ヨハネ・クラウザー二世(クラウザーさん)とは、若杉公徳の漫画『デトロイト・メタル・シティ』の主人公である。
作中のインディーズ音楽シーンで現在、最も勢いのある悪魔系デスメタルバンド「デトロイト・メタル・シティ(DMC)」のフロントマン。ギター・ボーカルを務めるほか、楽曲の作詞・作曲もほぼ一手に担っている。
「覇獣の鎧」と呼ばれる派手なコスチュームと鮮血を思わせる深紅のマント、白塗りの顔に刻まれた
額の「殺」の字がトレードマーク。
金髪のロングヘアはカツラである。
(わからないって方は
デーモン閣下を思い浮かべていただければ大体おk)
卓越したギターテクニックを武器に、SATSUGAIだのレイプだのと猟奇的・冒涜的な歌詞を撒き散らしながら常識外れのパフォーマンスを繰り広げ、カリスマ的な人気を獲得した。
元々のキャラ設定は1stシングル「SATSUGAI」の歌詞の
「両親をSATSUGAIし、さらにレイプした罪で服役していた魔界出身の悪魔で、バンド活動のために出所した」
というものだけだった。しかしライブでの暴走、イベントでの奇行、ファンの尾ひれの付いた噂話などが積み重なった結果、本人すら知らない数々の伝説が独り歩きするようになっている。
ゴボウの概要
その本名は「根岸崇一(ねぎし そういち)」。
九州は大分県の農家に生まれた、一見すると温厚で気弱な青年である。
渋谷系や北欧系のポップスを愛好し、ポップミュージシャンを目指して上京。しかし肝心のポップス方面では才能もセンスも絶望的で、まったく評価されなかった。
一方で、本人が忌み嫌っていたデスメタルの分野では突出した才能を発揮。デスレコーズ社長に半ば強引にデビューさせられた結果、大成功を収める。
こうして根岸の意思とは裏腹に、クラウザーの名声だけがひたすら拡大していくことになった。
痩せ型の体格からしょっちゅう「ゴボウ」呼ばわりされ、社長にもよく制裁される根岸だが、農家育ちゆえに体力や農作業スキルは高い。これはどちらかというと社長がとんでもなく強いだけ。
またギタリストとしての実力は本物で、日々の鍛錬によって高い演奏技術を身につけている。
斧でアンプを叩き割ったり
猛牛を手なずけたりした逸話も本人の実力によるものであり、何より(ダメ出しで殴られたりするとはいえ)DMCの楽曲制作は基本的に彼が行っている。
決してただクラウザーさんとして周囲に持ち上げられているだけの男ではないのだ。
DMC信者の一部からは「やたらギターの上手い関係者」として認識されており、信者との諍いの末に披露したエアギターで絶賛されたこともある。
カツラの下はマッシュルームカット。容貌も相まって男性のアレっぽく見えるため、しばしばネタにされる髪型であり、「公然猥褻カット」と呼ばれることもある。
密かな特技はフランス語。大学で専攻していたため、渡仏しても困らない程度の会話力を持つ。
ちなみに専攻した理由は「フランス語ってオシャレだから」。それだけ。
……理由はともかく、日常会話レベルで話せるのは誇るべきだろう。
本性はどちらなのか
根岸本人はクラウザーを「嫌々演じている」と主張している。
しかし実際には、ライブでの即興パフォーマンスや対バンで見せる闘争心、怒りや嫉妬によって容易にクラウザー化する性質などから、根っからのパフォーマー気質を持っていることがうかがえる。
ポップスに関しては「オシャレっぽさ」を勘違いした奇矯な行動が目立つ一方、メタルに関しては卓越した理解力と表現力を発揮する場面も多い。
またDMC信者を迷惑がりながらも、クラウザーとして彼らの期待に応えようとする責任感を持っており、その真面目さが結果としてさらなる伝説を生み出すことになってしまう。
そのため読者の間では、早い段階から「本当はクラウザーさんの方が本性なのではないか?」という疑惑がたびたび語られてきた。
実際、路線が固まっていない初期の頃から根岸のポップスは一切評価されておらず、彼自身にも自己中心的で問題のある行動が少なくない。
ポップスの才能に関しては「当初は才能の無い勘違い野郎扱いではなかった」と誤解する人もいるが、単行本1巻の時点でそういう扱いは一貫している。
何しろ根岸の思い上がりを的確に表現した名言「お遊戯的な事なら外でやってくんない?」が飛び出したのはこの巻収録の第12話なのだ。
有名人のアサトヒデタカに、彼が自身の店で行っているミニライブのステージに立ってみないかと誘われた根岸。
緊張する根岸に対して「失敗してもいいから」と好意的だったアサトが、勘違いポップスを始めた途端に態度を急変、演奏を止めさせて出てきたのが「お遊戯的な~」発言だった。
アサトが相川(根岸のガールフレンド)に好意を持っていたことから、「アサトが嵌めた」と疑念を持った読者も当時はいた。
しかし、ライブの描写は、直前まで高まっていた観客のボルテージが根岸が演奏を始めた瞬間絶対零度に落ち込んでいる(応援していたのは相川だけ)。あまりに酷い有様を見ての強制終了だったとするのが妥当であろう。
また、一部読者からは「DMCでも勘違いポップスでも根岸のテクニックや歌唱力は否定されていない」ことを踏まえ、
「下手でもいいから君の魂を見せてくれと初心者を励ましたつもりが、やたら上手くて明らかに素人じゃない奴だった上に、解釈違いどころかこちらのジャンルを理解する気すら感じない舐めくさったパフォーマンスをやるものだからキレた」
という説も提唱されている。根岸の勘違いポップスが関係者どころか一般人にも嫌われるのはだいたいコレが原因とも。
なお、この発言を受けた根岸はショックで店を飛び出し、自宅でヤケ酒を煽った上、壁に貼ってあった『アメリ』のポスターに「何笑ってんだアメリ、コラァ!!ちょっとオシャレだからって人のことバカにしていいと思ってんのか!!」と八つ当たり。
アサトの言葉もより酷い暴言(「おいゴボウ、お遊戯事なら外でやれよ」)へと脳内で改竄し、彼への逆恨みを募らせていった。
この「お遊戯的」という言い回しは根岸への罵倒の中で一番ぶっ刺さったらしく、妄想の中でアサトに詫びさせる際のセリフにも表れている。
連載が進むにつれその傾向はさらに顕著になり、サタニック・エンペラー編以降はむしろクラウザーの姿でいる時の方が理性的に振る舞う場面すら増加。逆に根岸として行動している時には嫉妬や逆恨み、被害妄想で暴走することが多くなった。
そのため一部読者からは、「もはやクラウザーさんの方が善性だろ」とまで言われている。
もちろん普段の根岸は、ポップス絡みで暴走さえしなければ仲間や友人に気を配れる好青年であることも事実である。
しかし妹の
結婚式では、
根岸としては善意のつもりで最低の祝辞を考え、クラウザーとしては最高のスピーチを披露するという珍事を起こしており、彼の評価をさらにややこしいものにしている。
なお、作中世界で唯一根岸のポップスを高く評価している人物として、ガールフレンドである相川由利と大学の後輩・佐治秀紀がいる。
しかし、二人ともオシャレ業界の第一線で長く活動できる才能とオシャレステータスの持ち主でありながら、なぜ根岸のクッソキモい楽曲を評価しているのかは最後まで明確には説明されなかった。
確かに
- 相川は異性としても根岸にひそかな好意を抱いている
- 佐治も根岸を先輩として相当尊敬している
という理由はあるが、説明がない以上、二人とも根岸に関してだけは見る目が盛大に曇っているとしか……。