SCP-171-JP

登録日:2022/01/20 Thu 02:30:14
更新日:2025/03/10 Mon 00:18:23
所要時間:約 7 分で読めます




「偶然ではない」ということの証明は「必然である」という証明よりも遥かに難しい。


SCP-171-JPとは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」の日本支部によって生み出されたオブジェクトの一つである。
項目名は「見えざる手料理」。
オブジェクトクラスは「Euclid」。


概要

このオブジェクトが何かというと、日本の北海道のある地点に存在するおよそ半径320mにわたる領域である。
周辺画像の写真もあるが、見た限りでは何の変哲もない平原である。

場所が問題であるのなら、いつもの財団がやるようにその領域ごと囲ってしまえば?
と思う方もいるかもしれないが、今回は間の悪いことに、この領域の周辺が
一般的には観光に用いられてしまっていた。

永続的な封鎖や、大規模な囲い込みをすると逆に目立ってしまうことを懸念した財団は、
このSCP-171-JPの周辺の封鎖はあくまで短期間に留めることにし、

  • 計3基の人工衛星の割り当て
  • 土地管理者に偽装したエージェントの配置
  • 現地の地下施設に機動部隊を常駐
  • 警戒エリア外の財団フロント企業である各種店舗に常時17人以上の人員配置
  • 警戒エリア内の一週間に一度の清掃

といったように、いつもの囲い込みからするとかなり多い人員で監視を行っている。


さて、この領域の異常性についてだが、それは何らかの調理済み物品・・・
つまり、料理の名称が書かれた紙媒体が、領域内に安置されることで発揮される。
安置されてから2時間~52時間の間に、紙媒体の上に乗る形で、その料理が完成されるのだ。

・・・・・・何か随分、時間がかかるな? と思われた方もいるだろう。
それもそのはず。この料理は、複数の『偶然の』自然現象の影響によって完成するのだ。
料理に使われる素材の収集から、その加工(調理)に至るまで、全てが自然現象の影響で行われる。
恐らくは突発的な自然現象、もしくは確率変動させられているのではないか、と
財団は分析しているが、非常に突発的という以外に自然現象そのものに異常性は無いという。

また、これらの現象については、SCP-171-JPの領域内だけでなく、領域外でも発生する。
現在に至るまで、最も遠隔で発生した現象は、黒塗りされているが何かの墜落。
嵐か何かで貨物輸送機でも墜落させたのだろうか?



SCP〇〇時間クッキング

では、財団の実験記録を見ていこう。

補遺1には、過程記録として「スパゲティーナポリタン 600g」と書いたA4用紙を
設置して実験した時の様子が書かれている。

開始時刻は16:30。
エージェントの一人が用紙を固定し、以後は地下施設で待機していた。


16:52 エリア周辺の風速が徐々に上昇する様子が映し出される。

17:08 数本の細長い線のようなものが風に転がされて用紙の直上へと運ばれて来る。
    これは市販されているパスタの乾麺であり、エリア周辺に存在したゴミの一種と思われる。


もう、この時点で食いたくない。
とりあえず、料理を完成させられるなら素材の良し悪しは関係しないらしい。


17:16 次々にパスタが用紙上に転がり集まってくる。天候に変化が生じ、雨天の傾向を見せ始める。

17:43 パスタの進入が停止。雨が降り始める。

17:55 雨が激しく降っている。この天候は事前の気象状態から予想されたものではなく、
    実験開始の直後から急速に変化していった結果のものである。


茹でた後のパスタではなく、乾麺の状態の物を集めた以上、水は必要だが・・・


18:22 強風が吹き荒れ、雷の発生が確認され始める。

18:34 強風によっていくつかの物品が用紙周辺まで吹き飛ばされる。それらは後に内容物が少量残ったケチャップの容器、
    新品の塩の容器(エリア外の財団フロント企業店舗から漏出したものと確認)、12種類の植物の葉、オリーブの実
    である事が確認された。

18:44 強風によって、用紙と用紙上のパスタを囲むようにして葉が折り重なる。葉は雨が隙間を埋める事で互いに接着し、
    一つの容器のような形状を形作る。その中にはパスタと水が含まれている。


一気に色々集めてきた。
植物の葉に関してはどうやら料理の材料に使うのではなく、鍋か何かの代わりにでもするようだ。


18:47 容器内に落雷。電磁波の影響で定点カメラ全てが機能を停止する。


ダイナミック電熱調理。


19:12 カメラの交換の後録画を再開。葉の容器は落雷によって破壊されており、用紙も破損が見られるが、
    その上には茹で上がったパスタの麺が置かれている。更に、傍には落雷によって破損したと思われる塩の容器が倒れており、
    破損部から内容物を少量溢れ出させていた。


カメラの交換を行った人の証言によると、やはり落雷で容器ごとパスタをゆで上げたらしい。
何気に茹でる際に水に入れておく塩も忘れていない。そんなことは些細なこと過ぎるが。


19:22 雨が収まり始める。

19:25 天候が完全に回復する。


おや、これで調理終了か? ・・・と思ったのも束の間。


19:27 画面外から、一頭の食用豚の成体が画面内に進入する。後の調査によって、█████を進んでいた
    輸送トラックが32分前にSCP-171-JP事象による嵐で横転し、そこから逃げ出した個体であることが判明している。


豚さん登場。

そうだな、ナポリタンならハムだとか、ウィンナーソーセージだとかが具材に必要だもんな・・・
とはいえ、生きている豚なんてどうするつもりなのか。


19:33 画面上方から突如飛来した物体が食用豚に命中。絶命させる。物体は後にごく小規模の隕石であると判明している。
    絶命した食用豚の肉片がパスタの上へと吹き飛ばされる。肉片は隕石の熱によって十分に加熱されているように見える。
    隕石は同時に衝撃によってケチャップ容器を破壊し、内容物を撒き散らさせた。その一部はパスタにもかかっている。


まさかのメテオストライク。

そりゃ、天体現象も自然現象だが。つまり、このSCP、宇宙にまで干渉できるということらしい。
これによって豚さんは料理に使う程度の加工肉へと変貌。
更に、ケチャップまでこの時にかけている。うーん、効率的。

だが、調理はまだ終わらない。


19:35 SCP-171-JPエリアから半径10km以内の区域で、急激な気温の上昇を確認。急速にエリア周辺の水分が気化していく。

19:54 19:33時の隕石が保持していた熱量によって、周辺植物が発火する。


火災発生。


19:57 乾燥のため、延焼が拡大する。被害が地下施設にも及ぶ可能性があったため、この時点で待機人員によって
    火は消し止められた。火はパスタを取り囲むようにして延焼していた。


流石に大規模な火災にはしたくない財団、ここでフォローに入る。
火自体は、どうやらパスタを炒める為の物だったらしい。



20:04 気温が徐々に下がり始める。

20:27 当該地域の平常時の前例から鑑みて、平常と言えるレベルにまで気温が低下する。

20:40 SCP-171-JP事象は終了したものと見なされ、実験の終了が宣言された。


とまぁ、実に調理時間約4時間。これにて調理終了である。
出来上がった「スパゲティーナポリタン」だが、ほぼ全ての麺同士が癒着している代物だったらしい。
そりゃ、落雷なんてもので茹でちゃったらなぁ・・・。

終了報告書には、「誰かさんはどうやらあまり料理が得意では無いようです」
割と呑気なことが書かれている。隕石が降ってきたりしたのに。

とはいえ、この実験によって、SCP-171-JPがかなりの広範囲によって影響を及ぼすこと、
その影響からの連鎖現象なども予測がつかないことが分かった。

ちなみに、SCP-171-JPによって作られた料理だが、
この「スパゲティーナポリタン」以外にも財団は確認している。


・焼きそば 150g

具無し&麺はほぼ液状化。やっぱり雷だろうか。


・ハンバーグ 100g

焦げている上に砕けてしまっている。どうやって挽肉なんて調達したのかも謎だが・・・


・ネギ入り味噌汁 8ℓ

容器が無かったので、全部土に還ってしまったらしい。
しかし、何でまた8リットルも作らせたのか。


・茶碗蒸し 20g

大量の土壌が混入していたそうな。容器について何も言及がない所を見ると、
茶碗については調達できたのだろうか。


・チョコレートケーキ 300g
・豆腐 2t
・焼き鮭の納豆ペーストとトマトソースがけ 150g

いずれも[編集済]。何があった。
というか、豆腐が「2トン」もツッコミどころだが特異な料理が一つ混ざっているぞ。

そして、更にもう一つ。


・栗饅頭 200kg

[削除済]

・・・これについては、補遺がもう一つある。



補遺

ある時、SCP-171-JPの事象が予期せず発生してしまった。
原因は『栗饅頭に関する広告チラシ』が、どこからともなく飛んできて、SCP-171-JPのエリア内に
置かれてしまったから。

それによって、全国での被害額が計上不可能なほどの大規模現象が発生。
報告書内でも[削除済]の記載の連発であり、何か途轍もないことが起こったのは間違いない。
更に言えば、被害者数すらも[削除済]。一体、何が起こってしまったのか・・・

特別収容プロトコルとして、最初に書いたような多くの人員配置だが、
それも決して大げさではないということである。
また、SCP-171-JPに関する実験については、無条件却下または禁止の措置が取られた。


だが、裏を返せば、それだけのことをしでかせるのにも関わらず、
最終的にやっていることは『調理』なのである。

何かが意志を持ってやっているのか、それとも・・・ただの『偶然』なのだろうか。




追記・修正は、料理名を書いた紙を置いてからお願いします。

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最終更新:2025年03月10日 00:18