音楽家(Layers of Fear)

登録日:2025/04/21 Mon 22:46:00
更新日:2025/04/26 Sat 18:24:11
所要時間:約 5 分で読めます






覚えている限り一番最初の記憶は、鍵盤を叩いたこと。

小さくてまんまるな私の指。

肌を伝って感じる、冷たくて、滑らかな鍵盤。

そして…あの爽快感!

この上ない幸福、体中に電流が走ったのを感じたわ。

鍵盤を押すだけであんな音が出る。

決して手放さない。

私は自由よ。

音楽家(The Musician)とは、ホラーゲーム『Layers of Fear』シリーズの登場人物である。
エンドクレジットでは「Wife(妻)」、公式の商品紹介文では「画家の妻(The Painter's Wife)」と表記されている。
いずれにしても本名は不明。

声:クリスティン・レノックス


【概要】

『Layers of Fear(2016)』(以下、『2016年版』)及び『Layers of Fear(2023)』(以下、『2023年版』)の登場人物。

主人公である「画家」の妻にして音楽家。
ピアノ、バイオリン、フルートなど様々な楽器での演奏や作曲ができたマルチプレイヤーであった。
完璧主義者であり、後に自分自身を苦しめる要因となった。

アメリカ出身のイギリス人で、故郷にはジョンという甥とメアリーという姪、友人のベアトリス・ガレスピーがいた。

豪華なビクトリア朝様式の屋敷で夫、娘と共に幸せに暮らしていたが、ある日デパートの火災に巻き込まれて全身に大火傷を負ったことから全てが狂い始めた。

『2016年版』本編及び『2023年版』の「画家の物語」ではストーリー開始時点で故人
『2023年版』の「音楽家の物語」で主人公となり、初めて彼女の目線で家族の物語が描かれた。

【外見】

『Layers of Fear(2023)』スクリーンショット

黒髪、茶色の瞳の白人女性。
均整の取れた体格と整った顔立ちを併せ持つ美人であった。
年齢は20代中盤〜後半に見える。

しかしデパートの火災に巻き込まれて大火傷を負い、皮膚が爛れてしまった。
皮膚移植を始めとする医師たちの懸命な努力により、上の画像の通り鏡に写った姿は火傷を負う以前の姿を取り戻しているように見える。

『Layers of Fear(2023)』スクリーンショット

しかしながら指が変形してしまっており、後述の通り楽器を演奏するどころかペンすらまともに握れなくなってしまった。

【来歴】

『2016年版』本編/『2023年版』「画家の物語」での描写

まだ少女と言える年齢の時に「画家」と出会い、やがて交際した。
「画家」から「最高の芸術作品に自分の名前が無いのが我慢ならないから結婚してくれ」とプロポーズされ、承諾。
某年6月19日に聖ルカ教会で挙式を行った。

その後、豪華な屋敷に引っ越し、娘(本名不明)をもうけ、家族をテーマにした夫の絵画と自身の曲のコラボレーションによる発表会を成功させ、幸せの絶頂にあった。

しかし、それは長くは続かなかった。

某年10月頃、ギャラクティック・デパートのオープン当日に火災が起きた際、そこに居合わせてしまったために全身に火傷を負ってしまった。

そしてこれが、悲劇の始まりであった。

医師たちによる懸命な治療により外見上はかなり回復したものの、全身の痛みや痙攣に苦しみ、更には最大の生き甲斐であった演奏も指が変形してしまったせいで「ベルしか扱えない」レベルになってしまった。

このことから完璧主義者だった「音楽家」は自己肯定感を喪失し、非常に卑屈になってしまった。
火傷のトラウマから火恐怖症になったため、家に電気が引かれランプ類は全て電球に変更された。

『2016年版』本編では妻の現状を受け入れられない「画家」が遅発性統合失調症(未診断)を患い、アルコール中毒やDVによって「音楽家」を苦しめていた描写が強調されており、一方的な被害者としての側面が強かった。

一方で『2023年版』では「画家」は懸命に現実と向き合おうと努力していた描写がある反面、「音楽家」はスランプに陥った彼の作品一つ一つに散々に酷評したメモを貼り付ける嫌がらせをしたり、被害妄想から部屋に板を打ち付けて閉じ籠もったりと問題行動を度々起こしていたことが判明し、愛し合っていた者同士が互いに傷つけ合う描写が追加されていた。

晩年には夫の殺害計画まで立てており、銃や毒、ナイフなどを集めていた。

また、かつて夫が自分をモデルにして描いた傑作「黒衣の婦人」に対して対抗意識を燃やし、嫉妬心を一方的に募らせた末に絵を燃やすなど行動がエスカレートしていった(火恐怖症であるにもかかわらず燃やしたことから、尋常ならざる怒りを抱いていたことがわかる)。

『Layers of Fear(2023)』「黒衣の婦人」のスクリーンショット

火傷を負ってから約一年後の10月2日、バスルームに閉じ籠もりナイフで自害した。


彼女の遺体は正気を失った「画家」により解体され、「最高傑作」の材料にされた(皮膚→キャンパス、骨→下地、髪の毛→筆、血と骨→絵の具、眼球→観客)。

『Layers of Fear:The Inheritance』/『2023年版』「娘の物語」

「娘」の視点で描かれる物語では回想シーンに登場。

「画家」が自分の理想や夢を子供に押し付ける毒親として描写される一方で、娘と遊んであげる様子が描かれる。

また、娘が可愛がっていた犬「ポピエル」に噛まれてしまい怪我を負った結果、ポピエルは「画家」によって殺害されたという出来事も明かされ、これにより「娘」は犬恐怖症となってしまった。

『2023年版』「音楽家の物語」

主人公となる。

このエピソードでは前述の症状に加えて閉所恐怖症や妄想症も罹患していたことが判明し、指の変形から仕事も家事もできなくなったことから「このままでは夫に精神病院送り*1にされるのではないか」と疑心暗鬼に陥り、「部屋が徐々に狭くなっている」という妄想に取り憑かれ、幻聴、幻覚の症状が現れるなど未診断の統合失調症であることを示唆する描写が多数あった。 

また、包帯の交換やステロイド注射といった毎日必要な治療の度に暴れて夫を疲弊させていたこと、仕事や子育てや妻の看病で手一杯な夫から入院するよう提案をされるも個人的なプライドから拒否していたこと、娘に対しては優しく接していた反面、若く純真な彼女に嫉妬を抱いていたり重荷に感じていたことなど複雑な心情が明かされた。

アメリカにいる友人ベアトリス・ガレスピーとは火傷を負ってからも頻繁に手紙のやり取りをしていたことが明かされ、文字さえまともに書けない状況で「ピアノの発表会を開く」と述べて困惑させたり、地元に帰ると嘘をついて叔父と叔母に会えると楽しみにしていたジョンとメアリーを失望させたりと突飛な言動で振り回していた。

また、「芸術」を司る古の存在「ラット・クイーン」の影響が示唆され、作中で彷徨うことになる異常な世界が単なる幻覚ではなく本当に異界であるかのような描写となっており、異世界で未来の夫とニアミスする場面がある。

鎖に満ちた世界を彷徨い、自身を縛り付ける様々な「鎖」(音楽家として、主婦として、母親としての重責など)を外していく。

+ ...
  • エンディング「孤独」
「画家の物語」に続く正史

完璧主義の「音楽家」にとって現状は到底受け入れられるものではなく、ナイフを手にバスルームに閉じ籠もった。

彼女の死後、「画家」には大量の保険金が支払われたが、「画家」はこれを拒否して財団に寄付した。
この基金により「作家の物語」に登場する「エージェンシー」が設立された。

『Layers of Fear(2023)』新聞のスクリーンショット

  • エンディング「容認」
非正史エンディング。

現実を受け入れた「音楽家」は「自分には子育ても良き妻であることも音楽家で居続けることも不可能」だと自認し、娘に手紙と日記を残して静かに家を去った。


「作家の物語」

謎の組織「エージェンシー」が所有する灯台を探索していた主人公の「作家」が、失われたはずの「黒衣の婦人」を発見する。

また、「音楽家の物語」は「作家」によって執筆されたノンフィクション小説『The Final Note』の内容であったことが判明する。

【ワイフゴースト】

妻の幽霊の意味。
名称はキャラクターのファイルデータ名(WifeGhost)で、作中では「怪物」とだけ呼ばれる。

「音楽家」に似た姿をした怪物もしくは幽霊で、『2016年版』本編や『2023年版』の「画家の物語」及び「音楽家の物語」に頻繁に登場する。

『2016年版』と『2023年版』で姿や役割が異なる。

『Layers of Fear(2016)』

『Layers of Fear(2016)』スクリーンショット

「音楽家」がゾンビになったかの様な姿。
ボロボロの黒いドレスを着て、顔の半分は包帯で隠れている。
両手はハケのようになっており、絵の具がこびりついている。

『P.T.』のリサを強く意識したと思われる描写が多く、プレイヤーが自分から近付かない限り無害。
接触すると襲われるがゲームは進行する。

「画家」の自罰意識の象徴らしく、襲われると現実と向き合う「家族」エンディングに加点される。

終盤のネズミの大群と共に現れる場面はスティーブン・キングの『1922年』のオマージュだと思われる(劇中の年代も近い)。

『Layers of Fear(2023)』

『Layers of Fear(2023)』スクリーンショット

遠目には黒いドレスを着た「音楽家」に見えるが、肌、髪、服の何れもが乾いた絵の具の様な質感となり、肌と服が一体化して境界がなくなっている。

『2016年版』とは違い「Get out!」など人語を呟きながら執拗に追跡してくる。

歩く度に黒いインクの様なものが足下に湧き出てザブザブと音がする。
短距離の瞬間移動(ショートワープ)を繰り返して急接近したり、瞬間移動で先回りしてきたりとアグレッシブ。

ランタンもしくは懐中電灯の強めた光を浴びせ続けると身体が燃え上がり、溶けて黒い水たまりになってしまう。
しかし僅か数秒で復活するため足止めにしかならない。

「ゴースト(幽霊)」とは言うものの「画家」のみならず「音楽家」の前にも現れるため幽霊でも幻覚でもないのは明白なガチ超常生物である。

ラット・クイーンの超自然的な力によって顕現した「画家」や「音楽家」の罪悪感や強迫観念、直視し難い現実の象徴だと思われる(要は三角様)。

ただ逃げれば良い場面もあるが、殆どの場面では逃走しながらの謎解きやアイテム回収を強いられる。

懐中電灯やランタンは使用するとゲージを消費し、ゲージか尽きると数秒間のクールタイムを要するため気をつける必要がある。

また、ドアを破壊したり、その場でうずくまりすすり泣いていたりもする。

捕まると謎の空間にリスポンし直前の場面からやり直しとなる。

追記、修正は妻の幽霊から逃げてからお願いします



画像出展:『Layers of Fear(2016)』(開発元:bloober team 発売元:Aspyr発売 2016年発売)/『Layers of Fear(2023)』(開発元:bloober team 発売元:Aspyr 2023年発売)

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最終更新:2025年04月26日 18:24

*1 当時は現代と違い患者の扱いが酷く監獄同然だった