SCP-2700-EX

登録日:2019/11/09 (曜日) 18:54:23
更新日:2024/05/01 Wed 04:41:34
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SCP-2700-EXは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCiP)である。
オブジェクトクラスは「Keter」。

…だったのだが、後述する事件により「Explained」に変更されている。

Explainedって?


詳しくはオブジェクトクラス(SCP Foundation)の項目に詳しいが、「Explained」は、主に「すでに異常性が現代科学で説明できるものになった」もしくは「そもそも異常性がなかった」、或いは「異常性が広がりすぎてもはやSCPとは呼べなくなった」オブジェクトに付けられるクラスである。

SCP-2700-EXの場合は…後述する。

-EX指定以前の概要


SCP-2700は、感染症である。他の感染系オブジェクトの例に洩れず、その感染性は尋常でなく高く、更に死亡することもある恐ろしいものとなっている。

主に女性に感染するが、男性にも感染することが知られており、女性への感染率は男性への物と比べると100倍近くとなっており、より警戒が必要とされる。

生物の細胞には一つ一つ寿命があり、この寿命が尽きると細胞は自壊してしまうのだが、SCP-2700はこのプロセスを破壊してしまうのだ。すなわち、SCP-2700に感染した宿主の細胞は、異常に分裂を続ける。

そうして引き起こされる症状の例は、

  • 軽度~重度の皮膚異常
  • 感染部位の痛み・腫れ
  • 周辺組織の破壊
  • 感染部位の転移


という感じ。治療を怠った場合、全身の細胞が壊死して死に至る可能性があり、早急な対処・研究が行われる必要がある。

これだけなら検疫と処分でどうにかなりそうだが(十分たちが悪いが)、ここで絶望的な事実がひとつ。

研究結果によると、なんと全世界の女性の内約12.5%がSCP-2700に感染している可能性がある。そりゃあKeterなわけだ。こんなオブジェクトどうやって収容しろというんだ。

収容手順


というわけで、現在財団ではSCP-2700の感染を少しでも食い止められるよう、財団職員を医療機関に配備している。入院届け出の原因がSCP-2700だった場合、感染者は即座に隔離され、同居している人物にも検疫が行われる。

感染していない人は記憶処理を施されて解放されるが、感染者はサイト-12に隔離される。

男性に感染する確率が(女性と比べてだけど)非常に低いことから、SCP-2700に使われる職員は全て男性となっている。それでも危険と隣り合わせのため、割り当てられる職員は最小数にとどめる。勿論、入退出の管理も徹底されている。

現在進行形で、研究はハロルド・ペリー研究員の指導の下進んでいる。果たして、SCP-2700の脅威がなくなる日は来るのだろうか。

追記・修正はSCP-2700に感染していない人がお願いします。

















































嘘を隠すのに最適な場所は、真実の中である。





   *   *
 *   +嘘です
  n ∧_∧ n
+ (ヨ(*´∀`)E)
  Y   Y  *

もう何回この↑AAを見ただろうか。

このSCiP、ひとつ重大な秘密を抱えている。

率直に言おう。

SCP-2700などという感染症は存在しない。


では何なのか。これには、先ほどのハロルド・ペリー研究員…いや、”元”研究員の私事情が深く絡んでいる。

職務違反の物証:Harold Perry


ハロルド・ペリー元研究員は、SCP-2700の研究の際、多数のDクラス職員を消費している。全女性の内約八分の一が感染していると推定されているのなら、SCP-2700に感染しているDクラスを見つけ出すのも容易なはずである。或いは、SCP-2700に感染していると分かった時点でDクラスと見做していたのかもしれない。

そのうち、鍵を握るのは、D-2994という職員である。

EC-3(財団倫理委員会幹部と思われる)がまとめた研究記録や監視映像、電子メールが残っている。いくつか抜粋する。

2015/01/17 研究記録 新しいDクラスの被検体を発見した。私たちの用意した新たな検出手順はますます正確さを増している。(略)
2015/01/27 研究記録 D-2990が死亡した。それが何であれ、とても悲しいことだ。(略)

SCP-2700を見つけ出すことは容易になっても、治療法は見つからない。ペリー研究員は歯がゆさを覚えただろう。

2015/02/04 研究記録 D-2994の容態が思わしくない。他の作業を継続しつつ、彼女の延命を試みる。

ここで初めてD-2994について言及される。

10日後の監視記録では、赤いハート型の箱を持って医療棟に入るペリー研究員の姿が確認されている。誰かへのプレゼントだろうか。

2015/03/18 電子メール Dr.██████、私たちは非常に感染性の高い異常疾患の解明に取り組んでいます。研究の有効性を確認するため、SCP-████とのクロステストを要求します。
2015/03/20 電子メール 確かにそうだね、Harold。それじゃあ明日君の所へ持っていこう。お互い仕事を頑張ろう!

他のSCiPとクロステストさせることは(少なくとも当時は)さかんに行われている。この実験でSCP-2700に関する研究は進んだかと言えば、

2015/03/22 研究記録 SCP-████による治療はD-3077に対して例外的に不十分だったようだ。遺体は処分した。SCP-████はサイト-██に返却する。D-2994は安定しているようだが、彼女は衰弱しているように見える。

そういうわけでもなかった。また一人、Dクラスが死亡した。さらに、D-2994の病状も着実に進行している。

2015/04/15 研究記録 D-3157は治療サイクルλが上手い事作用していたが、快癒には至らなかった。遺体は処分した。D-2994の体調が急速に悪化している。

もうお手上げなんじゃねぇのこれ?
そしてやたら言及されているD-2994は危篤寸前らしい。

2015/04/15 電子メール Dr. █████████、私たちは非常に感染性の高い異常疾患の解明に取り組んでいます。研究の有効性を確認するため、SCP-███とのクロステストを要求します。
2015/04/15 電子メール 要求を却下する。

その日のうちにペリー研究員はとあるSCiPとのクロステストを要求した。
ここで研究員が借りようとしたSCiPが何なのかは後で明かすが、許可は下りなかったようだ。

2015/04/24 研究記録 (略)D-3302には治療サイクルXiがかなりうまく作用している。彼女の腫瘍は縮小しているように見える(中略)これはいけるかもしれない。

有効な治療法が見つかったと喜んでいたのもつかの間。翌月、とうとうペリー研究員がおかしくなった。

2015/05/05 研究記録 (注釈:この手書きの文書は、他の記録と比較すると明らかに乱雑で安定を欠いています) D-3302が死んだ。彼女はうまくいっているように見えたのに…ちくしょう!最先端の技術とアノマリーのリバースエンジニアリングをつぎ込んだのに、一体何が足りないんだ?モニカにはもう時間がない
俺はどうすればいい

この二日後、とうとう事件発生。

何と、先ほど許可されなかったSCiPを盗み出そうとして、機動部隊に制圧されてしまったのである。

当然、彼は拘束された。

真相


結局SCP-2700…いや、SCP-2700-EXは何だったのか。

実は、SCP-2700-EXの正体は、何の感染性も持たない、ただの乳癌である。

「全世界の女性の内約12.5%がSCP-2700に感染している可能性がある」、という説明は、乳癌の患者数を元に作った虚偽の報告であり、症状の部分も少し大げさに書いたものである。

後は、感染性が高い、という部分を捏造して、それらしい報告書を書けば完成である。

しかして何故、ペリー研究員はこのようなことを行ったのか。

さっきからしきりに出ているD-2994という名前。

実はこの人、ペリー研究員の妻である。研究記録の途中に出てきた「モニカ」という人物とも同一人物である。

彼は彼女を救いたいがために、彼女が罹っていた何の変哲もない乳癌をSCiPとして申請、収容し、何人ものDクラスを犠牲にし(あるいはただ乳癌で入院しようとした人を実験台として使い)、オブジェクトを悪用した。

クロステスト申請が下りなかったオブジェクトの正体は、SCP-500である。
確かに、あの万能薬を使えば、乳癌なんて容易に治るだろう。こんなことのために残り数の少ない貴重な錠剤を使うとは思えないが。

ペリー研究員の処分は、最も重くても「記憶を消したうえでフロント企業に左遷」という形になるだろう。報告書執筆時点ではある医療サイトで拘束されている。D-2994もといモニカに関しては…察してください。少なくとも研究員の記憶内からは消え去ることになる。

まとめと余談


まとめると、このオブジェクトは
「乳癌を患った妻を救うために」
「一人の研究員が」
「異常性をでっち上げたExplainedオブジェクト」
ということである。

最初のExplainedの分類に当てはめるなら、「そもそも異常性がなかった」が正しい。

メタタイトルは「愛のための行為に悔いは無い」である。なんとも皮肉が効いている。

ところで、原文の最後に言及されている「チェリーピック」であるが、現実の科学研究でも起こり得る事である。これは、自分の研究にとって出したい結論と合致する良いデータのみを抜き出して論文などにまとめる行為を指す。ただし、もちろんペリー研究員のように分かってチェリーピックを行っている場合もあるが、実際は研究者自身も気づかずに行っている場合がほとんどであり、これを防ぐ為、別の実験を並行して行い結果が同じである事を示すのが、現在では科学論文での結果を書く為の最低条件となっている。

追記・修正は、恋人の為ならすべて犠牲にできる人がお願いします。



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最終更新:2024年05月01日 04:41