ビッグバード・サンダーバード

登録日:2016/3/13 Sun 22:44:56
更新日:2025/02/10 Mon 21:27:15
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概要

アメリカでは、翼開長が数mにも達する巨大な飛行生物の目撃が相次いでいる。
それらは単純にビッグバード、もしくはネイティブアメリカンの伝説から名を取りサンダーバードと呼ばれている。
その姿は巨大なワシのような鳥類型と、中生代に棲息していたプテラノドンのような翼竜型に大別され、
UMAを扱った書籍・ウェブサイトではそのどちらも混同して紹介されることが多い。
しかし本項では翼竜型を敢えて省き、 巨大鳥類型のみに焦点を絞って解説する。
セサミストリートに登場するキャラクターではない。電車の名前でもSF人形劇でもない
だと言われているが、詳細は不明。

形態

翼開長は多くの場合3~4m、時に9~10mに達する大物が目撃されることもある。
テキサス州、イリノイ州、ペンシルバニア州、ミズーリ州、アリゾナ州などアメリカの数多くの州で目撃が確認されている。

ネイティブ・アメリカンの伝説によれば、
サンダーバードは、高貴で全能なる空と超自然界の支配者であり、
空を飛べば雷鳴を招き、その目からは稲妻が走ると言われる伝説上の巨鳥である。
強い精神とリーダーシップを象徴し、優れた長が部族を治める時、祝福のために姿を現すこともあるのだという。

その扱いや伝承は部族によってバラバラであり、
家屋を壊し人間を捕食する恐ろしい怪物として描かれることもあれば、
飢餓に苦しむ部族にで焼けたクジラを丸々一匹運んできてくれるという救世主のような言い伝えも存在する。
内容こそ様々だが、 神のような存在として人々から崇拝され、畏敬の念を集めている
これはどの部族でも共通しているようだ。

歴史文化研究者のジョン・ラッセルによるとミシシッピー上流に住むイリニ族にはシカを鉤爪で捕らえ平然と飛ぶ
「人食い巨鳥ピアソー」の伝説があったそうだ。これもサンダーバードと同一の物であろう。
伝説によればピアソーは何年もの間村人を次々と攫って断崖の洞窟に運んで貪り食った。
何百人もの戦士が、何十年にも渡り入れ替わり立ち替わり退治しようとしたがことごとく失敗。
しかし、イリニの大酋長ワートゴ達の毒矢により、ついに退治された。
彼等はこの恐ろしい事件を後世に残すべく現場の絶壁に書き残す事にしたのだという。
ラッセルはこの伝説が真実か確かめるべく1839年に先住民2人とピアソーが人間を運んだとされる断崖中の洞窟に潜入したところ、
件の壁画とピアソーが人間を喰らっていた巣を発見したそうだ。
彼の報告によれば 「ピアソーが居たという床面は白い人骨でぎっしりと埋め尽くされ、1m程掘っても地面には届かなかった」 という。
ちなみにミシシッピー川の川面から20m近い高さにあり、形は不規則ながらも高さと幅は約6m、奥行きは約9mであった。
その後大変残念なことにこの付近の岸壁は採石場になるなどして、岩絵も1846~47には完全に消滅してしまった。
現在は戦いの現場付近の岸壁に岩絵を復元した看板が吊り下げられているらしい。


以下、文中に「サンダーバード」「ビッグバード」という単語が頻繁に登場するが、
両者の間に特に違いは無いので同じものと捉えてもらって構わない。


小型飛行機ほどもある翼幅


1948年4月、イリノイ州アルトンを中心にビッグバードと思われる謎の巨大鳥の目撃が多発した。
目撃者の証言から大きさや特徴が一致しているため、同一個体の可能性が高い。
主な物を挙げていこう。

  • 4月4日
元陸軍大佐のウォルター・シグムンドがイリノイ州アルトン上空を飛行中に巨大な鳥を目撃した。
翼の差し渡しがグライダーか小型飛行機と見間違えるほど大きかったと話しており、
これに則るとビッグバードの翼開長は少なくとも10m近くはあったということになる。
数日後、農夫のロバート・プライスが同個体と思われる巨鳥を目撃。
その大きさを「飛行機よりも大きな、怪物のような鳥だった」と表現している。

  • 4月10日
イリノイ州オーバーランドに住むクライド・スミスが妻と共に地上から巨大な鳥を目撃。
「最初は飛行機かと思ったが、翼が羽ばたいているのを見て鳥だと分かった」と話している。

  • 4月24日
ビッグバードが再びアルトンの上空に出現。
この時は一般市民や警察官など多数の人間が地上から目撃した。
目撃者の一人E.M.コールマンは「鳥の胴体は魚雷と同じ位の大きさだった」と語っている。

  • 4月26日
イリノイ州からほど近いミズーリ州セントルイスで、
整体外科医のクリスティン・ドレサルが、灰色がかった黒い翼のビッグバードを目撃。
飛行機のすぐ隣を飛んでいたが、程なくして雲の中に姿を隠してしまったという。

  • 5月5日
アーサー・デビッドソンが、アルトンの市街地上空を飛行するビッグバードを目撃。
警察が駆け付けるほどの騒ぎとなった。
さらに同日の夜、セントルイスに住むウィリアム・ストーリング婦人が「家ほどもある巨大な鳥」を目撃。
世間が謎の巨大鳥の話題に関心を向け始めたが、
肝心のビッグバードがこの日を最後に姿を現わさなくなり、目撃事件は終わりを告げた。

情報を纏めると、このビッグバードの翼幅はおよそ10m。
「魚雷と同じくらい」というコールマンの証言から体長だけでも3.5~4mに達すると推測される。
現在飛行できる鳥類の中で最も大きなワタリアホウドリは翼開長3.63mという記録があるが、
アルトンに現れたビッグバードは胴体だけでそれを凌ぐ大きさを持っていたということになる。
小型飛行機ほどもある巨大鳥、その正体は何だったのだろうか?

翼長4mの巨鳥が子供を襲った!


ビッグバードの性質はUMAとしては狂暴な部類に入り、時として人間や動物が襲われることもある。
その一例として1977年7月25日、 ビッグバードが人間の子供を連れ去ろうとする という驚くべき事件が起きた。
場所はイリノイ州ローガン郡のローンディールという町。
午後8時半過ぎ、10歳のマーロン・ロウは友人二人と自宅の庭でかくれんぼをして遊んでいた。
その最中、どこからともなく2羽の巨大な鳥が舞い降り、一羽がロウの背中を掴んだのである。
ロウの悲鳴を聞いた母親のルース夫人が駆け付けた時、巨鳥はロウを持ったまま今にも上空へ飛び立とうとしていた。
夫人が無我夢中で巨鳥の足に飛びつくとロウは解放され、巨鳥はそのまま逃げ去っていった。

ルース夫人の証言によれば、ロウを襲ったビッグバードの翼開長は3~4m、体長も1.3m~1.4mはあったという。
全身真っ黒の羽毛に包まれていたが長い首の周囲に白いリング状の模様があり、
長さ15cmほどのクチバシは先端が鉤のように曲がっていた。
足の指は前面に3本、後面に一本生えており、物を掴みやすそうな形状をしていた。

また、ルース夫人はこうも証言している。
「我が家ではセントバーナード犬を飼っているが、
いつもなら四六時中吠えているはずの犬が 鳥が現れた後からは全く吠えなくなった。
うちのマーロンは身長122㎝、体重25㎏で髪の毛は赤い。
あの事件の起こった後にマーロンを移動した距離を測ってみたらおよそ10mだった。」
つまり、ロウを襲ったビッグバードは 重さ25㎏の物を掴んだまま10mは飛行できる筋力を有していた のである。

もともと猛禽類は捕えた獲物を巣に運ぶ習性のため、物をしっかり掴める指と鋭い鉤爪を持っている。
中でもフィリピンのオウギワシは1990年に7㎏のホエザルを捕えて飛び去ったという記録がある。
オウギワシの体重は平均して5~6kg。自分の体重以上の獲物を掴んで運ぶというだけでも相当に強い筋力の持ち主であることがうかがえるが、
体重25kgの少年を10m近くも運んだ ビッグバードの力には遠く及ばない。

なお、この事件の後日、イリノイ州では同一と見られる巨鳥が相次いで姿を現し、様々な人に目撃された。

  • 7月28日
ドライブ中の大学生ジャネット・フランズが空を舞う2羽の巨鳥を目撃。
更に同日の夕方、マクリーン郡で農家を営むスタンレー・トンプソン夫妻が家に訪れていた友人と共に、
人間ほどの胴体と3mを優に越す翼幅を持った巨大な鳥 を目撃。
彼らの話を聞いた郡保安官のロバート・ボイドは「トンプソンの話は充分に信頼できるものだ」とコメントした。

  • 7月29日
ブルーミントン市在住の郵便配達員ジェイムス・メジャーがやはり同一と見られるビッグバードを目撃している。
この日、メジャーはアーミントンからダラバンにかけての一帯を郵便トラックで回っていた。
ダラバンへ向かう途中、ふと外を眺めたメジャーは目を疑った。
視線の先にある高速道路の遥か上空を、黒々とした羽毛に包まれた巨大な鳥が舞うように飛んでいたのである。
ビッグバードの翼開長は少なくとも3m近く、鋭い鉤爪の付いた足だけでも60cm以上あったという。
丸々とした胴体と一直線に伸びた尻尾があり、一見するとコンドルのように見えた。
ビッグバードは2羽いたが、そのうちの1羽は子豚と思しき小さな獲物を掴んでいたという。

  • 7月30日
ローンディールから南東に130キロほど離れたシェルビービル湖で、
釣りをしていたジョン・ハッファーが、二羽の巨大な鳥を目撃し、写真撮影に成功している。
残念ながら鳥は上空を飛んでいたため、写真には樹木などの大きさを比較できるようなものが写っておらず、
専門家の分析でも具体的な大きさを導き出すことは出来なかったが、
撮影者のハッファーはビッグバードの翼長は3.6m以上あったと証言している。

目撃の歴史

  • 1868年
ミシシッピ州ティッパ―郡の小学校で、校庭にいたジェイミー・ケニーという8歳の少年が巨大なワシに襲われるという事件が発生。
騒ぎに気付いた大人達が表に出た時には、既にワシは 少年を掴んだまま空高く舞い上がっていた。
教師や他の児童たちの叫び声を挙げたのか、掴んでいた少年が暴れたのかは定かではないが、
ワシは騒ぎに驚いたらしく少年を放してしまい、 少年は墜落死 したと報告されている。

  • 1890年4月
アリゾナ州トゥームストーンで、2人のカウボーイが頭上を飛ぶ巨大な鳥を狙撃。
撃ち落とすことに成功し、新聞にも掲載された。

  • 1895年
ウェストバージニア州バーグーで10歳のランディ・ジャンキンスが森の中で行方不明になった。
この当時、地元の新聞が「巨大なワシが出現した」と幾度も報道していたため、攫われたのではないかと言われた。

  • 1897年
ビッグ・クロウと妻がモンタナ州のブラックフィート・インディアン・リザベーションで、
サンダーバードと思しき巨大な鳥を目撃。
首周りに羽根飾りのようなものがあり、頭部は羽毛が無く禿げていたという。

  • 1954年2月27日
グラディス・ビルズと娘が、オレゴン州ヒルズボロで白い光沢のある羽を持ったビッグバードを目撃。
かなりの高高度を、急降下したり、弧を描くように飛んだりしていた。
大きさに関する具体的な報告は無いが、最初はジェット機かと思うほどの巨体だったという。

  • 1957年3月
ペンシルバニア州リノーボに住むハイラム・クランマーが、上空150mを羽ばたくサンダーバードらしき巨鳥を目撃。
翼の差し渡しはおよそ7.5~9mあったという。
このサンダーバードはしばらくこの地域に留まったらしく、3週間にわたって度々目撃された。

  • 1968年7月
デビッド・オルバンズがイリノイ州キーニービルのトウモロコシ畑の上空を飛ぶビッグバードを目撃。
全身をふさふさした白い羽で覆われていたが、頭と首には羽毛が無く、皮膚が剥き出しになっていたという。

  • 1973年3月31日
ペンシルバニア州ライカミング郡のスキー場近くを車で走っていたジョセフ・ケイと妻のワンダが、
上空を道路沿いに飛ぶビッグバードを目撃。
全身真っ黒で、翼をゆっくりと羽ばたかせながら飛んでいた。

  • 2000年7月6日
ペンシルバニア州エリー郡で、ロビン・スウォープが公営墓地から飛び立つ巨大な鳥を目撃。
全身を暗い灰色の羽毛で覆われ、翼の差し渡しは4~5mあったという。

  • 2001年9月25日
ペンシルバニア州グリーンズバーグにサンダーバードが出現。
目撃者のマイク・フェリスによると巨鳥は全身真っ黒で、翼開長はおよそ3~4.5m。
地上から180m以上の上空をゆっくり飛んでいたという。

  • 2005年4月
ネバダ州北西部をセスナ機で飛んでいた男性が、6メートルの巨鳥が飛んでいるのを目撃。地域には「オング」と呼ばれる人面の怪鳥の伝承があるため、この時目撃された鳥は未確認生物愛好家にオングの愛称で呼ばれる。

  • 2009年
ノースダコタ州で、空軍警備員が空を飛ぶ巨大な何かを発見。警備員は当初はハンググライダーかと思ったが、暗視ゴーグルを掛けてみたところ、6メートルほどもある鳥だった。

  • 2013年
バージニア州ニューケントの高速道路で、路上に立つ巨大な鳥の目撃。この鳥は車よりも大きかった。車が鳥に近づいたところ、驚いた鳥はエンジン音より大きな音で羽ばたき飛び去った。

正体の考察

言うまでも無いがビッグバードは空のUMAであり、
湖沼系UMAに立ち塞がる「生息数」や「呼吸」といった課題はほぼ無きに等しい。
また、1948年や1977年では同一と思われる個体の目撃が複数の人間によって証言されており、その信憑性は高い。
よって実在する可能性は未確認生物の中でもかなり高い部類に入る。

目撃者が語るビッグバードの姿はワシやコンドルなどの猛禽類を彷彿させるものである。
そのため、カリフォルニアコンドルやハクトウワシなどの既存の猛禽類を見間違えたものではないかという意見も多い。
しかし、ハクトウワシの姿はその名通りの真っ白な頭部と対照的に黒い胴体のコントラストが非常に目立つため、
飛ぶ姿を他の鳥類と見間違えるような事態が起きる可能性は低い。
カリフォルニアコンドルは、今現在でも 野生個体の個体数がおよそ170羽 *1
レッドリストにも CR(絶滅寸前) に登録されている 超特級の保護希少生物 であるため、目撃したらそれだけで大ニュースである。

もう一つの有名な説として絶滅した古代鳥の生き残り説を挙げる研究者も多い。
その中でも2大有力とされているのが、
800万年前から600万年前に絶滅したとされるアルゲンタヴィスと、
7万年前から1万年前に絶滅したとされるテラトルニスコンドル。
この2種・もしくは近い種類が現在まで子孫を繋いで生きながらえてきたという考察が、
ビッグバードの正体として大多数を占めている。

ただし、これらの超大型コンドルが棲息していた大昔は、
濃度や気流の強さといった大気の仕組みが現在とはかなり違っており、
だからこそあの巨体でも飛行が可能だった、転じて現代では生存できないという主張もあり、
一概に絶滅した鳥類が生き残っていたと断言することは出来ない。

いずれしても、未知なる新種であろうと絶滅種の生き残りであろうと、
ビッグバードの正体が判明した暁には動物学会に大きな衝撃が起きることは間違いないであろう。


追記・修正はビッグバードに背中を掴まれた事のある方がお願いします。

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最終更新:2025年02月10日 21:27

*1 飼育個体を含めると400羽ほど。やはり少ないのは変わらないが。