登録日:2020/06/10 Wed 03:31:44
更新日:2025/02/13 Thu 17:16:58
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『ふたごみたいなふたり』はちゃおホラーデラックスに掲載されたエピソードのひとつ。2度ほどコミックにも収録されている。著者は阿南まゆき。
阿南まゆき先生お得意のオカルトが登場しないガールズホラーものであり、とある理由から友人に異常なまでの執着}を向けられることになった主人公の物語が描かれる。
要するにちゃおホラーでは頻繁にある「人間は怖い」タイプのホラー作品。
某サバイバルホラーばりに冷静に考えると無理のある展開や、擬音をはじめとして妙にインパクトのある絵面も特徴。
【登場人物】
◆田中真昼
主人公にして最大の被害者。
いつも1人でいることを気にかけてクラスメイトの山田真夜に声を掛けたところ、意気投合し彼女と親友になる。
偶然にも身長や血液型、誕生日まで同じで名前も似ている彼女のことを「ふたごみたい」と感じ、真夜の提案で髪型やアクセサリーもお揃いにするなどしてとても仲良くしていた。
まあ当時はふたごコーデとか流行ってたしね。
しかし真夜は次第に独占欲を拗らせていき、もはや狂気としか言いようがない彼女の執着心に恐怖を感じるようになる。
日に日にエスカレートする真夜の奇行にドン引きしたり怒ったりすることはあっても、親友として大事にしようという気持ちは最後まで忘れなかった聖人。
◆山田真夜
そんじょそこらのオカルトよりもよっぽど存在がホラーな女。
友達がおらず、クラスメイトからは「暗くてつまらない」と言われていたが、そんな中で声をかけてくれた真昼と親友同士になる。
しかし真昼が原田という男子生徒と仲良くなり始めたことをきっかけに
病的な執着を露わにし始め、
- (真昼本人が許したのもあったが)原田と真昼のデートに同行し、「真昼と仲良くするのを許してほしい」と言った原田の手にフォークを突き刺そうとする
- 整形手術を受けて顔まで真昼そっくりになり、「ホントウの双子」になろうとする
等々恐ろしい行動を繰り返し、挙げ句の果てに真昼のフリをして原田の家に押しかけ、彼を殺そうとしたために入院させられてしまう。
結局その後も反省などは微塵もせず彼女との心中を決意。
「ずいぶんよくなった」と言って真昼を自宅に誘い出してお茶にしびれ薬を盛り、抵抗はされたものの逃げ出した彼女を執拗に追いかけてナイフで惨殺。死体をお揃いの格好にした上で自害して自作の棺桶に一緒に入り、心中を完遂してしまった。
- 整形手術を受けたりしびれ薬を用意したり棺桶をDIYしたりできる、中学生とは思えないような財力と行動力
- 階段から落ちた後何事もなかったかのように追いかけてきたり、胸を貫いて自害したあとわざわざナイフを引っこ抜いて棺桶に入ったりするタフネス
等々、思考のヤバさもさることながら終始謎のスペックの高さを垣間見せてくる超人であった。
彼女に限らず、阿南先生のホラー作品には時々人間とは思えないようなチートスペックを見せつけてくる人物がたびたび登場する。
◆原田タカシ
真昼の彼氏になった男子生徒。
本人に非は一切ないのだが、ある意味ふたりの仲を狂わせてしまった存在。
真昼曰く「おもしろい人」「いい人」。あからさまに敵意を剥き出しにしてくる真夜に困惑しながらもどうにか仲良くしようとしたり、彼女にたびたび危害を加えられても真昼のことは振ったりせず大事にしていたりする、誠実ないい彼氏。
前述の通り恨みを募らせた真夜に殺されかかるものの、幸いにして軽傷で済んだ。
【余談とか】
本作はその後2013年発売された阿南まゆき先生初のホラー短編集である『ブラッディ・リリィ』に収録された。
さらにその後別のコミックスで再録された。まあ再録されること自体はちゃおホラーではよくあることである。
しかし再録された短編集のタイトルが……
なんでよりによってそこに再録した?
姉妹愛とか友情じゃなかったんですか!?
一応真昼は原田くんと恋仲になっておりそちらの部分を「こわい恋愛」として取り扱っているのではないか? とも考えられるが、多分それは現実逃避である。
いやまあこの短編集、途中から恋愛あんまり関係なくなるから数合わせで入れただけかもしれないし……。
終盤数ページ、真夜の作った棺桶が大写しになるコマの背景では思わせぶりに百合の花が咲き乱れている。
また、最後のページの真夜が真昼の遺体に顔を近づけているコマをよく見ると、何故か真夜の口元が血で汚れている。もちろんコマは真夜の自殺前であるにもかかわらずである。
そして逆に真昼の口元は刺された衝撃か、吐血し口元から血が漏れ出ている。
これらを統合して考えると……。
……考えすぎだといいな。
なおやっぱり年頃の女子の人間関係というのはいろいろと一筋縄ではいかぬところがあるためか、「友人に異常に執着される主人公」という構図の話はちゃおホラーでは定期的にあったりする。まあそういうのだけで短編集つくれるのは先生くらいだろうが
~例の一部~
- 友人が「あなたが私以外の友達作るなら死んでやる!」と言い出して本当に自殺して悪霊化した『いつでも一緒』
- 主人公に対し異様に束縛が強く着替え含めて何でも世話しようとした友人が死後も人面層となり世話をしようとする『ひだり足の千代ちゃん』
- 病弱故に友達がいなかった少女が、初めて親友となった主人公に執着し心中しようとする
そしてちゃおホラー屈指に強引な方法でハッピーエンドとなった『親友ごっこ』
- 人見知りであるために友人が幼馴染の主人公しかおらず、成長するごとに束縛を強めていく少女の物語である『糸電話』
- 友人が主人公の一番でいるため、主人公が彼氏をつくろうとするのを全力で阻止する『友情の穴』
- 主人公が彼女にしか見えない少女の幽霊に束縛され呪い殺される『おともだち』
場をちゃおからなかよしホラーに移すと
- 自分以外の友人をつくろうとすると主人公を加害してくる友人をなんとか呪い殺そうとする『ふたりの願いごと』
- 話としては変化球だが、主人公が狂愛している友人を守るために暗躍し続ける『わたしのアイドル』
- タイムカプセルには大切な宝物を入れる→私にとって一番大切なのは主人公ちゃん!という
クソ理論で殺しにかかってくる『タイムカプセル』
さらに場を移しりぼんホラーでは看板作品である『
絶叫学級』でも時たまこういう話が出てくる。
ホラーではないが2014年から2017年にかけて主人公を自分のものにしたい友人と、そんな友人の束縛から逃れたい主人公の攻防を描いた『
なないろ革命』が連載された。
……並べてみると本当に多いな。
今どきの女児って心に闇でも抱えているのだろうか?
追記・修正をお願いします。
- 阿南まゆきってふたご姫のコミカライズくらいしか知らんかったからビックリや…なんやこれ… -- 名無しさん (2020-06-10 05:43:57)
- これに限らず、少女漫画のホラーってやたら理不尽でドロドロしてる感じがする…。 -- 名無しさん (2020-06-10 08:31:03)
- 女子が友達に独占欲じみた執着みせるとか、別に少女漫画でも最近始まったことでもないんじゃないかな……って思ったけど、今のちゃおって結構対象年齢低いんだね…… -- 名無しさん (2020-06-10 08:49:18)
- ↑3 あのナゾトキ姫の作者さんも、実はグロく怪物や、まさかのバッドエンド転落を描いたホラー漫画をかいたことがある。 -- 名無しさん (2020-06-10 13:33:26)
- なぜ少女漫画はこうもバイオレンスなのか -- 名無しさん (2020-06-10 16:39:04)
- ↑少年漫画にもベクトルは違うけどバイオレンスな作品は今でも混じってるから… -- 名無しさん (2020-06-10 18:35:58)
- 阿南先生はナゾトキ姫のほのぼの感とは程遠いホラーが得意な作家さんだから…あと先生はもろカニバニズムを描写した漫画を描いたことも…! -- 名無しさん (2020-06-10 18:56:37)
- ↑4のコメントした者ですが、↑のコメントを見て、たった今で気付いた...この記事で語っているホラー漫画の作者が、そのナゾトキ姫の作者さんだということに...( それとその「カニバニズムを描写した漫画」って、ローズマリーって名前の「食いしん坊でワガママな王女様と、猫みたいな獣人?」が出てくるアレのことですかね...?)。そーいえば、ちゃおホラー関連の記事がアニヲタに出たのって初めてじゃないでしょうか? -- 名無しさん (2020-06-10 19:35:50)
- 阿南まゆきと言えばルーファスではないのか!? まあ知名度ならナゾトキ姫の方が高そうだが -- 名無しさん (2020-06-11 00:33:36)
- 姉がいた関係でちゃおホラー何冊か読んだことあるがなかなか不気味で怖い作品揃い。ある程度拙い画力なのがまた怖さを引き出す。 -- 名無しさん (2020-06-11 07:23:17)
- ↑8 少なくとも自分の周りじゃ小学生が読むものってイメージだけど、違った? しかしまあ、作品例の大半も含めて親はなにしてんだよ -- 名無しさん (2020-06-11 07:42:55)
- なぜ百合ホラーは私はお前になるんだよ!みたいな話になるのか。セレクターなんかは発展的解消してたけど -- 名無しさん (2020-06-12 03:05:58)
- どうでもいいが、最後の例のところ、友人相手ならDVじゃなくね? -- 名無しさん (2020-06-12 05:35:38)
- ↑3子供に人間関係の問題の対処は難しいからそもそも大人に相談するってところまで頭が回らないというパターンが多い。いじめが相談しにくいようなもの。まあ相手が善意でやっているって意味ではいじめよりめんどくさい問題だが。 -- 名無しさん (2020-06-12 17:32:27)
- 原田くんの将来が不安でならない -- 名無しさん (2020-06-12 17:40:11)
- ↑3 読んでないけど多分こうだろう、と『加害』にした。違ってたら直してください -- 名無しさん (2020-06-12 23:33:39)
- 阿南まゆき先生はチェリッシュ!が好きだったな -- 名無しさん (2021-06-25 07:55:35)
- 確かに女子の友情には一緒にトイレとか双子コーデとか男子にはない距離感がある。あと「女友達(憧れの女)への執着」というテーマはりなちゃ層に限らずレディコミでも定番。ママ友とか同僚とか。怨み屋本舗の最初のラスボスは女主人公に執着したあげく同じ顔に整形したキモ女だった。 -- 名無しさん (2022-12-27 15:19:51)
- ホラーな項目なのに「棺桶をDIYできる行動力」で笑っちまったw -- 名無しさん (2022-12-31 13:19:11)
最終更新:2025年02月13日 17:16