瑠璃の宝石

登録日:2025/05/13(火) 11:40:00
更新日:2025/05/15 Thu 12:38:03NEW!
所要時間:約 11 分で読めます








「私だって採れるはず」





『瑠璃と宝石』は、ハルタにて2019年から連載されている漫画作品。
作者は渋谷圭一郎。
2025年5月現在5巻まで刊行。


またアニメ化も決定しており、2025年中に放送開始予定。




概要


タイトルに宝石の文字が入っているし宝石も扱っているが、どちらかと言えば宝石も含めた鉱物や鉱物採集についてのあれこれを描いた作品。
石の発見と研究を通して世界についての理解度を深めていく事へのロマンや、手がかりを得て現象を解明していく楽しさについても触れられている。
鉱物学についての事が主眼だが関連して地学全般、特に地質学、古生物学の内容も含んでる。


作者は大学で鉱物学を専攻し理科の教師として働いていた経歴を持っており、現実に鉱物学の現場での事などを漫画に落とし込んでいる。
インタビューで作者は「鉱物に興味を持ってくれる学生は多かったが、そういった人も社会に出ると離れて行ってしまう。鉱物採集をより身近に感じられるような話にしたい」と語っている。
登場人物のほとんどが女の子なのもその都合。現実はやはりオッサンばっかりだとか


単行本化に伴い、話の間に凪の小憩というコラムページが挿入されていて、本編の補足解説が行われている。
また単行本の表紙には登場した鉱石や道具類が散りばめられている。
掲載紙と単行本では白黒でしか表現できなかった鉱石などがカラーで表現されていて、よりイメージがつかみやすくなっている。



あらすじ


キラキラしたものが大好きな女子高生・谷川瑠璃。
近くの山で水晶が採れると聞いて、「自分でも見つけられるかも!」と水晶を探しに山へと向かう。
そこで鉱物学を専攻する大学院生・荒砥凪と出会い一緒に鉱物採集をすることに。

ある時は川の砂から砂金を選り分け、サファイアの産地を目指して顕微鏡を覗き、鉱石を探して山道を歩く。

頼りになる先輩達、鉱物採集を通して出来た友人、知れば知る程きらめきを増す宝石と世界。
そんな世界の先を見たいと、鉱物採集の世界へ入り込んでいく。



登場人物


◆谷川 瑠璃

(CV:根本 京里)

「きっと世界で一番綺麗な石なんです、それだけはわかります」

本作の主人公。キラキラした綺麗なものに目が無い高校1年生。周りからはもっぱらルリと呼ばれている。
山で水晶が採れると聞いて用意もなしに山へ向かったはいいが、そこでどうすればよいか分からず途方に暮れていた所、偶然出会ったナギに頼み込んで水晶を採集する事に成功。
それ以降ナギや伊万里の宝石および鉱物採集に同行するようになり、鉱物の世界に興味を向け始める。


当初は綺麗な石や高価な石にだけ目を向けていて、ナギ達が話す鉱物についての話や石の研究をする意味等は理解できなかった。
更に始めてやる石の計測や予備的な調査の必要性もよくわからず、特に「ない事を確認する」為の調査はかなり辛かった様子。

ただ、ナギや伊万里の説明や真剣な研究姿勢を見たりする内にそれらの有効性も理解し、随分研究者らしい態度が身に付きつつある。
そこから進んで石が存在していた環境や石が出来るまでの要因などにも目を向けるようになり、石の先を視たいと考えるようになってきた。



鉱物に限らずあまり知識があるとは言えないが、現象を自分なりに解釈したり、現状を説明できる仮説を立ててその正否を確かめようとしたりと、学んだ知識を活かす事には長けているように思える。
また初心者故か発想は柔軟で、時折ナギ達が思いつかなかった視点を持ち込んで物事を前進させたりする事に繋がったりもしている。
が、ルリ自身は自分が石の研究をしているとは思っておらず、ただ石を今以上に綺麗に見るために石の事をもっと知りたいと思っているだけと考えている。


かなり勢い任せで物怖じする事もない性格で、砂金の為に川に浸かって下着まで濡れても平気。
また自分の興味を公言する事を恐れ、「変な子と思われる」と危惧する瀬戸に対して「一緒に変な子になろ」と軽く応えている。
収集した石も当初はテキトーに保管していて石の産地についての情報もあやふやだったが、これは瀬戸からの忠告もあり、綺麗に見えるようにきちんと保管するように。




◆荒砥 凪

(CV:瀬戸 麻沙美)

「石は動く、私たちが思っている以上にな」


前芝大学の鉱物学研究室に所属する大学院生。*1
駆け出しではあるが研究者として活動を始めており、論文を発表したり学会に出席したりする傍ら、知り合ったルリ達や後輩の曜子と共に鉱物採集に出かけている。
大学側あるいは業界でも既にある程度の評価をされているようで、修士課程終了後は学芸員に、とのオファーもあったが、将来的には大学の教授として研究を続けたいとの考えから断っている。


石に関する知識はもちろん、石の計測や標本を使った実験の技量にも優れており、作中ではそれらの知識を駆使して鉱石が採れそうな場所の推測、現地で石の特定、産地の追跡等を行っている。
大学院生として伊万里の論文執筆の相談にも乗り、テーマと関係ない事を詰め込み過ぎてる等の添削指導も行っている。

石を研究するのは、それを通して自然をよりはっきりと理解する為。
発見した石が既存の理論を補強するのか、新しい理論のきっかけになるのかを調べて、世界についての知識が洗練されていく一旦を担いたいからだと語る、なかなかのロマンチスト。


ルリとは本当に偶然会っただけなのだが、ルリの勢いに押されて鉱物採集に同行させるようになった。
その後、完全な初心者であるルリに分るよう丁寧に解説し、また研究室で作業を行う時にも「その作業がどうして必要か」から説明するなど、鉱物学の先達としてルリから尊敬を受けている。
ナギの方も、初心者故に集中力が途切れがちながらも素直に知識を吸収し、時に自分には出来ない発想をするようになったルリを末頼もしく見ている様子。


欠点としては片付けに対する意識の低さ。もう終わっている交流会の案内チラシとか、あきらかに不要そうなものも「とりあえずとっておこう」と言って捨てようとしない。
研究室の机には読んだ本や付箋を貼りまくった資料や標本やらが乱雑に積み上げられており、伊万里や研究室の先生から片付けろと言われても一向に気にしない。
そればかりか、「どこに何があるかは把握しているから整理されていない訳ではない」と反論し、更に本の山の中から特定の本のみを、山を崩すことなく抜き取ってみせて「すごいだろう」と自慢する始末。
作者さんの実体験だろうか?


実はルリが通っている学校の卒業生で、在学中は地学部に在籍していた。*2




◆伊万里 曜子

(CV:宮本 侑芽)

「たぶんそれが、「自分の目で見る」ってことなのかな」


同じく前芝大学の鉱物学研究室に所属する大学4年生。
かなりの本好き&鉱山好きのようで、絶版となった古い時代の鉱山についての本や古い地形図をよく集めている。
大正期の和洋折衷建築なども興味があるようで、偶々内装がそういう物だった宿に泊まった時は、延々解説を続けながらナギを連れて宿の各所を見て回っていた。


若干知識オタクっぽい所もあり、自分の分野に関連する話題になると早口で知識をまくし立ててしまう癖がある様子。で、大抵聞き流されるか中断される。
かなりの運動音痴のようで、山を歩いていて最初にへばるのは大抵彼女。*3


ルリからは、ナギに比べて知識/経験共に不足していて頼りないと思われがちで本人も自覚のある所だが、得意分野ではナギにも劣らない知識と情熱を見せる。
またルリの愚痴を聞いたり収集した鉱物の扱いについてレクチャーしたりと、初心者であるルリをうまくフォローしてくれるよい先輩でもある。
逆に、最初に瀬戸の前で色々知識を披露したせいか、瀬戸からはかなり信頼を寄せられており、内心「信頼が重い…」とか考えつつもなんとか応えようと頑張っている。


主に書籍からの情報に頼って研究を進めていたが、ナギやルリに刺激を受けて鉱物採集の現場にも出るように。
そしてルリの協力もあって手に入れた蛍石と鉱山の研究で論文を作成し、研究者としての一歩を踏み出す事ができた。
その後もナギやルリ、瀬戸と採集に出かけるようになり、いままで「わからない」としか言えなかった事もわかるようになったと成長を実感してもいる様子。


将来については大学院へ進む事は決めているがその後の進路については悩み中。
教員や学芸員の資格を取る事も考えているが、どちらも採用枠自体がないっぽく…*4




◆瀬戸 硝子

(CV:林 咲紀)

「…喜んでくれたら、いいんじゃないかなって…思う」


ルリのクラスメイト。
子供の頃から石に趣味を持っていて将来は鉱物の研究者になる事を考えている娘。
独学で学び、鉱石を集めたりもしているが、周りに自分の趣味を認めてくれる人がおらず、やがて自身の趣味を周りから隠すようになってしまっていた。


学校でルリとは特に接点はなかったが、ルリ達が海岸でガラス採集をしている所を偶然通りがかり、ナギ達が鉱物の研究をしていると知って同行。
ルリが割としっかりした知識と考えを持っている事に驚きながらも、同じ趣味を持つ友人となった。
ちなみにこの5人の中で唯一ルリの事を「谷川さん」と呼んでいる。


独学で学んだ期間が長いせいか割と本由来の知識に頼るところが大きく、現物についての細かい知識あるいは常識的なものが欠けがち。どちらかと言えば伊万里に似たタイプか。
本格的に山に分け入っての採集などもやった事がなかったようで、始めて鉱石を手に入れた時は非常に嬉しそうだった。
収集した鉱物も1つ1つ箱に仕舞って整理しているが、「1つだけ箱のサイズが大きいのが気になる、やり直したい」と漏らすなどなかなかこだわりがある様子。


その後ナギ達から鉱物採集を通して研究者の考え方等を教わり、ルリとは同じ趣味の友人と活動する楽しさを経験し、改めて大学へ進んで研究者になる意思を固める。
趣味を公言する事への恐れもいろいろ明け透けなルリの影響からか薄れつつあり、両親にも趣味を打ち明ける事が出来た。




◆笠丸 葵

(CV:山田 美鈴)

「そんなの本当に見れたらすげーだろうな」


ルリのクラスメイトで以前からの友人。見た目ちょっとルーズなギャル風。
ルリの綺麗なもの好きな趣味も知っており、綺麗なものの前でテンションを上げて騒ぐルリを「あーはいはい」と聞き流してくれるよい友人である。
宝石や鉱物に興味はないが実は山登りが趣味であり、(水晶採集の為に)山へ登るというルリ達の話を聞いて自分も行くと言い出す。

山登り当日は割と本格的な装備で現れ、天候が急変するきっかけを察知して撤収を促すなど随分山慣れした様子を見せていた。
目的が水晶採集と聞いてがっかりするも、水晶の塊をロープで引き出そうとしたりと最後まで同行し、なんだかんだ楽しんでいた気立てのよい娘。


学校で根城にしている空き教室をルリ達にも使わせていたが、そこに残っていた旧地学部の備品から活動ノートを発見。
そこに書かれていた鉱物らしいもの"水晶の木"の探索に乗り出すルリ達に協力する事になった。





アニメ


現在は2025年内に放送開始予定とだけ公表されている状態で、公式サイトでPVとキービジュアルが公開されている。

アニメ製作はスタジオバインド。
監督を藤井慎吾、シリーズ構成を横手美智子、キャラクターデザインは藤井茉由が担当。





追記・修正は最近鉱物採集に行ってきた人にお願いします。





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最終更新:2025年05月15日 12:38

*1 4巻のあるコマで出てきたスタッフ証には「前芝大学大学院 理学部 地球惑星科~ 鉱物学研究室」とある

*2 ナギの卒業と同時に廃部になったため、現在は存在しない

*3 上記の癖で長話をしながら歩いている事が多いせいでもあるが

*4 いわゆるポスドク問題。詳細は省くが大学院まで進んだような人の就職先がなくそれ以上の研究を続けられないor非常に不安定な職しか得られない問題。