里見・義頼(境界線上のホライゾン)

登録日:2011/09/16 (金) 14:45:40
更新日:2024/03/18 Mon 16:43:33
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『生き場所の探し人』



夢見た場所が
護る先にあるとしたならば
配点(先達)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


里見・義頼とは川上稔著〈GENESISシリーズ〉『境界線上のホライゾン』の登場人物である。

所属:里見教導院
役職:総長
戦種:重武神騎乗師
字名:“家臣殺し”


身内に容赦なさすぎる連中が跳梁跋扈する境ホラの中でも貴重な温厚青年。名前の加護があるとするなら『義理を頼って生きてく人』。
善い人すぎて武蔵の全裸の奇行や副会長のダダ滑り芸を黙認してしまうのはご愛嬌。

人格的には全く外道成分のない良識人であり、また里見生徒会長里見・義康”を実の妹のように大切にしている。
がしかし、先代の“里見・義頼(里見・義康の姉)”を殺して現在の地位についたため、当の義康との間に若干ながらもミゾを作っている。


武神乗りとしての実力は非常に優秀。
敵の攻撃を容易く抑え込んで反撃も許さず倒しきる義康ですら(機体や武器の性能云々を抜きにしても)歴然とした差を自覚するほど。
作中では乱戦の最中にいきなり飛び込み、瞬時に二機の武神を撃破。後続として左右から肉薄する武神二体を苦もなく捌ききり、さらに彼等を囮にして放たれた高速砲弾二発を“村雨丸”片手打ちで迎撃相殺。
その後、六護式仏蘭西旗機“パレ・カルディナル”と交戦。片手打ちの代償に右手を痛めていたにもかかわらず互角のまま相対し続けた。



○武神“八房”
関東IZUMOの技術力と明残党の武神(後の地摺朱雀)の情報を元に飛翔器や駆動器、OSを組み上げられた、犬顔の頭部装甲を持つ里見教導院最強の神格武装級武神戦力。
八玉駆動機という高出力駆動器を持っているが、乗り手に仁・義・礼・智・忠・信・考・悌の“八徳”を求め、その資格がなければ扱うことが叶わない人格者限定仕様。
八房の制御器としての役割を持つ剣砲“村雨丸”を固有武装として持ち、里見・義頼の高い技量によって支えられた性能は戦場の“旗印”に相応しい強さを発揮する。



○剣砲“村雨丸”
極厚の刃から霧を飛沫かせる大刀。
武神用と個人用の大小二振りがあり、“八房”を起動させるためには二本の連動が不可欠。“八房”と同様に八徳が無ければ抜くことも出来ない。
作中では距離にして約一キロ半をぶち抜く切断射撃を披露した。



○“正木・憲時”
前総長“里見・義頼”―里見・義康の姉―がいた時に襲名していた名前。
歴史上、正木・憲時は里見の跡目争いの過程で北条と結託し、義頼の代に謀反を起こして討ち取られることになっていたが、里見では謀反による憲時の死を回避するべく北条と取引。
『羽柴の航空艦を撃沈』を条件に、正木・憲時の謀反の多くを見逃すことを約束し、歴史再現を開始。

“八房”を駆った義康の姉は羽柴艦隊を撃沈させ、『その中に正木もいた』とすることで再現を完遂させようとしていた。
しかし彼女が正木の艦へと向かった時に事件は起きる。


『里見・義頼の殺害


正木側では『前もっての打ち合わせでは“正木を討ち取るという歴史再現は遵守する”と通じていた』として、謀反成立のために彼女に攻撃を仕掛け、しかし正木を討つ気のなかった彼女は逆に討たれてしまったのである。

この歴史再現に重大な誤差を生む“事故”に対して里見は“正木・憲時”と“里見・義頼”の襲名を逆転させることで対応。
かくしてこの一件は“歴史再現の悲劇”として扱われることになる。









以下、『Ⅲ下』ネタバレ




















すいません
自害では、里見の屈辱となります。
力を得ること自体が間違いだったのかと。
力を得ても屈服せざえる得ないのかと。
――己のしたことを、無駄に感じることとなります。


だから、すいません
私を、討って下さい


“家臣殺し”の真相――それは『過ぎた力を粛正するために行われようとしていた里見侵攻を食い止める』ための引責自害であった。
“八房”と、それに続く八機の武神“八犬”の開発によって“防衛”のためには大きすぎる力を持った里見を、羽柴は北条を通じて潰しにきたのだ。
それを阻止するため義頼は己を殺させ、彼女の死を羽柴への義理立てとして、里見を存続させたのである。


この一件を、義頼は隠し続ける。
死を選んだ彼女、そして里見への“忠”の証として。
そして−−−−、



























里見・義頼、――成瀬・正義の臨時襲名として、行かせて貰う


『Ⅲ下』終盤。
松平が最大の敗戦と犠牲を強いられる“三方ヶ原の戦い”の歴史再現にて準バハムート級三胴艦“安土城”を持って武蔵を追い詰め『武蔵の撃沈』か『成瀬・正義の特攻と死亡』――マルガ・ナルゼの犠牲――を迫るP.A.Odaに対し、義頼は武蔵アリアダスト教導院の御旗を掲げ、“成瀬・正義”を臨時襲名したと宣言。

里見教導院に『各々の判断で降伏するか抵抗するかを決めよ』と命じ、さらに“家臣殺し”の真実、武神“八房”、そして次代の里見の担い手たる義康を武蔵勢に託した。
生還不能な戦場に赴こうとする行為に「誰かこの馬鹿止めろ……!」と声を荒げる葵・トーリ「お願いします」と武蔵の姫ホライゾンに告げられ、その願い通りに物理的に自身を止めようとする武蔵勢、そして「……行かないで!!」と泣き叫び手をのばす義康を振り切り、過去の精算のため、羽柴を討つため、なにより里見を護るため“安土城”へ特攻。

この最中、トーリがホライゾンを救いに行った時に言った『死ぬしかない人間じゃない。殺されるしか他にない人間じゃない』という言葉に救いを得ていたことを明かし、自分たちのように死を選ぼうとする者達を救ってくれと言い残し、迎撃を加熱させていく艦船群を突破。
戦艦“長浜”と小艦18機を大破、21機を中破に追い込み、“安土城”の火縄型三連主砲により右半身を吹き飛ばされるも残る腕と脚を犠牲に防護障壁を砕き切り、もはや胴体と飛翔器しか残らぬ状態でP.A.ODA五大頂羽柴・藤吉郎に肉薄。
彼女の身体にその牙を突き立てるも、彼女の放った攻撃により顔面装甲以外の全てを消し飛ばされ、壮絶な最期を遂げた。




















武蔵総長兼生徒会長……!


敢えて言う。
今後の戦いにおいて、君は笑え!


これから先、如何なる損失があろうとも、泣くようなことがあろうと、君だけは笑え


私のようなものを笑って、君以外の全てが泣いても、戦える限り、君だけは笑え!


絶対に、
どのようなことがあっても笑って……!


私と彼女のような連中を救ってくれ……!!











そして時は流れ、なんと武蔵勢と羽柴勢の和解・共闘が成立した最終巻11下にて、この時の裏話が語られた。


実は、この時羽柴・藤吉郎とその配下十本槍は諸事情により「武蔵勢を停めよう」とは考えていても「止めを刺そう」とまでは思わず、
誰かを失わせることを是とした武蔵勢の心を折る」(ナルゼが出てきて撃墜したとしても捕縛・人質交渉に留めて生かす)・「ナルゼ犠牲を拒否した武蔵を実力で撃墜し動きを封じる」・「武蔵勢が降伏する」のどれかを想定していた。
だが義頼の出陣でその目論見は挫かれ、結果的に2勢力の合流という想定外の未来が生まれる嚆矢となった。

そして事情を聴いた義康は、あの時義頼が「八房を託せる自分・里見を継いでくれる後代」がいたからこそ、八房に乗らず死地へと赴いたのだと悟り、「義頼の望みの先に自分達がいる」のだと実感。
羽柴勢に対して「義頼の見ることが出来なかったものを見ることが、ひっくり返された羽柴勢に対する最大の報復であり自分の望み」として、彼らとの共闘を受け入れるのだった。



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最終更新:2024年03月18日 16:43