散弾銃

登録日:2009/07/12 Sun 05:46:32
更新日:2025/07/28 Mon 20:40:35
所要時間:約 6 分で読めます




散弾銃とは、狩猟用に小銃と別の発達を経た銃種であるショットガンの日本での名称。ライフリングが切られていないことが多くそれを基準とする場合もある。
禁猟区でない山道を歩いていると時たま見かけるプラスチックの薬莢の主である。


概要と歴史

飛び立つ鳥を撃ち落とす目的などで17世紀ごろにマスケット銃から派生した。
動く目標に当たりやすいよう、多数の小さな弾(散弾)を撃つことを主眼に置いてラッパ銃などと呼ばれるほど大口径へと進化を遂げた。
ショットガンという命名は1776年のアメリカ。猟や犯罪、自衛など様々な用途に用いられ、それに合わせて弾も進化。大口径ゆえに様々な変種に対応している。
日本では当初の目的のみに沿って散弾銃と呼ばれる。ショット=散弾ではないので注意。
散弾がライフリングを傷づけてしまう都合、切られていないものが多い。そのためライフリングのある銃よりも規制が緩い傾向にあり、ライフル銃の所持条件にそれ以外の銃(散弾銃を含む)の一定期間の所持が条件付けられていることが多い。

面で攻撃ができ、尚且つ生身の相手への殺傷力が高いことが利点。
  • 狩猟用では素早く動く野性動物を仕留めるため
  • 自衛用ではより高い武力を示す抑止力のため(通報5分でパトカー到着とはいかない米国では特に)
  • 警察では道路から迫ってくる犯罪者を迎え撃つために
  • 軍隊では塹壕でのとっさの遭遇戦や室内戦、ドアの錠前や蝶番を破壊するために。そして…(後述)
上記のように軍民問わず様々な用途に用いられる。

大抵のゲームではすぐに弾が散る超近距離武器とされ、そのイメージから10m以遠の遠距離にすら対応できないという先入観を持つ人も多い。
しかし実際は12ゲージ散弾の場合でも有効射程は50mほどある。10m付近までは弾を飛ばすためのガイド(ワッジ/サボ)が弾を保持しているため散らず、銃身のセッティングによるが50mでも10インチ(25.4cm)程度に集弾する。あくまで小銃よりも弾が当たりやすくなる程度である。

日本では浅間山荘立てこもり事件など犯罪の折に使われた為、一度に装填できる弾の数が狩猟に十分な最低限度(2+1発)しか許されていない。そのため後述の2連式も選ばれることがある。

ライフリングの切られていないショットガンにスラグ弾を装填して疑似的な小銃として用いることもある。
スラグ弾とは弾頭が1発にまとまったショットガン用の弾で、威力としては並みのライフル弾を上回る。そのためライフル銃の所持許可を持ったものでもライフリングが刻まれたショットガンを選択する場合さえある。

無論欠点も存在。
  • 大口径ゆえの問題。
 装弾数・携行弾数ともに少ない。装弾数はチューブマガジンやボックスマガジンで~8発程度、ドラムマガジンでもせいぜい20発。当然反動も大きくなる。
  • 対人、対獣としても散弾ではボディアーマー(防弾チョッキ)や天然装甲を装備した敵に対抗しにくい。
 1発1発は拳銃弾程度の威力を持つが、丸弾であるため貫通力は低く同等のエネルギーでもよりランクの低いボディアーマーに防がれてしまうことも。
 1970年以降民間でも発達してきたボディアーマーは比較的入手が容易。チンピラでも着ていることがあり、拳銃とともに対応に苦戦することとなる。
 また、熊などの大型獣は頭蓋骨その他が分厚く、さながら天然の装甲。スラグ弾やライフル銃でないと太刀打ちできない。
 鳥撃ち目的の場合でも自衛用としてスラグ弾を持つ人もいる。

1997年にアメリカで起きたノースハリウッド銀行強盗事件は代表的。犯人2人組は手造り(!)のアーマーを全身にまとっており、警察官の拳銃、ショットガンにもひるまず暴れ続けた。
犯人は射殺こそされたものの、警察官や民間人が20名負傷。アメリカ警察はこれを教訓に、パトロールライフルとして突撃銃とそのオペレーター(PRO)を配備するようにシステムを変更した。

上記の事件などから対人目的でも少しずつ陰りが見え始めた昨今。しかし、21世紀になって意外な方面からお呼びがかかった。
小型の無人航空機(便宜上ドローンと呼称*1)に対する対空兵装として注目されたのである。
近年、農業や報道エンタメのみならず、警察や軍隊に至るまでドローンはあらゆる分野で使われている。
特に自爆ドローンは隠密性と危険性から恐れられ、即時の迎撃が求められる。しかし小銃、ミサイルでは帯に短したすきに長し…

ここでドローンの特徴を見てみよう。

  • 大きさは10cm~1m程度と野鳥並
  • 速度はホバリングで0km/h~100km/hと野鳥並
  • 運用高度も1000m未満で低空に下りてくる場合が多く野鳥のよう
  • 基本的に用途に対して重量がカツカツなので装甲は持たず野鳥のよう
  • プロペラ音で至近にいると気付く。これも野鳥の羽ばたき音のよう

このように特徴や用途(対峙した際の挙動)が野鳥に非常に近いのだ。

散弾はもとより鳥撃ちのために開発された。つまり野鳥に近いドローンにも有効ということである。
ショットガンは人工の鳥という新たな敵を得たのだ。

2022年からのウクライナ侵攻では、レシプロエンジンの練習機に乗った銃手がショットガンで無人機を撃墜*2するという、第一次大戦初期の空戦や第二次大戦の無人航空爆弾V1迎撃を彷彿させる戦闘が発生している。
一部戦車の自動迎撃装置でも散弾が用いられ(こちらは専用弾)、オタワ条約に批准している軍隊が発火装置で起爆する対人地雷を指向性散弾として配備していたりする。
このように今なお軍への需要は存在している。


種類

大きく手動装填、セミオート、フルオートに分かれる。
それぞれを複合したコンバーチブル方式も存在するが最近は減少傾向にある。
フルオートは基本的に軍隊か警察用で、民間人の所持は一切認められていない。ただでさえ拳銃弾並みの弾を一気に撃てるのにそれを連射すると恐ろしいことになる。

手動装填

装填から排莢まですべて人力で行う。
構造が単純で動作信頼性が高く、安価でもあるため未だに需要が高い。

単身元折式

  • ブローニングBT-99
  • ファルコ410*3
単装単発銃。連発はできないが軽量なため、今も現役で使われている。

2連式

  • ベレッタ686シルバーピジョン(上下)
  • ミロク725シリーズ(上下)
  • イジェフスクIzh-43/MP-43(水平)
  • TP-82(水平+5.45x39mm弾)
ダブルバレル。単発式の銃身が上下又は左右に並んでいる。
たとえ1発ミスファイヤしたとしてもどちらかは確実に発射できる確実性と、セミオート等で発生する次弾装填までのタイムラグがない機敏なレスポンスが利点。
薬莢式の場合は中折れによって装填排莢とその銃が安全であることを示す。
上下(Over and UnderやOver/Under)と水平(Side by Side)とで用途に違いがある。
左右式のほうが歴史があり、中折れの際の角度を小さくできるため再装填も早いが左右で反動のベクトルが変わるためマイナー。
上下式は頑丈にできて反動も制御しやすく主流となっている。
クレー射撃では照準を外さずに2連射する必要があるためセミオートよりも本形式がベター。規制の強い国での狩猟用としても選ばれる。

稀に水平2連銃身の間に遠距離用や緊急時にライフル弾を一発だけ装填可能なタイプも有り、こちらはコンビネーションガンと分類される。
ソ連宇宙飛行士用が帰還後回収部隊に見つけてもらうまでサバイバルするために開発されたTP-82が有名。

ポンプアクション式(その他手動連発式)

  • ウィンチェスターM1897
  • イサカM37
  • レミントンモデル870
  • モスバーグM500
  • スーパーショーティー(上記870/M500を別会社が改造したソードオフ型)
  • MAG-7

手動装填のショットガンでは特に普及している。ガションという大きな作動音が威圧感を高めており人気。
大抵の場合リコイルスプリングがなく薬室へのアクセスがしやすいため、手間取らずに弾種切り替えができる。警察の治安維持部隊などでは、普段は非殺傷弾を撃ち、いざというときは1発だけ所持している散弾を発射…という運用とそれを意識した訓練をしている様子が見受けられる。

ボルトアクションやレバーアクションもあるが、現在ではかなり下火。
一例としては村田式単発銃。東北の猟師やゴールデンカムイの二瓶鉄造で有名。第一次世界大戦前後の旧式小銃の銃身を拡張して民間に放出したもので他国でも見られる。
また、ライフル銃所持まで待てない散弾銃所持者がライフル風の見た目の銃を所持したいというニーズに合わせて販売されていたりする。
レバーアクションとしては、ウィンチェスター社製のM1887*4とその改良型のM1901などが存在。
しかし主流なレバーアクションはライフルのほうであってショットガンではない!*5


セミオート

  • ブローニング オート5(販売終了)
  • 豊和 フジ・スーパーオート(販売終了)
  • レミントンM1100
  • イズマッシュ サイガ12
  • ベネリM4(米軍採用名称:M1014)

民生用として狩猟や競技などで使われる。
ブローニング オート5が最初に成功したセミオート式で、その人気から1898年の設計完了から1998年まで100年近く製造された。
基本的に1発ごとのコッキングは想定されておらず、構造上反動が大きくなったり、銃にあった弾を使わないと排莢不良が起こる欠点もある。
日本で散弾銃と言えばこのセミオートか2連式のどちらか。

コンバーチブル式

  • フランキ SPAS12(ターミネーターでT-800がぶっ放してたり某メイドが傘に偽装しているアレ)
  • フランキ SPAS15
  • ベネリ M3 スーパー90
セミオート装填と手動装填を切り替えられるショットガン。
弾を選んだり排莢不良に悩まされるセミオートの欠点と連発の難しい手動装填の欠点を補える優れものだが、その分機構が複雑で価格も高い。
セミオート式の信頼性が多少向上してきたことから現在では新規開発されることは少ない。

フルオート

比較的新しめ。撃たれる方はたまったものじゃないが、使う方にしても携行火器で敵をミンチにする必要はないのであまり普及していない。
上記AA-12も榴弾のオプションがあるが、その程度ならMk19などの車載フルオートグレネードランチャーで良い。

サブ分類

ソードオフ

ソウドオフ、ソーンオフとも。ストックもしくは銃身、或いはその両方を短縮したモデル。手動装填式に施されることが多い。
犯罪者が隠し持ちやすいように切り落として改造したのが始まりと言われており、多くの国で民間人の所持を禁止されている。合法の存在としては概ね警察・軍用。
銃身が短い為弾の拡散が制御できず、不意打ちや室内戦などの至近距離のシチュエーションがメイン。施錠されたドアを破壊する、いわゆるマスターキーとしての用途もある。
あくまで携行性重視の仕様。
また、その小ささから突撃銃のアンダーバレルに装着することを想定したものも存在する。
尚ソードオフとは Sawed-off(のこぎりで切り落とした) という意味。Sword(剣)ではない。

その他独自路線

  • SIX12(リボルバー式ブルパップ)
  • RDIストライカー12(リボルバーかつ自動排莢式)
  • メタルストーム MAUL(専用弾薬の電子発火式)

「マガジンチューブ式だと再装填が手間、かといって着脱マガジン式だと弾倉が縦に延びて取り回しが最悪」
「ポンプアクションだとレスポンスが遅いが、セミオートは信頼性が低い」
「弾が大きいので装弾数に限界がある」
「反動が大きいので素早い連射に向いてない」
などの声に対し企業やガンスミス達が答えを出そうと奮闘した成果物。
熱意とユニークさが奇跡の合体事故悪魔融合を遂げた結果、時にとんでもない変態銃を生み出しててしまう。



弾薬

小銃と別の進化を遂げたショットガン。弾薬も、構造こそ近いものの全く別の要素を持っている(ショットシェルとしての小分類がなされる)。
  • 底部以外を紙やプラスチックで構成した薬莢*6
  • 弾頭ではなく1粒一粒をペレットと称する。
  • 単位も異なる(後述)
以前は鉛のペレット(鉛散弾(レッドショット))が使われていた(溶融させた後、漏斗状の機器で水に落とすことで「金属のボール」に成型するので製造も言うほど難しくない)が、環境汚染などから一部の国では規制、禁止されている。
代用品として鉄やタングステン合金の弾丸が普及しているがこちらも錆や別の環境汚染などで問題になることも。

番号と口径の関係

ショットガンとショットシェルの口径は番号(ゲージ)で表記され、基本的に12番20番と数字が大きくなるにつれて口径は小さくなる。

弾の重量を基準にした規格であり、「1÷nポンドの鉛を球形にしたサイズ」が実際の口径となる。
例えば12番なら1/12ポンドの鉛を球体にした時の直径=0.729inch=18.5166mmとなる。
数字が大きくなればなるほど弾の重量が減っていくため、口径が小さくなっていくわけである。
番号はそのまま「1ポンドで(番号)発入っている」という意味であり、鉛玉を買うときに「◯番の鉛玉を△ポンド売ってくれ」という具合で取引しやすいように考えられたものらしい。
が、やはりヤード・ポンド法が基準のため我々メートル法圏の人間からするとややこしく見える。

番号 口径[inch] 口径[mm]
2 1.326 33.7
4 0.99 25.2
6 0.919 23.3
8 0.835 21.2
10 0.77 19.7
12 0.73 18.5
16 0.66 16.8
20 0.62 15.6
24 0.58 14.7
28 0.55 14.0
32 0.53 13.4
36 0.51 12.9
40 0.49 12.4
.410口径 0.410 10.4
※数字は端数を四捨五入したもの。

現在は12番(12ゲージ)がポピュラー。
現役では12、20、.410が現役で特殊用途で4、10、16、28が使用されそれ以外は古式銃の発砲以外では実質廃盤である。

4番とかになるともう銃じゃなくて砲じゃないのかとなる。実際KS-23(23mm)以外では手持ちで撃つのではなく据え付けて使うパントガン(船に括り付けて大量の鳥に対してぶっ放す銃)として使用される。
漫画「砲神エグザクソン」では治安ロボットが1番ゲージ散弾を運用している場面がある。

.410口径は後発で、同じ基準で呼ばれることが無く「ヨントー」「フォアテン」「.410ゲージ」「410番」等と呼ばれている。
スラッグ弾を使えばほぼライフル弾なので、ライフル銃の代用としてのニーズがある。
そして大体.45口径なので トーラス ジャッジ や S&W ガバナー など.410と.45ロングコルト弾など拳銃のバリエーションとしても存在。


散弾

ペレットもサイズによって複数種に分かれる。

バックショット(Buck(牡鹿)Shot)

鹿撃ち向けの弾で6~9発のペレットを発射する。
000(トリプルオー)B、00(ダブルオー)B、0(オー)B、1~4Bの順に直径が小さくなる(9.1mm~6.1mm)。
Backではない。

バードショット

鳥撃ちまたはクレー射撃用。10~数百発を発射する。
TT、T、FF、F、BBB、BB、B、1~10の順に直径が小さくなる。(5.8mm~1.8mm)

ラットショット/スネークショット

1.3mm程度のより小さい弾。普通の拳銃などでも発射できる。
小さい上に動きが素早く狙って撃ち難い蛇や鼠、プレーリードッグなど害獣退治用に使う。
殺傷力は比較的低いものの、それでも誤って人に撃った場合は大量の弾が体内に残留し、治療には非常に手間がかかる。


スラグ弾(スラッグ/一粒弾)

Slug=塊。ナメクジと単語が同じだが別物。
大きな弾丸が一発だけ入っており、同口径の通常弾に近い威力が出る(20ゲージは50AEクラス、410口径は45コルトの強装弾クラス)。
銃身にライフリングが無い場合は弾側にライフリングを刻んだライフルドスラグを使用。
だが例の通り拳銃弾に近い形状のせいで狙えるのも50~100m。
ライフリングがある場合はサボットスラグを使用する。精度は200m程度までなら狙撃にも対応するが法規制が厳しくなる。
ライフルドスラグをライフリング付銃身で撃つと銃身がズタボロになる。そうでなくとも一粒弾に対応した銃身/専用の銃で撃たないと危険なので注意。
熊のような大型の猛獣やドアブリーチなどエネルギーが必要な用途に使用される。

ライフル弾を超える大口径は人間にはオーバーキルだがバケモノなら容赦はいらない。
吸血鬼ゾンビネクロモーフ手足頭を千切り飛ばそう

散らばらないので「散弾銃」とは言いづらく、このせいかスラッグ弾や後述する非致死性弾の描写がある・実装している作品だと「ショットガン」で呼び方を統一していることも。


特殊弾

大口径ゆえに弾に複雑な機構を組み込む余裕がある。
ただし用途によって形状も変化するので、使用の際には銃との相性に気を遣う代物でもある。

長さの異なる弾

これ自体は通常のショットシェルなのだが、薬莢のケース長によってチューブ弾倉に込められる弾数などが変わる。
2と3/4(2.75)インチの弾が主流だが、3インチ(通称マグナム)にして高威力にしたり、コンパクトな1.75インチにすることで装弾数や反動、所持可能弾数を改善できる。

非致死性弾

相手を殺さないための弾。だが実銃で発射する以上は打撲、骨折や失明につながる十分危険な弾。
暴徒鎮圧等でおなじみのゴム弾や催涙(ペッパー)弾をはじめ、ネット(網)やビーンバッグ*7等々…。
また特殊なのがテーザー弾。テーザー銃が針を飛ばすものであるのに対し、こちらは弾自体にスタンガンの機構を組み込んでいる。

フレシェット弾

粒弾の代わりに小型のダーツ状の弾をバラ撒く。軍用としては、M14の後継としてSALVO計画で研究されていたがM16が台頭しあえなくお流れに。

ドラゴンブレス弾

可燃性の粉末を発射して火球を形成する。字面は物騒だが、危険なパーティークラッカーというような形で娯楽用途に用いるらしい。

50BMG弾頭弾

スラグ弾のかわりに50BMGの曳光弾を使用。焚火などへのファイアスターターなどへどうぞ、とのこと…

空砲

弾を発射しないもの。
初期のトラクターなどではエンジン点火用にショットガンの空砲を用いていた。
また、空港でバードストライク対策を行う際にもショットガンの空砲による音で追い払う。国内でも一部の航空機クルーを題材・主人公とした作品で「これで鳥を追い払うスタッフ」が描写されており、最たるものとして映画『ハッピーフライト』では鳥を実弾で撃っていると誤解を受けるシーンがある。


砲向けの散弾

銃ではないが、砲で発射できる散弾もある。

キャニスター弾

対人向け。構造はスネークショットに近い。
口径も威力も銃とは比べ物にならず、一回の発砲で数百発の子弾がライフル弾よりも高速で近距離にバラ撒かれる。当然食らった歩兵はミンチよりひでぇ目に遭う。
但し撃ち出される範囲内に味方が進軍してたりすると誤射の危険性が高いので近年は控え気味。
しかしながらいまだに戦車砲弾などで現役。ただしあまりにも対歩兵相手・対非装甲兵器相手に特化している(=ある程度以上の装甲車、あるいは戦車にはほとんど加害を与えられない)ことから、戦車を動かして戦う類のTPSでこのタイプのキャニスター弾頭が使えることはほとんどなく、日本国内在住ではどんな感じの兵器なのかの実感はしにくいか。

ぶどう弾

近距離対艦用。バックショットに近い。
小弾を幾つか詰めた砲弾。標準的なものは帆布製の袋に小弾9発を詰めていた模様。つぶつぶが袋に入った様子をぶどうの実に見立てた名付けらしい。ものによってはマストなどを引っ掛けて倒すために小弾同士を紐でつないでいたようだ。
こちらは榴散弾や普通の砲弾へ切り替えられて姿を消している。

榴散弾

空中で炸裂させて小弾をまき散らす形式の弾。殺傷範囲の狭いぶどう弾に代わって採用された。
基本的には遠距離の対人用であり装甲目標には効果は薄い。
第一次世界大戦から第二次世界大戦の頃にはよく使用されていたが、現代ではほぼ使われない。

なお読み方の所為で誤解されがちだが「硫酸弾」ではない
バイオハザードシリーズの硫酸弾はアンブレラオリジナルのグレネード弾。



絞り

散弾の広がり方は銃口が薬室側に対してどの程度絞られているかによって変わり、これを「絞り(チョーク)」という。
名称としては 平筒、スキート、モディファイド(半絞り)、フル(全絞) の順で絞られていく。
これによってペレットがしばらく固まって進むようになり、比較的遠距離でも散らないようになる。

2連式のショットガンを用いたクレー射撃では、奥に向かって飛ぶクレーを別々の距離で撃ち落とす必要がある。そのため1発目と2発目で絞りを変える場合がある。



創作物におけるショットガン

現実で広く使われているため出番は多め。
特にゾンビものでは確実にゾンビを仕留められる武器の筆頭であり、なおかつ民間人が持てる武器では最大火力とも言える必需品。
ゾンビ以外でも人外の化物を相手にするときにはよくお呼びがかかる。

日本国内では最も手に入りやすい銃であるため、日本を舞台とした創作(特にホラーやサスペンス)でもよく出てくる。

ゾンビ系以外では石原プロモーション制作の刑事ドラマでおなじみ。
大都会 PARTIII』の主演・渡哲也は途中からショットガンを使うようになり、そのまま『西部警察』に引き継がれた。
西部警察になってからはスコープが装備され、回によってはヘリコプターから地上にいる敵を百発百中で狙撃するというチート無双を見せた。
まぁヘリコプターからという点を無視すれば完全なフィクションというわけではない。事実スコープ付きのショットガンは狩猟用として販売されている。

FPS等の多くのアクションシューティングゲームでも採用。8発バックショットやスラグ弾仕様として再現されることが多い。
至近距離では敵の命と身体を吹き飛ばす凶悪さと引き換えに遠距離では全く役に立たない、という銃器らしからぬ極端な性能になることが多かった。
FPS史ではDOOM IIに登場した伝説の水平2連こと「スーパーショットガン」あたりが近距離特化銃の先駆けとして有名。
最近は銃に関する集合知がネット上でも広まってきたのか、短機関銃よりは散るがカスタマイズでフルチョークにすれば中距離も行ける(あるいは「散り方」が異なる複数のモデルを実装することでそのへんを表現する)、という味付けをされることも。
スラグ弾に関しては中距離でのDMRの代用としてデザインされることもある。

ソードオフ/ソードオフじゃないショットガンを二丁拳銃/二挺拳銃する豪快なスタイルもまれによく見られる。
現実では独立ピストルグリップでないショットガンで肩付けもせず片手撃ちすると腕からすっぽ抜ける。絶対に真似しないように。



余談

  • アメリカのスラングで「ショットガン・マリッジ」というと所謂"できちゃった婚"のことを指す。由来は妊娠した娘の父親が彼氏にショットガンを突きつけて「責任をとれ!」と迫る様から。
  • カードゲームにおいて、手に持ったカードの束から複数の場所に1枚ずつカードを配り、すべての個所に配ったらそれに重ねるようにまたカードを配り……という手順を手元のカードが無くなるまで繰り返し、出来上がった複数のカードの山を1つに纏めるシャッフル方法を「ショットガンシャッフル」(またはディールシャッフル)と言う。
    だが、漫画遊☆戯☆王』で異なるシャッフル方法(リフルシャッフル)をショットガンシャッフルと説明したせいで、日本国内では呼び方に間違った知識を持つ者も(決闘というかTCGのマナーとしては正しく覚えている者含め)多い。『遊☆戯☆王』では(リフルシャッフルの方を)「カードを痛めるぜ」と非難されているが、本来のショットガンシャッフルは極力カードを傷めないことを目的としたシャッフル方法である。
  • アメリカンフットボールには「ショットガン」というフォーメーションがある。レシーバー(パスを受け取る人)を多くし、彼らがプレイ開始と同時に一斉に散らばっていく様を散弾に見立てている。
  • 政治家の麻生太郎はクレー射撃のオリンピック日本代表経験がある。
    ネットミームにおいても、おおむね「漫画」と「クレー射撃」は氏とセットにされていることは多い。
  • アメリカではBB号バードショットと同サイズの弾を使う空気銃が「BB Gun」と呼ばれており、それらで使われる弾*8を特に「BBs」と呼んでいる。
    後に発売元の企業が規格を変え、弾のサイズが変わるとともに商品名も変更したが「BBs」という呼び名は残り続けている模様。
    別の説もいくつかあるため確証はないものの、日本国内の遊戯銃の弾を「BB弾」と呼ぶようになったのはこの「BBs」というスラングに由来する…という説もある。




追記・修正お願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2025年07月28日 20:40

*1 本来ドローンは地上用含め無人機全般を指す言葉である点は留意。

*2 くだんの無人機は前記した小型のものではなく、比較的大型かつ固定翼を持ち、高空を飛ぶタイプのもの

*3 ネット上では「ファルコM410」とか「ファルコ410ST」とか「ファルコ410番」とか「Falco.410」とか呼び方が揺れている。そもそもファルコアームズ社が型番を設定していない模様。

*4 ターミネーター2でT-800がスピンコックしているのがこれのソードオフモデル。

*5 先述の「.410口径のショットガン」として登録される機種もある

*6 黒色火薬を使う古い弾では全真鍮製薬莢を使う場合もある

*7 所謂「お手玉」の様に金属や樹脂の粒が詰まった袋

*8 直径約4.5mmの球形金属弾