デビルリバース(北斗の拳)

登録日:2025/10/13 Mon 14:56:05
更新日:2025/10/13 Mon 16:30:32NEW!
所要時間:約 12 分で読めます




「暗い……なぜ…なぜ閉じこめる…」
「光…………光くれ~!!」


「おまえか!? おまえか~~閉じこめたのは!?」

デビルリバースとは、武論尊・原哲夫の漫画『北斗の拳』の登場人物である。

CV:/蟹江栄司(旧アニメ版)/今村直樹(ゲーム『世紀末救世主伝説』)/稲田徹(『真・北斗無双』)/茅野愛衣(『DD北斗の拳2』)


【概要】

登場はジャッカル編の終盤であり、ジャッカル編におけるラスボスの立ち位置。旧アニメでは第13話「羅漢仁王拳!動き出したらもう止まらない!!」に登場。
かつて凶悪犯ばかりを投獄していたという「ビレニィプリズン」の中でも、最深部に幽閉されていた凶悪な殺人犯である。
ジャッカル編におけるメインヴィラン・ジャッカルはかつてそこの囚人であり、最終戦争で文明崩壊後はそこを拠点に部下たちと野盗として活動していた。

主人公のケンシロウとは何ら因縁のない存在なのだが、バットの村を襲撃したことでケンシロウの怒りを買ったジャッカルは、その怪物的な強さに対し「悪魔を倒すには悪魔だ!!」という発想から、切り札として封印を解き放つことになる。

なお、後述の通り「デビルリバース」は「悪魔の化身」という意味の通称・称号であり、本名は不明。劇中では単に「デビル」と呼ばれることもある。


【人物】


「過去七〇〇人を殺し 死刑執行されること十三回!!」
「だが そのことごとくを生きのびた!!」
「電気椅子も絞首台も無用 最終判決懲役二〇〇年!!」

一発で常識離れした怪物だということが伝わる上記のフレーズが印象に残っている読者も多いことであろう。
その独房は地底深く、特に厳重な扉で封印されており、2人の見張りによって鍵が管理されていた。
そしてジャッカルが鍵を開け、幾度もの爆発の末に出てきた姿は……

デカい。

とんでもなくデカい。

ありえないぐらいデカい。


それまでのコマからケンシロウと大差ない程度の長身と思われるジャッカルを片手で掴み上げるほどの巨体は、もはや怪獣の領域。
『北斗の拳』は演出として実際の設定の背丈よりも誇張して巨大に描くキャラがかなりいる*1のだが、デビルはその中でも極端に一際巨大で、そもそも演出じゃなく本当にそれほどデカい設定としか思えないのである。
「まさに悪魔だな…」*2
「デビルと言えば巨体」という代名詞的巨体だが、北斗世界基準で考えても異常なので、後年の派生作品では理由付けが用意されることもある。

容姿はこれに合うほどのサイズとなると何の動物かは知らないが毛皮製と思しきブーツと腰巻を身に着け、上半身は裸で胸にはいくつもの翼を持つ虫かあるいは角の生えた悪魔のような左右対称の刺青が入っている。
長い幽閉生活の影響で爪と髭は伸び、髪は前頭部から頭頂部までは禿げていて、側頭部と後頭部はボサボサに伸びるという落ち武者のような風貌となっている。
一方、幽閉されていた割に体つき自体はそれほどやせ細っておらず、プロレスラーや力士を思わせるほどの筋肉を備えた体格を有している。後述の拳法の奥義に衰えを防ぐものでもあったのだろうか。
旧アニメ版では髪の毛が緑色になり、日光に当たらなかった影響という表現なのか肌が薄い青紫色で塗られており、より怪物然とした風貌となっていた。
後のメディアでもゲーム『世紀末救世主伝説』やパチンコ・パチスロなどではこの色で表現されるが、『北斗無双』では汚れたような褐色の肌にされている。

自分を閉じこめた者への怒りを抱えて長く幽閉されたためか、精神が崩壊してしまっているようで、項目冒頭のようにたどたどしいしゃべり方をしている。
とんでもない凶悪犯なのは間違いないはずなのだが、母親のことは「マザー」と呼んで慕っており、ジャッカルはそこに付け込んで肉親と偽ることで彼を手懐けた。ある意味哀しい悪役である。
母については写真しか出てきていないが、ジャッカル曰く「どんなに悪事をかさねてもいつもかばってくれた」とのことで、それが本当なら慈愛に満ちた人だったのだろうと推測される。


【作中での活躍】

上記の通り、追い込まれたジャッカルがケンシロウにぶつけようとし、おびえる門番の片方がカギを飲み込んだのを切り殺して強引に体内から取り出すなどのいざこざを経て、解放。
アニメ版ではジャッカルがKING配下となっていることから、KING幹部のジョーカーによりケンシロウ撃破のための切り札として解放するよう指示されてのことになり、後述のロケットもジョーカーが渡したものとなった。

当初はジャッカルを自分を閉じこめた本人と誤解するが、ジャッカルは囚人時代に経緯は不明ながらデビルの母の写真入りロケットをくすねており、それをちらつかせて「おれはおまえの兄だ」と偽り説得*3
涙を流してデビルに訴えかける名演技(ケンシロウ談)から、さらにグレネードで天井を破壊、デビルに光を見せたことでジャッカルが兄ということに納得したデビルは、続けて現れたケンシロウこそがここに閉じ込めた張本人と騙され、対決することになる*4

瓦礫を投げつけられ、それを回避してジャンプからの回し蹴りを放つケンシロウだが、なんとデビルは片手でそれを受け止め、ケンシロウもこれには「な!?」と驚愕する
さらに勢いよく投げられ、天井を突き抜けて地上(球場のような競技場となっている)に飛ばされ吐血するほどのダメージを負うケンシロウ。

「は 速い そしてこの身のこなし! やつは一体……」

投げ飛ばしたケンシロウを追いかけて飛び上がってきたデビルは、そこで構えをとる。
デビルはただ巨体なだけではなく、「羅漢仁王拳」の伝承者だったのだ。


「ワハハハハ いくら巨体怪力の人間であろうと七〇〇人は殺せない」
「懲役二〇〇年の悪魔の化身(デビルリバース)の名はその拳法の称号だ!!」

葉巻を吸いながら勝ち誇るジャッカルだが、ケンシロウがそれで臆するはずもない。


「よかろう 仁王拳が悪魔(デビル)化身(リバース)なら 北斗神拳は……」
闘神(インドラ)化身(リバース)であることを教えてやろう!!」

仁王拳に対抗するべくケンシロウは常人が30%使えるだけの人間の潜在能力を100%引き出す奥義「転龍呼吸法」を発動、上着を吹き飛ばすほど筋肉を増強させる。
対応してデビルもまたジャッカルの指示に従い、風圧を自在に操る仁王拳の奥義「風殺金剛拳」を放ち、ケンシロウを壁まで吹き飛ばした。

もはや敵なしとジャッカルはデビルを引き連れ再度バットの村の水を奪おうとするが、ケンシロウは全くの無傷で立ち上がる。
そしてジャンプするケンシロウを両手で挟み込んで潰そうとするデビルだが、ケンシロウは内側から手を突き破って脱出し、頭から腹部にかけて北斗七星形に並ぶ秘孔を突きすべての肋骨を内側にへし折る「北斗七死星点」を食らってしまう。
倒れる際の悲鳴は原作では「いっ!! おお!!」、アニメでは「ひぃ~でぇ~ぶぅ~!!」

こうして倒れたデビルを見て、ジャッカルはケンシロウに「あ…あなたは救世主!! よ…よくぞこの悪魔を倒してくれた! これで世の民は救われる!!」熱い手のひら返し。
当然に「そいつはお前の弟じゃなかったのか!?」とツッコまれるが「じ…冗談じゃねえ! こんなバケモノ!!」とあっさり見捨てるのだった。

だが巨体故のタフさかデビルはまだ息絶えておらず、しかしジャッカルの暴言は耳に届いてなかったようで、ジャッカルをなおも「アニキ」と慕い、助けを求めて掴み上げる。
もはや息も絶え絶えのデビルには兄というのは嘘だという言葉も届かず、ジャッカルはケンシロウに助けを求めるが、ド外道のジャッカルをケンシロウが助けるはずもない。
「得意の芝居でもう一度説得してみるんだな」ジャッカルのダイナマイトを引き抜いて点火、その場に放置して去ったのである。
ジャッカルはデビルを説得できるはずがなく、「あろ!!」の断末魔と共に兄弟仲良く吹き飛んで死亡した*5

「やつらのために祈る言葉はない……」


【戦闘能力】

作中で示された通り古代インドの殺人拳「羅漢仁王拳」の使い手。

作中の説明*6によると「五千年の歴史を誇る」「その破壊力は無限大だがあまりに獰猛すぎて時の皇帝により禁じ手とされ伝承者はいなくなったとされる」という、恐るべき拳法。
何しろ主人公のケンシロウが使う北斗神拳の歴史は千八百年とも二千年とも言われるが、歴史だけで言えばそれを上回るという凄まじい背景の持ち主なのである。

失われている拳法のはずなのに、デビルがいかなる経緯でこれを習得したのか、そしてそれのことをケンシロウが何故知っていたのかは謎。
前者はともかく、後者は北斗神拳の性格から、失われる前に先代の北斗神拳伝承者が仁王拳の使い手と対決しその内容を後世に伝えていた、という可能性が高いか。

その奥義は「風圧を自在に操る」というもので、劇中に登場し明確に名のある技は「風殺金剛拳」のみ。
原作・旧アニメでは猛風によりケンシロウを吹き飛ばす程度の描写であるが、ゲーム作品では竜巻を起こすという描写にされている。
デビルほどの巨体が自然災害級の事象を引き起こすとなれば、数百人という人間を殺す残忍獰猛な殺人拳という評価も納得だろう。

だが劇中ではケンシロウがその力を早くに脅威と認識し、自らも奥義を以て臨んでいたためか、最初は多少のダメージこそ与えたもののその程度で終ってしまい、最終的にはあっさりと敗れ去ってしまった。
五千年の歴史を持ちつつも伝承者が失われたために発達しなかった仁王拳では戦場で強くなる北斗神拳に対抗できなかったのだろう。
またデビルは上記の通り憎しみで精神が壊れている状態なので、精神状態が全盛期ならもっと強かったのかもしれない。

何にせよ、その規格外の巨体から拳法抜きにしても並の兵器や小手先だけの一芸的な拳法家は対抗できそうにもなく、加えて扱う拳のスケールの大きさも相まって、デビルは宿命の星を持たない拳士の中では最強争いできる位置に属するのではと見る読者は多い。
章のボスとはいえ2話(旧アニメ版では1話分)の出番しかない敵ながら、恐ろしい存在感を見せつけたと言えよう。


【外伝等での扱い】

蒼黒の餓狼 ー北斗の拳 レイ外伝ー』では某国の科学者たちが遺伝子操作で生み出した生命体として彼らしき姿が描かれた。
確かにそうと考えればあの巨体は納得だが……。

また、『北斗の拳 イチゴ味』単行本9巻には雑魚敵等を題材にした外伝シリーズ『外道伝』の一作として『デビルリバース外道伝 リバース サイド デビル』という、彼を題材にした作品が収録された。
こちらではビレニィプリズンが牢獄ではなく軍の研究施設となっており、デビルの正体は数千年前の南米古代文明が魔術や医学を駆使して生み出したもので、何度も休眠と復活を繰り返して文明を滅ぼしつつ生きてきた伝説の巨人ということにされていた。
「羅漢仁王拳を習得したのは失われる前から生きているから」「言葉がたどたどしいのはそもそも日本人じゃないから」などと考えればいろいろと説明はつくが、それだとビレニィプリズンにジャッカルが囚われていたのは何なのかとか「マザー」は何者なのかとか新たな疑問が浮かぶのが困りもの。
まあ外道伝シリーズ自体、ほとんどネタみたいな作品群なので気にしない方がいいのかもしれない

DD北斗の拳』の漫画版では巨体のままサラリーマンとして働いている。パソコンを爪で操作するなど意外に器用。
アニメ第1期ではOPのみの登場だが、第2期ではなんと女性化した

北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝』ではジード役のプロレスラー・木村正がメイクを新たに再度出演という形で登場*7
当初は通常の人間サイズを想定していたが、これまでのはっちゃけっぷりのせいで迫力が足りなく感じてしまい、そこで昔の映画企画のために作られた巨大なゴリラ人形を活用することが発案され、超巨大なデビルが誕生する……という経緯で描かれた。

ゲーム『北斗が如く』では第二章のボスとして登場。こちらではエデン地下牢の囚人となっている。
原作通りケンシロウに北斗七死星点を食らって敗れるが、こちらではとどめを刺されず生存し、改心して復興のために働くという形で救済されることになった。


【余談】

空想科学読本シリーズの柳田理科雄氏は『空想科学[漫画]読本』第1巻でデビルについて考察している。
そこでは以下の考察結果から「科学的に強い」という高評価を下していた。


その強さから柳田は「ケンシロウは劇中のように跳ぶよりも、小ささを活かして足元に潜り込んで戦う方が確実」としているのだが、そんなのお構いなしに正面から勝利したことについて「真に恐るべきは北斗神拳、科学を超越したその強さ」とさらに珍しく全肯定の高評価を繰り出している。

劇中では猛烈な悪人扱いだが、上記の通り仁王拳を始めとした彼の生い立ちには謎が多い。
十三回の死刑執行が通用しなかったとのことだが、そもそもこの巨人をどうやって逮捕して裁判にかけたのか、投獄後もこれほどの巨体と怪力と優れた拳才の持ち主が大人しく幽閉されたのか、七〇〇人も殺した動機や経緯は何なのか、そういった事情がまるっきり説明されていない。
そのため読者の中では「殺人は実際は戦争でのことで、戦争犯罪人として強引に上層部の罪を着せられたのでは」「単純に巨大すぎて動くだけでも被害が出そうなので、殺人は故意ではなく実は悪人ではなかったのでは」などの説まで挙がることすらある。
前述通り、『北斗が如く』で改心・生存ルートが出てきたのもこれらの説に拍車をかけることになっている。

なお、旧アニメでは第二部までのOPにおいて巨神兵のような巨人が登場し、最後はケンシロウがそれに飛び蹴りを放つ場面で締めくくられるが、この巨人は本編に登場しない謎の存在である。
そこで他の作品(ゲーム『世紀末救世主伝説』やアニメ『DD北斗の拳』など)がこのOPを再現する際には、作中の人物で一番体格等が合致するため、デビルリバースが代わりに当てられることが多い。
そのため宿命と無関係なぽっと出のチョイ役的な敵キャラなのにさもラスボスのような存在感で出てくる作品がしばしば見受けられる。
『北斗が如く』でもデビルとの対決で条件を満たすとこのシーンの構図を再現する演出がある。


追記・修正は死刑執行十三回をことごとく生き延びてからお願いします。

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最終更新:2025年10月13日 16:30

*1 ジャッカルもケンシロウと相対したシーンは上記の通りだが、それ以外のバットの村でトヨに迫るシーンでは3mほどもありそうな巨漢で描かれるコマもある。

*2 ゲーム『世紀末救世主伝説』オリジナルのケンシロウの台詞。旧アニメ版ではジャッカルが「まさに悪魔の化身だ…」と零す場面がある。

*3 ちなみにジャッカルの風貌も生え際は後退していないがボサボサの長髪で髭面と、微妙にデビルと似てなくもない。

*4 ジャッカルはここで「死んでもおまえを守ってやる」とデビルを庇うように立ちはだかるが、さすがに行き過ぎているためかケンシロウから「くさい演技」とけなされていた。

*5 ゲーム『世紀末救世主伝説』では容量等の都合かダイナマイトが省略され、ジャッカルは握りつぶされて死亡し、直後にデビルも力尽きるものになっている。

*6 原作ではケンシロウのモノローグ、旧アニメとゲーム『世紀末救世主伝説』ではナレーションの千葉繁による説明

*7 旧アニメ版のデビルの声優はジードと同じ蟹江氏で、ファンならニヤリとするネタの一つである。

*8 注釈では参考にしたコマから遠近法の可能性を考慮するともっと巨体になる可能性があるとまで述べている。

*9 実際のケンシロウの設定では体重100kgなので、これを採用すれば以降の数字はこれよりやや少なくなると思われる