ドリームガールズ(ミュージカル)

登録日:2025/03/12 (水) 17:21:36
更新日:2025/03/19 Wed 12:06:03
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『ドリームガールズ(原題:Dreamgirls)』とは、1981年に上演開始されたアメリカのブロードウェイミュージカル。
作詞・脚本はトム・アイン。作曲はヘンリー・クリーガー。
2006年にはパラマウント映画配給で映画化された。

概要


本作は、アメリカのブラック(黒人)ミュージックの歴史の裏側を描いた半分史実のような物語。
モデルとなったのは、人気黒人ボーカルユニット「The Supremes(シュープリームス、スプリームス)」*1とそのリードシンガーのダイアナ・ロスである。
バックコーラス隊から世界的ボーカルユニットにまで成長したスプリームスの活躍や、スプリームスを擁した音楽レーベル「モータウン・レコード」の様子を基にしているものの、そうした甘いものではない。

背景となるのは、ブラックミュージックの白人文化の下での抑圧や、ユニット間での痴情、裏切り、薬物問題といった、「芸能界の闇」を全面的に描いており、人によっては嫌悪感を催すことは必至。
そんな中でも、キャスト達のパワフルな歌声が、観客に生きる意欲を湧かせる作品となった。

1982年のトニー賞ではミュージカル脚本賞を受賞。
更に、エフィ役のジェニファー・ホリデイはその歌唱力を絶賛され、ソロ曲の「And I Am Telling You I’m Not Going 」はビルボードチャートで連続1位を記録した。





ストーリー


1962年のデトロイト。
デトロイト出身の幼馴染の女性三人、エフィ、ディーナ、ローレルで組んだ音楽ユニット「ドリーメッツ」。
彼女らは、様々な音楽コンテストに出場するものの、落選する日々が続いていた。
そんな彼女らの前に、「君達の才能を見込んだ」と言う自動車ディーラーのカーティスが現れる。
カーティスは、コネを使って有名シンガーのジミーのバックコーラス隊としてドリーメッツをデビューさせる。
ジミーの人気に肖り、少しずつ人気が出始めて歓喜する三人。
やがてエフィは、カーティスと恋仲になっていく。

そして、遂に三人は「ドリームズ」としてメジャーデビューが決定。
しかし、カーティスは「ルックスが受ける」という理由でリードシンガーをエフィからディーナに変えてしまう。
それを機に、ドリームズのメンバーの関係は悪化の一途を辿り、しまいには問題行動を続発するエフィは解雇されてしまった。

9年後、今や世界中の大スターとなったディーナだが、華やかだがカーティスの言いなりとなった生活に嫌気が差していた。
一方、母親となったエフィはバーの場末のシンガーから再起を始める。

果たして、激動のショービジネス界の中で、三人の女性が選ぶ「夢」とは……?






登場人物


  • エフィ・ホワイト
本作の事実上の主人公。
ドリーメッツのリードシンガーで、パワフルな声量の持ち主。
だが、太り気味な体型がコンプレックス。
自分の歌に絶対の自信があり、プライドが高いのが玉に瑕。
自分を褒めそやしたカーティスに惹かれ、次第に恋仲になるも、当のカーティスはディーナに商品価値を見出し、嫉妬に狂い始める。
やがて、ボイコットといった問題行動を次々と起こしてメンバーから愛想を尽かされ、遂にはユニットを解雇されてしまう。
だが、お腹にカーティスとの子供を宿しており、彼に伝えることも出来ないまま別れることに。
後半ではシングルマザーとなるも、マーティとの出会いを通じてバーのシンガーとして再び歌手としての道を歩み始める。


  • ディーナ・ジョーンズ
本作のもう一人の主人公。
メンバー一の美人だが、抑圧的な母親の下で育ち、自己主張が弱い性格になった。
なお、歌のレベルとしてはエフィに及ばないが、「白人受けする美麗な声」の持ち主。
有名になっていくドリーメッツに素直に喜び、突然のリードシンガー抜擢に戸惑うも、精一杯努力する。
問題行動を連発するようになったエフィを軽蔑し、決別した後はカーティスのプロポーズを受け入れ、夫婦関係となる。
しかし、世界的大スターとなって華やかな生活を送るも、心の虚しさは増す一方で、カーティスの言いなりとなった自分を嫌悪する。
やがてはカーティスに無断で新しい仕事を受けるようになるが、その果てでエフィの現状を知り、彼女のためにカーティスを裏切ることに。


  • ローレル・ロビンソン
ドリーメッツのメンバーの一人。
明るく、メンバーのムードメーカー的存在。
ミーハー気味な性格で、ジミー・アーリーとの共演には人一倍喜んでいた。
そして、妻がいると知っていながらも、次第にジミーと不倫関係を結んでしまう。
ジミーの薬物中毒を止めようとしたが、聞き入れない彼に別れを告げ、歌手としての道を優先した。


  • カーティス・テイラーJr.
デトロイトの自動車ディーラー。
当時ホットなブラックミュージックで音楽業界への進出を目論み、ドリーメッツの才能に目をつける。
舌先八寸の話術が得意で、人を煽てるのが上手く、当初乗り気でなかったエフィをその気にさせた。
やがて、ディーラーをレコード会社「レインボーレコード」に改装した彼は、ジミーとドリーメッツを時には悪辣な裏工作を講じてまで売り出し、瞬く間にトップスターにする。
当初は歌の才能のあるエフィと関係を持っていたが、「白人受けする」ディーナのスター性に商品価値を見出し、彼女の方に夢中になっていき、エフィとの関係を破綻させ、最終的に彼女を解雇した。
ディーナと結婚し、彼女に白人受けする仕事を回すが、次第にその手段は荒っぽくなり、C.C.の仕事への口出しやジミーへの抑圧で嫌われ者となっていく。
遂には自分を裏切ったエフィの歌手業まで潰そうとし、それが原因でディーナからも見限られる。


  • C.C.ホワイト
エフィの兄で、ドリーメッツに楽曲を提供している作曲家。
妹の歌唱力に太鼓判を押し、メンバーを支え続けている。
カーティスと組んでからも楽曲を提供しつつ、彼の裏稼業も手伝っていた。
しかし、レインボーレコードの肥大化により楽曲の路線を白人向けに転向させられ、自由な作曲ができなくなる。
当初は問題ばかり起こすエフィを見限っていたが、カーティスと決別してからは彼女に謝罪し、ソロの楽曲を提供した。


  • ミシェル・モリス
レインボーレコードの事務員。
エフィが解雇させられてからは彼女の後釜のドリームズのメンバーとなる。
一時期はC.C.と交際していたが、結局破局してしまった。


  • ジミー・アーリー
人気黒人シンガー。
女性には誰にでも優しい女たらしな享楽主義者。
野心家のカーティスを気に入り、レインボーレコードに移籍し、彼の下でヒット曲を連発する。
しかし、次第に自分の歌が受けなくなり、ストレスから薬物に手を出し、カーティスにとっても「お荷物」扱いされていく。
とうとうステージで問題行動を起こしたため、カーティスから解雇され、孤独になった結果、悲惨な末路を遂げる。


  • マーティ・マディソン
ジミーのマネージャー。
カーティスを胡散臭く思っており、ジミーに助言しようとしたが、彼からクビを言い渡される。
その後、再起を図ったエフィと協力関係を結び、彼女に仕事を紹介した。


  • マジック
エフィの娘。
女手一つで育てられ、母の歌を尊敬しており、父親のことは何も知らない。


  • ウェイン
カーティスの部下。
彼の言う通りの仕事を忠実にこなし、裏工作をも進んで行う。






楽曲


  • Move
ドリーメッツがデトロイトのコンテストで披露した曲。
エフィのパワフルなリードが特徴。


  • Fake Me To The Top
ジミーと初めて組んだ曲。
カーティスの覇道を暗示しているような歌詞である。


  • Caddilac Car
ジミーとドリーメッツが出した新曲。「初めて買った自動車」をテーマにしている。
その後、白人歌手に盗作され、埋没してしまった。


  • Steppin’ To The Bad Side
カーティス達が裏工作をしながらドリーメッツがスターダムにのし上がっていく様子を描く。
「ワルの仲間入り」が示すように、ダークな内容となっている。


  • Love You I Do
映画版で追加された曲。
エフィのソロで、カーティスへの恋心を唄っている。


  • Dreamgirls
ドリームズのメジャーデビューソング。
ディーナの美麗な声のリードで歌われる。


  • And I Am Telling You I’m Not Going
カーティスから別れを切り出されたエフィの独白。
エフィの執念が圧倒的だが、その力強さがあまりに強烈な印象を残し、作品を代表する歌となった。


  • I Am Changing
再起を果たしたエフィのソロ曲。
自身の改心を唄っている。


  • One Night Only
2バージョンある。
元はC.C.がエフィのために書き下ろした曲だったが、後に報復としてカーティスがドリームズ用に盗作し、ディスコバージョンとして有名になった。
エフィ版とドリームズ版では「一夜だけ」の解釈が異なる。


  • Listen
映画版で追加された曲。
ディーナのソロ曲であり、彼女のカーティスへの本心を唄っている。
後にミュージカル版で逆輸入され、エフィとのデュオ曲になった。
映画オリジナル曲のため、日本版ではオミットされてしまった。

  • Dreamgirls(Finale)
フィナーレ。四人の「ドリームガールズ」による別れの歌。
力強いリード、そしてゆっくりフェードアウトする曲が涙を誘う。







映画版


2006年にパラマウント映画・ドリームワークス共同で製作された。
監督はビル・コンドン。
ディーナ役として元「デスティニーチャイルド」のビヨンセ・ノウルズが抜擢されたことでも話題となった。

エフィ役のジェニファー・ハドソンは当時デビューしたての新人で、本作を機に『キャッツ』『リスペクト』といった様々な映画に出演した。

なお作中で「悪役」的書かれ方をされたカーティスらマネージメント側のモデルとされるモータウンの関係者達からは批判の声が挙がり、ドリームワークス側は謝罪文を出す事態となった。


キャスト

括弧内は日本語吹替版キャスト。
  • カーティス・テイラーJr.:ジェイミー・フォックス(咲野俊介)
  • ディーナ・ジョーンズ:ビヨンセ・ノウルズ(北西純子)
  • エフィ・ホワイト:ジェニファー・ハドソン(米倉紀之子)
  • ローレル・ロビンソン:アニカ・ノニ・ローズ(斉藤梨絵)
  • ジミー・アーリー:エディ・マーフィー(山寺宏一
  • C.C.ホワイト:キース・ロビンソン(根津貴行)
  • マーティ・マディソン:ダニー・グローヴァー(宝亀克寿)
  • ミシェル・モリス:シャロン・リール(遠藤綾


日本での展開

2023年2月に梅田芸術劇場制作で上演。
読売演劇大賞受賞経験があり、劇団俳優座所属の眞鍋卓嗣が演出を務めた。
本作でディーナを演じた望海風斗は2022年度菊田一夫演劇賞を受賞した。



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最終更新:2025年03月19日 12:06

*1 後に日本でglobeがカバーした『Stop! In the Name of Love』やイギリスのフィル・コリンズがカバーした『You Can't Hurry Love(恋はあせらず』等で知られる。