登録日:2023/04/22 Sat 20:10:39
更新日:2025/04/19 Sat 05:31:01
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「この世界は不完全すぎる」とは、左藤真通による漫画作品。
2024年7月5日にアニメ放送開始。
あらすじ
極秘に組織された調査隊「王の探究者」によって、開拓が進められるファンタジー世界。
この世のあらゆる事象を調べ、世界を旅する探究者は人々から尊敬される憧れの職業であった。
そんな探究者の一員・ハガは、立ち寄った村でドラゴンに襲われていた村娘・ニコラを助け、さらにその村もドラゴンの襲撃から守ることに成功する。
喜びを分かち合う二人だが、それもつかの間、ニコラを含む村の住人は皆、突如体中が燃え上がり焼死してしまう。
死にゆくニコラにハガは言う。「これは負けイベントなんです」と。
どんな条件でも村がちゃんと全滅するかを確かめる、つまりVRMMOゲームであるこの世界「キングス・シーカー・オンライン」をデバッグするのがハガの本当の仕事だったのだ。
ニコラの死を確認したハガは村のデバッグを切り上げ、張ったテントで野営しつつ調査結果をまとめる作業に入る。
そこに、さきほど眼の前で焼死したはずのニコラが現れて……?
ハガ達デバッガーが
ゲームに囚われ、キングス・シーカー・オンラインを出られなくなってから、もうすぐ一年。
概要
……という
あらすじの通り、本作は「
ソードアート・オンライン」や「
ログ・ホライズン」に近い、「仮想世界に閉じ込められる」枠組みの作品である。
「異世界から帰れない」という点では異世界転生ものに近いと言えなくもないが、本作の目玉は
「バグやハメ技、グリッチ等を最大限活用してゲームを攻略する」ところ。
基本は
ファンタジー冒険譚よろしく異世界を旅するものの、その世界……
ゲームはまだ未完成のため、欠陥が多く残っており、その欠陥をいかに突いて問題を解決するか、という謎解き的な要素が強め。
また、こういった作品では
モブキャラになりやすいNPCも本筋にガッツリ関わってくる。
逆に、人間のプレイヤーは
敵としての登場がほとんど。
しかもその全員が
チート使い放題のチーターであるため、そいつらの排除方法もまた謎解きの一つである。
そうしてチートを使い尽くした人間がやることをなくして精神的に壊れていく様もわりと克明に描かれているので、そういうのが見たい人にはオススメの漫画である。
余談だが、敵キャラ等もオーソドックスなものから外れたキモカワデザインであり、そういう新奇性も見どころ。
世界観
キングス・シーカー・オンライン
近日公開予定?のフルダイブ型MMORPG。
ゲームのシナリオ的には「大陸フェルナークの辺境にある島・クレボーン島を自由に冒険する」といった感じで、各地に発生するクエストやシナリオを好きなタイミングでこなしていくスタイルの模様。
デバッグ段階だからこそなのか、あるいは元々の作りが雑なのか、至る所にバグが存在する。
- クレボーン島を中心に、いくつか離島がある
- 大きく5つのエリアに分けられており、それぞれに管理者たる「メタAI」がいる
- メインシナリオは一応存在する
といった感じ。
王の探究者
王の命の名のもとに、世界を探検する職業。
メタ的に言えば、キングス・シーカー・オンラインにログインしたプレイヤーが割り振られる役割。
「キングス・シーカー・オンライン」はまだ正式リリースされていないため、プレイヤーは全員デバッガーであり、「石版」を使ってデバッグモードになれる。つまりハガも含めて人間のプレイヤーはほぼ全員がチートを使うわけだが、ハガ等チートをあえて使わない、あるいは石版を紛失して使えない者もいる。
デバッガー
ゲームの中でいろいろな動作を試し、その
ゲームが正常にプレイできるかを調査する作業「デバッグ」を行う職業。一応言っておくが実在の職業である。
キングス・シーカー・オンラインにログインしたプレイヤー=デバッガー達は1年近くログアウトできず
ゲームの中に閉じ込められている。当然、そんな異常事態下で漫然とデバッグをしていられるはずもなく、殆どのデバッガーはデバッグの仕事を放棄し、デバッグモードを利用して自由気ままに遊んでいる。
一応擁護しておくと、デバッガー達はもとからクズだったり怠惰だったりするわけではなく、
ゲームの世界から抜け出せないストレスから心を守るためにチートで遊んでいるという側面が強い。
しかしそれにも限界はあり、登場するデバッガーは多かれ少なかれ精神を病んできている状態にある。
ゲーム内で死亡したり身動きが取れなくなったりしたプレイヤーがその後どうなるのかは確かめようがないため、本作では処理落ちによるフリーズや無限ループといった「再起動すれば直る系のエラー」が死にも勝る脅威として描かれる。
石版
プレイヤー達がそれぞれ一つずつ所有するアイテム。
本来はプレイヤー全員が持たされるサポートアイテムだが、本作は正式リリース前なので「調査結果を書いた紙(バグシート)を裏向きにして押し当てることで運営にメールを送れる機能」「デバッグモードを起動し、そこから自由にチートコマンドを使用できる機能」が追加されたデバッガー専用バージョンが配布されている。
現在ほとんどのプレイヤーはこのデバッグモード目的で使用しており、前者の使い方をするのはハガくらいである。
プレイヤー1人につきひとつずつ紐づけられており、他人の物は使用できない。
グリッチ
作中用語としてはほぼ出てこないワードだが、深く関わる要素なので解説する。
単語としては「不具合」などと言った意味だが、ゲームにおけるグリッチとは、バグや仕様の穴を突いて意図的にバグを起こすことで行使する裏技のことを指す。コンピューターのシステムに直に干渉する行為のため、グリッチを使用しない通常の裏技より難易度が高く、またRTAなどの大会ではレギュレーション次第で禁じ手とされることも少なくない。
また、モロに「バグ」「仕様の穴」でもあるため、開発者にとってはまっさきに対策すべき欠陥である。
これらのバグを潰し切り、グリッチが行えないようにしてから製品化するのがゲーム開発における大原則であるため、発見も実行も極めて難しく、CPUの知識に精通していなければ気付けないことがほとんど。
上記の通り難易度が高く発見も難しい上にダーティな手段だが、通常の裏技よりもさらに可能性が広く、使いこなせたならば常識外れのアクションが可能となる。
登場人物
主要人物
ハガ/羽賀
CV:
石川界人
本作の主人公。所属は(株)ニシマテック。
無秩序状態に陥ったプレイヤー達の中でほぼ唯一、地道にデバッグを続けている男。
これはデバッグの仕事に誇りを持っている……だけではなく、「仕事に没頭することで正気を保っている」ためであることが示唆されている。
ただ、そのデバッグの様子は「壁に延々と顔を擦り付ける」「宝箱の開け閉めを繰り返す」など奇行としか思えない絵面であることが多く、奇人扱いされることが多い。
他のデバッガーと同じく「石版」を用いてチートを使える立場だが、それを乱用したニシマテックの同僚が
無限ループにハマって生死不明の状態に陥ったことから、デバッグモードの使用を頑なに拒んでいる。
なお、デバッグは使用しないがバグの悪用などのグリッチは躊躇なく使用し、クソ真面目にバグを探しているだけあってデバッガーとの戦いでは幾度もそれが切り札となる。
ガタイのいい体格をしているがこれはキャラクリでごつい見た目を使っているだけで、現実の姿はひょろいもやしっ子みたいなルックス。性格も草食系で主張の弱い
オタク気質。だが、デバッグに掛ける執念は人一倍であり、傍目からは奇行にしか見えないデバッグ作業をわき目も振らずやり続ける姿には呆れられることも多い。
現在は「
ゲームのシナリオを最後まで終えれば出られるのではないか?」という仮説のもとに、シナリオの攻略を進めている。
ニコラ
CV:矢野妃菜喜
ルイーザ村の村娘。
ルイーザ村にデバッグの為訪れたハガに憧れ、自分も探求者になるべくハガに弟子入りを志願する。
ゲーム的にはNPC、それも「むらびとその1」的立ち位置のモブキャラで、本来はある襲撃イベントによって村人もろともドラゴンに殺される運命であった。しかし、何らかの理由により蘇生。その際死亡直前の記憶を「探求者に憧れ、村を飛び出して旅に出た」という内容に改ざんされており、その状態でハガの旅に同行することになる。
ハガのことはも
探求者として尊敬しており、彼の奇行(=デバッグ作業)も「
探求者として必要な仕事」と捉えてデバッグ作業に勤しむ。やがて彼女も、NPCでありながら一人前(?)のデバッガーへと成長することに……。
元が冒険を想定されていない
モブキャラなので戦闘能力は皆無で、レベルも持たない。だが、レベルが設定されていないが故に「持ち主のレベル次第で威力が変わる道具」を手にするとその道具がバグを起こし、
カンスト同然の超威力を叩き出す。
テスラ
「メタAI」を自称する謎の存在。
本人の曰くによれば「全部で5人いる
ゲームの管理AIのひとり」とのこと。
ニコラの体を借りて現れ、ハガに「デバッグを放棄して
ゲームの秩序を
荒らしている悪質なデバッガー達を追い出してほしい」と頼み込む。その気になればニコラ以外の姿になることも可能らしい。
以降もたびたびニコラを乗っ取る形で出現するが、やることは「石版を食べて回収する」くらいであんまり役には立たない。
メタAIの中では最も秩序を重んじ、規律を守らせることに強く拘る。
その生真面目な性格のせいで他のメタAIからはウザがられていたらしい。
神(ジン)さん/神林 祐翔
CV:
小野大輔
(株)ニシマテック所属のデバッガーチームのリーダー。
洞察力が鋭く、誰も気づかなかったバグにも即座に気づくなど、デバッガーとしての能力が非常に高い。
ハガにとっての憧れの存在である。
クリアをすればログアウトできるのではないかという推測を立てており、ハガに波子たちの救助が出来ないかを頼んだあと、旅立った。
平 波子
CV:村上奈津実
黒崎 優
CV:熊谷健太郎
鈴木 洋平
CV:
岡本信彦
(株)ニシマテック所属の社員。ハガこと羽賀と共にログインし、デバッグ作業を担当していた。
……が、
ゲームから出られない事で仕事を放棄し、デバッグモードで遊んでいた。
その結果、波子は死亡とリスポーンを延々繰り返す
無限ループに嵌り、黒崎は地形に埋まり、鈴木は空の彼方に飛ばされてしまい……という凄惨な目に遭う。
(株)アソビング社員とその関係者
キングス・シーカー・オンラインのデバッグに参加している企業の一つ。
いわゆる「陽キャ」のノリが強い体育会系の会社らしく、社員は社長を含めて全員がデバッグを放棄し異世界ライフをエンジョイする方針を取っている。
一方、社員の多くがNPCに拷問をして遊ぶ、アマノが社内で虐められていたことを示唆する描写があるなど、異世界生活の中で負の面も如実に出てしまっている。
まともな社員もいたらしいが、そういった社員はこの方針についていけずに離脱しており、中には行方不明になってる者もいるらしい。
アマノ/天野イソラ
ハガと同じくこの世界にログインしたまま出られなくなっているデバッガーの男性。
(株)アソビングから派遣されているようだが、本人曰く「デバッガーのバイト」。
二足歩行する猫のような犬のような
亜人種「フェザー」をアバターに使用している。
彼もまたデバッグ作業を放棄しているが、現在は書斎に引きこもり、趣味の漫画を描いてそれをNPCのルゥに読ませる生活を続けている。
ハガ曰く「仕事に没頭することで正気を保ってる」「僕と同じ」とのこと。
人付き合いを好まず、(株)アソビングのウェイ系のノリに嫌気が差して逃走。アソビングのメンバーの目を誤魔化すため、とある村にNPCのフリをして潜伏しつつ漫画を描く隠遁生活を送っていた。
偏屈で口の悪い皮肉屋だが実際のところは結構な人情家で涙もろい。
NPCや他のプレイヤーに感情移入することも多い。
ルゥ
サブクエスト「詩を聞かせて」の依頼人にあたるNPC。
劇中の描写を見る限り、クエスト内容は「足が悪く、あまり外出できないルゥに物語を聞かせ、高い評価を貰えればクリア」という内容の模様。
アマノはそれを利用し、漫画を描いては彼女にその原稿を見せ、彼女の反応をモチベに漫画を描き続けていた。
アマノ同様、排他的で人との関わりをあまり好まない性格だが、アマノのことだけは慕っている。
隅田、酒井
(株)アソビングのデバッガー。
デバッグを駆使して物理演算的に無理のある城を構築したり、怪物に乗って街を破壊したり、ヴァンパイアを捕まえて人体実験をしたり、と、我々が思いつくようなチートプレイは大体やっている。
当初はハガもその「遊び」に誘うのだが、そのあまりに不真面目な態度(予期しないバグを誘発する危険性があるため、デバッガーの無闇なチート利用は推奨されない)に憤慨したハガは拒否。敵対関係となる。
社長
(株)アソビングの社長であり、隅田らデバッガーの取りまとめ役。
曰く「非常事態なのだからデバッグなんかやってる場合じゃない」として、チートプレイをエンジョイする方針を取っており、部下たちの残虐な遊びも容認している。というか、彼本人もチートプレイに興じている。
それでも、現実に帰ることができない現状に不安が蓄積しており、精神が不安定になってるらしく、精神異常を治すポーションを常飲している描写がある。
途中で、方針を切り替えて
ゲームからの脱出手段を探すことを宣言。
……した矢先に、まだまだ享楽に興じていたい酒井らに嵌められ、(ゲーム内で)殺されてしまう。
既婚者らしく、現実世界では、妻と子供がいるらしい。
(株)エンタメイション社員とその関係者
キングス・シーカー・オンラインのデバッグに参加している企業の一つ。
ウェイ系チーターとしての側面の強かった(株)アソビングとは異なり、おとなしい気性の社員が多め。
やはりというかデバッグ作業は放棄している。正確に言うと、どうあがいても出られない事によるメンタル不調を訴える社員を見て、この
ゲームの世界でロールプレイに興じる方針に転換した。
それでもメンタルの不調が改善しない社員には「あること」をしているようで……?
アキラ
この世界にログインしたまま出られなくなっているデバッガーの女性。
長身のエルフの姿をしたアバターを利用しているが、女性というには不用心な言動から、ハガやアマノはちょっと引いている。
不自然なものは排除しようと考えることが多く、デバッガーとして世界を直すことを優先するハガとは、対立することもある。
「この世界の住人として生きる」と公言し、元の世界に帰ることを諦めているようだが…?
アルバ
サイ王国を統括するNPC。テスラと同じく管理AIのひとり。
厳格にデバッグ作業を要求するテスラに比べ、良くも悪くも民思いの面が強く、溝口をはじめとするデバッガーの要望に合わせる形でサイ王国の指導者となっていた。
溝口レン
デバッガーの男性。アキラの上司であり、アルバの側近。
囚われたデバッガーのリーダー的立場にいる管理職で、エンタメイション陣営における実質的な指導者。
アカネ/宮崎アカネ
デバッガー。アマノと同じく「フェザー」をアバターに使用している。語尾に「にゃ」をつける喋り方をする。
明るい性格だが、ギャンブルには目がない。
キノシタ/木下マユ
アルバイトのデバッガー。元は「リザードマン」のアバターを使用していたが、ある装備を手にした所、「?」のマークが刻まれた正八面体の姿になってしまう。どうやら、装備のモデルが用意されてなかったことによるバグのようである。
ただ、「リザードマン」の姿は上から決められたことであり、本人はあまり気に入ってなかったので、この姿もそこまで気にしていない。
職業はフェンサーであり、剣での素早い連続攻撃を好む。
かなりのゲーマーらしく、様々なゲームをやり込んでおり、その知識でパーティの危機を救うこともある。
モラヴィ集落
ヤマナカ
モラヴィ集落を訪れたデバッガー。いじめられているゲーデルを不憫に思い、力を与えてシーカーにする。
その後はモラヴィ集落から出ていったらしい。一人で行動しているフリーの立場らしく、詳細は不明。
ゲーデル
NPCだが、シーカーを名乗るキャラクター。凄まじい巨体と怪力を誇る。
ただ、これはヤマナカによって与えられた力によるものらしく、元は貧弱であり、戦士の村であるモラヴィ集落では、洗濯などの仕事を押し付けられるなど、のけ者にされていた。
(株)ナマズ
マツタニ
モンスターに攻撃されて飲み込まれたが、なぜかチュートリアルステージに戻るというバグに遭遇し、そこから出られなくなったデバッガー。
メガネを掛けたドワーフの姿をしている。
脱出のために1年以上、様々な方法を模索しており、表示限界を超える高さの塔を作り上げている。
過去にジンと組んでいたことがあるらしい。
その他
伊藤ヒカリ
ジンの助手をしている女性。テスラによると、どうやらプレイヤー(デバッガー)ではないらしい。
イガラシ
一人で探索を続けているデバッガー。ゲームから脱出する手段を知っているという。
追記・修正をお願いします。
- コンソールコマンドがスカイリムでよく見たヤツ -- 名無しさん (2023-04-22 21:53:14)
- dmmにて3巻まで無料で読めたが、これは… -- 名無しさん (2024-04-20 16:40:07)
- ちょっとした操作でフリーズしたりテクスチャの裏に潜り込んで出られなくなるような昔のバグゲーの恐怖をゲーム世界転移で表現するのが上手い -- 名無しさん (2024-07-06 13:16:48)
最終更新:2025年04月19日 05:31