恋の迷い子(アナと雪の女王2)

登録日:2019/12/04 (水曜日) 02:51:28
更新日:2019/12/08 Sun 15:11:38
所要時間:約4分で読めます





恋って難しいな
スヴェン、なぜだろう?

いま感じてること
その気持ちが本物だ
おいクリストフ、ためらうな


概要

『恋の迷い子(原題:Lost in the Woods)』とは、ディズニー映画『アナと雪の女王2』の劇中歌である。作曲はロバート・ロペス&クリステン・アンダーソン=ロペス夫妻。
歌うのは足が四角く、不潔じゃないのに少し臭くて、森で立小便してて、髪の毛が男らしくないけど誰よりも優しい男、クリストフ。(原語版CVはジョナサン・グロフ、吹き替え版CVは原慎一郎)。また、エンディングのスタッフロールでは『イントゥ・ジ・アンノウン』、『魔法の川の子守唄』に続いて3曲目にウィザーの歌うバージョンが流れる。

前作でクリストフは『トナカイのほうがずっといい』という曲を歌っていたものの、演奏時間が50秒というこじんまりとした曲でいまいち扱いが小さかったのだが、この曲は演奏時間3分の気合の入ったラブソングとなっている。

『Let it Go』で社会現象を巻き起こした前作に勝るとも劣らない数々の楽曲が流れる『アナ雪2』だが、ひときわ異彩を放つこの曲は「クリストフのMV」「ボヘミアン・ラプソディが頭に浮かんだ」と映画を観た多くの観客を動揺させた。



曲について

この曲が流れるのは映画の中盤あたり。アレンデール王国で起こった異変と、映画の主役エルサに聞こえる謎の声の秘密を追ってエルサと妹のアナ、そして喋る雪だるまオラフが北へ向かうなか、魔法の森に暮らす青年ライダーにアナへのプロポーズの相談に乗ってもらっていたクリストフはひとり置いてけぼりを食らってしまう。

…彼の名誉のために言っておくが、こんな事態になったのは明け方に出発する約束だったのにエルサが夜のうちに「もう行かなきゃ」と出発を決めてしまったせいである。集合時刻は守ろう。

姉であるエルサを案じて先に進む恋人アナへのすれちがう想いを抱きながら相棒のトナカイ、スヴェンに「恋って難しいな」と問いかけ、項目の冒頭の流れ(『トナカイのほうがずっといい ~恋愛編~』)から曲が始まる。

すると突然イントロから『アナ雪』らしからぬギターが鳴り響き、甘く切ないメロディに乗って「一人で また取り残された」「どの道を君は選んだろう」「追いかけるのは俺だけ、君の背中が遠く見えるよ」「生まれて初めて迷子のよう」「君を求めて森をさまよう、道が見つからない」「君の愛がなければなんのために生きる 俺は」とクリストフはアナへの想いを爽やかに熱唱する

原語版CVのジョナサン・グロフはアメリカの人気テレビドラマ『glee/グリー』でジェシー役を演じた実力派歌手件俳優であり、吹き替え版CVはの原慎一郎は元劇団四季で『ライオンキング』のシンバ役も演じている。両者共に一流の歌唱力の持ち主であり歌はいいのだ、歌は

問題は演出である。
曲が進むとクリストフの顔アップが画面いっぱいに映し出されるわ、森の木から彼の分身が飛び出して歌い、唐突に前作のアナとクリストフの回想シーンが入り、クリストフは触れると消えてしまうアナの幻を追い続ける。そして挙句の果てにはクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』みたくクリストフと何匹ものトナカイの顔が浮き出てコーラスをする。
この80年代ミュージックビデオを彷彿とさせる狂気の3分間は観客を困惑させると同時に、大人を爆笑の渦に巻き込んだ。

この曲に対してアナ役のクリステン・ベルは「この映画でベスト3に入る」、オラフ役のジョシュ・ギャッドは「ディズニーアニメーション史上、もっとも笑える曲」と絶賛した。褒めてるのだろうか。


曲の制作背景

さて、そもそもどうしてこの曲はこのようなトチ狂ったテイストで作られたのか。
映画の作曲者と監督の共同作業の中で数々のアイデアの候補が浮かぶ中で、自らの内面をクリストフという男にどうやって歌わせればいいのか、ということでヒントになったのがボン・ジョヴィやシカゴ、リチャードマークスの歌うパワーバラードで、最終的に「80年代ロックバラード」というコンセプトが採用されたという。

この曲に対してクリストフ役のジョナサン・グロフは当初「正直、こんな曲が来るなんて予想してなかった」と困惑したという。そして「最終的には絶対カットされるだろうな」と思っていたという。
しかし同時に彼は「映画に残ったことに感激している」と絶賛し、「この曲はクリストフの男だけれども、傷つきやすい感情を歌っている」とコメントしている。

ちなみにジョナサンはクリストフのボーカルだけではなく、前述のトナカイたちのコーラスも担当しており、合計18種類の歌をレコーディングしたという。


この曲のアニメーション、もといミュージックビデオを製作するにあたり、製作陣は80年代のミュージックビデオを研究したという。
製作中、ストーリーボード(いわゆる絵コンテのようなもの)のアーティストはノリノリで作業にあたり、製作過程ではクリストフが側転していたり、シャツを破いていたりまでしていたという。
アニメーターのひとり、ジャスティン・スクラ―曰く、「最終的にはクレイジーに仕上がったけど、最初ほどクレイジーではないですね」とのこと。それはそれで観てみたかった気もする。

とはいえ、「どれだけ他のシーンから浮いていても、クリストフ自身は真面目でなければならない」ということで、笑えるものでありつつクリストフのキャラクターを崩さないよう、その調整には長い時間を費やしたという。

また、作曲者のひとりクリステン・アンダーソンは、今この曲を歌うことにはただのジョークにとどまらない意義があると推察しており、女性の観客に力を与える作品といわれる『アナ雪』だが、この曲で少年の観客にも力を与えることになるのではないか、彼らが自分の気持ちに自信が持てるようになるのではないかと語っている。


一見(一聴?)、ただのおふざけに思えるこの曲だが、クリストフの男らしくもどこか脆い内面を歌った、恋する少年たちを勇気づける一曲でもあるとも言えるだろう。


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