:12/16/20ゲージ
装弾数:4+1発
動作方式:ロングリコイル



概要

1898年にジョン・モーゼス・ブラウニングが設計したセミオートショットガン
1902年より生産が開始され、セミオートショットガンとしては初めて大量生産された記念すべき銃。
機関部後端が角張りながら盛り上がる独特の形状をしており、ここからつけられた愛称が「HumpBack(せむし、猫背)」。

ブラウニング社は設計を他社に持ち込むスタイルとなっており、拳銃やライフルなどの設計をウィンチェスター社やFN社などに提案しロイヤリティで利益を得ていた。
最初は懇意にしていたウィンチェスター社に生産を提案したのだが、ウィンチェスター社は本銃含めた3種のロイヤリティの支払いに関する部分でごねた。数年前から揉めることも増えてきたこともあり、この件から20年近い交流を切っている。
今度はレミントンに提案。レミントン側も興味を示していた*1のだが、なんと返答待ちの間に社長が心臓発作で急逝してしまい、契約そのものがなかったことにされてしまう
ブラウニングは米国での生産に見切りをつけ、1902年にベルギーのFN社にこの企画を持ち込み快諾。そうしてFN社で最初の量産が始まった。

FN社はドイツ占領中の時期を除いて生産を継続。その後はレミントン(M11)やサベージ・アームズ(M720)、日本のシンガー日鋼(KFC パインオート)やミロク製作所の子会社(ヤマモト オートポインター)でもライセンス生産が行われた。
特にM11は85万丁以上を製造。総生産数は不明だが、米国で二番目に売れたセミオート・ショットガンとなっている*2
99年にFN社が製造した記念モデルを最後に生産終了している。



構造

ロングリコイル動作機構はブラウニングが発明し1900年に特許を取得している。
本銃の時点で十分に洗練されており、ガスオペレーション式ショットガンの登場まではその完成度の高さから他の銃を寄せ付けないシェアを誇っていた。
下記発射時のサイクルとなる。ガスオペレーション式やショートリコイル式とは異なるタイミングで排莢されることがわかる。

  • 激発の反動でバレルとボルトが後退開始、バレルとボルトのリコイルスプリングを圧縮
  • 後退しきったところでロッキングブロックが開放。同時にスプリングの反動で銃身が前進し排莢される
  • 弾倉から飛び出してきたショットシェルがボルトストッパーを開放、ボルトが前進し再装填

ゴムシーリングの品質不良や熱溶解による作動不良に悩まされた初期のガスオペレーション式と違い、機構面ではやや複雑化する代わりに頑丈で信頼性が高い*3のが特徴。
青銅製のパーツをスプリングの前後に組み替えることでボルト後退時の抵抗が変化し、バックショットとクレー用バードショットを切り替えることができる。
ただし反動利用する都合、体で反動を吸収してしまったり極端な弱装弾やマグナム弾を使用する場合作動不良を起こしやすくなる。
そのため、ガスオペレーションの技術向上に伴い、この形式は次第に廃れていった。

多くの散弾銃同様に下部装填・右側排莢。
しかしホールドオープンした状態でシェルを装填すると自動でボルトがリリースされ薬室にシェルが装填されるスピード・ローディング・システムを搭載しており、その点は独特。
安全装置の操作性に関しては会社や生産時期で異なる。

本来は4+1発の5連発でありオート5の名も装弾数に由来する。
しかし現在この銃が流通している大半の国では装弾数の規制がなされているので、それに適合させるために装弾数を制限するマガジンリミッターや容量自体を削ったモデルが存在する。概ね2+1発とされる場合が多い。

ウィンチェスターの「トレンチガン」共々二度の世界大戦に投入されている。
あちらが単純な構造と軽さで、こちらは技術要らずで連射でき、ある程度重量があるため反動がマイルド。
ベトナム戦争でも使用が確認されている。

バリエーション

  • オート5
FN社のオリジナルモデル。1902-39年までと、57年から99年までの約80年弱ほどの間生産された。

  • レミントン M11
レミントン製ライセンスモデル。米国内で初めて生産されたセミオート・ショットガン。05-48年にかけて生産された。
このモデルだけでオート5全生産数の3割以上を占める85万丁以上を売り上げている。

  • サベージ・アームズ M720/M745
サベージ・アームズのライセンスモデル。30-49年の間に生産された。
前者はオリジナル同様のフル規格品、後者はリミッタードマガジンと合金製レシーバーを備えた軽量型。

  • ミロク製作所 オート5
66年以降にブラウニング・アームズと提携し、同社製品のOEM製造を行っていた。
特にオート5の製造数は、75年以降の各メーカーの本銃製造数では最多を誇る。
国内では狩猟用ショットガンとしてバリバリ現役で、同社の高い工作精度と元からの完成度が合わさり最高に見えるとかなんとか。
しかし、日本製含めOEM生産品は元のモデルと部品の互換性がないとされる。



フィクション

他の有名なショットガンに比べれば二次元での登場は控えめ。まあ、デザイン状の押しはあまり強くないし。
映画だと、有名どころでは007 サンダーポール作戦やダーティハリーあたりか。
ゲームならレッド・デッド・リデンプション。



余談

津山事件で犯人の都井睦雄が使用した「9連発改造ブローニング猟銃」は、製造年月や事件の日付等から考えておそらく本銃の改造品であろう。



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最終更新:2025年09月25日 08:38

*1 ブラウニングの実績を考えれば当然ではある

*2 一位はレミントンM1100

*3 ゴム使わんから溶けんしね