キャプテン・アメリカ/卍帝国の野望

登録日:2018/12/30 Sun 02:42:19
更新日:2023/07/16 Sun 11:51:57
所要時間:約 8 分で読めます




ご存知、キャプテン・アメリカとはMARVEL COMICSを代表する最高のスーパーヒーローである。
その歴史は第二次世界大戦からスタートし、中断時期もあったが現代までマーベルと物語の中心にあり続けている。

もちろん原作漫画だけではなく、アニメやMARVEL.VS.CAPCOMなどのゲーム、そしてキャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャーを始めとするマーベル・シネマティック・ユニバースなどの実写の世界でも偉大なヒーローとして活躍している。

今ではMCUがもっとも人口に膾炙する実写キャプテン・アメリカ像であろうが、当然というべきか他にもすっかり忘れられた実写版は存在する。
コスチュームが死ぬほどダサい79年のTVM『爆走ライダー!超人キャプテン・アメリカ』とその続編『Captain America II: Death Too Soon』などなど

そして、生誕50周年を記念するべく作られた1990年の『キャプテン・アメリカ/(ナチス)帝国の野望(原題:Captain America)』である。
本来の公式のロゴは逆卍で傾いてていわゆるハーケンクロイツなのに注意。よって媒体によっては写らず「帝国の野望」となる。STAR WARS感ありますあります


【概要】

さぞ大作になる……はずだったのだが

  • 製作費は1000万ドル、興行収入は1万ドル*1
  • 詰め込んでたりディテールが雑だったりする展開
  • 安っぽさ丸出しの演出効果。特に合成は笑うしかない
  • 地味すぎるアクション。おかげであんまり強く見えない
  • 劇場公開はなぜかイギリスでひっそり
  • アメリカはビデオスルー。日本版も字幕吹替で存在する。DVD?Blu-ray?あるわけねえだろ*2

安っぽいのは年代のせいもあるが、当時のアメコミ映画と言えば、クリストファー・リーヴの『スーパーマン』やティム・バートンの『バットマン』。
芸術的にも娯楽的にも格落ちは否めない。比較対象がすごすぎるだけかもしれないけど

  • 地味だが悪くはないキャスト
  • 原作には(時たま)忠実
  • (U!S!A!万歳!感凄いが)王道なヒーロー展開
  • 光のキャプテン・アメリカと闇のレッドスカルという対比
  • 時代に置いていかれた超人であることの悲しみ
  • 何気にコミカライズ版(1992刊、ライターはスタン・リー)がある。

などは見どころと言ってよいかもしれない。地味で黒歴史なのは変わりないけどな

監督はB級アクション映画ばっかり作ってるアルバート・ピュン。
脚本はTVMばっかり書いてるスティーヴン・トルキン。
製作総指揮は90年代マーベル映像作品の一部に携わったジョセフ・カラマリとご存知スタン・リー。
製作は80年代のB級映画の重鎮メナヘム・ゴーラン。
音楽はロック・ブルース系のキーボーディストで映画音楽の経験もあるバリー・ゴールドバーグ。


【あらすじ】

1936年。超人兵士を生み出そうとするナチスドイツとファシスト党はイタリア人の天才少年を誘拐し、おぞましい人間改造計画を始める。
1943年。実験を後悔しアメリカに亡命したヴァセリ博士により、対抗するための改造兵士を作り出す計画も始動。「キャプテン・アメリカ」が誕生する
さっそく潜入作戦を実行するキャプテン・アメリカだったが、己と同じ実験で作られた「兄弟」レッドスカルと対峙、敗北してしまう。
ホワイトハウスを狙うロケットに縛られて飛ばされたキャプテン・アメリカは強引に軌道をそらし、アラスカの氷原に激突する。
そして、50年の時が流れた…
突如氷の中から目覚めたキャプテン・アメリカは信じがたい時の流れを体感する。
しかしかつての恋人の暗殺と米大統領誘拐事件に際し、宿敵レッドスカルがいまだに闇社会から世界を狙い続けることを知る。
戦争が生んだ二人の超人の死闘が今始まる!


【登場人物】

  • スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ
(俳優:マット・サリンジャー)
戦死した軍人の息子で、小児まひにより脚に障害持つ。志願して超人兵士となった。この辺は原作に近いか
しかし、あんまりムキムキじゃない上、銃持った一般人に結構苦戦してる辺り超人感が少ない。B級映画としてみればそれなりにこなしてはいるが
アラスカから氷ごと掘り出された後*3自力で破壊して脱出し、徒歩でカナダまで移動した。
恋人からも時代からも取り残された様子は結構切ない。
銃弾を跳ね返すシールドも持っており当たれば壁をも崩す投擲も披露するが、特に細かい設定はない。レッドスカル初戦で基地に置いてきてしまったのに、復活時に持ってることは謎。
酔ったふりをして車から飛び出、運転手が心配して出てきたところを素早く車を奪って逃走するというヒーローらしからぬセコイ特技を2回も披露した。
コスチュームはMCUとは違いピッチリ布っぽく、頭の羽根が再現されている。

  • バーニー・スチュアート
(俳優:キム・ギリンガム)
戦前のスティーブの恋人。
行方不明になった彼を待つつもりだったが、結局はジャックと結婚した。仕方ないとはいえ寝取られ展開である。
50年の時を経たスティーブとの再会は悲しくも暖かいが、サムの巻き添え食ってヴァレンティーナに殺害される。
原作でのペギー・カーターっぽい設定だが、名前は原作80年代のスティーブの恋人バーニー・ローゼンタールから。

  • シャロン・クーパーマン
(俳優:キム・ギリンガム)
バーニーの娘。なのでスティーブが間違うくらいそっくり…って俳優同じだから当たり前か。髪型がさっぱりと現代的。
家族を傷つけられ、スティーブとともにレッドスカルの組織に立ち向かう。
カーチェイスをこなしたりイタリア語を話せたり普通に戦闘出来たりパンピーとは思えぬ優秀さ。
原作のシャロン・カーターにあたるはず。

  • ジャック・クーパーマン
(俳優:ウェイド・プレストン)
シャロンの父でバーニーの夫。
巻き添え食って妻を殺され自分も負傷するが恨み言一つ言わない良い人。

  • トム・キンボール大統領
(俳優:ロニー・コックス、ギャレット・ラトリフ(少年))
アメリカの大統領。
少年期にホワイトハウスの危機を救うキャプテン・アメリカを目撃してヒーローに憧れ、軍人になって活躍したのち議員となった。
軍人出身ではあるが環境問題にも理解があるハト派であり、タカ派やレッドスカルの国際カルテルには目障りな存在。
誘拐されるお姫様ポジションのはずだが、自力で脱出したり普通に敵を殴り飛ばしたり、たまにこっちのほうがヒーローぽい。エアフォース・ワンでやれよ

  • サム・コラウェッツ
(俳優:ネッド・ビーティ、トマス・ビーティ(少年))
ワシントン・ポストの記者。
少年期はトムの親友でヒーローオタク。
レッドスカルの情報を求め、帰還したキャプテン・アメリカに接触するが車をパクられる。
その後、彼を探してバーニーの家を訪ねていくのをヴァレンティーナたちに察知・襲撃され、殺害される。

  • フレミング将軍
(俳優:ダレン・マクギャビン、ビル・ミューミィ(青年))
アメリカ側の人間改造計画に立ち合い、後にキンボール大統領と対立するタカ派の将軍となる軍人。
軍事産業と結びつくレッドスカルの一味でもある裏切り者。

  • ルイス大佐
(俳優:マイケル・ヌーリー)
アメリカ側の人間改造計画の責任者である軍人。ちょび髭
「キャプテン・アメリカ」の名づけ親。
しかし、ダイナーの下に実験室を作るというのはどうかと思うぞ。

  • マリア・ヴァセリ博士
(俳優:カレラ・カッソーラ)
ナチスドイツとファシスト党の下で超人兵士を誕生させる実験を主導したイタリアの女性科学者。
しかし子供を犠牲にする罪深さに後悔し、アメリカに亡命して対抗するための新たなる人間改造計画を始めるも、ナチスの襲撃で死亡する。
なお、本作でのキャプテン・アメリカののコスチュームは彼女の好みという設定。どんなセンスだ

  • タツィオ・ディサンティス/レッドスカル
(俳優:スコット・ポーリン、マッシミリオ・マッシーニ(少年))
原作ではドイツ人だが本作では名前と設定ごとイタリア人ぽく変更。
天才の素質を持っていたがゆえに家族を皆殺しにされ誘拐された挙句に顔面真っ赤な超人兵士に改造される。鼻のある梅干し顔。
キャップとの初戦では圧倒するが、ロケットを飛ばす際に左手を捕まえられ、切り落とす羽目になる*4
その後イタリアを本拠として闇の国際カルテルを築き、軍事産業界を裏から支配する。この時期は整形顔でオールバックでスーツ姿のおじさんとなる
キンボール大統領の体を乗っ取ろうと画策し、再びキャップと対峙する。
世界そのものへの憎悪の根底に、運命への悲しみと同じ力を持つスティーブを「弟」と呼ぶ共感がある…というのはレッドスカルにしては珍しい設定かもしれない。
ピアノの前に佇むシーンはちょっと感動する。

  • ヴァレンティーナ・ディサンティス
(俳優:フランチェスカ・ネリ)
レッドスカルの娘にして部下。
バーニーを殺害するなど非道なのは確かだが、アジトの住所入りの身分証を落としたりパンピーのシャロンと戦闘が互角だったりとポンコツ感は否めない。
父親からは厳格な接し方をされているが、最期まで忠実に側にあり続けた。呼び方はパパ
原作でのシンにあたるがレッドスカル同様名前ごとイタリア人ぽく変更。英語版のアメコミ関係Wikiでは一応派生扱いにはなっている。


【余談】

ロケットの上のキャップが何者かトム少年とサム少年が話し合う際に「サブマリナーでもヒューマントーチでもない」とかいう一節がある。
日本語版ではうまく翻訳されてないがキャプテン・アメリカとともにゴールデン・エイジから存在する
マーベルの海の帝王海パンマンネイモア・ザ・サブマリナー、ファンタスティック・フォーのほうの名前のパクリ元である燃えるロボ、ヒューマントーチ
のことだとすると、この世界には他にもヒーローがいる可能性が…?ないわな

日本では前述の通りVHSのみ発売されている。
2020年1月にはファン待望(?)のBlu-ray&DVDが『キャプテン・アメリカ レッド・スカルの野望』の題でリリースされる予定であったが、
2019年11月に発売中止がアナウンスされる残念な結果に終わってしまった。
関係者の2年後のTweetで、現在ディズニーに移ってるはずの本作のライセンスを以前の権利者が間違えて販売してしまったためと判明した。ディズニーさんが再び商品化する気あるかは定かではない。


追記・修正は車をパクってからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 映画
  • 洋画
  • キャプテン・アメリカ
  • MARVEL
  • アメコミ
  • アメリカ
  • イタリア
  • 黒歴史
  • B級映画
  • レッドスカル
  • アルバート・ピュン
  • ヒーロー
  • Earth_697064
  • 卍帝国の野望

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年07月16日 11:51

*1 ちなみに1989年のバットマンは製作費3500万ドルで興行収入は4億ドル

*2 動画配信はしれっとある

*3 若干遊星からの物体Xっぽく

*4 キャップの手を斬れば?とか言ってやるな