映画大好きポンポさん

登録日:2021/06/11 Fri 07:09:46
更新日:2025/04/24 Thu 16:31:44
所要時間:約 90 分13分で読めます







映画を撮るか、死ぬか

どっちかしかないんだ






概要


『映画大好きポンポさん』とは、イラストコミュニケーションサービスpixivにて連載されていたweb漫画。既刊3巻のうち、1巻のみpixivにて連載され、2巻以降は単行本描き下ろしである。
著者は杉谷庄吾(pixivユーザー名・人間プラモ)。

ハリウッドによく似た映画スタジオの都「ニャリウッド」を舞台に、破天荒な凄腕映画プロデューサーの少女と映画に狂気的なまでの情熱をかける新人映画監督の映画製作をコミカルに描いた「映画」漫画である。
コミカルタッチではあるものの、映画製作現場の描写に関しては作り込みが高く、資金集め、予告製作、プロデューサーと監督との軋轢といった「映画製作あるある」を本格的に描いているのが特徴。

元々は深夜アニメの企画として練られていたが、アニメの企画が没になったためpixiv投稿の漫画として日の目を見ることになり、口コミで評判になって書籍化。
その後、続刊だけでなく、同じニャリウッドを舞台にしたスピンオフ作品『映画大好きフランちゃん』『映画大好きカーナちゃん』や、番外編である『映画大好きポンポさん the Omnibus』が刊行された。

なお、単行本の表記と劇中の時系列にはズレがあり、2→3と読まずにスピンオフ2作やオムニバスも目を通しておくのがおすすめ。
時系列=刊行順なので、
映画大好きポンポさん→ポンポさん2→フランちゃん→カーナちゃん→Omnibus→ポンポさん3
の順に読んでいくと話がしっかり繋がるだろう。*1
当初は1冊のみのつもりであり(なのでシリーズ1冊目には巻数表記がない)、作者も予想外の大好評により早々に続編依頼がくるも「描きたいことは描いた」として断るほどだった。
しかしある時に再び続編依頼を受けると作者自身も驚くほどにあっさり受け入れ、筆が乗り始めた結果こんな形の刊行になったという。
作者曰く「こんなに続くとは思ってなかった」

そして、2019年にはアニメ映画化が決定。新型コロナウイルスによる延期の影響もあったが、2021年6月4日に公開された。
製作はCLAP。監督は『劇場版 空の境界 第五章 矛盾螺旋』『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』の平尾隆之。*2
単行本1巻の内容に、大幅なオリジナル展開を織り交ぜて映画製作の悦びと情熱、そして狂気をテンポの良い編集とともに90分余すところなく描き、映画ファンを中心に絶賛評が寄せられた。


ストーリー


ここは、世界で最も映画が作られている映画の都「ニャリウッド」。
そこで、数多くのヒット作を生み出している天才プロデューサーの少女がいた。人呼んで、彼女の名は「ポンポさん」。
名プロデューサーの祖父を持つポンポさんは、映画のノウハウを隅から隅まで熟知しており、映画界の頂点に立っていた。
そんな彼女のアシスタント・ジーンは映画に並々ならぬ情熱を掲げ、映画監督を志している。
ある日、彼はポンポさんから映画の予告編製作を依頼され、評判は上々。
そして、彼はポンポさんが脚本を手掛けた新作映画の監督に指名される。
こうして、「映画バカ」ジーンとポンポさんの映画製作の日々が幕を開けた。



登場人物

1巻から登場

  • ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネット/ポンポさん
CV:小原好美
ペーターゼンフィルムの敏腕プロデューサー。
年端も行かない現役中学生だが、その並々ならぬ映画に対する観察眼と計算力により、祖父のペーターゼンから映画の製作業を一任されている。
幼い頃から祖父から映画の英才教育を受け、プロデューサーとしての才能を開花させる神童となった。
性格は快活かつ奔放で、気まぐれな態度で周囲を振り回しているように見えるが、天才ゆえに先のことを深く見据えているためむしろ万事上手くいくための調整役に回ることが多い。
人材の慧眼も聡く、ジーンやナタリー、フランといった後の名監督、大女優の卵を次々と発掘していった。
映画を純粋に「好き」というわけではなく、あくまで売れる「商品」としての価値を見出している。
そのため映画は90分以内に終わるのがベストと考えている。


  • ジーン・フィニ
CV:清水尋也
ペーターゼンフィルムに務めるポンポさんのアシスタント。
友達のいない孤独な学生時代を送り、映画に生きる意味を見出し、人生そのものを懸けることを決意し、映画監督を志す。
その「死んだ目」からクリエイターとしての才能をポンポさんに見出され、ポンポさん脚本の新作映画『MEISTER』の監督に抜擢され、監督デビューを果たした後、映画監督としてのキャリアを進むこととなる。
映画に対しては尋常ではない情熱(というより狂気)を捧げており、作る映画には一点の妥協もないこだわりを見せる。
初期の頃はまだ可愛いものだったが、回を重ねるごとに常軌を逸した行動が多くなった。

  • スタジオの意向で作った大衆向け作品が気に入らずデータを全部破棄した上で自分好みに作り替える
  • フリーになったことをいいことに納期ガン無視のカツカツスケジュール
  • 別作品のアイデアが良くなったからという理由で現在製作中の映画のプロットを完全に書き換え
  • 過密スケジュールになったにもかかわらず体調など倒れるまで気にしない
  • 編集段階で必要なシーンが出たため大幅な追撮(映画版)

……など、もはや狂人、廃人の域に達しており、ナタリーから「ダメ人間」扱いを受け、ポンポさんですら彼に振り回される有様。
というか、頭の回転は遅い方なのにこの狂気と執念だけでポンポさんなどの一握りの天才と同じ視座に立てるというある種の変態である。

映画版では、高校時代の同級生といった理解者が登場したためか、「感動を与えたい」という動機が強くなり、若干人間味が強い。


  • ナタリー・ウッドワード
CV:大谷凜香
田舎町サンロードからニャリウッドへと上京してきた女優志望の少女。
何もない田舎で見続けた映画の中の世界に憧れ、女優になるためにバイトを掛け持ちしながらオーディションを受け続けたが連戦連敗。
しかし、ペーターゼンフィルムのオーディションでポンポさんに落とされるものの、彼女から閃くものを見初められ、ヒロインとして当て書きした映画『MEISTER』に抜擢。主演女優としてデビューを果たす。
見習い時代からミスティアのマンションで同居しており、彼女とは大の仲良し。
ジーンとは同じ新人として応援していたが、段々彼の狂気に呆れるようになった。
……が、なんのかんので見限っているわけでもなく、恋愛感情を抱いているような素振りも見せる。
女優業が暇な時はポンポさん行きつけのダイナーにウェイトレスとして働いている。


  • ミスティア
CV:加隅亜衣
ニャリウッドで売れっ子の若手女優。金髪セクシーな美女。
ポンポさんのお気に入り女優であり、ポンポさんプロデュースの映画にも多数出演している。
普段はのんびりした雰囲気の女性だが、いざカメラの前に立つとまるで別人のようなオーラを放つ。
女優としての仕事に誇りを持っており、そのためにはあらゆる努力を辞さず、また同じ志を持つ者を隔てなく応援する。
いずれは自分で映画をプロデュースする野望を抱いている。


  • ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ペーターゼン
CV:小形満
ポンポさんの祖父ぶっちゃけ全然似ていないがで、ニャリウッドの伝説のプロデューサー。
ドイツ出身で、小さい頃から映画スタジオで働きながら映画作りのノウハウを学び、様々な苦難を乗り越えてニャリウッド一のプロデューサーまで上り詰めた巨匠。
孫娘のポンポさんに映画の英才教育を施し、彼女の映画に対する心眼を見初め、彼女を自分の後継者に認定した。
ポンポさんが認めたジーンにも一目置いており、彼を応援している。


  • コルベット
CV:坂巻学
ポンポさんとよくタッグを組む映画監督。
手堅い作風が得意の職業監督であり、安定して面白い作品を作っている。
日本のアニメ映画が好き。


  • マーティン・ブラドック
CV:大塚明夫
映画界一の大御所俳優。
普段は気障で女ったらしなナルシストだが、カメラが回ると一気に役に没入し、主役に相応しい圧倒的な存在感を誇る。
……むしろ言う人に言わせれば「主役しかできない俳優」であり、「存在感だけで芝居をしている」という、使い所の難しい、ある種の劇毒的な天才。
ペーターゼンとは新人時代からの付き合いで、彼には頭が上がらない。

2巻から登場

  • フランチェスカ・マッツェンティーニ/フラン
CV:野水伊織
ポンポさん行きつけのダイナーのウェイトレス。
女優志望だが、優等生気味な演技のせいでオーディションに落ち続け、スランプになっていた。
そこで、ポンポさんのアドバイスにより自分を見つめなおし、その後ポンポさんがプロデュースした映画のヒロインに選ばれ、女優としての道を歩みだした。


  • カーナ・スワンソン
フランの演劇学校の後輩。
役に没入するのが苦手で、なかなか女優としての芽が出ずにいたが、偶然知り合った脚本家デュラントの手助けをするうちに映画のヒロインとなり、「完璧に表面だけ演じる」特技を身に着け脚光を浴びる。


  • ユーゲン・マイルスジャック
ポンポさん行きつけのダイナーのマスター。
密かに俳優業をしているが、全く売れずに燻る毎日を送っていた。
本編3巻でジーンの監督作に主演俳優として出演し、ようやくチャンスを掴む。


  • ウェズ・G・マクティアナン
超大作を次々と生み出しているスクリューボールスタジオのプロデューサー。
視覚効果に定評があり、多くのスタッフを滞りなく動かしている。
元はペーターゼンフィルムの進行助手兼経理で、数字を扱うのが得意な理系脳。
ジーンの手腕を見込んで彼を監督として招き入れたが、編集段階で要求ガン無視の趣味全開の作品を渡される羽目になったが、なんだかんだで彼には好評だった。


  • レオン・ポールウェイド
『マックスストーム2』の主演俳優。
海兵隊帰りのタフガイ俳優として有名。
監督としての活動も志しており、『プロスロギオン』で監督デビューする。


  • クリスティア・ロックウェル
『マックスストーム2』のヒロイン役の女優。
自分の顔に自信のあるナルシスト。


『フランちゃん』から登場

  • キャロル・ロンシュタット
作曲家。
パンクロックファッションに身を包んだ破天荒な女性だが、周囲が変人だらけなので相対的にマトモな部類。


  • マーリン・ユーチノフ
脚本家。
猫舌で常にのんびりとした性格。
だが、マーティン・ブラドックの大ファンであり、彼の話になると目の色が変わる。


『カーナちゃん』から登場

  • デュラント・クライスラー
科学考証家。
自分の考える最高のSF作品を作る野心を抱き、脚本を執筆。
それをカーナとの出会いを機に映画化にこぎつける。


『Omnibus』から登場

  • マズルカ・クシジャノフスカ
『3』でポンポさんが通う事になった学校の、隣のクラスの生徒。
撮影技術に優れており、被写体を魅力的に撮影する天才。母親からは映像技術の道に進むことを反対されている。


  • ロザリンド・ソールズベリー
同じく隣のクラスの生徒。
女優志望で、周囲の人物を取り巻きとして扱っている。


  • リーセル・パーカー
同じく隣のクラスの生徒。
女の子に優しい紳士的な女子。


  • レベッカ・ロンシュタット
同じく隣のクラスの生徒。
キャロルの妹で、音声技術に長けている。


  • ロッシオ・バルダッサーレ
若手時代のペーターゼンと組んでいた天才監督。
類まれなる才能で周囲を圧倒してきた。


  • ヘディ・キースラー
ペーターゼンの下でスクリプターを務めていた黒人女性。
陽気で頭が回り、教養にも長けた姉御肌の才女。
若手スタッフをまとめる姉貴分であり、マーティンも「姉さん」と慕っている。


映画版オリジナルキャラ

  • アラン
CV:木島優一
ジーンの高校時代の同級生で、現在はニャリウッド銀行の銀行マン。
学生時代は何事もそつなくこなしてきた一方で、社会人になってからは上手くいかず、鬱屈した日々を送っていた。
そんな中、ジーンと再会し、彼の姿に輝きを見出し、彼の映画監督としての夢を応援したいと思い、危機に陥った映画製作を援助する。







登場作品


  • MARINE(マリーン)
ミスティア主演、コルベット監督作品。
ビーチに出現した巨大イカを退治するために水着姿のヒロイン(海兵隊員)が戦いを挑むB級アクション。


  • MEISTER(マイスター)
ジーン・フィニ初監督作品。マーティン・ブラドック主演、ナタリー・ウッドワード初出演。脚本はポンポさん。
スランプに陥った傲慢な天才指揮者が、アルプスの村で一人の少女との出会いを機に自分を見つめ直し、再起するまでを描いたヒューマンドラマ。
原作では特に大きなトラブルはなかったが、映画版では編集段階で大幅な追加撮影が行われ、資金難により製作中止の危機になっている。


  • マックスストーム2
人気アクション超大作の続編。
ジーンが監督として抜擢され、当初はスタジオの指示通りの作品を完成させたが、そのあまりの凡庸さに憤慨したジーンによってデータを破棄され、自分好みの作品に編集し直されてしまう。
結局、見兼ねたポンポさんとコルベット監督によって大衆受けする作品には何とか仕上がった。


  • LOVE・Begets・LOVE(おいしい私革命)
フリーになったジーンの初めての作品。ミスティア、ナタリーの共演作で、ミスティアがプロデューサー補として製作に関わった。
家庭崩壊した二人の姉妹が、再起をかけてケーキ屋を開く。
ジーンが画面にこだわりすぎたためにスケジュールも予算も大幅にピンチになった作品。


  • Lunch Waggon(恋人たちのクランク♡イン)
ジーンに対抗してポンポさんが製作した映画。主演は映画初主演となるフラン。
とある小さなダイナーを舞台に新人ウェイトレスが個性豊かな客を相手にする。
立て続けに挟まれる小粋なギャグや大物俳優の出オチ出演とで笑いに絶えない作品。


  • PROSLOGION(プロスロギオン)
レオン・ポールウェイド主演・監督のSF超大作。脚本は科学考察者のデュラント・クライスラー。共演はカーナ。
「神」と人類との悠久の時をかけた戦いを描く。

  • DisgustingCity
マーティン・ブラドックを主演にするために製作された、ペーターゼンフィルムの第一作映画。
アメリカの底辺社会に生きる若者の怒りと苦しみ、そしてニャリウッドの短絡的な商業主義を痛烈に皮肉った、時代に逆行する退廃映画。
批評家からは評価されたが、一般受けせずに終わったため、興行的には失敗した作品。
ペーターゼン自らがメガホンを取った作品でもあるが、大コケしたためにトラウマを負い、生涯唯一の監督作品となった。

  • エージェント・ゴールド
ロッシオの企画した映画を撮る資金&話題集めのために製作された、マーティン主役の大衆娯楽映画。
クールでオシャレなS級工作員「ゴールド」が某国の王子を護衛しながら戦う、ゴリッゴリのエンタメ作品。
ペーターゼンの提案で、ロッシオを補佐に付けてヘディにメガホンを取らせた。
人気が出たため全3作のシリーズ作品になり、アクションフィギュアにもなった。


  • Heart Of Ghenna
プロデュースをペーターゼン、監督をロッシオ、主役をマーティンが務めた大作映画。全員が文字通り身命を賭して当たった渾身の一作。
戦場の狂気に当てられた人間の心の闇を、ロッシオの天才的感性とマーティンのカリスマ性溢れる演技で鮮烈に暴き出した映画史に残る傑作となった。


  • Laugh and be FAT
  • CLIP
ジーンとペーターゼンがタッグを組んだ作品。マーティン・ブラドックといった名優が集結した超大作。
当初の脚本では老マフィアとストリートギャングの戦いを描いた痛快アクションだったが、ジーンが新しいアイデアに閃いたために今までの脚本を全没にする。
その結果、謎の男が支配層の老人たちを殺して回るフィルムノワール作品に一変した。
もちろん殺され役は当初の主役の名俳優たちである。


  • Le Salon de Flurredelis(フルールドリスの文学サロン)
ポンポさんと学友たち、そしてミスティアやナタリーら女子キャラが総結集して製作したジーン監督作品。
名門女学園文芸部のメンバーが、過去の高潔な生徒に憧れ学生運動を起こす青春映画。
過去と未来が交錯する野心的な作風にジーンは一気に魅せられることになる。











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最終更新:2025年04月24日 16:31

*1 厳密には『2』と『フランちゃん』は同時進行だが、ストーリー的には『2』既読を前提とした方が多少は分かりやすい。

*2 なお『ヨヨとネネ』は作中でコルベット監督が「好きな映画」の一本として挙げている。