トカゲモドキ(ペット)

登録日:2025/02/09 (Sun) 18:16:00
更新日:2025/02/11 Tue 20:00:21
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トカゲモドキとは、地表性ヤモリの中のヤモリ科トカゲモドキ亜科、もしくはトカゲモドキ科だとされる(分類には諸説がある)グループである。
本項目ではペットとしてのトカゲモドキについて述べる。


ちなみに、トカゲ『モドキ』の名前は、ヤモリなのに瞼があり(目を閉じることができるヤモリはトカゲモドキだけ)、壁などを上ることはできない、と、ヤモリ類なのに昼行性トカゲに近い特徴を持つからである。
ただし、ほとんどの種は夜行性である。



さて、現在の爬虫類飼育人気の最大の牽引役になった種は何か?と聞かれたら、
これはもう爬虫類マニアの100人中100人が

「レオパ」(レオパードゲッコー、ヒョウモントカゲモドキ)

と答えるだろう。
飼育人口、飼育個体数ともに、他のペット爬虫類を圧倒していると思われる。

レオパがここまでメジャーになったのは、飼いやすく、モルフが極めて多く、
そして何より、爬虫類の中でもトップクラスに人間に慣れやすいという性質のためだろう。
飼い主と目が合うと、餌をもとめてシェルターから出てくる爬虫類なんて、他にはなかなかいない。

今やほぼ完全に家畜化された爬虫類と言っていいこのレオパだが、もともとはアフガニスタンに生息していた野生種である。
現地に赴任したアメリカ人兵士が持ち帰って増やしたのが始まりとされる。
(現在ではWCはまず出回らないが、WCの模様を残すことにこだわって血統管理しているブリーダーが日本にもいる)

丈夫で飼いやすいのは砂漠出身故だろう。
さらに繁殖をさせやすく、かつ様々な遺伝性のある色・模様・体形などの変異のバリエーションが豊かだったのが、飼育種として人気が爆発した大きな理由である。
現在出回っている個体は何十世代も人為繁殖されているものなので、人工飼料にも簡単に餌付くし人にもなれる。

そこで、今度はそれ以外のトカゲモドキたちに注目が集まってきた。
今ではレオパ以外にもかなりの種類のトカゲモドキを購入できるので、レオパと同じ感覚で飼えると思って手を出す人も多いかと思われるが……


飼い方


まず明確に「レオパ」と「ニシアフリカトカゲモドキ」と「それ以外」に分けて考えたほうがいい。

レオパがあまりにも陽キャなので勘違いされがちなのだが、元来このグループはほとんどがド陰キャなのである。

そもそも夜行性だし、普段はシェルターの中にじっと隠れているという種が圧倒的に多い。
特に人に慣れるまでは、飼い主でさえもロクに観察できないと思っておいたほうがいい。

ニシアフリカトカゲモドキも、レオパに比べたら陰キャであるが、それ以外の種と比較するならばまだ陽キャの部類である。

最初から人慣れするのはレオパとCBのニシアフリカトカゲモドキだけと思っていい。
それ以外は、飼い始めてから半年ほどはロクに姿を見せてくれないものだと思って世話を開始しよう。

飼育難易度は、ものすごく大雑把に言ってしまえば
レオパ<ニシアフ<<<<<<(越えられない壁)<<<<<<それ以外
である


飼育用品については、なんといっても非常に充実しているレオパ用のものが流用できるので、その点はありがたい。
ケージは小型でいい。よく知られている、マグネット式のスライド型のフタを持つレプタイルボックスが最も手ごろ。
ただし、これは「シェルターの上に登って、首の力で蓋をこじ開けて逃げた」という脱走事例が意外と多い。
しっかりしたレイアウトで飼いたいなら、30センチから45センチほどのサイズの爬虫類ケージを使えばいいだろう。

意外と多いのが「蒸れすぎ」を原因とする失敗である。
なので、通気性の悪いプラケースを使う場合は要注意。
蓋や側面に通気用の穴をあけるのがオススメである。

ケージの下にはパネルヒーターを敷く。
バスキングライト・紫外線ライトは必要ない。

もっとも重要なのがシェルターである。これはどの種でも必須。
姿を隠して落ち着かせるためであると同時に、ほどよい湿度を保った場所をケージ内に作るためでもある。
種によって、ドライシェルターを好むか・ウェットシェルターを好むか、シェルターの下にパネルヒーターがあったほうがいいかなど、結構異なる。
迷ったときは、上述の条件を網羅した複数のシェルターをケージ内に設置して、トカゲモドキがどのシェルターを使うかを確認するといいだろう。

レオパとCBのニシアフ以外は、正直あまり活動しているところを観察する機会も少ないのだが、ケージ内に岩などをレイアウトしてあげるのもいいだろう。
床材は乾燥系なら赤玉土やウォールナットサンドなど、湿潤系は腐葉土など。

エサは、基本は昆虫。
ただし、レオパとCBのニシアフについては、ほとんどの場合、販売されている時点で人工飼料に餌付いている。
餌付いていない場合でも、ほとんど個体が簡単に食べ始める。
WCのニシアフも、人工飼料に切り替えるのはそう難しくない。

それ以外の種に関しては、「ピンセットから虫を食べてくれる」ようにさえなれば、人工飼料を使える可能性が出てくる。
飼い始めの頃は、特にWCは餌を与えるだけでも大変である。
人間が見ているところでは絶対に食べてくれない場合が多いので、最初は足をとったコオロギなどを、エサ皿に入れてケージの中に入れておこう。
一晩経って、食べてくれてればまず安心。
エサにはカルシウム剤の添加を忘れずに。

このグループ(に限らず、ヤモリ全般)の失敗事例でかなり多いのが、脱皮に失敗してそのまま死ぬというもの。
これの原因は、まず「痩せすぎ」。なので餌やりはあんまりサボらないように。
(ただし、レオパやニシアフではこの逆に、餌をやりすぎて太らせて突然死させる飼い主が最近は多いとされる。
哺乳類と同じような感覚で、毎日たらふく餌をあげてしまうのだ。
アダルトになったら、餌は3おき程度で十分である)

もう一つが「湿度不足」。
ここが初心者のうちは難しいところで、前述のように、常にケージがびちょびちょで蒸れてる、という状態でもNG。
「基本乾いていて、シェルターの中だけは湿度がある」のが理想的な状態である。

特に脱皮の直前になったら(観察していれば、脱皮前は全身が白っぽくなるのでわかる)、ケージ内に霧吹きをしてあげる、脱皮促進剤を使う、などするのがいいだろう。



それ以外のポイントは、「あまり構わない」ということ。
何度も言うが、レオパが例外的に陽キャなだけで、それ以外はじっと静かに隠れているのが好きなグループである。
トカゲモドキ全体は陰キャオタクで、レオパがイキリオタクもしくはオタサーの姫みたいなもんだと思えばいい。

あんまり、ハンドリングしたりいじくりまわしたりするようなペットではない。
静かに見守ってやろう。

「それって飼って楽しい?」と疑問に思うような人は、レオパを飼うか、フトアゴなどそれ以外の爬虫類を飼えばいい。
レオパ以外のこのグループは、飼育開始後半年くらい経って、ようやくシェルターから出てきてケージ内をうろついていたのを、たまたま夜中に目にして感動する、というようなのが楽しみ方である。

ペットとして流通する主なトカゲモドキ


Eublepharis属


レオパとその仲間たち


言わずと知れた大スター爬虫類。
爬虫類飼育人口を増やし、特に若い女性にも愛好者を増やした功労者であるが、
爬虫類としてはあまりに飼いやすくてかつ人懐っこいというところから、
「こんなもん爬虫類じゃねえ」などという謎の批判を受けることすらある。
初心者が他の爬虫類をレオパと同じ感覚で飼って失敗する、という例もよく聞く。
まあ、爬虫類飼育文化における功績が大なのは間違いないので、素直に感謝しておこう。

もっとも繁殖が容易な爬虫類でもある。
詳細は個別項目参照。

  • オバケトカゲモドキ

一見したところレオパによく似ているのだが、30~40センチと、かなり大型になる。
ちなみに、レオパにも「ゴジラジャイアント」という、大型になるモルフがあるのだが、もちろん別物。
飼い方はレオパを基本にしていいが、やはりレオパより神経質なところがある。

  • ダイオウトカゲモドキ

オバケに対して、こちらはダイオウ。
トカゲモドキ最大種と呼ばれる。
オバケと共に、近年はCBが多く出回るようになった。
この属は、特にCBは比較的ハンドリングも可能。
でかいので、可愛がりたい人にはいいだろう。

  • ヒガシインドトカゲモドキ

別名バードウィッキートカゲモドキ。
この種も気が付けばかなりCBが出回るようになった。
色彩が非常に鮮やかで、観賞用として人気の高い種。


Hemitheconyx属


みんな大好きニシアフ

  • ニシアフリカトカゲモドキ

通称ニシアフ。
レオパに次いで人気のある種で、ペット爬虫類の代表種の一角を占める。
レオパとの大きな違いはその目。ウルウルとした黒目なのだ。
これが人気の大きな理由だろう。

本種もかなりの数のモルフがある。
CBはレオパに次いで飼いやすい。
本種はWCもかなり流通する。WCはCBのようには人なれしないし、特に最初はずっとシェルターに隠れている。
WCはマニア向けだろう。


Holodactylus属


長らくの沈黙を経て、ついに奴が帰ってきた……!!

  • ヒガシアフリカトカゲモドキ

完全に地中性のトカゲモドキ。
かつてはかなり安価にWCが出回っていた。

しかし、突如として爬虫類飼育界に激震が走った。
本種を含むアフリカのWCを豊富に輸出していたタンザニアが、突如野生動物の輸出停止に踏み切ったのである。
これによって、オニプレートトカゲ、ヒナタヨロイトカゲ、オオクサガエルなど多くの種が市場から姿を消した。
ヒガシアフリカトカゲモドキも、その中の一つである。

その後、アフリカの他国(トーゴなど)から、輸入が再開される種も出てきたのだが、
オニプレートトカゲはかつての2倍、ヒナタヨロイトカゲに至っては10倍違い値段になっていた。
そして、安い時には「別にいつでも買えるからいいや」と後回しにされ、高騰したら「こんな種にこんな値段出せるか!!」と文句を言われる


教訓:いつまでも いると思うな 安い種は


どんな種でもとにかく国内で殖やしておけ、と言われるのは、このような事例が起こるからである。
(ヒナタヨロイトカゲは2023年頃から国内CBが出回り始めた。値段もかなり下がっている)

そんなわけで、長らく日本人ファンの間から姿を消していたヒガシアフリカトカゲモドキだが。、2023年に久々に輸入された。
値段はかつての10倍。まあ、仕方あるまい。

そんな本種だが、なにしろ地中性種なので、飼っていても全然観察できない。
正直、普通の飼い主にとっては、飼っていて楽しい種だとは全く言えない。
値段も値段なので、本当に好きな人、どうしても本種を飼ってみたい人向け。

Aeluroscalabotes属


紛らわしい見た目

  • マレーキャットゲッコー

この仲間はオマキトカゲモドキが和名だが、キャットゲッコーの名前で流通することが多い。
名前の通り、長くてくるんと巻いた尻尾がチャーミングなやつ。
体形も他のトカゲモドキと比べてすらりとしている。

尻尾も相まって、どう見ても樹上性っぽい見た目なのだが、実際には他のトカゲモドキと同じく地表性である。

Goniurosaurus属


和名をキョクトウトカゲモドキという、東アジアのトカゲモドキ。
少し前までは色んな種が流通していたが、現地で保護されるようになったため、最近はCB化されているハイナントカゲモドキとバワンリントカゲモドキくらいしか見ない

  • ハイナントカゲモドキ

中国の海南島に住むトカゲモドキ。
一見して「闇の眷属」みたいな感じのトカゲモドキであり、一部では人気がある。
この属は森林の中に住んでおり、レオパやニシアフと同じ感覚では飼えないので注意。
CBが多く出回っているので、比較的飼いやすくはある。

ちなみに、老舗の爬虫類飼育雑誌「ビバリウムガイド」の21号(2003年)では、
編集長の冨水明氏が自ら海南島まで本種の野生個体を探しに行き、
猫肉を食わされるなどの苦行の珍道中(※冨水氏は愛猫家)の果て、結局発見できずに帰国
その後、普通に国内で売られているのを見つけるというオチまでついた。
この号は、マニアの間では未だにビバリウムガイド史上最も面白かった号と言われる。

Coleonyx属


アメリカトカゲモドキ。その名の通り、中南米に棲息。
どうも影が薄い。

  • ボウシトカゲモドキ

影が薄いColeonyx属の中ではよく見るほうで、CBも出回っている。
この属の中では丈夫で飼いやすい。


オマケ・日本のトカゲモドキ


実は、日本にも野生のトカゲモドキが南西諸島に何種類か生息している。

これらはすべて天然記念物であり、採集も飼育も厳禁
実際、密猟者が逮捕された事例もある。
まともなショップなら扱うはずはないが、万が一売られていても絶対買わないこと。

一方で、アメリカなど海外の爬虫類イベントで、日本産トカゲモドキが売られていたという事例もいくつか報告されている。
これらは密猟個体を殖やしたものとは限らず、動物園や研究施設で増えたものが払い下げられたものである可能性もある
(この場合、少なくともアメリカ国内では違法ではない)。



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最終更新:2025年02月11日 20:00