SCP-3559

登録日:2020/09/16 Wed 11:31:33
更新日:2023/08/15 Tue 01:09:43
所要時間:約 6 分で読めます





パンを食べましょう。生まれて、こうして出会ったんですから!
――あるアイドル

SCP-3559はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラス Safe

概要

SCP-3559はポーランドのクジニャ・ラチボルスカの街のパン屋ウィピカーニャ(Wypiekarnia)*1のキッチン内にある パン生地で形成された塊 である。
と言ってもまず中心部に 大きなパン生地の塊 があり、その周囲に5つの 人型の塊 があるのだ。
粘土なんかで雑に作った脚のない胴体とその上に両腕と頭を乗せた人形を想像してみてほしい。
そんな形状のパン生地で構成された等身大の5つの人型が中央の大きなパン生地塊を囲んでいて
人型からへその緒のように紐が伸びて中央の塊につながっている、というのがSCP-3559の全景だ。
この生地記事では区別のためにSCP-3559のうち中央の大きなパン生地塊を「中央パン塊」、周囲の5つの人型のパン生地塊を「人型パン塊」と呼ぶが🍅
それらをまとめて同一のパン生地塊とみなせる存在なのか、それとも中央パン塊と人型パン塊は繋がってるだけで独立した存在なのかは判明していない。

ベーカリー・ウィピカーニャのキッチン内にパン生地で構成された塊があるという光景だが、そこに ある物 を入れると不思議な現象が起こる。
と言っても察しは付くだろうが ある物 とは パンや焼き菓子を作るのに必要な材料 である。

適切な資材や材料を入れてやると5つの人型パン塊はまるで熟練パン職人達のような動きをしてそれらをパンやお菓子に作り替える。
人間のパン職人のように連携を取って機敏に動くが、人間と意思疎通は取れなかったし
「彼ら」に自我があるのかもわからなかったがとにかくパンを作り続けるのだ。
完成したパン類をSCP-3559-1に分類するが人型パン塊はそれを販売カウンターに通じるハッチへ排出する。

一定期間材料が供給されないと人型パン塊達は倒れ込んで動かなくなったり
逆にセカセカと落ち着かない挙動をしたり人型の形が揺らいで保てなくなったりと ストレスを感じている ように見える。
そこから3日もすると人型パン塊達はキッチンから外に出ようとするのだが中央パン塊はその場に固定されており
へその緒の長さも足りないため彼らはキッチンから出られないのだ。
そしてますますストレスを受けたような反応を確認できる。
ストレスが限界を越えるとヤバい事態になるかもしれないのでこの状態は起こさない事にした。

サクサクほっくほくのSCP-3559-1

作り出されるSCP-3559-1は投入された材料の内容によって変動されるのだが、
ローズジャムとオレンジ皮の風味が絶品のポンチュキ(ポーランドのドーナツ的なもの)が多く
それ以外にもクジニャ・ラチボルスカ名物のパンや焼き菓子をどんどん作ってくれる。

ただ…味は絶品なのだがそれだけでは済まず、食材は異常性のないものを吟味して提供したにも関わらず、
完成したSCP-3559-1を人間が食べると普通のパンでは ありえない効果 も示す。

具体的にいうと
  • 空気中病原菌への抵抗力が上昇する(要は風邪をひかなくなる。さすがにもっと危険な細菌には無力)
  • やるべき事や仕事に対しての意欲が向上する
  • 日常生活において満足感が向上し精神が安定する
  • 周囲の人間関係においてストレスや敵意の感情を緩和する
  • 自身が帰属する国家、組織、宗教等への敬意が向上する

あれー?なんか良いことばっかじゃないか?
精神に作用する効果が多いが、ミームや精神改変なんてものではなく
ちょっと気分が楽になっている程度の効果でしかない。
財団が3年以上かけて実験したが有害な作用は一切確認できなかった。

収容プロトコルとその結果

  • ウィピカーニャのキッチン内や周辺環境をパンの作成に適したものに保ち、特に有害な物質の侵入を防ぐ
  • 事前に計画した通りの製菓材料を人型パン塊達に提供してSCP-3559-1を作らせる
  • ウィピカーニャの店舗はレベル0財団職員を店員として営業し SCP-3559-1を一般に販売する 。ただし民間人は決してキッチンに近づけない
  • 喫食後に有害な作用が確認された場合はプロトコルを改正する

現在のところSCP-3559-1を食べても後を引く美味しさと有益な効果しか確認できていない。
いくら長期間実験して害がなかったとはいえアノマリー由来の食品を一般人に売る事については意見が割れたが今は問題は起きていない。
ヨーロッパ支部の財団サイトの職員たちが本当に有害じゃないのか?プロトコルの改正が必要にならないのか?と
SCP-3559-1の取り扱いを検討する委員会を現物と共に頻繁に開いている。お前らパン食いたいだけだろ

まあパンを作るだけだしヤバいと思ったらパン食わなきゃいいだけなので Safe には違いない。

収容までの経緯

財団がSCP-3559を認識したのは1990年頃だが、この頃のポーランドは冷戦直後でドイツと領土問題で揉めていたり
その時期のヨーロッパでは他の面倒なアノマリーの問題が複数あったりで
SCP-3559発見以前のウィピカーニャはどんな状態だったのかがよくわかっていなかった。
後から少しづつ調査が進んだのだが、1943年から1956年の間のウィピカーニャにはモクジウスキ家という 5人家族 が住んでいたらしい。
そして家屋に残されていた日記などによれば一家の中で最年少の子供であるフランシス・モクジウスキくんは
今でいう自閉症スペクトラムの気があったようで時々手足をバタバタさせるなどの特徴的な行動をしていたのだが
5つの人型パン塊のうちの一つは それと酷似した動きをしていた
ポーランドの国勢調査では1950年代以降のモクジウスキ家の記録が残っていない上に
前述したとおり人型パン塊達は意識や自我があるのか不明で意思疎通も取れていない。

普通に考えればパン屋の家族がなんらかの理由でパン生地塊に変異したのだろうが
モクジウスキ家に何があったのだろうか?財団は調査を続けている。


SCP-3559 Best thing since(最高のパン)

余談

メタタイトルのBest thing sinceを直訳すると「過去最高のもの」とかいう意味になるが
おそらく英語の慣用句のBest thing since sliced bread(スライスしたパン以来の画期的な最高の品)から取ったと思われる。
欧米人にとってはパンは毎日食べるもので、パンを適切なサイズに切るのも日常行為だが面倒くさい事であり
機械や道具を使って簡単かつ正確にパンを切る設備が完成したら歓迎されたため
(皮肉の場合もあるが)スライスしたパン以来のすげえ発明だよ!という表現が「最高の品だ」という意味になる。

追記・修正はおいしいパンを焼いてからお願いします。



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最終更新:2023年08月15日 01:09

*1 ポーランド語のwypiekac(焼く)とpiekarnia(パン屋)の掛け言葉らしい。訳すなら「焼き立てのパン屋」だろうか。