登録日:2024/10/06 (日) 16:28:10
更新日:2025/04/15 Tue 23:26:59
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『Pearl パール』とは、2022年に公開された米映画。
同年に公開されたA24製作のスラッシャーホラー映画『
X エックス』のシリーズ第2弾にして同作の前日譚である。
日本では2023年7月7日にハピネットファントム・スタジオ配給で公開された。
概要
本作は、『X エックス』に登場する老婆パールの若かりし日々と、彼女が狂気の末に殺人鬼に成り果てていく様子が描かれている。
舞台は第一次世界大戦末期の1918年。テキサスの農場で厳格な母親に抑圧され、出兵した夫の帰りを待つしかない若き日のパール。
彼女の夢は、農場を出て、誰からも愛されるスターになることだ。
だが、現状への不満と抑圧が限界を超えた時、内なる殺人衝動が噴出して彼女はシリアルキラーと化してしまう。
前作同様、「特別性への羨望」がテーマとなった本作は、前作では断片的に語られる程度だったパールの内面を通じて事細かに描写している。
自分では田舎を出ることも出来ないパールは、母親の言いなりではない「特別」な自分になることを望んでいる。
そして自分の「若さ」も無限ではないことを知っている。
だが、生来の彼女の持つ異常性と外側からのストレスが合致し、彼女の狂気が露呈するのだ。
パールは前作の老いた姿同様、ミア・ゴスが演じており、その演技力は圧巻。
可愛らしさ、慟哭、激昂、そして狂気をまざまざと見せつけ、観客に強烈な印象を叩き込む。
特にラストの10分弱の独白とエンドクレジットの表情は必見である。
監督は前作に引き続きタイ・ウェスト。
脚本はタイ・ウェストとミア・ゴスが共同で取り組んだ。
ストーリー
1918年、第一次世界大戦が激化し、スペイン風邪が大流行して混沌の時代に差し掛かった時。
テキサス州の人里離れた農場で、両親と暮らす女性パールには、「農場を出てスターになる」という夢があった。
だが、病気で前後不覚の父親の介護や厳格なプロテスタントである母親の抑圧により、実現など夢のまた夢であった。
頼みである夫も、今は出兵中の身であり、欲求は溜まる一方。
そんなある日、彼女は義妹から、慰安ダンサーのオーディションが近々近所で実施されると聞かされる。
訪れたチャンスに執念を燃やすパールだったが、母にそれを知られ激怒される。
我慢が限界を超えたパールは遂に超えてはならない一線を超えてしまい、彼女の欲望は凄絶な狂気へと変わっていく……。
登場人物
演:ミア・ゴス/吹き替え:森千晃
本作の主人公。前作『X エックス』の殺人鬼である老婆の若い頃の姿。
ドイツ系の移民二世で、テキサスの農場の一人娘。
病気で動けない父の代わりに農場の作業を、夫がいない中ほぼ一人でこなしており、日々忙殺されている。
やがて、農場を出て有名になる人生を思い描くも、厳格な母には許してもらえず、不満は溜まる一方だった。
農場の動物達に踊りを見せることもあるが、気に入らない動物を殺す癖があり、既に異常性は露呈しつつあった。
そんな中で、ダンサーのオーディションの話を聞いて絶好のチャンスに血眼になるが、そこでの母との口論で取り返しのつかない事態に発展。
内なる狂気が肥大化し、最早誰にも止められないシリアルキラーへと覚醒していく。
演:タンディ・ライト/吹き替え:八十川真由野
パールの母。ドイツ人移民で、熱心なプロテスタント信者。
荒れ地の開拓や夫の介護に心を擦り減らし、「最善を尽くす」という名目で若い娘の夢をも許さず彼女の自由を奪っていた。
スターになりたいというパールの願いを一笑し、娘の持つ若さへの嫉妬を吐露して呪詛を連ねる。
演:マシュー・サンダーランド
現時点での農場の主人だが、重病を患い、車椅子に乗ったまま意識混濁の状態にある。
母を嫌っていた一方、パールは父には好感を抱いていたようだ。
演:デヴィッド・コレンスウェット/吹き替え:神尾晋一郎
パールの行きつけの映画館の若い映写技師の男。
「ボヘミアン」を自称しており、日ごとに気ままな旅をして町を転々と渡り歩いている。
パールと親しくなり、彼女に「フランスへ連れていく」と約束し、関係を持つ。
だが、家に招待された際に彼女の異常性に気づき、離れようとしたが……。
演:エマ・ジェンキンス=プーロ/吹き替え:
瀬戸麻沙美
パールの夫、ハワードの妹。
ブロンドヘアーの、いかにも「アメリカ的」な見た目の女性。
パールに実の家族のように優しく接しており、オーディションも共に公平に競い合おうとしていたが……。
演:アリステア・スウェル/吹き替え:白石兼斗
パールの夫。
上流家庭の出身で、田舎に憧れて農場に婿入りした。
現在は戦争に出兵し、離れた妻に手紙を書き連ね、帰還を待ちわびている。
しかし、パールからは農場から「連れ出してくれなかった」件や自分を置き去りにした件で恨みを買われていたようだ。
農場で飼われているワニでパールが唯一心を許せる親友。
パールが殺した動物の「後始末」をしてくれている。
余談
- 前作『X エックス』とは、登場人物の動き等を踏襲したシーンが多数盛り込まれている。それはパール本人であったり、マキシーンのものであったりと様々。
追記・修正は何も求めず、今あるものを大事にしてからお願いします。
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最終更新:2025年04月15日 23:26