春琴抄(小説)

登録日:2012/02/27(月) 22:01:18
更新日:2022/07/22 Fri 00:10:58
所要時間:約 4 分で読めます





春琴抄(しゅんきんしょう)』は日本の小説。
著者は谷崎潤一郎、発表は1933年。


あらすじ
大阪道修町の薬種商鵙屋に生まれた盲目の美少女・春琴には、幼少時より共に過ごしてきた佐助という奉公人がいた。やがて三味線の師弟という関係になった二人は、家を出て同棲を始める。
わがままな春琴に献身的に尽くす佐助。しかしある日、春琴は何者かに襲われ顔面に熱湯を浴びせられてしまう。
ひどい火傷で爛れた顔を見せたがらない春琴に対し、佐助は自らの目を針で突いて彼女と同じ盲目の世界に入る……。


◆登場人物
  • 春琴(しゅんきん)
本作のヒロイン。大阪の薬屋に生まれた女性。
少女時代に失明するも音楽の才能を発揮し、三味線の師匠の元に通っていた。のちに佐助と共に家を出て三味線教室を開く。

並外れた美貌を持ち、37歳の時でさえ二十代に見えるほど。
甘やかされて育ったのと病気の影響で性格が歪み、わがままで誰に対しても高慢で暴力的。そしてドS。
自分の弟子に「お前達の演奏より私が飼ってるウグイスの声の方が綺麗」とか言ったり、バチで頭をぶん殴ったりする。その性格が後年の悲劇を招くきっかけに。

佐助に対しては重度のツンデレで、暴力の度合いも他人よりレベルアップする。暴力系ヒロインの元祖とでも言うべき存在。
しかし後年起こった火傷の事件以降はやたらとデレるようになる。
佐助とは両親公認の仲だったが、「別に奉公人のことなんか全然好きじゃないんだからねっ」と言い張り籍を入れなかった。でも子供四人作った。


  • 佐助(さすけ)
本作の主人公。春琴の家に代々仕える奉公人の家系に生まれる。
少年時代、三味線の師匠の元へ通う春琴の送り迎えを務めていた。
これがきっかけで三味線に興味を持ち、こっそり練習していたが春琴にバレてしまい稽古という名のDVを受ける。
しかし佐助はそれをむしろ喜んでいたフシがある。つまりドM。

春琴と同棲を始めてからは一番弟子兼彼女の世話係として奔走する日々が続く。
後年に春琴が火傷を負った際は、顔を見ないでくれと言う春琴の望みに応えるべく自ら視力を失った。
それでも春琴の世話は万全で、風呂も着替えも世話し続けた。

彼が自分の目を突いたのは、事件以降デレ始めた春琴への拒絶ゆえである、という見方がある。
つまり自分のマゾな願望を満たしてくれるツンドラな春琴をこそ愛していたと言えよう。とんだ変態である。


  • 利太郎(りたろう)
春琴の三味線教室に通っていたチャラ男
春琴を花見に誘って口説くが盛大にフラれ、稽古でも不真面目な態度を取ったためにバチの一撃を食らって怪我をさせられる。
春琴を襲って熱湯を浴びせた犯人候補。


  • 「私」
本作品の語り手。『春琴抄』は「私」が後年に見聞きしたものを語っている、という形式で進んでいく。


◆余談
  • 本作は文庫本にして70ページ前後の中編だが、現代の小説と比してなかなかに読みにくい作品であることが大きな特徴である。
    これはカギ括弧「」と句点(。)が極端なまでに排除され、文章と文章を区切らずに書かれているから。
    例を挙げると

    「(春琴は)いつの間にか平気な顔で佐助に手引きさせながら稽古に通っていたもうその時彼女と佐助との関係はほとんど公然の秘密になっていたらしいそれを正式にさせようとすれば当人たちがあくまで否認するものだから(後略)」(本文中より引用)

    ずっとこんな感じ。
    そのうえ普通の一文一文も長く、また改行も最小限なので中編ながら意外と読むのに時間がかかる。

  • 幾度か映画やドラマ、舞台として上演・放送されたりしている。ストーリーがストーリーだけに朗読の題材となることも。
    作者自身による朗読や、『天空の城ラピュタ』のムスカ役で知られる寺田農氏の朗読CDなども存在する。
    読んだことがない、あるいは読むのを投げた人はこういったメディアミックス作品に手を出してみるのもいいかも。


追記・修正は押し入れの中で三味線を弾いてからお願いします。

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最終更新:2022年07月22日 00:10