登録日:2011/10/15 Sat 20:15:30
更新日:2024/11/13 Wed 19:24:34
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ファンタジーとは、
非現実的な世界観を持つ作品、あるいはそれらを扱ったジャンルのこと。
例えば魔法と妖精、好例としては
ディズニーが挙げられる。
他にも非現実的要素としては
超能力・
錬金術・念能力・死神・
死後の世界等がある。
ファンタジーがSFの対局かと言われるとそうでもなく、例えば
カードキャプターさくらや
魔法少女まどか☆マギカなんかは優れたSF作品に送られる星雲賞を受賞している。
むしろSFかどうかは表現形態の問題にすぎず、ファンタジーの中にSFがあると思っておいた方がいい(まあ、この辺はSF界隈のマーケティングの話もあるのであまり鵜呑みにもできないが)。
この定義を適用すると「じゃあドラゴンボールもファンタジー?」とか言われそうだが、
なぜか「ファンタジー=中世の西洋的な世界で、騎士とか魔法使いとかドラゴンが出てくるお話」という強い固定観念がある(あくまで傾向であり、もちろん例外はある)。広義にはドラゴンボールもファンタジーで間違いはないが、時と場合によって様々に意味を変える単語であるといえる。
西洋風ファンタジーに比べるとマイナーだが、
東洋(と言っても大抵は中国だが)や日本風の世界を舞台にしたファンタジーももちろんある(有名どころは十二国記や
彩雲国物語、勾玉シリーズ、サンダーボルトファンタジー、大神、桃太郎伝説等)。
とりあえず現実とは違うオリエンタルな世界で侍とか忍者とか変な中国人とか陰陽師とか坊さんとか巫女さんが活躍したり、
妖怪が出てくるお話と言えば大体雰囲気は伝わるだろう。
これらの作品は、世界設定にもよるが西洋風ファンタジーでお馴染みの用語(横文字)が使えなかったりと制作者泣かせだが、
独特の雰囲気を確立しておりコアなファンが多い。
特にライト文芸や少女小説では一大ジャンルであり、後宮を舞台にした政治劇・恋愛劇を描いた作品が非常に多い。
さて、ファンタジー最大の魅力は、空想の産物でしかないものを自分のものとして自在に使える点だろうか。
いわば人類の夢の具現化である。
かと言って「魔法使い放題だからピンチになったらとりあえず魔法でいいじゃん」とか「ずっと無敵な主人公」とかやると面白くならない。
漫画や小説の醍醐味は、限られた情報や資源、圧倒的不利な状況の中で、いかに智恵を働かせて状況を打開するか、という点が大きい。
それはジャンルとしてのファンタジー作品にも当てはまる。
よって多くのファンタジー作品は、非現実的ながらもある程度練り込まれた世界観を持っている。
魔法の発動制限や誓約、また魔法習得までの血の滲む努力等。
あるいは読者や他ジャンルとのなんらかのつながりのようなものも、ファンタジーで描くことがある。
かなり詳細な世界観を持つファンタジー作品は、有名どころで言うと『
鋼の錬金術師』とかだろうか。
世界観もへったくれも無くいきなり魔法発動俺最強フォーなんてやるのは、もはや
メアリー・スーである。
ファンタジーは大分して「ハイファンタジー」と「ローファンタジー」の2つがある。
■ハイファンタジー
魔法や妖精といった「
非現実的要素が元々存在する世界」をベースにした作品。特に現実世界に似た世界の主人公が異世界に行くものを
異世界モノと呼ぶ。
ハイファンタジーと呼ばれる作品は魔法などの特殊能力にある程度の再現性が示唆されることが多い。
典型的なハイファンタジーとされるもの
○小説
- 指輪物語
- ゲド戦記
- 英雄コナン
- 氷と炎の歌
- アルスラーン戦記
- ウィッチャー
- エルリック・サーガ
- ファファード&グレイ・マウザー
- ロードス島戦記
- ダークエルフ物語
- フォーチュンクエスト
- 異次元騎士カズマ
- グイン・サーガ
- ハウルの動く城
- バーティミアス
- デルトラクエスト
- 夢の宮シリーズ
- 十二国記
- 精霊の守り人
- 夜の写本師
- 狼と香辛料
- キノの旅
- 七つの魔剣が支配する
他、ミヒャエルエンデの小説など。
○漫画
○映画
- ダーククリスタル
- ロードオブザリング
- ネバーエンディングストーリー
他、ディズニー映画など
広義にハイファンタジーとされるもの
■ゲームファンタジー
下記の「なろう系」を多く含む。
「ゲームファンタジー」というジャンルは作者サイドが区別のため名乗るというよりは、なろう系に蔑称のニュアンスがあること、
「
小説家になろう」掲載作品でなくてもなろう作品と共通する世界観を持つ作品が増えたことから、より広範かつプレーンな用語として読者側のタグ付けとして使われるようになった部分がある。
■ローファンタジー
現実世界をベースに、何らかの偶発的原因によって登場した非現実的要素をめぐる作品。
○シェアードワールド
○漫画
○小説
○映画
- 大魔神
- ラビリンス/魔王の迷宮
- アルゴ探検隊の大冒険
- シンバッド七回目の航海
- アリス
エブリデイマジック
日常に非現実要素が混じる、ローファンタジーの一形態。日本では「ご町内もの」などとも呼ばれる。
伝奇
ファンタジー要素に神話などの明確な元ネタが存在し、ある程度それに沿って設定が作られているもの。
■ハイ・ロー両方が混じったファンタジー
ハイファンタジーとローファンタジーは「二分」できるわけではなく、交じり合っている作品も多々ある。
例えば
ハリー・ポッターシリーズは「現実によく似た異世界」と解釈するならハイ、「現実世界の裏に魔法世界がある」と解釈するならロー。
指輪物語も、物語中の描写は明らかにハイだが、現実と通じる世界という設定があるため、それを適用するならロー。
異世界モノの作品も、「現実世界の人間」が「非現実に行く」ので、どちらとも言い切れないパターンが多くなる。
作中の描写、読み手の解釈、
裏設定なども絡み、ハイ・ローの分類は難しいのである。また、そもそもファンタジーは本来超自然的なものごとをそのようなものとして語ることが少ない。
- 魔法少女まどか☆マギカ
- けものフレンズ
- BASTARD!! -暗黒の破壊神-
- ナルニア国ものがたり
- ハリー・ポッター
- クトゥルフ神話
- 魔法の国ザンス
- ダレン・シャン
■異世界モノ/なろう系
上述の異世界モノのうち、世界観や用語が共有されていて、特定の用語を用いて世界観の説明をしたり、省いたりすることが容易なもの。
小説家になろうをはじめとするWebサイトで発達したためこう呼ばれる。あくまで提喩であるのでWeb小説に限らず、それらの影響を受けた漫画やアニメなども含まれる。
多くは転移系だが、現地主人公のものも含まれる。
典型的には以下の二つのうちいずれかの特徴を持つ。
▶︎主に戦闘分野について、主人公や主人公の勢力だけが圧倒的に強かったり、強くなり続けたりする。(
俺TUEEE)
▶︎「スキル」などと呼ばれるゲーム的なシステムの異能力が存在する。(ゲームファンタジー)
これらの特徴は同じ小説家になろうで隆盛している「現代
ダンジョン」などのジャンルにも当てはまり、これまでのファンタジー設定を引き継いでいるというよりは所謂「俺TUEEE」的な展開を行いやすくするためにファンタジー設定を使っているに過ぎないと言える。
追放
なろう系の中で発達した一ジャンルのうちひとつ。主人公が何らかの集団から追放され、追放した側よりも力をつけるものである。
これはもはやジャンルがファンタジー作品に限定されることはなくなった。
悪役令嬢
乙女ゲームの中の世界の悪役に生まれ変わり、倒されないようにするもの。ゲームの主人公は元の世界で悪役令嬢に転生する前の人物を虐めていた人間の生まれ変わりである場合がしばしばある。中国宮廷モノに端を発する。
F自
ファンタジー世界に
自衛隊が転移するもの。『戦国自衛隊』の影響がある。
超自然という点ではファンタジーだが、あまりファンタジーとは呼ばれない。
ファンタジー同様(またはそれ以上に)新規性を求めるジャンルではあるものの劇中の超常現象やその社会の風習といった謎は「理由が分からないのは当たり前」というようなことはなく、広く知られた科学技術や事前に与えられた伏線によって解決される場合が多い。
その意味では『夏への扉』や『ピトル・ポーウォブ課』はSFの中でもファンタジー寄りと言えるし、『異世界の名探偵』や『七つの魔剣が支配する』などはファンタジーの中でもSF寄りと言えるかもしれない。
森下一仁『思考する物語: SFの原理・歴史・主題』によればSFとファンタジーとの違いはファンタジー設定が他の設定に関与するかどうかという点にあるという。またそのような特徴を持つハイファンタジーに対しても、SFは現実の設定を用いて読者に現実感を与えるという違いがある。
○アニメ
○小説
- アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー
- 宇宙船ビーグル号の冒険
科学的なアプローチ
MMORPGの世界観を用いた『
ソードアート・オンライン』のように、科学技術が裏にあるものに関してもファンタジー扱いされることがある。
架空言語系
以下は架空言語に対するアプローチが人文科学に根ざしている。
- 指輪物語
- 氷と炎の歌
- ヘテロゲニアリンギスティコ: 異種族言語学入門
- 紫苑の書
- 異世界転生したけど日本語が通じなかった
- 世界のあいだ
ロボット
■魔術的リアリズム
「その世界の人物が超常現象に対して、大らかに受け容れる姿勢である話」のこと。ある意味ファンタジーの本来的な姿であると言える。
絵本/児童書
しばしばSFとは対局の存在として置かれる。『ゆうすげ村の小さな旅館』のように、超常現象が起こっても登場人物があまりそれを気にしない場合が多い。SFやファンタジーは読者の持つ常識や価値観を塗り替え、更新していくものだが、絵本の読者はそもそもそうした常識を持っていないからであろう。
■ダークファンタジー
「非現実的な世界観を舞台にした闇っぽい話」のこと。
先に書いておくと非常に広いジャンルである。
闇っぽいってなんだよと思われるだろうが、本当にそれくらいしか条件がない。
ウィッチャーのような「中世ヨーロッパ風剣と魔法のファンタジーをベースに、雰囲気が暗いもの」が典型的なダークファンタジーだが、
現代やその他の世界が舞台でも、人が死んだり、闇夜で戦ったりすればダークファンタジーである。
鋼の錬金術師や
進撃の巨人のような「現実を舞台にしていないが、
SFと呼ぶほど科学が発達しておらず、純粋なファンタジーと呼ぶにはリアル寄り」の分類困難な作品が
雑に突っ込まれることも。
ダークファンタジーと呼ばれたことのある作品
■エロの一部のジャンル
触手モノ、
時間停止モノ、ニプルファック、尿道姦、マトリョーシ姦、
ふたなり、氏賀Y太作品など
現実の通常のエロではありえないものもファンタジーものと呼ばれることがある。
ファンタジー作品ではしばしば嗜好を満たしたり、あるいはそのような展開を起こすために導入されたと思われる設定が存在する。獣耳や、『「お前ごときが魔王に勝てると思うな」とガチ勢に勇者パーティを追放されたので、王都で気ままに暮らしたい』などの設定がこれにあたる。
■恋愛モノの一部のジャンル
エロ同様、『君は春に目を醒ます』のように設定が嗜好を満たすために使われる場合がある。
『おっさんずラブ』のように同性愛が比較的一般に受容されていたりする世界観は『BLファンタジー』などと呼ばれることがある。その意味では『
咲-Saki-』の裏設定だとか
オメガバースモノも上述のものと同様広義のファンタジーである。
■純文学・神話
『天守物語』や『茨海
小学校』、『蜘蛛の糸』のように、純文学には古くからファンタジー的な作品が多く存在する。海外で聖書やシェークスピアに次いで評される「
キリスト教三大文学」すなわち『ファウスト』『神曲』『失楽園』はいずれもファンタジー小説である。
前衛短歌や、『鏡の中の鏡-迷宮-』に代表されるいわゆるメルヒェンのように、SFや
ミステリーのようなストーリーに整合性を求める考えに疑問を持ち、その結果として脈絡がなく超自然的ともとれるファンタジー的な現象を起こすものは純文学的なファンタジーと言えるかもしれない。
古典文学
神話
よく題材になるもの
■非ファンタジー作品の例
要は「現実世界をテーマにした作品」。
ピンチになっても力が覚醒したりしないので、全て自力で乗り越える必要がある。
(言うまでも無く世界観は現実世界がベース)
(科学が発達したファンタジーの正反対。要するにジャンルSF、スペースファンタジーやサイエンスファンタジー。BACK TO THE FUTURE、ターミネーター等。ただしこれは狭義の話であり、空想という意味ではSFも一種のファンタジーである。SFとファンタジーの違いは、読者にとってその作品内の何かが実現できそうに見えるか否かということでしかない。)
(定義上は限りなくファンタジーに近いはずだが、基本的に別物として扱われる)
■ファンタジー小説のレーベル
「ウィッチャー」シリーズなど、海外のファンタジーの翻訳を専門に行なっている。
■ファンタジーの賞
- 日本ファンタジーノベル大賞(日本)
- 国際アンデルセン賞(スイス)
- 国際幻想文学賞(イギリス)
追記・修正お願いします
- 俺の屍を越えてゆけ、大神の和風ファンタジーも面白いですよね! -- 閲覧者 (2014-02-26 17:54:36)
- 鏡のなかに世界がある -- 名無しさん (2014-02-26 17:56:23)
- 夢を見続けることが俺のファンタジー -- てつを (2014-12-28 17:31:07)
- ファンタジーって難しいね。設定が自由である反面それを読者に理解してもらうのが面倒くさい。修行にはなるが -- 名無しさん (2016-10-12 11:24:29)
- ゼロ魔の「地球なめんなファンタジー」とFATEZEROでケリィがロードエルメロイぼこったのってどっちが先なんだっけ -- 名無しさん (2017-03-23 10:35:56)
- 新井理恵の「×―ペケ―」でファンタジーの定義って何かを話し合ってて、4コマ目で、「ファンタ飲んでるジジイじゃねえけどな」って言ってるのに笑ってしまった -- 名無しさん (2022-12-29 18:49:32)
最終更新:2024年11月13日 19:24