釈迦如来

登録日:2016/12/18 Sun 18:07:26
更新日:2022/03/16 Wed 22:45:02
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■釈迦如来(しゃかにょらい、しきゃじらい)

『釈迦如来(梵:シャーキ)』は上座部仏教、大乗仏教にて崇拝、信仰されている尊格。
仏教の開祖である仏陀=ゴータマ・シッダールタを思想上の“仏”とした存在である。
梵名のシャーキとは現在のインド・ネパール国境付近で農耕を生業としていた出身部族であるシャカ族の事であり、シャカ族出身の聖者(尊)である事からシャーキャ・ムニ等と呼ばれていた。
これを音写して釈迦牟尼、釈迦と云い、日本では単にお釈迦様、釈尊、世尊と呼び顕す場合が多い。

お釈迦様御自身の人柄や生涯については当該項目及び手塚治虫の『ブッダ』や『聖☆おにいさんを参考。*1

代わりに本項では「仏教の教えの中で、お釈迦様はどういうポジションの人として扱われてるの?」という部分を解説していく。



概要

開祖であるゴータマ・シッダールタ(瞿曇悉達多)を仏教思想上の神をも超越した“仏”であると見なした、仏法凡ての師。
仏教教団が釈尊の示した思想と実践的修行の枠を越えた、宗教的な側面を強めていく中で、釈尊の超人的な部分を教義の拡大に伴い外教*2の宇宙論や世界観も参考に拡大解釈転じて、理念の徹底追及をしていく中で成立していったと考えられる。

上座部仏教では神格化されていった概念で留まり、
生まれ、生まれ、生まれ、生まれて……。死に、死に、死に、死んで……。今生に顕れた久遠実成の師。

大乗仏教では弥勒仏が来るまでの現世の仏(世尊)。
密教や大乗仏教では宗派により大日如来阿弥陀如来と云った他の仏を本尊とする場合もあるが、この場合に於いても釈尊への尊崇が(さき)にあるのは云うまでもない。
大乗仏教では現世=姿婆(サバー)に生きた釈尊を三身仏の内の応身仏*3に当て嵌めるが、釈迦如来は阿弥陀如来や薬師如来と共に報身仏*4として扱う。
これは、一見すると取り柄のない凡夫であっても釈尊と同じく仏性を秘めており、悟りを拓く事により世尊と等しく仏になれると云う仏教思想の発展と大衆化(普遍的価値観への移行)により導かれた思想である。
また、釈尊を生み出したのは釈尊自身が説いた宇宙の真理である法身仏*5であり、法身仏が生み出した宇宙に生きとし生ける物凡ても同じく仏になれるのだ、と云う真理を語っているのである。

如来

元は釈尊の十号(十の呼び名)の一つで“仏”の尊称。
如来(タターガター)とは古代インドに於ける聖人の意であり、仏教では仏陀(ブッダ)と同じ意味で扱われる。*6
大乗仏教に於ける最上位の仏であり、仏その物を指す。
密教思想に於ける三輪身では仏の本来の属性を顕すことから自性輪身と呼ばれる。
如来の前段階となるのが菩提薩埵(菩薩)
菩提樹の下で瞑想を通して解脱した釈尊の姿より生まれた尊格であり、仏が現世に留まってでも衆生を導く決意を顕すことから正法輪身と呼ばれる。
如来の化身や従者となるのが明王(金剛)
古代インドの神や魔の姿を借りた尊格で、仏が自らの身を泥に染めてでも必ず衆生を救おうという決意を顕すことから教令輪身と呼ばれる。
大乗仏教では、基本的にこの如来から明王までが仏として扱われる。

因みに、仏の十号とは①如来 ②応供(阿羅漢) ③正遍知 ④明行足 ⑤善逝 ⑥世間解 ⑦無上士 ⑧調御丈夫 ⑨天人使 ⑩仏世尊で、古代インドの聖人の尊称が仏教にも取り入れられたものである。


仏の三十二相と八十の随形好

元は古代インドに根付いていた相術が仏教に取り入れられたもので、世尊(釈尊)の姿の特徴として当て嵌められた。
仏教では、これこそが縁覚者(ブッダ)の姿であるとして広められ、教団外にまで広く根付いていった。
元は古代インドの理想上の王である転輪聖王(てんりんじょうおう)の姿の説明であったらしい。
御仏が一目で解る位に特異な姿で描かれているのはこの為で、これを合わせて「相好」と云う。

■三十二相の一覧
 1.足の裏が肉付きがよく凹みが無い。
 2.足の裏に千輻輪紋(千の輻を持つ車輪)がある。
 3.手の指が長く細い。
 4.かかとが円で凹みが無い。
 5.足の甲が高く隆起している。
 6.手足が柔軟。
 7.手足の指の間に羅網(水かきのような膜)がある。
 8.脹ら脛が鹿王の様に発達している。
 9.直立して腕を垂らすと手先が膝を越える。
10.男根が体内に隠蔵(馬蔵)されている。
11.体毛が旋回状に生えている。
12.体毛が凡て上に靡いている。
13.皮膚が決め細やかで兜羅綿(ススキの尾花)の様。
14.体毛が金色。
15.身体が豊かで整い清浄。
16.口の中が広く方正(正方形)。
17.頬が方正で獅子王の如し。
18.脛が幅広く滑らか。
19.身体の節が無く五体の調和が完璧。
20.七所(頭頂、肩、掌、足裏)が円で豊か。
21.歯が四十本生えている。
22.歯が緊密に生えている。
23.歯に八重歯や欠けや隙間が無い。
24.四牙(犬歯)が白く大きく清浄。
25.身体が清浄で金色に輝いている。
26.声が梵王(ブラフマン)の様である。
27.舌が幅広で長く柔軟。
28.口にした物が凡て美味になる。
29.眼球が紺青色である。
30.眉、眼、睫が牛王の様。
31.眉間に白毫があり、右旋して輝く。
32.頭頂に肉髻が盛り上がっている。

幾つかの異説もあるが、基本的にはこんな所である。
上記の他、仏法説画に見られる様に垂れ下がった耳朶や並外れた巨体が特徴として挙げられる場合もある。
八十の随形好は人に「いいね!」と思わせる、周囲を幸福な気持ちにさせてくれる吉兆の事。
御仏は居るだけで人々を和ませるのだ。

因みに、後の仏教では釈尊が説法を次々と成功させていったのは世尊が、これらの余りにも特徴的な姿をしていたからだとする説明までされる様になった。……褒めてるようで褒めていないぞ。

釈尊がこうした姿をして生まれて来たのは過去生(前世)にて仏となる修行を積んで来たからだ、とされており、摩耶夫人の右脇から生まれた後に七歩を歩き天地を指して言ったアッゴー、アハム、アスミ、ローカッサ……(天上天下唯我独尊)と宣言した後に天から甘露が降り注いだ説話等とともに釈尊の超人譚として今日にも伝えられている。
これらの特徴は仏像制作に於ける「如来」の基本形ともなっており、法身大日如来を除いては、何れの如来も釈迦如来の姿を基本として顕されている。*7

釈尊の過去生

釈尊が偉大な神通力により語ったとされる自身の前世の物語を「本生譚(ジャータカ)」と云う。
釈尊の前世は善慧(スメーダ)と云うバラモン僧であり、然燈仏(ディーパンカラ)との出逢いにより未来にゴータマ・シッダールタとなる予言を与えられ、布施、持戒、忍辱、精進、決定、知慧、真実、出離、慈、捨の十の波羅密を極めるべく、様々な獣や魔物、人間として転生を繰り返しつつ菩薩として修行を繰り返し、遂に仏となるべく降誕したのだと云う。

上座部仏教ではこの「仏伝」を四つに分けて考察している。

①三阿僧祇修行時代
上記の然燈仏との出逢いから、転生を繰り返して十の波羅密を極める。
②百劫修行時代
仏となるべく、兜卒天で三十二相の業を積む。
この時に弥勒と出逢い共に修行しているが、釈尊の方が優れていた為に最初に降誕したのだとも言われる。
③王城降誕・出家
シッダールタ王子が出家し、菩提樹の下の瞑想で前世の修行を完成させる。
④降魔成道
悟りを得た釈尊は輪廻から解き放たれ、業を断ち切る。
以降、涅槃までの時を十大弟子を初めとした信徒や衆生に仏法を解いて過ごす。

阿僧祇と劫は共に途方も無く永い時間(数)を顕す言葉で、元は古代インド神話~ヒンドゥーに見られる言葉だが、「空」の概念がある仏教では物理的な時間を超越した概念でもあるのか、明確な長さは定められていない。
一説には1阿僧祇=10の56乗とされるのが一般的だが、10の64乗とする意見もある。……永い(確信)。
これを四相と呼ぶが、更に細かく分類して八相と呼ぶ分け方もある。

①降兜卒→②入胎(托胎)→③出胎→④出家→⑤降魔→⑥成道→⑦転法輪→⑧入滅(涅槃)となり、
この内の③は誕生会として4月8日。
この内の⑥は成道会として12月8日。
この内の⑧を涅槃会として2月15日。

……と、八相の場合は、この様に振り分けられている。
日本では伝来したのが大乗仏教であった為か、釈尊の高名に反して大々的に祝われる事はなくクリスマスと比べるとマイナーな印象だが、上座部仏教が伝来したタイやスリランカでは盛大に祝ってもらってくれているそうである。
日本人は潜在的仏教徒であることは間違い無いので、いつかは甘茶でかっぽれしてさしあげる機会を持ちたいものである。

姿

伝承の中の釈尊そのままの姿をしており、再現出来うる限りの相好を備えた仏陀の姿をしている。
結跏趺座して右手施無畏印、左手与願印を見せた姿*8は、他の如来にも当て嵌まる為に通仏相とも呼ばれる。
この他、右手の第二指で地を触る触地印を示す像もあり、これは菩提樹の下で魔羅(マーラ)の欲望を絶ち切った時の姿を顕す。
この他、入滅の様子を顕した涅槃像も多く作られている。
三尊形式では文殊菩薩普賢菩薩の他、梵天帝釈天、薬王菩薩と薬上菩薩、日本には作例が無いが金剛手菩薩と蓮華手菩薩も脇持として配置される例がある。

種字

■バク

真言

■ナウマク・サマンダボダナン・バク


追記修正は悟りを開いてからお願い致します。

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最終更新:2022年03月16日 22:45

*1 ※かなりの脚色あり。まあ、元の仏教経典の時点で多くの伝説が付与されているからだが。

*2 ※特に思想の出発点ともなったインド神話。

*3 ※現実に仏として現れた者。

*4 ※過去の悟り(報い)により既に仏となった者。

*5 ※仏法その物たる仏。華厳経の成立や密教の発展に伴い大日如来を指すようになった。

*6 ※元来は「そのように行きし者」「あのように立派な行いをした人」という語義で、仏教の開祖たる釈尊のみならず、ジャイナ教の開祖であるニガンタ・ナッタプータやその他の仏教誕生当時やそれ以前のインド地域の諸宗教全般に於ける道(修行)を成し遂げた者=成道者=「聖人(ブッダ)」に使われる言葉であった。大乗仏教で云う「如来」という漢訳表現には「人々を救うためにかくの如く来たりし者」という後世の大乗仏教的な見解が潜んでおり、初期仏教に於ける前述の古代インド地域での語義とは乖離がある可能性が指摘される。元になったサンスクリット語はतथागत(tathāgata タターガタ)であり、ひとまず「如 (tathā タター) 」の後に来る語を「去れる (gata ガタ) 」とするか「来れる (āgata アーガタ) 」とするかで“如去”か“如来”と漢訳し分けられる。

*7 つまり、仏となると老若男女みんなこの様な有難い姿になれる訳である、やったぜ。

*8 ※天地魔闘の構えみたいなアレである。