キモオタモブ傭兵は身の程を弁える

登録日:2024/02/12 Mon 17:22:00
更新日:2025/01/24 Fri 04:07:13
所要時間:約 9 分で読めます






僕みたいなモブが戦場で長く生き残るには、目立たず、臆病に振る舞い、名誉を求めないこと
派手に目立ち、勇敢に振る舞い、名誉と栄耀栄華をほしいままにして生き残れるのはイケメンか美女の主人公属性をもつ奴らだけ
モブがそんなことを求めてはいけない
身の程を弁えるのが、戦場で生き残る確率をあげるのだ


キモオタモブ傭兵は身の程を弁える』はオーバーラップノベルスから刊行されているライトノベル。
作者は土竜(とりゅう)、イラストはハム。
小説家になろう」で連載されていた小説の書籍化作品。


概要

人類が広く宇宙に進出した時代を舞台にしたSF作品。
権力を笠に着て増長する貴族や、実力も無いのに思い上がった傭兵、実績よりも見栄えや血筋を重視する傭兵ギルドなど、
腐敗が進みつつある社会を舞台に主人公の傭兵ジョン・ウーゾスの日常を描く。

世界観

銀河大帝国

物語の舞台となる星間国家。現在人類の生息圏となっている宙域の7割を国土として治めている。
現皇帝は38代女皇帝アーミリア・フランノードル・オーヴォールス。
増長した貴族同士のくだらない争いによる内乱が後を絶たないが、これでも先代と現皇帝によってだいぶ改善はしている。

ネキレルマ星王国

銀河大帝国の隣国。貴族が幅を利かせている。
100年前に帝国との戦争に敗れて植民地にされそうになったが、領土の一部を差し出して見逃してもらった過去がある。
銀河大帝国以上に貴族が増長し腐敗しているらしい。

貴族

作中世界の特権階級。
銀河大帝国では憲法の前文に「何者であろうと皇帝が定めた帝国の法を遵守し、公平かつ正しくあること」と明記されているが、
実際には貴族が平民や植民地民に違法行為を働いても容認される不平等がまかり通っている。
貴族同士の場合はその限りでは無いものの、爵位が上の方に有利な判決がくだされることが多い。
こんな有様なので腐敗している家が多く、親がまともでも子供が権力を笠に着て好き勝手やってしまい絶縁されるというケースも珍しくない。

傭兵

傭兵ギルドに所属し、依頼を受けて戦闘艇で戦う職業。
階級(ランク)制で、階級は下から歩兵(ポーン)城兵(ルーク)騎士(ナイト)司教(ビショップ)女王(クイーン)(キング)
騎士までは実績だけで昇格できるが、それ以上に上がるには試験に合格する必要がある。

司教階級以上の傭兵の中には異名を持っている者がおり、有名人として憧れの的となっている事が多い。
中には騎士階級以下で持っている者も居るが、その人物は相当な実績、功績を挙げたか、一部の実力者から識別の為に付けられたと思われる者も。

傭兵ギルド

傭兵を管理している組織。貴族等から依頼を受け、それを傭兵に斡旋している。
依頼は大きく分けて『戦闘』『退治』『護衛』『警備』『その他』に分類される。
基本的には傭兵の自主性に任せているが、有事の際には特別な事情がない限り参加必須の特別招集令状『赤紙』を発行する権限を持つ。
上層部は派閥争いがあったり、イメージ戦略に使える美男美女や貴族の関係者だけを昇格させているという噂があったりと例によって腐敗している。

プラネットレース

作中世界で大人気の競技。
無人か人口の少ない惑星の大気圏内で行われるレースであり、戦闘による妨害も可能。
タイムラップを競うレースと規定時間走行する耐久レースがある。

ゲート

飛行艇にワープ機能が存在しない本作における超長距離移動手段。宇宙空間に存在するワームホールを使用したもの。
数十~数百光年の距離を一瞬で移動できるが一方通行で、人工的に作ることは不可能なので自然発生したものを国家が管理・調整している。



登場人物

傭兵

●ジョン・ウーゾス

主人公。騎士階級。愛機は中古品をカスタマイズしたパッチワーク号。
小太り眼鏡のオタク青年で、その容姿から様々な場面で見下されたり嫌悪されたりしており、本人も自分はモブだと考えている。
傭兵としては彼を正当に評価している同業者達から「女王階級でもおかしくない」と評される程の腕を持っており、
極一部の実力者からは『土埃(カーキー)』の異名で目を掛けられているが、彼自身に昇格の意志はない。
これは名誉欲が薄いことと、貴族ではなく容姿も悪い自分が昇格すれば周囲から碌な扱いを受けないことが目に見えているため。

高校1年生の時に悪徳教師に騙されて39人の同級生と共に傭兵団に無理やり入団させられた*1ことがあり、
その時に自分を含む3人を除いた全員が戦死するという辛い経験*2をしている。
後に父が会社を不当解雇されて農業をするようになったため大学への進学を断念し、高い報酬を目当てに傭兵の道を選択。
傭兵になってから現在まで欠かさずに1回の報酬の3分の1を両親に仕送りし続けている。

戦場では主人公っぽい奴に目立つ場所を任せて自分は地味なポジションに回り、
その腕前を評価した戦闘艇のサポートAIやプラネットレースのチームにスカウトされても断固拒否、
実力的には格下の相手に見下されたりしても反論したり実力を見せつけたりすることはなく、
明らかに事情がありそうな少年に金を奪われそうになっても事情を聴いたりはせず淡々と制圧し通報するなど、
主人公っぽい行動を徹底的に避けてモブであろうとする。

過去に女性に話しかけて嫌な顔をされたり、女性自身に問題は無くても勘違い男に絡まれたりした経験から
女性恐怖症気味になってしまったため、女性に対しては関わる事自体を忌避している。
よほど必要に迫られない限り自分から女性に話しかけることはせず、
女性の方から話しかけられた場合には表面上は普通に対応するものの、内心では極力早く会話を打ち切ろうと考えている。
その徹底ぶりはなんとなろう版ではヒロイン(と見做せそうな誰か)が一切不在のまま完結したエピソードがあった程。

●フィアルカ・ティウルサッド

ティウルサッド子爵家出身の女性傭兵。司教階級。
書籍版オリジナルヒロインでなろう版では登場しない。
豹のエンブレムが描かれた戦闘艇エガリムに乗っていることから『女豹(レオパール)』の異名を持つ。

ウーゾスを正当に評価している一人であり、自分よりも腕の立つウーゾスが自分より下の階級に甘んじていることに納得がいかず何かと絡んでくる。
後にとある戦場で命を助けられてからは顔を合わせると緊張したり、赤面したりするようになった。
その言動は傍目から見れば明らかにツンデレなのだがフィアルカ本人は自覚しておらず、ウーゾスも気づきかけてはいるもののそんなことはあり得ないと切り捨てている。

●シェリー

フィアルカに仕える女性型全身機械体アンドロイド。
フィアルカが幼少期の頃から仕えているので、主従というより姉妹のような関係。
主の意向でメイド服を着せられていて、本人も気に入っているのか脱ぐのを嫌がるらしい。
主の恋路をそれとなくアシストしているが、当のウーゾスとフィアルカが前述の有様なので効果は出ていない。
フィアルカ同様になろう版では登場しない。

余談だが彼女を書籍版2巻の挿絵に登場させるにあたり、メカメカしくしたい作者と可愛くしたい編集の間で意見が割れ、
煮詰まった末にとりあえずイラスト担当のハム氏に描いてもらったところ一発OKになったというエピソードが後書きで語られている。

●ランベルト・リアグラズ

惑星ラザの田舎町出身の新米傭兵。
自宅の古い倉庫にしまわれていた小型戦闘艇ロスヴァイゼに搭乗する。

口だけは達者だが実力が伴っていないイキリ君で、初陣ではバリアにビームが当たったことに驚いて気絶・失禁してしまった。
その後は機体の性能に助けられてはいるものの少しずつ成長し、『黄緑の羽兜(フェーダーヘルム)』として名も売れ始めている。

●ロスヴァイゼ

正式名称はWVS-09・ロスヴァイゼ。ランベルトの乗る小型戦闘艇のAI。
AIなので性別はないが、人格は若い女性のもので通信などでは美女の姿のアバターを使用する。
後に自分が行動するための分体用アンドロイドを手に入れた。

古代文明の超兵器であり、その性能は現代文明の戦闘艇の数百倍にも及ぶ。
そんな自分にふさわしい搭乗者を求めていて、ウーゾスやフィアルカも候補に挙がっていた。
実力が皆無のランベルトとの相性は最悪で何かと降ろそうとしていたが、行動を共にしているうちになんだかんだで絆されつつある。

●ユーリィ・プリリエラ

傭兵になってから大きな依頼を幾つもこなした大型新人。
階級は歩兵だが容姿だけを理由にウーゾスを格下だと決めつけ見下している典型的な勘違いくんで、ウーゾスからは陰で『ヒーロー君』と呼ばれている。
また本人は男性だが姉のフィデルナによって女尊男卑思考に染められてしまっている。

イケメンなのもあって周囲からも注目されていたが、とある戦の際にフィデルナが数々の不正に手を染めていたことが発覚。
ユーリィは全く知らなかったものの白い目で見られるようになってしまい、荒れた生活を送るようになった。
後にそんな状況でも変わらず接してくれたアルフォンスのおかげで立ち直る。が彼の性別が男とは気付いていない。


軍人

●リオル・バーンネクスト少佐

傭兵団強制入団事件の生き残りの一人。バーンネクスト伯爵家出身。
現在は帝国のエースパイロット兼プロパガンダ要員として活動している。

イケメンで、誰にでも親切で、真面目で正義感が強く、成績優秀・スポーツ万能な非の打ちどころのない男。
事件がきっかけで傭兵に嫌悪感を持っており、同じ被害者であるウーゾスが傭兵をしていることも良く思っていない。
完全に善意でウーゾスを軍に勧誘しているものの、ウーゾスからは拒否され続けている。

●プリシラ・ハイリアット大尉

帝国でも1・2を争う有能な将軍ラスコーズ・ハイリアット大将の娘で、作戦指揮能力と兵站維持能力は父をも凌ぐと言われる逸材。
帝国軍親衛隊の副長を務める。

本人に自覚はないもののあざといタイプの女性であり、ロスヴァイゼからは露骨に嫌われている。
また人材マニアでもあり、優秀な傭兵を軍に引き抜こうとする悪癖持ち。


傭兵ギルド

●アントニオ・ローンズ

ウーゾスが主に利用する惑星イッツ支部唯一の男性受付。
元傭兵・色黒・ハゲ・マッチョの四拍子揃ったおっちゃん。妻子持ち。

女性と関わることを避けているウーゾスは常に彼のもとで仕事を受けており、彼が家族サービスのために休暇を取った時は自分も休暇にしたほど。

●アルフォンス・ゼイストール

惑星イッツ支部に新たに配属された受付。
どう見ても女性にしか見えない容姿の持ち主だが男性で、本人の性自認も男。
しかしその容姿のせいで彼に恋をしたり口説いたりする男性傭兵が後を絶たない。

家柄や容姿で差別せず公正に接するタイプであり、ウーゾスやユーリィにも普通に応対した一方で
問題を起こした貴族出身の傭兵には淡々とその事実を伝えて対処していた。


その他

●スクーナ・ノスワイル

傭兵団強制入団事件の生き残りの一人。
現在はプラネットレースのチーム『クリスタルウィード』でエースパイロットを務める。

ボーイッシュな女性であり、それゆえに女性に言い寄られることが多いのが悩みの種。
せめてもの抵抗として私服はスカートにしているが結果は芳しくない。

ウーゾスの実力を評価してチームスタッフとして引き抜きたいと思っているが、ウーゾスには断られた。
明確な恋愛感情を持っているわけではないものの、彼が自分を女性として見てくれないことは少し悔しく思っている。

+ 原作最新話ネタバレ注意
実は彼女およびクリスタルウィードの面々は反帝国抵抗運動組織の一派であることが判明。
ウーゾスはその事実を知らないが、引き抜かれなくて正解であった。


●ゴンザレス・パットソン

ウーゾスが高校2年生の頃に出会った親友。
闇市商店街*3の調剤薬局に勤めながら陰で情報屋をしており、しばしばウーゾスが情報を求めてやってくる。

男性なのだが、大学時代に事故にあった際に救命措置として女性型アンドロイドに脳を搭載したため外見は大人の女性。
この事実はウーゾス達友人しか知らず、通常は体を義体化する際に性別まで変えることはほとんどない*4ため周囲からは女性だと思われている。
本人は自分の元々の容姿を気に入っていなかったこともあって特に気にしてはいないものの、商店街の老人達にセクハラされることだけは辟易している。






追記・修正は高速で飛ぶ戦闘艇で2㎞先からの狙撃を成功させてからお願いします。
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  • 人間のクズの温床←本当にそうか?
最終更新:2025年01月24日 04:07

*1 気に入らない生徒を正規の傭兵団員の盾にして排除し、また生徒に出される報酬を全部着服するというふざけたもの。

*2 出撃直後に件の教師や傭兵団は逮捕され、反省の色を見せなかった教師は極短期間で死刑確定となった。また容姿に劣るウーゾスはマスコミにいなかった扱いをされている。

*3 闇市っぽい雰囲気にしているだけの普通の商店街。

*4 パットソンの件はその時男性型アンドロイドの在庫が無かった。