右園死児報告

登録日:2025/06/03 Tue 10:14:15
更新日:2025/07/03 Thu 14:34:37
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この報告書は安全である。


概要

明治二十五年から続く、政府、軍、捜査機関、探偵、一般人による非公式調査報告体系。右園死児という名の人物あるいは動物、無機物が規格外の現象の発端となることから、その原理の解明と対策を目的に発足した。(書籍版公式サイトより)

右園死児(うぞのしにこ)」なる名前を巡る報告書の体で作中の怪奇現象を書くホラー小説である。
作者は真島文吉。
Twitterの画像ツィートという形で連載。しばらくは1ツィート怪談の体裁で続くが、やがて舞台が異様な体制の日本であることが示唆され長編へと続いて行き、最後に元通りの地味な怪談へと帰還する。
カクヨムで2024年8月5日に公開され、同年9月2日に完結。2024年9月3日に書籍として発売。
2024年12月16日からカドコミ(コミックウォーカー)にて、コミカライズが連載される。
作画は新川権兵衛・ネーム構成はかかし朝浩。



右園死児

うぞのしにこ、と読む。特定の物体や現象ではなく、この文字列や発音そのものが予測不能な災害誘引力を持つ言語的脅威。
この文字列を、人間動物、無機物、現象などの名前に採用すると、壊滅的な被害が出る。
右園死児災害に巻き込まれたら奇怪な死に方をしたり発狂するのはよくあることで、肉体が変質し奇形化・怪物化することも珍しくない。
その危うさを知ってなお自分から右園死児に接触していたら自業自得だが、特に落ち度もない一般人も巻き込まれるのだからたまったものではない。

基本的には日本国内に出現し、日本政府の警察組織や軍部の最も重要な作業の一つに、右園死児を人名として採用する行為の阻止、および行為者の検挙がある。
作中の日本は一見すると現代社会のようだが、右園死児の存在を隠蔽し、住人の戸籍は厳重な監視網によって強固に守られている、ディストピア社会の様相を呈している。
報告される右園死児災害はそんな強権的な体制すらもかいくぐって出現し、しばし少なくない数の犠牲者を出している。
なので報告を読んでいくと「比較的小規模な災害をもたらした段階で察知した軍部や政府が秘密裏に処理」という一連の処置も必要悪とも思えてくる。稀に国際社会にも出現して日本人以外も巻き込み、政府や軍部が右往左往したり収拾不能になることもあるんだが。
が、ディストピア社会の副産物である政治体制の腐敗、大衆の不満が蓄積しており、後半の「エツランシャ」に率いられた金輪部隊によるテロを招き、未曾有の犠牲者を出すこととなる。
ちなみにこのテロの時に他国家から核弾頭により日本への攻撃がされたが、細かな隕石群が核弾頭を撃墜、海洋に没するという、最大級の右園死児らしき怪現象まで起きている。

右園死児報告には具体的な年代や地名の表記があまり無い。言語的脅威である右園死児の情報を一か所に集める事、それ自体に危険があると判断されている。
どの案件も詳細部はぼかされ、それを知るには個別にアクションが必要になる。

名付けられ、極度に右園死児化した人間は物理的に破壊する事が不能になる事、また災害誘引力を封印する目的で別の生体への埋め込みが行われる。
具体的には、右園死児としての個認識を埋没させるため、生きた大型家畜などの体内に対象者を外科的に接続する。
また経験則で、右園死児の異常に被曝しながらも生き残った者には、別の右園死児の異常(特に発狂などの精神的異常や、腐食などの超常的異常)への耐性が付くことが判明している。

右園死児関係者・関連組織

神谷修二

後述する油絵を描いた画家に雇われた探偵
かなりの高齢のはずだが年齢不相応な若さを持ち、右園死児案件を追い続けている。
その活動には他者から高い評価を受けている。

冴島将吾

右園死児案件を捜索中に、武装した村人から襲われた軍調査部のただ一人の生き残り。
神谷修二と、後述する右園宮を捜索中に新たな右園死児案件を発見、原因不明の異変により白髪化する。
その後ブラインドマン部隊に志願し、訓練を終えた後に軍の制御から離れ、単独行動に移る。
右園死児案件のあった村に向かい、隠された半地下空間を探しあてると、そこにいた行方不明となっていた共食いをする村人や巨大な人形と交戦。
全ての武器を使い果たした末に戦死。死ぬ前も死んだ後も神谷の精神的な支えとなる。

大西真由美

ルポライター。後述の遺体が発見された時のただ一人の生き残り。
遺体の異常性を発見して逃げ出した後に、10時間も線路を這って進み、地下鉄路線に合流して駅員に救助される。
その後は政府側の一員として行動していたが、後述の音声テープの件で緊急入院措置をくらい精神治療センターに押し込められる。
録音テープに愚痴を吐く事をしていたが、テロ集団の病院襲撃に巻き込まれ、脱出した後は後に重要な一員となる。

火麻谷一郎

暴力によって屈服させた妻から生まれた子供三人を秘匿し、子供達を右園死児と呼称して15年育てる。
事態が露見した際には、三人の子供は火麻谷一郎から巣立っており、足跡は完全に途切れていた。
何故このような案件を引き起こしたかには黙秘を続けており、火麻谷一郎には1年の思想・精神洗浄が施されたが効果が無く、
最終的に刑罰として存在洗浄が施された。妻の火麻谷恵子は精神に異常が見られ、軍病院にて看護措置となる。

田島茜

神谷修二と並び多数の報告を行った軍の研究主任。
冷酷だが神谷修二を気遣うメッセージを遺すなどの人間味も見せる。
三田倉九・牧野周平といった前任者たちについても、上層部が怯えから汚れ仕事を押し付けたために権限が集中しただけと評していたが
金輪部隊の蜂起に対し三田倉九の兵器利用を企画し、部下から怯えを指摘される。
後述する売春婦からは奇妙な好感を持たれており、右園死児になって死を免れることを勧められるが人間として死ぬと拒絶している。
後に三田倉九の災害誘引力によって異常をきたした自認識潜没システムが原因で致命傷を負うが、彼女の遺志を継いだ売春婦が戦力と研究レポートを突入部隊へと届ける。

ブラインドマン部隊

右園死児を破壊するために編成される軍特殊部隊。
基本装備は強化鉄板ジャケットと自認識潜没ヘルメット。特殊徹甲弾を装填した機関銃。火炎放射器など。
高度の精神洗浄を施された隊員は右園死児概念に対し精神的盲目状態で戦闘に臨む。
すなわち相手を右園死児と認識しないことで災害誘引力から距離を置いている。
なお、この戦闘原理は証明されておらず効果のほどはさだかでない。
他からは死体部隊、潜水夫部隊、概念的ゾンビなどと揶揄されている。

夜烏班

後述の三田倉九によって廃棄された1200件近い報告を復活させるための調査班。
班員は適性検査により選ばれた人材で、21件の廃棄資料を復活させている。
専門家による管理を離れた右園死児的資料は、殺傷力が未知数であり、夜烏班を何度も全滅させている。

めざめの巨人

後述の教祖の騒動の後、残った元幹部が作った新興宗教。
また後述の羽田電次の支持者を取り込み3000人の集団にふくれ上がっていた。
日本政府の体制全てを拒絶し反社会活動を開始、様々なテロ活動を行った末にまどいの巨人の奪取を目論み、都民を巻き込んだ市街戦に発展。
382時間後に鎮圧。死体を含め3022人を確保し、首謀者13名を残し土中廃棄とした。首謀者13名中、12名は尋問の後に洗浄。教祖は公開洗浄とした。

金輪部隊

後述する右園宮の洗浄後、ディストピア的現状に異議を唱えた右園死児案件の「エツランシャ」が指揮する部隊。
ブラインドマンのものを改良した自認識潜没システムを使用し、多量の右園死児を集積した「聖域」で勢力を拡大する。
これに対し壊滅した政府側の生き残り、そして後述の右園死児案件の中で戦力となる者達が立ち向かうこととなり、報告書という形式を一時離れてアベンジャーズめいた能力バトルの幕が切って落とされる。

右園死児実例(一部)













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最終更新:2025年07月03日 14:34