登録日:2009/11/15(日) 22:44:34
更新日:2024/08/25 Sun 19:30:58
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「あの子は君の目の前のあの大きな楠の木になったの」
幼い頃、仔猫の亡骸を埋めながらそう教えてくれた隣のお姉さんは、三毛猫の様な柄をした戦車に轢かれ今はその隣に眠っている
「アンダルシアの雨は気まぐれで時折平野に空き缶が降る」
奇妙なシュプレヒコールと共にいつも中身の入った空き缶を投じた向かいのお兄さんは、催涙弾の豪雨にうたれ二度と動かなくなった
明日は俺も歌うだろう
遮るもの一つ無い群青の空の彼方で
「シュレーディンガーの猫は百年経っても決して死なない」
蓋を開けるまで、勝敗は判らない
「俺達は決して死なない
魂は永遠(とわ)に引き継がれるから」
叫んだ男は昨日死んだ
俺は彼の友ではないだろう
何故なら俺は彼の魂が判らない
「私達の愛は永遠なの
変わらぬ愛を私は誓うから」
彼女が腕にぶら下がる男の背中は昨日低かった
変わらぬ愛は背を伸ばす
永遠の愛は連れ添う相手を選ばない
ならば俺も呟こう
力無き声をかき消されないように
「俺達は絶対に絶対に絶対に負けない」
言葉の時代が終わって、戦争が始まる
概要
『
群青の空を超えて』とは、2005年9月30日に
lightより発売されたパソコン用アダルトゲーム。公式のジャンルは本格未来架空航空戦記ADV。
シナリオライターはエロよりも政治や軍事に力を入れている事に定評のある早狩武志。後日談とプロローグを描いた小説もある。
郵政民営化で行き詰まった日本で繰り広げられる内戦を描くストーリーの評価はかなり高く、点数評価だと高得点になるが、妙にオススメしにくい作品で、コメントが付くと残念になる。
OP『アララト』は名曲だが、ムービーにヒロインは一切登場せず、まさかの戦闘機だけ登場という異例のもの。
エロゲ成分がほとんど無い作中で、やたら力が入っている戦闘機のせいで「ヒロインは戦闘機」「真のヒロインはグリペン」等と揶揄される事も。
しかし、それでもミリオタどもを満足させるには至らず度々こきおろされている……
あらすじ
郵政民営化による郵便貯金及び簡易保険の民間開放により、政府が500兆円の現金を失った日本。
借金を抱え、国際的信用を失い、内政も行き詰まった政府に国民は不満を覚えていた。
そんななか、様々な分野で実績を残した天才学者・萩野憲二が、著書の中で「円経済圏理論」を発表する。
これはアジア各国をいったん解体して自治政権に細分化し、新たな統一通貨「円」を使用する統一経済圏(円経済圏)を作り上げようというものだった。
紆余曲折の末、円経済圏理論は日本の発展的分割案として国会が承認。琉球王国、蝦夷共和国、東日本(関東政権)、西日本(関西政権)に4分割された日本は一種の国家連合となる。
しかし、政治・経済双方において実権を握り、円経済圏理論による既得権益喪失を恐れる関東政権と一部政財界は「円経済圏における自治政権は旧来の独立国家と変わらない」と主張。どさくさ紛れに萩野憲二を暗殺して独立を宣言。日本は内戦状態に突入する。
これは関西政権が侵攻させた
自衛隊が鎮圧した...かに思われたが、一部の占領部隊が行った強硬措置に対する反発と、萩野憲二の理論に感化された学生達による統一武装蜂起が発生。
備えが不足していた自衛隊が敗走し、国連の介入の元で関東・関西政権間で停戦協定が結ばれたことで関東政権は(結果論として)独立する。
アメリカが後ろ盾についた関西政権と、EU(ヨーロッパ連合)が後ろ盾についた関東政権による睨み合い状態は代理戦争の様相を呈し、燻り続ける中国と台湾の対立もまた本格化しつつあった。
そして、関東・関西間で再度の軍事衝突が避けられないことが明白化する中、関東政権の教育機関兼軍事基地「筑波航空学校」で物語は始まる...。
登場人物
萩野社
声:小池竹蔵
主人公。筑波戦闘航空団第11飛行隊付き筑波航空学校一種飛行予備生徒。その名の通り萩野憲二の息子。
エロゲ主人公には珍しく声有りだが、オプションで消せる安心設定。
日下部加奈子
声:
安玖深音
筑波航空学校付属校所属三種予備生徒。
戦死した兄の諒を追って航空団に入った。
渋沢美樹
声:上坂莉緒
関東政権軍一尉・筑波戦闘航空団第11飛行隊付き教官。
シルバリーシルフィードと呼ばれる関東政権軍の英雄にして、諒の恋人だった人物。
澤村夕紀
声:安倍有紀
報道カメラマン。
サブなためか√が異様に短い。
水木俊治
声:中田真沙
筑波戦闘航空団第11飛行隊付き筑波航空学校一種飛行予備生徒。
若菜の弟。社の僚機でもある。
鈴木隆史
声:富士爆発
関東政権軍一尉・筑波戦闘航空団第11飛行隊小隊長。
社や俊治の直属上官。
藤川達也
声:平井達矢
筑波航空学校校長兼筑波戦闘航空団司令。
元々はドイツ哲学を専門としていた軍とはゆかりもない人物だが、学生たちによって航空団司令にまで押し上げられた。
日下部諒
加奈子の兄にして美樹の恋人で、グリペンを誰よりも上手く操れた人物。
作中開始時点で既に亡くなっている。
設定
円経済圏理論
萩野憲二の自著『幻想の河を超えて』で唱えた理論。ある意味この物語の元凶。
元々この理論は、
- 経済圏
- 軍事圏
- 民族圏(言語)
- 政治圏(司法含む)
の四つが社会に存在し、歴史上これらが一致したりしなかったりする時期が交互に訪れるというもの。これらがほぼ一致した時期が近代国家(日本の場合は明治維新以降)となる。
萩野憲二はこの理屈に基づき、NATOやEUが拡大したのは各圏の不一致の先駆けだと考え、国際競争力維持のためには極東アジアにも同種のシステムが必要として、日本も各圏を切り離すべきだとしていた。
円経済圏理論においては、一種の国家連合を形成し、細分化した自治政権群が政治運営に専門することで、政治・経済の中心地を分散させ、共通通貨「円」を用いて一種の国家連合を形成することで徹底した分権化がなされた巨大勢力を作り出すことができるとされた。やんごとなき人達をどうするかは触れられていない。まあタブーだからだろうね。
ちなみに一致しない理由は
- 技術発展の度合いなどによる各圏の拡張速度。
- 大きいほど効率的になる経済圏・軍事圏
- 多層的で単位が小さいほど効率的になる政治圏
- 大きさが人為的に変更できない民族圏
といったようにそれぞれの性質が異なるためでもある。
様々な議論や紆余曲折の末、この理論を実効に移した日本一種の国家連合となったが、萩野憲二によると、中国・朝鮮半島・台湾も自治政権に分割し、共に共通通貨を使用することで北米や欧州に対抗できるとのこと。
予備生徒制度
関東政権独立後、関東政権軍指揮下で学生が抵抗運動を行うために考案された制度。戦闘に参加する一種予備生徒、その前段階の二種予備生徒、中学生からなる三種予備生徒で構成される。
元自衛官と元予備生徒で構成される関東自治独立政権治安維持軍(=関東政権軍)は統合軍を意識しているのか陸海空軍の区別はない。
志願制だが、事実上の学徒動員であり、予備生徒の総数は十数万人ともされる。
登場兵器
関東のみ
- JAS39 グリペン
- T-4
- T-2
- U-125
- KV-107
- CH-47
- CH-60
- OH-1
- AH-1S
- RF-4XJ
関西
関西・関東共通
その他
- A109K2:富山県警察が使用。
- F/A-18E/F:とあるルートで介入してきた米軍が使用。
その他
こんな内戦状態で諸外国が介入しなかった理由は、関西側についた海上自衛隊がタンカー改造の低速空母搭載のYF-23で睨みを利かせていたかららしい。
そりゃ迂闊に介入できんわ。
追記・修正お願いします
- 加奈子ルート後の俊治ってどうなったんだろ -- 名無しさん (2014-05-20 10:39:34)
最終更新:2024年08月25日 19:30