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更新日:2025/03/26 Wed 22:28:24
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『ウィキッド(Wicked)』とは、2003年にアメリカにて上演開始されたブロードウェイミュージカル。
楽曲製作はステファン・シュヴァルツ。脚本はウィニー・ホルツマン。
グレゴリー・マグワイアが1995年に執筆した同名の小説の舞台化作品である。
概要
原作小説は、ライマン・フランク・ボームによる児童文学の名作『
オズの魔法使い』をベースにした「完全オリジナル作品」である。
よく勘違いされがちだが、「『オズの魔法使い』の前日譚」と銘打ってはいるものの、原典版の作者のボームの関係者は製作には関わっておらず、いわゆる
「二次創作」としての色合いが強い。
また、作品の細部にわたって、原典版『オズ』との矛盾点があり、「『オズ』の物語を多面的に解釈した作品の一つ」としての見方をした方が無難。
舞台となるのは、『オズの魔法使い』でお馴染みの魔法の国「オズ」。
そこで主題となるのは、『オズ』においては主人公ドロシーを追い詰める悪役だった「西の悪い魔女」と、ドロシーを助ける「善い魔女」グリンダの関係である。
本作では、「悪い魔女」には「エルファバ」と名が付けられ、グリンダとは学生時代の同級生で、しかも親友だったという過去が明かされる。
しかし、エルファバはオズの国とそれを治める国王オズの秘密を知ってしまい、彼と敵対し、「悪い魔女」として国中に憎まれることとなり、グリンダとも対立関係になっていく。
「湾岸戦争に着想を得た」という原作者の言葉の通り、本作では「『善』と『悪』の区別」という根本的なテーマを問いかけ、「本当の邪悪(Wicked)とは、本当の善(Good)とは」に着目した重厚なドラマを、エルファバとグリンダの関係を通して描いている。
それに加え、原典版『オズ』が内包していた「種族の問題」についても鋭く切り込んでおり、現代社会の風刺としても極めて質が高い。
また、「クィア作品」としても注目されており、エルファバとグリンダの築いた友情の変遷についても、濃厚に描写されている。
なお、原作小説はミュージカル版とは大幅に物語が異なり、エルファバを巡る各国の情勢が淡々と語られる歴史小説の作風となり、「キャラクターの名前だけ拝借した別物」という趣が強く、また結末も大きく変更されている。
2003年の初公演ではその演出力の高さを絶賛され、2004年のトニー賞では9部門にノミネートされた。
ちなみに、オリジナル版のエルファバ役は後に映画『
アナと雪の女王』でエルサを演じるイディナ・メンゼルで、本作でミュージカル主演女優賞を受賞した。
ストーリー
魔法の国「オズ」。
そこでは、ある一人の存在が人々を脅かしていた。
それは、動物を扇動し、邪悪な魔法を使う、緑色の肌をした「西の悪い魔女」。
だが、ある日竜巻に乗ってやって来た人間の少女とその仲間達によって、悪い魔女は倒されたと発表される。
それを発表し、国民達に祝福される、「善い魔女」グリンダ。
だが、彼女は自分と悪い魔女の過去を語り始める。
その昔、グリンダ(当時の名はガリンダ)は、オズの名門大学「シズ大学」へ魔法の勉強をすべく入学し、持ち前の明るさですぐに人気者になった。
だがそこへ奇妙な少女が現れる。肌が緑色で生真面目な少女「エルファバ」だ。
エルファバは、妹のネッサローズの付き添いとして大学に住み込む予定だったが、入学式で偶然使った魔法がきっかけで、学長のマダム・モリブルに才能を認められて入学を許可される。
モリブルに憧れていたグリンダは自己主張した結果、エルファバと同室になってしまうが、性格がまるで正反対の二人はすぐ喧嘩になり、最悪の相性となる。
だが、エルファバの持つ動物への優しさや、孤独に耐えながらも修行に励み、自分に魔法の授業の推薦までしてくれた彼女に心を打たれ、グリンダは彼女を友達だと認め、二人はやがて親友同士に。
そんなある日、エルファバ宛に、オズを治める国王・オズの魔法使いから、首都エメラルドシティへの招待状が届く。
念願の魔術師との対面に心を躍らせるエルファバは、付き添ったグリンダと共にエメラルドシティへと急いだ。
だが、そこで待ち受けていたのは、魔法の国が隠していた欺瞞と、オズの魔法使いの醜悪な正体だった。
自らの正義のためにオズの魔法使いと敵対する決意をしたエルファバは、グリンダの静止も聞かずに逃走し、彼の手により、彼女は人々の敵「悪い魔女」にされてしまう。
やがてグリンダは、モリブル達によってオズの国の「善」の象徴である「善い魔女」として祀り上げられ、エルファバとの望まぬ対立へと進まされる。
その混沌の渦中で運命に翻弄される、二人の学友のフィエロ、ボック、そしてネッサローズ。
やがて物語はオズ全体を混沌に落とし、二人の魔女はある決断を下す。
果たして、「悪い魔女」と「善い魔女」の歩む道とは?
登場人物
この物語の主人公。後のオズの国の敵となる「西の悪い魔女」。グリンダからの愛称は「エルフィー」。
生まれつき緑色の肌を持ち、両親から不気味がられ、動物の乳母に愛情を持って育てられた。
そのため、愛情に飢えているものの、「愛を知らない」わけではなく、人一倍正義感が強く、生真面目な性格に育った。
父から愛されている妹のネッサローズの後ろで控え、目立たないようにしているが、極めて強い魔力を持っており、感情を抑えきれなくなると魔法を暴発させてしまう癖があった。
その強い魔力をマダム・モリブルに見出され、シズ大学への入学を許可されるが、持ち前の堅い性格と異様な外見から、周囲から遠ざけられる。
同室のグリンダとも、彼女の能天気でわがままな性格から打ち解けられずにいた。
だが、クラブでのダンスパーティーを機にグリンダから歩み寄られ、初めて本心を吐露し、一気に親しくなる。
そんな中で、尊敬しているディラモンド教授の失職や、動物達の失踪事件に心を痛め、虐げられる動物の身を案じるようになった。
また、グリンダと仲が親しいフィエロにも恋心を抱くようになるも、親友のために諦めようとしていた。
そして、遂にモリブルの推薦でエメラルドシティのオズの魔法使いから、王宮に招待されて有頂天となる。
そこで彼女は、オズの魔法使いにより魔法の書「グリムリー」を読まされ、衛兵の猿に翼を生やすが、彼らを国中のスパイとして活動させるという彼の言葉を聞き愕然。
更に、オズの魔法使いはグリムリーを読めず、魔法が使えないペテン師であり、動物達を弾圧していた張本人だと気づく。
失望した彼女は動物達を守るためにグリムリーを持って逃走し、結果、モリブルの手によって彼女は「オズに反逆を企てた悪い魔女」に仕立て上げられてしまう。
グリンダにもついて来て欲しいと願ったが、オズ達を疑いきれないグリンダはそれを拒絶し、親友の出立を見送ることしかできなかった。
空飛ぶ箒を手に入れたエルファバは、自由に空を飛び、西の空へと消えていった。
国中の魔女狩り部隊に追われながらも、動物を救出するための地下活動を行っていた。
途中、父の手を借りるために実家に戻った際にはネッサローズから憎悪をぶつけられ、彼女に歩けるように魔法をかけるが、その結果悲劇を生んでしまう。
一度はオズの魔法使いと交渉しようとするも、結果決裂し捕らえられそうになったが、フィエロが自分に味方したため、空飛ぶ猿達を解放させることに成功。
フィエロとも愛し合うようになり、束の間の幸せに歓喜する。
しかし、その果てに起こったネッサローズの死によって、グリンダに怒りをぶつけて本格的に二人の関係は決別してしまう。
やがてはフィエロまで捕らえられ、彼にある魔法をかけるが、死んだと聞かされ、西の国へと追い詰められるが、その果てにある決断を下す。
この物語のもう一人の主人公。後のオズの救世主となる「南の善い魔女」。
北の王国出身のお嬢様であり、両親に愛され何不自由ない生活を送ってきた。
なお、原語版での本名は「ガリンダ」だが、途中でディラモンド教授の発音をリスペクトして「グリンダ」に改名するくだりがある。
誰に対しても優しく、気立てがよく美人な「いい人」として周囲の人気者になるが、世間知らずで天然、なおかつわがままなところがあり、他人の機微に疎く、考えなしに行動してしまう欠点がある。
偉大な魔法使いになるという夢があり、シズ大学のマダム・モリブルの下で魔法の勉強を行おうとしていたが、当人の魔法の才能はからっきしであり、モリブルからは見向きもされなかった。
そんな中、入学してきた「変わり者」のエルファバの同室になってしまい、何かと口うるさく、モリブルにも気に入られているエルファバとはしょっちゅう衝突を起こしていた。
しかし、ダンスパーティーでの彼女の心遣いに心を打たれ、彼女と一緒に踊り、その夜語り明かしたことで一気に距離を縮め、親友となる。
ハンサムなフィエロに一目惚れし、彼に接近するが、当初は仲良かったものの、徐々に距離が広がっていく。
エルファバがエメラルドシティに招待された際は、親友の晴れ姿を見るために一緒について行き、彼女の夢を応援した。
オズとモリブルの本性を知ってしまうが、それでもなお二人の善性を諦めきれず、エルファバを必死に説得しようとした。
だが、既に覚悟を決めた彼女は親友の引き止めを振り切り、西の空へと消えてしまう。
失意に沈むグリンダだが、モリブルはそんな彼女を新たな象徴へと利用しようと企むのだった。
オズ、モリブルの推薦により「善い魔女」へと就任し、悪い魔女討伐のための旗印となる。
その最中でフィエロとの結婚を発表し、国中から祝福されるが、フィエロとの関係は拗れていくばかりで、華やかながらも空しい日々を送っていた。
やがて、再びエルファバと対峙した際に、フィエロはエルファバを庇って彼女と共に逃走してしまう。
失意の底に沈んだ彼女は、モリブル達にエルファバの弱点を喋ってしまい、結果的にネッサローズの死へと繋がってしまった。
これを機にエルファバとの関係は悪化し、凄まじい戦いを繰り広げる。
しかし、エルファバを庇ったフィエロが自分を傷つける気がないと知り、自分の敗北を認めるも、結果的に彼は捕らえられ、死んだと聞かされる。
暴徒と化したオズの市民達を前にして自身の罪をようやく自覚し、嘘をつき続けることに耐えられなくなった彼女は、エルファバに謝罪して全ての真実を明かそうとする。しかし……。
第一幕中盤でシズ大学に転入してくる男子学生。
西の王国・ウィンキーの王子であり、ハンサムで人気の高い色男。
いかにもな遊び人であり、「脳みそ」が足りていないように見えるが、子ライオンをエルファバと一緒に躊躇なく助けるといった優しさを持つ。
年中遊び呆けて問題を起こしているため学校を転々としており、シズ大学の学生達にも「遊び」を教えようとし、皆をダンスパーティーに連れ出す。
グリンダが一目惚れし、彼女から猛アタックをされて親しくなるが、彼の心は、芯の強さを持つエルファバに惹かれつつあった。
悪い魔女の討伐隊隊長に任命され、グリンダと婚約することになるが、エルファバへの想いを断ち切れず、また、弾圧される動物達を目の当たりにした彼にとっては苦痛は強まる一方だった。
そんな中、エルファバがエメラルドシティに現れた際、捕まえられそうになった彼女を咄嗟に助けてしまい、共に逃亡。
ようやく自分の気持ちに気づいた彼は、エルファバに愛の告白をし、二人は結ばれる。
だが、ネッサローズの死を知ってマンチキンに行った彼女を助けるためにグリンダや兵士達の前に立ち塞がり、結果兵士達に捕らえられてしまう。
そのまま、「磔」の刑にされ、数々の拷問を受けた末に死んだと発表されるが……。
エルファバの妹。
緑色の肌を持ったエルファバを悲観した父が、次の子のために母にオシロイバナを大量に食べさせたことで、早産の末に両足が動かない状態で生まれ、母も死んでしまった。
そのため、現在も車椅子が欠かせず、そのことがコンプレックスとなっており、父から溺愛されているものの、エルファバを決して憎んでいるわけではないが、「恥をかきたくない」と複雑な思いを抱いている。
ダンスパーティーでボックからダンスに誘われ、当初は同情かと思っていたが、彼の「そんなことない。君は素敵だ」の言葉に歓喜し、彼を本気で愛するようになった。
グリンダには、ダンスパーティーに誘ってくれたことで敬愛の目で見ていたが、ボックの彼女への視線から、徐々に嫉妬心を溜めていく。
エルファバの出奔を機に父が急死してしまい、急遽マンチキンの次期総督として就任することになる。
だが、女性としての幸せを捨て、外に出ることもできず総督の多忙な業務に没頭する日々に鬱屈を抱くようになり、やがて治世は悪化の一途を辿り、マンチキン達を奴隷のように扱う独裁者と化してしまう。
ボックにも、総督命令で自分の召使いに任命し、身の回りの世話をさせて傍に置き続けるが、決して愛が満たされることはなかった。
そんな中、一時帰宅したエルファバと再会し、彼女に憎悪の言葉をぶつけるが、不憫に思った彼女から、履いていた銀の靴に魔法をかけられ、ルビーの靴となって歩けるようになる。
早速、ボックに報告して対等になれたと伝えるが、彼女の存在を重荷に感じていたボックは「グリンダの元へ行く」と伝えてしまい、激昂した彼女はグリムリーの魔法で彼の心を自分のものにしようとするが、逆に彼の心臓を消してしまった。
結果、ボックは「ブリキ男」と化して自分の元を去り、名実ともに「東の悪い魔女」と化してしまった自分は、逃げ去ったエルファバに憎しみをぶつけるしかなかった。
その後、エルファバをあぶり出すためにマダム・モリブルが魔法で竜巻を起こし、異世界から飛ばされた農家の下敷きになり、圧死。
履いていたルビーの靴は異世界の少女に奪われる。
『オズの魔法使い』に「死んだ姿」で登場した東の悪い魔女のオリジンだったが、自業自得とは言え何一つ報われない悲惨な末路を遂げてしまった。
シズ大学の新入生の一人。
マンチキン出身で、小柄な体がコンプレックス。
基本的に誠実で誰に対しても優しいが、どこか利己的で独善的な面がある。
グリンダに密かに恋心を抱いており、彼女に好かれようと必死に努力しているが、悉く空回っている。
フィエロをダンスに誘いたかったグリンダからネッサローズを勧められ、彼女を紳士的にダンスに誘い、「君は素敵だ」と語って仲良くなる。
しかし、フィエロ一筋なグリンダを未だに諦めきれずにいた。
マンチキン総督になったネッサローズに召使いとして雇われ、彼女の身の回りの世話をするが、半ば軟禁状態の日々や圧政に苦しむ同胞達の姿に心を疲弊させ、ネッサローズへの感情も嫌悪感へと変わりつつあった。
そんな中、エルファバがネッサローズに魔法をかけて歩けるようになり、喜ぶ彼女に対し、「もう僕は必要ないからグリンダの元へ行く」と破局を宣言。
彼がネッサローズに仕えていたのは同情という面が大きかったのだ。
激昂したネッサローズは彼に魔法をかけ、心臓を奪われ死んでしまうが、エルファバが延命のための魔法を使い、彼の体にある変化が起こる。
目覚めると、彼は「ブリキの体」になっていた。変わり果ててしまった自分に絶望した彼はネッサローズから逃げ出し、やがて自分をこの体にしたエルファバを憎むようになる。
そして、悪い魔女討伐に燃える市民達を前にして、魔女への怒りと憎しみを煽り立て、彼らを魔女狩り部隊へと変貌させた。
最早、彼には「人を愛する心」が無くなり、魔女への憎しみだけが生きる全てとなっていたのだった。
シズ大学の新入生。
グリンダの取り巻きになり、彼女の世話をするが、本当の意味での彼女の「理解者」にはなっていない。
シズ大学の学長で、オズの魔法学の権威である大魔女。
得意な魔法は天候操作。
威風堂々とした態度で生徒に接し、人気が高い。
生徒に対して公明正大に接することをモットーにしているが、実のところ「才能のある生徒」にしか興味はなく、エルファバの才能に強い関心を持つ一方で、魔法を碌に使えないグリンダを無下にしていた。
ただ、エルファバに頼まれて彼女を特別にレッスンを受けさせた。
エルファバを一番弟子と見做して彼女に個人レッスンを施し、オズの魔法使いに推薦文を書いて彼女を重鎮にする。
実はオズの魔法使いと組んでオズの国の動物達を弾圧し、エルファバの魔力を利用してグリムリーを読ませ、動物の軍隊を作ろうとしていた。
エルファバの反乱後は彼女に見切りをつけ、彼女を「邪悪(Wicked)な魔女」と国中に喧伝し、国家の敵に仕立て上げた。
そして、今度は「人気者」のグリンダを利用し、彼女を囲い込みに出る。
オズの報道官として出世し、「善い魔女」グリンダのスポークスマンとして彼女を裏で操るようになる。
権力欲と私利私欲は日増しに強くなり、衣装も成金趣味かつ緑色に近くなっているのがポイント。
エルファバの討伐に執念を抱き、グリンダを唆してエルファバの弱点を突き止め、彼女を誘き出すためだけに竜巻を起こし、異世界の家を落としてネッサローズを殺害した。
その件で遂にグリンダからは非難されるが、最早「良い子ちゃん」の才能しかなく、操り人形の彼女に出来ることはないと見下し、魔女狩り部隊を指揮し、エルファバ討伐に王手をかける。
「善人」とも「悪人」とも言い切れない登場人物の多い中で、強いて言うなら一番の「悪人」と言える人物。
役者によってはオズの魔法使い以上の外道に見えることもあるとか。
シズ大学の歴史学の教授。
喋る山羊の種族であり、眼鏡が似合う博識な老山羊。
オズの黒い歴史について正しく生徒達に教えようとするが、日に日に増えていく動物側への差別と弾圧により、嫌がらせを受けるようになる。
そのことを憂いるうちに、エルファバから理解を受けるが、ある日突然懲戒免職となり、警察に連行されてしまう。
暫く行方不明だったが、エメラルドシティにてエルファバにより言葉を奪われた状態で発見される。
かつての賢人ぶりが嘘のように見える、惨めな有様であった。
エルファバとネッサローズの父。
東の国であるマンチキン領の総督で、彼らを監視している。
異様な姿のエルファバを露骨に嫌い、反面、ネッサローズを溺愛して、エルファバに彼女の世話をさせている。
当初はエメラルドシティに呼ばれたエルファバを手のひらを返したように祝福していたが……。
エルファバが悪い魔女として国家に反逆したと知り、そのショックで心臓を痛め、急死してしまった。
エルファバとネッサローズの母。
夫同様にエルファバには愛情を抱けなかった。
フレックスの勧めで「次の子は普通の外見になるように」とオシロイバナを食べ過ぎ、結果早産した挙句に副作用で死んでしまう。
実は夫のいない間に不倫していたが……。
エメラルドシティの城の衛兵。
猿の種族で、言葉を喋れない。
グリムリーを解読したエルファバの魔法で、背中に翼を生やされる。
エルファバとオズの魔法使いとの交渉と対決により、オズの支配下から抜け出し、エルファバに恩義を感じて彼女に仕える。
オズの国を治める国王にして、「偉大な魔法使い」。
古代の魔法書「グリムリー」を唯一読める人物として、大干ばつ時代のオズに気球に乗って現れ、混乱を収めた英雄として持て囃されている。
大の人嫌いと言われており、国民の前には顔を出さず、巨大な機械仕掛けで面会するが、素顔は小柄で親しみやすい老人。
エルファバの優れた魔力を称賛し、是非オズの国の役に立って欲しいと懇願する。
実は動物達を誘拐し、言葉を奪っていた張本人。
そして、魔法など実は全く使えない、異世界から来たただのペテン師。
エルファバを重用したのも、魔法を使えない自分の代わりにグリムリーを読ませ、動物の軍隊を作るためだった。
なお、大干ばつで動物を「悪者」に仕立て上げたのも、「わかりやすい共通の敵」を作って混乱を収めるためである。
全てを知ったエルファバから反旗を翻されるが、モリブルと組んで、逆に彼女を「悪い魔女」に仕立て上げてしまう。
「善い魔女」となったグリンダを褒めそやし、彼女を利用して自分達の都合のいいように国民を操ろうと画策。
一度エルファバと対峙した際は、舌先八寸口八丁の話術であと一歩のところまで言いくるめようとしていた。
その後も、自分と同じ世界から来た少女を利用してエルファバを討伐させようとするなど、高みの見物で全てを操ろうとする。
しかし、全てが終わった後、グリンダから提示されたある物により、自身の罪を自覚し、深い後悔と共に最大の罰を受けることになる。
原典版『オズ』に登場するドロシーの仲間。
子ライオンの時にシズ大学の授業の一環として檻に入れられ、役人から激しい虐待を受けるが、見かねたエルファバとフィエロに助けられ、脱走する。
しかし、この後遺症のためか「勇気」を失ってしまった。
同じくドロシーの仲間。
それぞれ「脳みそ」と「人を愛する心」を失っている。
本作では、その衝撃のオリジンが明かされる。
竜巻に乗ってオズへとやって来たカンザスの少女。
東の魔女のルビーの靴を履き、グリンダの道案内を受け、三人の仲間と共にエメラルドシティへと向かい、オズの魔法使いから「西の魔女退治」を依頼される。
本作では登場自体はせず、シルエットのみで表現されている。
キーワード
本作の舞台の魔法の王国。
言葉を話せる動物を含めた様々な種族が住んでいるが、大干ばつ以降は人間が優勢であり、それ以外の種族への重圧は日増しに強くなっている。
オズの国に住む種族で、言葉と知性を持つ「非人間」の種族。
かつては人間と同等の地位と権力を有していたが、大干ばつ以来その数は減り、また定職に就ける者も少なくなりつつある。
第一幕の主な舞台となる、オズの名門大学。
教育のレベルは高いが、正直なところ人間性に問題がある生徒が多々見受けられる。
生徒は主に人間種であり、動物の生徒は見当たらない。
教職員の中にはディラモンド教授といった動物もいるが、作中で全員が教職を追われている。
かつてオズの国を襲った大事件。
国民のほとんどが飢えと渇きに苦しんだが、オズの魔法使いの到来によりそれは解決し、原因は動物達の無節操な資源独占と片付けられた。
オズの国の首都。
建物の全てが緑色で構築されている大都市。
ミュージカル版では市民全員が眼鏡をかけているが、映画版ではかけていない。
オズの東側に住んでいる種族。
普通の人間種よりも小柄であり、丈夫なため労働者として重用されており、その待遇は次第に奴隷のそれとなっていく。
オズの西側に住んでいる種族。
フィエロの出身地で、動物に対して理解がある。
色とりどりの花びらを持つ花。
エルファバの父フレックスが妻メリーナに食べさせ、結果副作用で彼女は死に、早産したネッサローズの足は不自由になってしまった。
フレックスがネッサローズに大学の入学祝いとしてプレゼントした銀の宝石をあしらった靴。
以来彼女の宝物となり、常に履き続けている。
エルファバがネッサローズに歩けるようになる魔法をかけた結果、色が赤色に変化し、「ルビーの靴」となった。
最終的にはドロシーに持ち去られてしまう。
エルファバが大切に持っている母の形見。
誰か大切な人との思い出の品らしい。
オズの国に太古から伝わる伝説の魔法書。
古の魔法が記されているが、それを読める者はほとんどいなくなり、唯一オズの魔法使いのみが読むことができる。
オズの魔法使いにも読めない代物だったが、高い魔力を持つエルファバのみが読むことができた。
反乱したエルファバにより持ち去られ、彼女の戦力となる。
オズの魔法使いが愛飲している酒。
「嫌なことを忘れられる」効果があるとして、よく周囲に勧めている。
楽曲
☆はUSJ版で使用された楽曲。
第一幕
- グッド・ニュース/No One Mourns the Wicked
「西の魔女の死」を喜ぶ国民の様子を歌う曲。グリンダも途中で参加するが、その様子はどこか虚ろ。
大学の入学式の校歌隊の曲。グリンダのソロも入るが、エルファバの登場で打ち切られる。
入学したエルファバがオズの魔法使いに見染められる空想を抱く。
- 大嫌い!/What is this Feeling?☆
エルファバとグリンダの互いへの嫌悪感を口にする。
ディラモンド教授の現状を知り、動物達の弾圧に心を痛ませるエルファバの心情。
- 人生を踊り明かせ/Dancing Through Life
生徒達をダンスパーティーに誘うフィエロ。グリンダ、ボック、ネッサローズらの恋愛事情が見て取れる。
エルファバを人気者にするべくおしゃれを提案するグリンダ。
フィエロに恋心を持つようになったエルファバ。グリンダへの友情の板挟みとなる。
エメラルドシティの市民達によるエルファバとグリンダを歓迎する曲。エメラルドシティの「虚飾」感が垣間見える。
- センチメンタルマン/A Sentimental Man☆
オズの魔法使いの自己紹介。好々爺を装っている様子が白々しい。
第一幕のクライマックス。
世界中に憎まれながらも、「自由」のために箒にまたがり空を飛ぶエルファバ。
それを見ていることしかできないグリンダと、憎悪の声を上げる民衆の対比が悲しい。
第二幕
- 魔女が迫る~この幸せ/Thank Goodness
パーティーで結婚を発表したグリンダとフィエロ。
偽りの幸せにしがみつくグリンダと、それが茶番だと認識しているフィエロとの差が見どころ。
- 総督の椅子/The Wicked Witch of the East
再会した姉に怒りと憎悪をぶつけるネッサローズ。
ボックも入り交じり、やがて姉妹の決裂は取り返しのつかない悲劇を生む。
エルファバに甘言を囁き、彼女を言いくるめようとするオズの魔法使い。
コミカルでこちらも騙されそうになる踊りが特徴。
- 私じゃない~リプライズ/I'm Not That Girl(Reprise)
フィエロが去った後のグリンダ。自分が選ばれなかったことへの落胆。
- 二人は永遠に/As Long as You're Mine
エルファバとフィエロの逢瀬。永遠の愛を誓い、口づけをする。
フィエロの末路を知り絶望するエルファバ。正真正銘の「悪い魔女」として生きる決意をする。
- 魔女を殺せ/March of the Witch Hunters
魔女討伐に沸き立つ民衆。それを煽るボックとモリブル。グリンダは最早流されることしかできない。
第二幕のクライマックス。
エルファバの決意と、グリンダとの約束、そして永遠の別れ。
「善い魔女」として生き続ける決意を固めるグリンダの涙が切ない。
- フィナーレ/Finale:For Good (Reprise)
終幕。「善い魔女」となった女と、「悪い魔女」から解放された女の明暗。
日本での公演
2006年7月12日から2011年1月10日まで、『オズの魔法使い』がテーマのエリア『ランド・オブ・オズ』のアトラクションとして上演。ここでの邦題は『ウィケッド』であった。
アトラクションということもあり、上演時間はカーテンコール含め約35分で、第一幕を中心としたダイジェスト版のような内容になっていた。
登場するネームドキャラはエルファバ、グリンダ、オズの魔法使い、チステリーの4人に絞られている。
話の流れも、エルファバとグリンダがエメラルドシティに着くところから始まり、シズ大学のシーンは回想ということになっている。
エルファバは外国人キャスト、グリンダは日本人キャストが演じ、台詞は日本語と英語が混在していた。
歌詞も同様であり、「魔法使いと私」は原詩のまま歌われた。
日本初となる全編公演が2007年6月17日から2009年9月6日まで、東京の電通四季劇場[海]で上演。
その後、大阪、福岡、名古屋でも上演され、東京でも再演された。
2016年の札幌での公演以降はしばらく上演されていなかったが、多数の再演リクエストに応える形で2023年に東京で久々に上演。
現在は大阪四季劇場にて2024年8月15日から再演中(2025年7月6日終演予定)。
実写映画化
本作の実写映画化企画は何度か持ち上がっては頓挫していたが、2020年代に本格的に製作がスタート。
製作・配給はユニバーサル映画。
ミュージカル版同様の二部構成となり、上映時間は2倍以上に膨れ上がった。
監督は『クレイジー・リッチ!』『イン・ザ・ハイツ』のジョン・M・チュウ。
2024年11月22日に第一幕部分を映画化した『ウィキッド ふたりの魔女(Wicked:Part 1)』が北米にて公開。日本では2025年3月7日に公開された。北米ではミュージカル映画No.1の大ヒットを記録。
第97回アカデミー賞では作品賞含む10部門にノミネートされ美術賞、衣装デザイン賞を受賞した。
2025年11月21日に第二幕部分である『Wicked:For Good』が北米にて公開予定。
キャスト
(演者/日本語吹き替え声優)
- エルファバ:シンシア・エリヴォ/高畑充希
- グリンダ:アリアナ・グランデ/清水美依紗
- フィエロ:ジョナサン・ベイリー/海宝直人
- ネッサローズ:マリッサ・ボーディ/田村芽実
- ボック:イーサン・スレイター/入野自由
- マダム・モリブル:ミシェル・ヨー/塩田朋子
- ディラモンド教授:ピーター・ディンクレイジ/山寺宏一
- オズの魔法使い:ジェフ・ゴールドブラム/大塚芳忠
他、オリジナルブロードウェイ版キャストのイディナ・メンゼルとクリスティナ・チェノウェスがゲスト出演している。日本語吹替は劇団四季版キャストの岡村美南、谷原志音。
追記・修正は「本当の善」のためにお願いします。
- 高校の社会科見学か何かの行事で観に行った -- 名無しさん (2025-03-14 22:43:33)
- オズの魔法使いへの悪意に満ちた逆張り作品ではあるんだけど脚本キャスト歌ともに一流なのでやっぱり嫌いになれない -- 名無しさん (2025-03-15 10:26:31)
- この手の逆張り二次創作って、やる夫スレとかネットの片隅にある隠れた名作くらいの位置にあるから良いのであって、アメリカ大資本でド派手に広めるのはちょっと違うんじゃないかなあ感がどうにもぬぐえない -- 名無しさん (2025-03-15 11:26:58)
最終更新:2025年03月26日 22:28