登録日:2025/04/12 Sat 06:20:03
更新日:2025/04/19 Sat 10:47:18
所要時間:約 7 分で読めます
ムランドス神話(Mlandoth Cycle)は、米国の作家ウォルター・C・デビルJr(Walter C. DeBill, Jr.)によって小説の形で展開された創作神話大系。
米国では2002年にLindisfarne Pressから出版された“The Mlandoth Myth Cycle and Others”、2006年にMythos Booksより出版の“The Black Sutra”で書籍として纏められている。
いずれの作品も、2025年現在では日本語未翻訳。『マレウス・モンストロルム』で引用された一部分のみ日本語化されている。
■概要
ムランドスと呼ばれる存在を宇宙の根源とした世界観で、地球の歴史よりも古くから存在する人智を超えた宇宙的な神々と眷属、超自然的な生き物と関わった人々が体験した未知なる恐怖が描かれる。
世界観の要となるムランドスは象徴的な扱いで、作中に登場する書物などで仄めかされる程度に留まり、更にその内容も矛盾しており謎が多い。
テキサス州のバレット近郊が主な舞台。
■クトゥルフ神話との関係
デビルは
ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの影響を強く受けており、オーガスト・ダーレスが没する1971年前後に活動を始めた、所謂第3期のラヴクラフト派の作家。
デビュー当初は“The Arkham Collector”、“Nyctalops”など米国のラヴクラフト&クトゥルフ文芸誌で
クトゥルフ神話を題材とした掌編を発表していた。
1972年から、それらとは並行して“From the Sea”など独自設定のホラー小説の発表も細々と行い、クトゥルフ神話とは異なる神話として個人で大系化するに至った。
クトゥルフ神話作家兼評論家のロバート・M・プライスは、デビルの神話小説集“The Black Sutra”へ寄稿した前文で「第3期ラヴクラフト作家の中で唯一、ラヴクラフトからインスピレーションを受けながらも、ラヴクラフトの神々を引用すること無く独自の並行神話を生み出した」と高く評価している。
上記のように元はクトゥルフ神話とは独立した大系だったのだが、
ケイオシアムによってTRPG『クトゥルフの呼び声』で、ムランドス神話の神々のデータが設定され逆輸入的な形でクトゥルフ神話の一部に組み込まれることとなった。
デビルは2つの神話を別のものとして扱い「知られざるクトゥルフ神話の蛇神イグと、更に知られざるムランドス神話のイドラが子供を作っていた」という内容のコラボ小説“A Movement in the Grass”を執筆している。
そして、その作中でTRPGデザイナーと同名のピーターセンというキャラクターを殺害している。
ただし、後年の作品ではムランドス神話を題材としながらもニャルラトホテプやネクロノミコンが登場するものも幾つか発表しており融和を進めていたようだ。
■主な神々・怪物
ムランドス神話における、宇宙の根源とされる存在。
前述の通り謎が多く、ムランドス自体が何を指すのかは謎で、宇宙外の実体とも場所の名前とも、未知の力とも、大いなる渦そのものとも囁かれる。
神々は全てムランドスの延長上に存在する顕現の一つとする説もあれば、ムランドスによって発生した大いなる渦によって知的存在=神々が生まれたとする説も存在する。
いずれの説でも大いなる渦と関連することだけは共通している。
タイタニック爆発によって光の存在ムランドスと共に生まれたとされる対を成す闇の存在。この二柱が永遠に繰り返す破壊と創造の輪廻が、あらゆる時間と空間に浸透することで宇宙の各所に大いなる渦が発生しライフサイクルが維持されるとされる。
「暗黒のイド・ナク」「宇宙の母」。
ムランドス誕生以前に唯一存在したもの。
爆発によって一部が分離する形でムランドスが誕生し、対立・協力・一つの存在に戻ろうとする働き掛けによって、宇宙の各地に原初の生命エネルギーの渦が発生して生命が誕生したとされる。
大いなる渦から生まれ虚空で眠りについていた非物質的な存在。
太陽系の誕生によって悪夢に苦しむようになり、太陽系の物質と生命を滅ぼそうとする。
星辰が生み出す魔力によって太陽系への干渉を阻害されているが、ヌギル=コーラスの存在を認識した人間に対してはヌギル=コーラス側からも干渉が可能。
人間を支配下におこうとするが、精神構造の差異により働き掛けた相手を滅ぼしてしまうためイムナールを生み出し活動させる。
この神と接触した人間は目と脳が燃え尽きるか、凶暴な本能に支配される。
ヌギル=コーラスの従者。ヌギル=コーラスの一側面や手足にあたる器官、切り離された分身など様々な説が存在する。
変幻自在の肉体を持ち、同じ種族に変化して知的生命体に働き掛け知識と引き換えに支配するなど暗躍する。
人間に化けた際の姿は、美形の白人男性でラムニー(Ramny)という偽名を好んで使用する。
炎、あるいは核爆発のエネルギーを持つ存在。ヌギル=コーラスとは対立している。
地球の中心に入り込んだとされるが、その時期に関しては地球の誕生時、地球に生命が誕生した時と諸説ある。
別名イー・ト・ラー(Yee-Tho-Rah)。
地球に生命を生み出した死を司る女神。
地球生物が進化するにつれてイドラの力も増す。生物の種類が増えるに伴いイドラも様々な形態に変化できるようになり、数え切れないほどの姿を持つが、人類に知られたことのない真の姿があるとされる。
眷属の種類も多い。「イドラの印」に忠誠を誓った信者を、生ける屍の従者に変える。
イドラの種族の一つ。モグラに似た姿の四肢の無い肉歯目の古代生物。超長期的な冬眠が可能で現代にも生き残っている。
洞窟などに潜み、捕食生物に幻覚を見せて操り捕らえた獲物を自身のもとまで運ばせる生態。支配下の捕食生物が弱ると、それも獲物として喰らう。
現代では、美女の姿の幻覚を見せて人間を操り捕食することもある。
ただし、幻覚の力はそれほど強くないようで酒や薬物で酔った者以外には通じない。
地球外の何処かから来訪し、古代の太平洋海底に石造りの都市を築いた種族。
古代の海に満ちたアミノ酸に適応した肉体構造で、環境の変化によって殆どが絶滅、または眠りに付くが現代になって目覚め始め、イムナールのために暗躍する。
ペテルギウスから生命誕生以前の地球に来訪し、南極近海に住み着いた種族。ロイダとは敵対関係。
5億年前の地球に移住した人間に近い肉体構造の種族。
知的探求心が強くイセリアが遺した記録を引き継いだり、限定的な時間移動能力を使い古生代から結晶蜘蛛の時代までの地球の歴史を調査していた。
クトゥルフ神話とムランドス神話の中間に位置する蛇神イグとイースラ(Yeethra)の子供。
イースラは、クトゥルフ神話で使用されているイドラの別名とされる。
■ムランドス神話の書物
- トラング年代記(Chronicles of Thrang)
イセリアが遺した記録が様々な種族に引き継がれ、追記・改訂された末にトラングの地で纏め上げられた書物。
イムナールから知識を授かり大陸一の文明を気付いたネアンデルタール人ワファハル族の王国ムローンの興亡が記された書籍。
- ウラルテ・シュレッケン(Uralte Schrecken)
1850年頃にケーネンベルグ伯爵が執筆したムランドス神話の神々について記された書物。
- ヘロドトスの失われた書(Lost Book of Herodotus)
詳細不明。ムランドス神話の神々について、別の名前で伝えている。
- モンゴルの隠れた歴史(The Secret History of the Mongols)
1200年代のモンゴルの伝説が記されている。
追記・修正お願いします。
- 後天的に取り込まれたとはいえ独立した神話大系 -- 名無しさん (2025-04-12 09:12:28)
- 続き) 本来は無関係な独立した作品。「■クトゥルフ神話との関係」の欄から、クトゥルフ神話へのリンクで辿れる形になっているので、冒頭でクトゥルフ神話を説明する必要はないと思います。 -- 名無しさん (2025-04-12 09:14:13)
- 説明見た限りではありがちな二元論のように見える -- 名無しさん (2025-04-12 17:44:56)
- ゾロアスター教とかインド神話まんまだなあと -- 名無しさん (2025-04-12 19:56:35)
- 内容薄くね -- 名無しさん (2025-04-12 22:07:52)
- 上の方のコメントであるが、ありがちな二元論だなぁこれ……って思ったのは置いといて、項目でめっちゃ気になったけど「タイタニック爆発」って何?もしかしなくても、映画の題材になったあの船の事? -- 名無しさん (2025-04-13 00:18:47)
- ゾロアスター教にクトゥルフ的なコズミックビーイングを組み込んだみたいな感じかな -- 名無しさん (2025-04-13 22:17:22)
- 固有名詞を独自のものにしただけでやってることはクトゥルフ神話と変わらんからまぁ、取り込まれてもさもありなんという -- 名無しさん (2025-04-17 14:24:53)
最終更新:2025年04月19日 10:47