SCP-5034

登録日:2025-03-09 Sun 17:33:16
更新日:2025/05/20 Tue 12:43:47
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天使たちは止まることなく再生し続ける。


SCP-5034とは、怪奇創作サイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つ。
オブジェクトクラスTiamat

初めに

まずこの記事は誤伝達部門と呼ばれる財団内部部門の一つの記事である。
誤伝達部門とは簡単に言えば「言葉で説明することが困難なオブジェクト」を扱う部門である。言葉で説明できないと言っても何処ぞの森とは違って名前をつけてはいけないとかそんな感じではない。
簡単に言えば「直接正体を説明できない存在に対して、回りくどい方法で記録を残す」ようなものと思ってくれてかまわない。

次にこの記事はTiamatと呼べれるオブジェクトクラスを扱っている。このクラスは簡単にいうとKeterの上位互換。Tiamatの説明は「正常性を無視して、公の場で堂々と戦う」と言えばわかりやすいだろう。Apollyonよりはまだマシだが誤差だよ誤差。


誤伝達部門より通達
このファイルの分析により、異常な性質が表示されないことが確認されました。中に存在する全ての情報は、事実をそのまま述べたものとみなすことができます。

— エリ・フォークレイ、誤伝達部門主任
何やら最初からおかしいことになっている。
これは間違いなく誤伝達部門の記事なので何かしらの異常はあるはずである。
なのに異常はないということだろうか。

特別収容プロトコル

SCP-5034は予算上の懸念により収容は不可能となっており、SCP-5034が骨董店*1に発見された場合エージェントが実験に行くことになっている。標準試験機器の使用が認められており、全ての実験は財団実験委員会*2の承認を得なければならない。
この時点ではまだ普通の収容プロトコルのように見えるが、財団実験委員会なる委員会がSCP-5034と戦闘行為を行った後に結成されたと書いてある。何やら場違いな言葉が紛れているが次に移ろう。

説明

SCP-5034は陶器の鉢*3とその中に入っている7つのビー玉*4の総称である。
脚注によると陶器の範囲には惑星全体が含まれているらしい。とんでもなく範囲が広い。7つの赤いビー玉は見た目が変わるらしいが、素直に受け取れば色が変わるとかそんな感じだろうか?

常にSCP-5034は陶器の鉢と7つの赤いビー玉で構成されている。ビー玉が陶器から除去または破壊されるとビー玉は消滅して鉢に再出現する。SCP-5034の外側でビー玉を収容しよう*5としても失敗したようで、ビー玉に干渉しようとする全ての試みは財団の予算*6に負の影響を与えてきた。
陶器の鉢とビー玉は離すことができないようで、ビー玉を収容するためにプロトタイプ適応収容チャンバーが使用されている。この収容チャンバーというのはK-クラスレベルの甚大な損害をもたらす異常物を収容するために作られたものであり、また死傷者報告とかいう物騒な単語が存在していることから、SCP-5034はどうやらただのビー玉と鉢ではないことが窺い知れる。

SCP-5034は異常効果がもう一つある。それはSCP-5034を観察する全ての個人はSCP-5034を7つのビー玉が入った陶器の鉢だと認識するというものだ。情報が一回何かの形になってから伝えられるとその影響を受けないようで*7、例えばSCP-5034を直接認識すると影響を受けるが、SCP-5034によって残された痕跡を見ても影響はない。*8
案の定、SCP-5034は自身をビー玉と鉢だと認識させる異常性を持っているようだ。報告書もこの影響をしっかり受けており、冒頭のフォークレイ主任による通達もおかしな内容に改変されてしまっている。ただこの異常性には隙があるようだが、これについては後述する。また脚注には非同期戦争や財団戦争委員会やらと何かと物騒すぎる単語が並べられている。

補遺5034-1(実験ログ)

このままではよくわからないので、SCP-5034に対して行われた全ての実験の記録を見てみよう。*9
実験5034-1
状況: SCP-5034が発見された際、財団職員は鉢から3つのビー玉を取り外して収容しようとした。*10
結果: 取り外されると、全てのビー玉が消えて鉢の中に再び出現した。収容失敗。財団の予算が大幅に影響を受けた。*11
なぜか初手から世界オカルト連合と協力してビー玉を収容しようとしている。
そしてBK-クラス: "壊された虚構"シナリオが宣言されており、この時点でTiamatに指定された=ヴェールが破られたものと思われる。収容するのにそこまでするのには一体どういう理由だろうか。

実験5034-2
状況: インドのチェンナイの骨董品店でSCP-5034が再発見された際、財団職員は鉢からビー玉を1つ取り出し、大槌*12で粉砕しようとした。
結果: ビー玉の破壊に成功した後、鉢の中に再出現した。破壊失敗。財団の予算が大幅に影響を受けた。
いくつかのアノマリーで構築された大槌を用いることでビー玉1つの破壊には成功しているが、鉢の中に再出現して破壊に失敗。財団の予算が大幅に影響を受けている。

実験5034-3
状況: 多数の個人コレクターを介したSCP-5034の取引を追跡した後、財団職員は鉢の中のビー玉のうち1つを入れたままにして保管しようとした。
結果: 収容は6日間成功した。しかし、7日目にセキュリティ担当官が収容チャンバーに入り、誤って鉢からビー玉を放出した*13。収容失敗。財団の予算が深刻な影響を受けた。
6日間の収容には成功しているものの、セキュリティ担当官が収容チャンバーに入りビー玉を放出したことで収容に失敗。財団の予算は深刻な影響を受けている。

実験5034-4
状況: SCP-5034が再発見されると、出動可能な全ての財団職員は、大槌を使ってビー玉を叩き割ろうとした。
結果: 5つのビー玉の破壊に成功した*14。しかし、その後鉢の中に再出現する。破壊失敗。
実験2で出てきた大鎚を使ってビー玉を叩き割ろうとしている。もはや収容より破壊に全振りしている感じであり、5つの破壊に成功したものの6つ目のビー玉は再生能力を持っているようで破壊に失敗。

実験5034-5
状況: SCP-5034が再発見されると、出動可能な全ての財団職員*15は、大槌を使ってビー玉を叩き割ろうとした。
結果: 6つのビー玉の破壊に成功した。しかし、その後鉢の中に再出現する。破壊失敗*16
ふたたび大槌を使ってビー玉を叩き割ろうとしている。6つのビー玉の破壊に成功しているが、その後鉢の中に再出現して破壊に失敗。この時に7つ全ての実例を破壊する必要があるという仮説が立てられている。

実験5034-6
状況: SCP-5034が再発見されると、全ての財団職員は、保有するあらゆる道具を用いてビー玉を破壊しようとした。
結果: 7つ全てのビー玉の破壊に成功した。その後、鉢の中に再出現する*17
あらゆる道具を使ってビー玉を破壊しようとしている。そして7つ全てのビー玉を全て破壊することに成功しているが、その後鉢の中に再出現している。これを受けて財団は集団安楽死計画を検討している。

補遺5034-2

で、最後の補遺はこちら。
財団の予算は破産寸前のため、これ以上の実験は不可能です*18

ここまで解説を挟みながら説明したが、全くもって意味不明である。
だがこれは誤伝達部門の記事。このまま素直に受け取ってはいけない。
隠された事実を何とか読み取ってみよう。

考察

上述したように、SCP-5034の影響を受けた報告書にはカモフラージュされたSCP-5034の情報しか記述できない。
ただし二次的な情報、いやもっと言うと報告書(一次的な情報)につけられた脚注にはこの異常性が及ばない。つまり脚注には「真実」を記述することができ、財団はこの隙を利用することでSCP-5034に対抗し、なんとかSCP-5034の情報を記述しようとしていたのだ。

カモフラージュする性質はSCP-5034自身を隠すためということを踏まえて、特別収容プロトコルを読み解こう。

  • 「予算上の懸念」は、収容に必要となるコスト。
  • 「骨董店」はSCP-5034が出現するであろう場所。
  • 「実験」は、戦闘行為。
  • 「標準試験機器」は、武装や兵器群。
  • 「財団実験委員会」は、おそらく機動部隊。
  • 「陶器の鉢」は、地球。
  • 「赤い7つのビー玉」は、7体の異常存在。
  • 「外見が可変式」なのは、肉体を持たないから。

常に陶器の鉢と7つのビー玉で構成されるSCP-5034は、地球上の異常存在を示す。戦闘を行う必要があり、またいきなり世界オカルト連合と協力していることから、この7体の異常存在はほぼ間違いなく人類に敵対的な存在であろう。

この辺を踏まえて実験ログを見ていく。
実験5034-1
状況: SCP-5034が発見された際、財団職員は鉢から3つのビー玉を取り外して収容しようとした。*19
結果: 取り外されると、全てのビー玉が消えて鉢の中に再び出現した。収容失敗。財団の予算が大幅に影響を受けた。*20
世界オカルト連合と財団は3体の異常存在の収容を試みた。切断やらで異常存在を「取り外して」収容すると、全ての異常存在が消えてから再出現。ヴェールが破られるような事態に財団は大幅な影響を受ける。

実験5034-2
状況: インドのチェンナイの骨董品店でSCP-5034が再発見された際、財団職員は鉢からビー玉を1つ取り出し、大槌*21で粉砕しようとした。
結果: ビー玉の破壊に成功した後、鉢の中に再出現した。破壊失敗。財団の予算が大幅に影響を受けた。
いくつかのアノマリーを徴用し、組み合わせることで構築されたものがただの大槌なわけもなく、おそらくは異常兵器の類だろう。これを用いてインドのチェンナイで破壊に成功したが再出現しており、また戦闘や異常兵器開発のせいで財団の予算が大幅に影響を受けている。

実験5034-3
状況: 多数の個人コレクターを介したSCP-5034の取引を追跡した後、財団職員は鉢の中のビー玉のうち1つを入れたままにして保管しようとした。
結果: 収容は6日間成功した。しかし、7日目にセキュリティ担当官が収容チャンバーに入り、誤って鉢からビー玉を放出した*22。収容失敗。財団の予算が深刻な影響を受けた。
異常存在を追跡し収容しようとしている。収容は成功しているが、異常存在の未知の異常性によって何かしらの影響を受けたセキュリティ担当官が異常存在を解放してしまった。脚注で解剖レポートへの言及がみられることから、未知の異常性を解明するためにセキュリティ担当官は解剖されてしまったと思われる。度重なる収容失敗によって財団の予算が深刻な影響を受けている。

実験5034-4
状況: SCP-5034が再発見されると、出動可能な全ての財団職員は、大槌を使ってビー玉を叩き割ろうとした。
結果: 5つのビー玉の破壊に成功した*23。しかし、その後鉢の中に再出現する。破壊失敗。
異常存在が再発見されると、出動可能な全ての財団職員は異常兵器を使って異常存在を破壊しようとしている。5体の異常存在を破壊することに成功しているが、6体目は再生能力を持っていて破壊に失敗している。

実験5034-5
状況: SCP-5034が再発見されると、出動可能な全ての財団職員*24は、大槌を使ってビー玉を叩き割ろうとした。
結果: 6つのビー玉の破壊に成功した。しかし、その後鉢の中に再出現する。破壊失敗*25
全ての財団職員は残り全ての世界政府(「残り」という表現から、この時点でいくつかの国は滅亡していると考えられる)と協力して、異常兵器を使って異常存在を破壊しようとしており、6体の破壊には成功したがその後再出現している。これを受けて財団は、異常存在を完全に破壊するには7体全てを破壊する必要があるという仮説を立てたのだが……。

実験5034-6
状況: SCP-5034が再発見されると、全ての財団職員は、保有するあらゆる道具を用いてビー玉を破壊しようとした。
結果: 7つ全てのビー玉の破壊に成功した。その後、鉢の中に再出現する*26
7体全てを破壊してもダメだった。 また補遺5034-2によると財団は破産寸前の状態に追い込まれており、もうできることがなくなった財団は集団安楽死を検討し始めている。


そんなわけで、財団は敗北した。陶器の鉢と赤い7つのビー玉に。そして

SCP-5034 - The Meat Angels(肉の天使たち)

によって。


追記、修正はビー玉に抗ってからお願いします。*27

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最終更新:2025年05月20日 12:43

*1 攻撃可能性のある地点の選別基準は現時点では判明していない。

*2 2020年9月15日に最初の戦闘行為が開始された後に結成された。

*3 その範囲にはこの惑星全体が含まれていることが確認されているが、それよりもさらに範囲が超えるかどうかは現在不明。

*4 それぞれの外観は可変的である。

*5 この目的の為に、プロトタイプ適応収容チャンバー(ACC)の使用が承認された。

*6 最新情報が不足しているため、完全な死傷者報告はまだない。

*7 これまでのところ、形而上学的カモフラージュを直接破る試みは成功していない。

*8 非同期戦争計画の詳細については、財団戦争委員会に尋ねてくれ。

*9 完全な交戦リストは、サイト-19サイト-37サイト-22 サイト-92アーカイブで閲覧できる。

*10 世界オカルト連合と協力して行われた作戦。

*11 1時間後、BKクラスシナリオが公式に宣言された。

*12 いくつかのアノマリーを徴用し、組み合わせることで構築されている。

*13 完全な詳細は解剖レポート5034-29331を参照。

*14 再生能力のため、6番目の実例の部分的な破壊は不十分だった

*15 パンゲア協定に基づき、残存する全政府と協力して実施

*16 現在の仮説では、終了を成功させる為には7つの実例全てを排除する必要がある。

*17 倫理委員会とO5の共同裁決に従い、集団安楽死の選択が現在検討されている。

*18 我らの死体を燃やせ。

*19 世界オカルト連合と協力して行われた作戦。

*20 1時間後、BKクラスシナリオが公式に宣言された。

*21 いくつかのアノマリーを徴用し、組み合わせることで構築されている。

*22 完全な詳細は解剖レポート5034-29331を参照。

*23 再生能力のため、6番目の実例の部分的な破壊は不十分だった

*24 パンゲア協定に基づき、残存する全政府と協力して実施

*25 現在の仮説では、終了を成功させる為には7つの実例全てを排除する必要がある。

*26 倫理委員会とO5の共同裁決に従い、集団安楽死の選択が現在検討されている。

*27 原稿者の考察が甘い可能性もあるため矛盾等あれば編集、追記、修正お願いします。