孤独/緻密/悲嘆/激情/忍耐(MtG)

登録日:2023/11/19 (Sun) 21:00:00
更新日:2024/09/28 Sat 22:19:19
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概要

《孤独》《緻密》《悲嘆》《激情》《忍耐》とは、TCG『Magic the Gathering』に存在する5枚のカードである。
モダン以下のフォーマット用のヤバいセット「モダンホライゾン2(MH2)」でサイクルを成す形で初登場した。
後述する各要素から「想起インカーネーションサイクル」とも呼ばれることも。
レアリティは5枚揃って最高ランクの神話レア。

明らかにインスタントやソーサリーのような珍妙な名前であるが、5枚全てクリーチャーである。
これはこのサイクルが持つ「インカーネーション」というクリーチャー・タイプが「概念の化身」のような存在に属していることを表しているため。
アニヲタwiki内に個別項目があるような他のクリーチャーだと《不可思議》などもインカーネーションである。
このサイクルは過去のそれらより自然精霊と似た側面もあるのか、それを表すクリーチャー・タイプである「エレメンタル」も併せ持つ。

サイクルの共通点として、特定の手札1枚を追放することによって「想起」で場に出せるという性質を持つ。
「想起」とはクリーチャーが持つキーワード能力の一つであり、それを唱える際に機能する。
「通常のコストの代わりに想起コストでこのクリーチャーを唱えられるが、そうして場に出すと即座に生け贄に捧げられる」というもの。
適応すると出したクリーチャーがすぐ死ぬため一見無意味に見えるが、それはこの能力単体での話。
想起を持つクリーチャーは、1枚残らず全てが「戦場に出た時」か「戦場を離れた時」に誘発する能力も持つ。
つまりクリーチャーを事実上のインスタントやソーサリーのように扱える能力である。
想起コストはだいたい「出た時」を持つ方は通常コストより軽く、「離れた時」を持つ方は通常コストより重く設定されている。

このサイクルはその想起持ちの中でも「出た時」の能力を持つタイプ。
そして重要なのが、このサイクルの想起コストは「特定のマナの支払い」ではなく「特定の手札1枚の追放」のみであること
つまり、特定条件でマナを使わず唱えられる「ピッチスペル」の性質も併せ持つのだ。
ピッチスペルは《意志の力》《誤った指図》《火炎破》などを見れば分かるように、基本的に持てばまず強力になるメカニズムである。
当然これらエレメンタル・インカーネーション達もその例に漏れず強力、というかぶっ壊れである。


各カードの解説

孤独/Solitude (3)(白)(白)
クリーチャー — エレメンタル(Elemental) インカーネーション(Incarnation)
瞬速
絆魂
孤独が戦場に出たとき、これ以外のクリーチャー最大1体を対象とする。それを追放する。そのクリーチャーのコントローラーはそれのパワーに等しい点数のライフを得る。
想起 — あなたの手札から白のカード1枚を追放する。
3/2
白のエレメンタル・インカーネーションはライフを渡す代わりに追放除去。《剣を鍬に》と全く同じ。

元となったカードがそもそも強力であり、こちらも手札を余計に1枚失うがほぼノーリスクの追放除去として扱える。
そんな強力な除去をマナを支払わず使えるため、【リアニメイト】をはじめとした様々な踏み倒しデッキへの対処手段として非常に便利。

想起抜きの基礎スペックも現代スタンダードでギリギリ許されるかラインの性能であるため、素出ししても十分強力。
白であるため後述する《儚い存在》といったブリンク手段や【コントロール】系デッキと合わせやすいのも利点。
また元となったカードと同じく、自分のクリーチャーを追放してライフ回復手段として使うこともできる。
こちらのライフをぴったり削るタイプの瞬殺コンボデッキやクリーチャーを出さないタイプの【バーン】に対して有用なので憶えておくと良い。
ただし追放対象には自身を選べないため、単体では回復できない点に注意。


緻密/Subtlety (2)(青)(青)
クリーチャー — エレメンタル(Elemental) インカーネーション(Incarnation)
瞬速
飛行
緻密が戦場に出たとき、クリーチャー呪文かプレインズウォーカー呪文、最大1つを対象とする。それのオーナーはそれを自分のライブラリーの一番上か一番下に置く。
想起 — あなたの手札から青のカード1枚を追放する。
3/3
青のエレメンタル・インカーネーションはクリーチャー呪文かプレインズウォーカー呪文のデッキバウンス。
見慣れない挙動だが、スタックからバウンスされた呪文は打ち消された時と同じ様に解決されない。要するにだいたい逆《否定の力》である。

マナを支払わずにカウンターができるため、早期に出てくる厄介なクリーチャーに対して非常に有効。
特に自身を含むこのサイクルのエレメンタル・インカーネーション達に対しては、想起コストの重さもあって非常に効く。
正確には打ち消しているわけではないので「打ち消されない」を持つ呪文にも使えるのがポイント。

基礎スペックも4マナ3/3飛行瞬速とかなり高く、想起抜きで素出ししても《神秘の蛇》相応として使いやすい。
青なので合わせる相手にも困らない。《否定の力》と両方握っていれば双方のコストを確保しながら範囲もカバーしあえる。

悲嘆/Grief (2)(黒)(黒)
クリーチャー — エレメンタル(Elemental) インカーネーション(Incarnation)
威迫
悲嘆が戦場に出たとき、対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは自分の手札を公開する。あなたはその中から土地でないカード1枚を選ぶ。そのプレイヤーはそのカードを捨てる。
想起 — あなたの手札から黒のカード1枚を追放する。
3/2
黒のエレメンタル・インカーネーションは手札破壊。だいたい対戦相手限定の《暴露》。

単純なアドバンテージでは相手の方が得となるが、それでもマナを支払わずに相手の手札を覗いて一番脅威となるものを落とせるのは強力。

後述する《フェイン・デス》などとのコンボが特に極悪な1枚で、決まれば1ターン目から2枚以上ピーピングハンデスしながら3/2威迫が着地する。
【黒赤想起】【黒赤エレメンタル】などと呼ばれるデッキを成立させる原動力となるレベルである。
手軽に墓地に落とせるクリーチャーなので【リアニメイト】【死せる生】などとも相性抜群。これらのデッキは黒が多いためコストにも困らない。
サイクルの他のものと異なり、瞬速を持たないのでインスタントでは使えない点に注意。
また自分を対象に取れないというのは【リアニメイト】では不都合な場合もある。レガシーではその点で《暴露》が優先されたりもする。

2024年8月26日にてモダンとレガシーで禁止に。
モダンでは《フェイン・デス》、レガシーでは《再活性》などで使いまわすことで1ターン目から手札を2枚も3枚も減らされるのが問題視された。
この動きは使う側の消費もそこそこ大きかったが、それを加味しても対戦相手にとって非常に不快であるというのも理由として大きかった。

激情/Fury (3)(赤)(赤)
クリーチャー — エレメンタル(Elemental) インカーネーション(Incarnation)
二段攻撃
激情が戦場に出たとき、望む数の、クリーチャーやプレインズウォーカーを対象とし、4点分をあなたの望むように割り振る。これはそれらにその割り振ったダメージを与える。
想起 — あなたの手札から赤のカード1枚を追放する。
3/3
赤のエレメンタル・インカーネーションは割り振り火力。やることは《紅蓮操作》に近い。

1ターン目から高速展開してくるような速攻デッキに対し、マナを支払わずに一掃ができるのは便利。

素出しの場合《火炎舌のカヴー》の上位種のようなスペックとなる。場の脅威に対処しながら事実上の6/3アタッカーとなるため強力。
またパワーに対する補正が実質的に倍になるのもポイント。後述する《フェイン・デス》などと合わせるととんでもないことになる。
【黒赤想起】が他の色ではなく赤をメインにしている最大の理由である。
サイクルの他のものと異なり、瞬速を持たないのでインスタントでは使えない点に注意。
特にこいつの場合、やることが似ている《紅蓮操作》がインスタントかつ活躍実績があり有名なため勘違いしやすい。

2023年12月4日を以てモダンで禁止に。
【黒赤想起】での大暴れや、他デッキに除去として出張するなどで低タフネスクリーチャーの人権を奪っていたことなどが主な理由である。

忍耐/Endurance (1)(緑)(緑)
クリーチャー — エレメンタル(Elemental) インカーネーション(Incarnation)
瞬速
到達
忍耐が戦場に出たとき、プレイヤー最大1人を対象とする。そのプレイヤーは自分の墓地からすべてのカードを自分のライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。
想起 — あなたの手札から緑のカード1枚を追放する。
3/4
緑のエレメンタル・インカーネーションは墓地対策&ライブラリー回復。《ガイアの祝福》の強化版のような感じ。

インスタントでマナを支払わずに墓地をきれいに掃除できるため、墓地利用デッキに対する奇襲性が抜群。
特に《タッサの神託者》での勝利を狙う【オラクルコンボ】系デッキに対して非常に効くのが魅力。
自分のライブラリー修復にも使えるため、【ライブラリーアウト】系のデッキ相手にも役立つ。
片方の墓地にしか作用しないため、墓地利用デッキ自身が採用できるのもポイント。
気軽に墓地に落ちてくれるため【死せる生】などとも相性が良い。
逆に、自身の山札切れを防ぐことをコンボに組み込むことで【ナドゥコンボ】などではループパーツとしてすら活躍した。

色のためか、通常コストが最も軽くコスト当たりのパワー/タフネスが最も良い。
3マナなので素出ししやすく、タフネスが4なので《稲妻》などで焼かれなかったりとクリーチャーとしても強力。
緑はエレメンタルのサポートが豊富な色でもあるため、クリーチャーがエレメンタルに寄ったデッキなどでもよく使われる。
ただし使い切りの墓地対策なので、効く効かないが相手によって分かれやすくタイミングを間違うと意味が薄れる点に注意。


環境において

使用可能なフォーマットであるモダンやエターナルでは、登場から早速様々なデッキで普遍的に利用されている。
これらの環境では高速で対処不能な盤面を形成するデッキが多いこともあり、強力な対処手段はサイド・メイン問わず常に求められている。
場に出てくる/出された脅威にマナを支払うことなく対処可能なこのサイクルはその需要にピタリと当てはまったのだ。

ピッチスペルであるため、「色が○○(大体青)なのが強い」というような他カードの評価の変化も加速。
これによって《マーフォークの霧縛り》《意志切る者》や各種分割カードなど評価を上げたカードも多く存在する。

またこれまでの有力なピッチスペルと異なり、全てがクリーチャーという点も大きい。
《呪文貫き》のように非クリーチャー限定のカードが効かない他にも、さまざまなシナジーが生まれている。

儚い存在/Ephemerate (白)
インスタント
あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とし、それを追放する。その後それをオーナーのコントロール下で戦場に出す。
反復(この呪文があなたの手札から唱えられたなら、これの解決に際し、これを追放する。次のあなたのアップキープの開始時に、あなたは追放領域からこのカードをこれのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。)
フェイン・デス/Feign Death (黒)
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは「このクリーチャーが死亡したとき、これをその上に+1/+1カウンター1個が置かれた状態かつタップ状態で、オーナーのコントロール下で戦場に戻す。」を得る。

例えば、想起で出した瞬間にこれらの呪文を合わせることですぐに死ぬデメリットを無視して場に残せる
しかも「想起で出た後にもう一度出ている」ため、「出た時」の能力がまた使える。
つまり《儚い存在》なら能力をターンを跨いで最大3回使えるし、《フェイン・デス》なら能力を2回使ったうえで強化されて場に残る。

昔から想起持ちと合わせてよく使われていた戦法だが、このサイクルと合わせる場合に重要なのは想起持ちの方がピッチスペルであること。
つまり上記の1マナ呪文との組み合わせであれば、この動きを1ターン目から行えるのである。
様々なデッキがひしめくモダンやエターナルでもこの動きは強力であり、最大限狙うデッキとして【白黒石鍛冶】【黒赤想起】などが存在する程である。
特に後者は2023年のモダンのトップメタデッキとして環境を席巻した。

孤児護り、カヒーラ/Kaheera, the Orphanguard (1)(緑/白)(緑/白)
伝説のクリーチャー — 猫(Cat) ビースト(Beast)
相棒 ― あなたの開始時のデッキに入っている各クリーチャー・カードが、それぞれ猫(Cat)やエレメンタル(Elemental)やナイトメア(Nightmare)や恐竜(Dinosaur)やビースト(Beast)であるカードであること。(このカードがあなたの選んだ相棒であるなら、ソーサリーとして(3)を支払うことでゲームの外部からそれをあなたの手札に加えてもよい。)
警戒
他の、あなたがコントロールしていて猫やエレメンタルやナイトメアや恐竜やビーストである各クリーチャーは、それぞれ+1/+1の修整を受け警戒を持つ。
3/2

また全員エレメンタルなので《孤児護り、カヒーラ》の相棒条件を阻害しない。
これによって、《孤児護り、カヒーラ》を採用できるデッキでは3マナで《孤独》《忍耐》用のコストを調達できるようにもなった。
他にも相棒の指定条件が緩い《空を放浪するもの、ヨーリオン》などでも似たようなことが可能。


分かりやすい部分から微細な部分に至るまで悉く強く、このカードを前提にしたカード選択や小技なども非常に多い。
もちろん弱点が無いわけではなく、手札2枚を使うためアドバンテージの損失が激しくなってしまう。
またいずれも「3マナ以上のクリーチャー」なので、似た役割を持つソーサリーやインスタントの方が都合が良いこともある。



《修正/correction》
追記 — あなたの一日から時間を1時間追放する。

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最終更新:2024年09月28日 22:19