無作為選出対象者無視法(くにはちぶ)

登録日:2023/06/14 Sun 00:18:00
更新日:2025/02/14 Fri 04:15:02
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厳正なる無作為の抽選の結果
本日2月10日より
道端たんぽぽさんを
1年間日本中で無視する(・・・・・・・・)ことになりました


概要

無作為選出対象者無視法(むさくいせんしゅつたいしょうしゃむしほう)(以下、「無視法」)」とは少年マガジンエッジで連載されていた各務浩章による漫画「くにはちぶ」に登場する法律。
元々は「特定対象者無視法(とくていたいしょうしゃむしほう)」であり、無作為に変わったのはとある事件がきっかけである(後述)。
国民からは「国八分法(くにはちぶほう)」とも呼ばれ、政府がランダムで選んだ中学1年生から高校3年生の年齢の国民1人(くにはち)を1年間に渡って総出で無視をするという現代日本では到底考えられない法律でもある。*1
この項目では無視法とそれらに関連する組織・対象者の解説を行う。

無作為選出対象者無視法とは

くにはちの家族知り合い関係者らも含めて全員くにはちを「無視」しなければならない。
声をかけることも触れることも直視することも一切禁止である。*2
直視の度合いは様々だがすぐ目を反らすなどすれば逮捕はされない模様。くにはちが映った動画は肖像権侵害を理由に削除されるようだ。
マスコミにも「無視法報道可能期間」が制定されており、新たなくにはちの周知・くにはちが死亡する・逮捕者の情報を出すなどの状況でないとそれらに関する報道ができないようになっており、収録番組も報道可能期間中であることをわざわざ明言するほど。
ただし、例外として監督官はくにはちへの対応が許可されている。

また、くにはちの行動を監視するために関連施設などには隠しカメラが設置されており、「特別な者」を除き、誰も見ることができない。
そして、くにはちが怪我・事故・病気いかなる状態になっても「無視」することになり、その結果、対象者が死亡しても責任は問われない

これらに違反した場合、捕まるのはくにはちではなく、無視法の違反者であり、以下の刑罰が「裁判を通さずに」直ちに適用される。
  • ①無視法対象者を「無視しなかった」と監督官が判断した場合、干渉の程度によらず1年間の禁固刑*3
  • ②未成年は少年法により少年院送致となるがこちらも1年間同様に拘置される(受験生の場合、再試験などの配慮がされることはない)

1年間の経過後、くにはちへの無視は解除されるが法律自体は存続しているのでまた新たな「くにはち」が選ばれることになる。
くにはちが自殺などで命を絶った場合もその時点で無視法が一旦終了し、すぐに新たな「くにはち」選定が始まる。

くにはちに選ばれた後

それではこの予鈴の終了を合図に
無視を開始いたします

監督官が開始を宣言するタイミングを以って「無視」が始まる。
その時点でくにはちが関わることも、くにはちに関わることもお互いにタブーとされ、下手な行動は(監督官の裁量次第ではあるが)即逮捕となる。
ただし、直接くにはちに関わりさえしなければ、「ご飯を作り過ぎたから置いておく」「第三者を通じて指示を出す」など「無視はするけど無視はしない」という行動は不問とされることがある。*4

どのように無視されるのか

基本的には「いないもの」として扱われる。
第2話にて蛍光灯の蓋に隠しカメラがあることに気づき、外した際にすぐに踏が替えのカメラを持参。
踏が蛍光灯に新しいカメラを仕込み取り付けようとしたがたんぽぽの母が「自分でつける」と拒否。
娘を踏むまいとテーブルの端に立つ母だったが……

どうしました?そんな端を踏んでは危ないですよ
まるで机の中心を避けているようですね
何かありますか(・・・・・・・)

テーブルには精神的に疲弊して倒れたたんぽぽがおり、どかすことも自分で動くこともできない状態だった。
「いないもの」として扱われているくにはちは当然……

その成り立ち

この法律は「イジメ加害者に被害者の気持ちを理解させ、他者を思いやるための法律」として与野党から強烈な支持を得ており、第1話「新たな【くにはち】対象者」では「日本国民は互いを信頼し慮ることで自殺など起きない強い国民性を獲得する時」とまで演説している。
無視法に選ばれた国民は「くにはち」と呼ばれ、「この顔にピンときたら絶対無視」というポスターまで作られるほど。*5
本編開始前の10年以上も前に法律が制定され、主人公である道端(みちばた) たんぽぽが選出されるまでこの法律は不動のものとして存在していた。

監督官

監督官(かんとくかん)はくにはちの監督、無視法違反者を捕まえるための役職。
縦縞のスーツを着ており、くにはち違反者を制圧するために拳銃を携帯している。
基本的にくにはちの監視についているのですぐ近くにいることが多いがさすがに男性監督官である踏が女子トイレにまで入り込むことはなかった。
また、くにはちを無視しないことが確認されたら即時逮捕だが三途のようにわざと動画データを削除させることで「証拠不十分で不当逮捕だった(がいつでも逮捕できる・いつでも見逃せる)」と使い分けるパターンもある。
監督官は上記通りに無視法違反対象者にならないが対象者を殺害した場合は殺人の罪で裁かれる。
野原 なずな死亡時に無視法終了を文部科学省に連絡していたことからここに所属していると思われる。

踏 七五三男(ふみ しめお)三途(さんず)ひがんが主な監督官として活動している。
違反者を逮捕するためには現行犯でなければならず、監督官がその現場にいなかった時はその裁量に任されることになる。*6
ちなみに監督官を罷免できるのは任免権を持つ首相だけである。


ダンデライオン

粘 強(ねばり つよし)を筆頭に無視法廃止を目指す者たちの集まりできっかけは「抱事件」だった。
この組織名はたんぽぽになぞらえて改名された。会員は全国で1000人。
たんぽぽを全面的にバックアップしているがあくまで「支援」であり、「代表」に据えているわけではない。
元々は数年かけて無視法廃止活動に臨んでいたがたんぽぽが「自分の代で廃止したい」と述べたことで当年廃止を目指すべくデモ活動を行うことになる。

作中で登場した無視法対象者

無視法第一号(仮名)

無視法制定により選ばれた国民であり、その後どうなったのかは語られていない。

抱 友成

18歳男性。踏とは同じ高校に通っていた。担当は三途の先輩で男性監督官。
彼が起こした「抱事件」により、無視法の選定が無作為となった。

野原 なずな

たんぽぽの前の対象者。担当は三途。
三途の真綿を絞めるような「空気」により、僅か1か月でクラスメイトから無視された。
その後、自分を見るように訴えかけながら電車に轢かれて死亡。

道端 たんぽぽ

本作の主人公であり、無視法最後の対象者でもある。
担当は踏・三途。*7

余談

無視法対象者になれば犯罪犯しまくれるのでは?」とも言われており、実際に作中では抱が対象者になった際にクラスメイト全員に暴行を働いたが監督官は動かず、逆に抱の挑発に乗って殴った踏が逮捕されそうになった。
ただし、あくまで抱の暴行が対象にならなかっただけで他の犯罪行為も全て無視されるのかは不明である*8
しかし、やり放題が仮にできたとしても被害者が「無視をする」ことを理由に私刑に乗り出さない可能性もなくはないのだ。*9

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最終更新:2025年02月14日 04:15

*1 指名された国民の状態に関する条件は指定されていないため、怪我・病気の状態で除外されない可能性はある。

*2 ただし、「話題」として名前を出さずに「くにはち」の扱いを議論することは問題が無い。また、動物は動物として区分しているからか無視法の対象にはならない。

*3 「(対象者を)無視しない」と主張すること自体は違法にはならないが、実際に無視しないことが確認された場合も同様に逮捕される。

*4 実際に作中でたんぽぽが「作り過ぎた」というご飯を一緒に食べていたり、よめなが「自己練」という名目でたんぽぽが苦手とするパートの練習に付き合うなど。

*5 単行本発売日の際には書店で「政府通知」という名目の同様の文言が記されたPOPが飾られていた。

*6 三途曰く「踏君が緩い」とのことである程度の見逃しがあったのも踏の判断であると思われる。

*7 最初から2人体制ではなく、踏がかざりによるたんぽぽ拉致事件の際に立体駐車場から飛び降りたかざりを救うために重傷を負ったため、三途が担当を引き継いだ。

*8 抱事件の際に首相が「有事」として三途に抱射殺命令を出しており、他の対象者も度が過ぎれば射殺とまでいかずとも厳罰に処される可能性はある。

*9 実際に犬走が故意に背中越しにたんぽぽを階段から突き落とした時に踏が動かなかったことからも証明されている。