パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊

登録日:2025/06/29 Sun 11:33:50
更新日:2025/07/10 Thu 18:45:15
所要時間:約 8 分で読めます







ジャックVS海の死神


ジャック・スパロウ───今度はお前が死ぬ番だ。




『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊(Dead Men Tell No Tales)』とは、2017年に公開されたウォルト・ディズニー・ピクチャーズ制作のアメリカ映画。

+ 目次


概要

海洋アクションアドベンチャー映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの第5弾である。原題は直訳すると「死人に口なし」。
監督は前作のロブ・マーシャルから、『コン・ティキ』で第85回アカデミー賞や第70回ゴールデングローブ賞の外国映画賞にノミネートされたヨアヒム・ローニングとエスペン・サンドベリのノルウェー人コンビに変わった。

前作『生命の泉』では主に冒険活劇が主軸になっていたが、今作では第1作『呪われた海賊たち』以上におどろおどろしい雰囲気やヴィランであるサラザールの恐ろしさ、そして「家族の絆」を焦点に置いた作品となっている。
また前作では海賊映画でありながら海戦シーンが無かったことが不評だったが、今作ではブラックパール号対サイレントメアリー号の激突など、迫力あるシーンが多く描写されており、その点において見応えがある。

その反面、設定面においては『STAR WARS』シリーズなどのようにこの時期に目立ったディズニー社によるリブートの影響が顕著で、不満を表明する意見も少なくない。
ジャックがコンパスを手に入れた経緯が過去作と明確に矛盾している他、ブラックパール号入手を描いた公式ゲームや、若かりし頃のジャックの冒険を描いたこれまた公式監修のジュニア小説スピンオフの数々も実質抹消されてしまった。

主役も実質的に新キャラであるウィルとエリザベスの息子・ヘンリー*1になっており、ジャックはこれまで同様の狂言回しに戻っている。
ただし今作でのジャックは見事なまでに落ちぶれてしまっており、キャラとしての活躍はヘンリーやバルボッサの方がはるかに多い。とはいっても要所要所での見せ場はあるのだが。
それ以外では、これまでに見られたコメディ要素はあまり見られず、全体的にシリアスな雰囲気が色濃くなっているのも特徴。


ストーリー

前作から2年。ウィルとエリザベスの息子のヘンリー・ターナーは、新たにフライング・ダッチマン号の船長となった父ウィルを探しに行くため、ボートに乗って沖へ進む。
神話本を読んだヘンリーは「ポセイドンの槍」が呪いを解く鍵であることと、ジャック・スパロウという海賊が何かを知っていることを突き止める。
父と対面を果たしたヘンリーは「必ず呪いを解いて見せる」と宣言するが、ウィルは息子を危険から遠ざけようと追い返すのだった。

それから9年後、ヘンリーは英国海軍の一員となり、「モナーク号」に乗り込み海賊たちを追い詰めていたが、「魔の三角水域」に入りかけており、引き返すようにことを艦長に伝えようとするも、反逆者とみなされて牢に閉じ込められてしまう。
三角水域に入ったモナーク号はスペインの難波線「サイレント・メアリー号」を発見するが、その直後、ヘンリーの忠告通り海の死神・サラザール率いるスペイン海兵の亡霊達によって艦長以下乗組員が殺されてしまう。
サラザールはジャックの手配書を持っていたヘンリーだけは殺さず、ジャックに対して「死が迫っている」という伝言を残す。
ヘンリーは英国植民地セント・マーティン島に流れ着き、そこで魔女疑惑をかけられた天文学者カリーナ・スミスと出会う。

そのころジャックは全てのツキに見放されたように落ちぶれており、ボトルに閉じ込められたブラックパール号を出すこともできず、今や一文無しでセント・マーティン島のジャンク船を根城にし、銀行強盗を試みて失敗し、ギブスを始めとした部下たちからも見捨てられ、さらに大切なコンパスも酒と引き換えに手放してしまい、挙句英国海軍に捕まってしまうなど、みじめな生活を送っていた。
しかもコンパスを手放したことで三角水域に閉じ込められていたサラザールが復活してしまう。
投獄され、翌日には処刑されるはずだったジャックとカリーナはヘンリーやギブスたちによって救出され、ポセイドンの槍を探すために旅に出ることに。

一方、前作で黒ひげを倒したバルボッサは、今やカリブ海の大艦隊の首領となっており、金銀財宝に囲まれた優雅な生活を満喫していた。ところが復活したサラザールによって自分の艦隊が次々と沈められていることを知り、魔女のシャンサの元へ出向く。なぜかジャックが手放したコンパスを持っていたシャンサは、それをバルボッサに渡すと、サラザールの目的であるジャック・スパロウを探せと告げる。
バルボッサはサラザールと交渉し、自身の命の保証をする代わりにジャックを引き渡す契約を交わす。

ジャック、ヘンリー、カリーナは、サラザールが放ったサメの追撃をかわして島に逃れるが、島民に捕まってしまう。そこへバルボッサたちが現れジャックを開放するとブラックパール号を復活させる。

そしてついに、ジャックとバルボッサたちの乗るブラックパール号はサラザールとの決戦に挑む。


登場人物

ブラック・パール号

ジャック・スパロウ
演:ジョニー・デップ/吹き替え:平田広明

「孤高の海賊」
前作ラストでボトルシップになったブラック・パール号を手に入れるが、それを復活させることもできず、全てのツキに見放されたように落ちぶれた生活を送っていた。
加えて酒浸りのアル中状態で、大切なコンパスも酒と引き換えに手放してしまい、それがきっかけで最悪の相手を呼び寄せてしまう。

本作ではすっかり落ちぶれているため、バルボッサやヘンリー、カリーナの方が活躍する場面が多いが、それでも主人公らしく、要所要所で美味しいところを持ってってはいる。

●ヘンリー・ターナー
演: ブレントン・スウェイツ/吹き替え:中川大志

「ウィル・ターナーの息子」
『ワールド・エンド』のラストに登場した、ウィルとエリザベスの息子が成長した姿。本作では実質的なもう一人の主人公。

かつての父と同じく家族思いの心優しい好青年で、女手一つで育てられたからか母のエリザベスを深く愛しており、父のウィルとも10年に1度しか会えていないが、父にかけられた呪いを知ってからはウィルを救い出そうと奔走するなど、父に対しても母と同じような愛情を持っている。

●カリーナ・スミス
演:カヤ・スコデラリオ/吹き替え:栗山千明

「孤独な天文学者」
本作のヒロイン。
卓越した知識と洞察力の持ち主で、特に時計学に精通しているが、あまりにも頭がいいことから、周囲からは「魔女」と恐れられている。
幼い頃に生き別れた父が遺した「ガリレオ・ガリレイの日記」を基に伝説の秘宝、ポセイドンの槍を探すとともに、父の行方を捜している。

顔も知らない父への愛情は深く、父が名付けたカリーナと言う名前を今も大事に名乗っている。
ヘンリーとは旅を続ける中でお互いに惹かれ合っていく。
そして終盤では、父の正体と自らの出生の秘密が明かされる。

●ヘクター・バルボッサ
演:ジェフリー・ラッシュ/吹き替え:壌晴彦

「ジャックの好敵手」にして、今作の漢。
落ちぶれまくるジャックとは対照的に、10隻の艦隊を率いる大海賊の首領にまで上り詰め、金銀財宝に囲まれた悠々自適な生活を送っていたが、復活したサラザールによって自身の地位が危うくなることを悟り、ジャックと協力してブラックパール号を復活させる。

サラザールによって傘下の船を沈められたり、サラザールと手を組むもあっさり裏切られてメインの船である「アン女王の復讐号」も奪われてしまったりと、序盤ではジャック同様に良いところが無いが、前作以上に見せ場も多く、実質的に主役と言ってもいい活躍ぶりを見せる。
そして終盤では、ある人物との意外な関係が明かされる。

フライング・ダッチマン号

●ウィル・ターナー
演:オーランド・ブルーム/吹き替え:平川大輔

ヘンリーの父で「フライング・ダッチマン号」の船長。
ワールド・エンド』での一件以降、10年に一度しか陸に上がれないという呪いをかけられており、本作では顔にフジツボが付いているなど海洋生物化が進んだ状態で登場。

父の呪を解こうと会いに来た12歳のヘンリーを「ジャックを巻き込むな」と追い返すなど、息子に対する愛は確かで相変わらずのお人好しぶりも健在。


サイレント・メアリー号

●アルマンド・サラザール
演:ハビエル・バルデム/吹き替え:大塚明夫

「海の死神」
ひび割れた灰色の肌と欠損した左後頭部が不気味な、ジャックと因縁のある本作のヴィラン。
元々はスペインの戦艦「サイレント・メアリー号」の艦長で、海賊に対しては無抵抗の者でも降伏した者でも容赦無く殺害することから「海の処刑人」と恐れられていた。

しかし若き日のジャックに倒されて「魔の三角水域」に長い間閉じ込められ、それ以降三角水域に迷い込んだ船や海賊たちを次々と殺して回る「海の死神」となっていた。
ジャックがコンパスを渡してしまったことで復活し、ジャックへの復讐のために舞い戻ってくる。


海軍関係者

●ジョン・スカ―フィールド
演: デヴィッド・ウェナム/吹き替え:小原雅人
イギリス海軍の大尉。領海権を求めてポセイドンの槍を狙う。
脱走したジャックやカリーナを執拗に付け狙う。

その他

●ジョシャミー・ギブス
演:ケヴィン・R・マクナリー/吹き替え:青森伸

シリーズ皆勤賞の、ジャックの忠実な部下……だったが、失敗続きのジャックに愛想を尽かして遂にジャックの元を去ってしまう。
と思っていたがやはり見捨てきれなかったのか、投獄されていたジャックを再び救出した。

●シャンサ
演: ゴルシフテ・ファラハニ/吹き替え:浅野真澄

スキンヘッドにタトゥーが特徴的な魔女。生贄に動物の生き血を勧めるなど悪趣味だが、基本的には義理堅く中立的な立ち位置で、海賊やら海軍であっても仕事を受ける。

●ジャックおじさん
演:ポール・マッカートニー/吹き替え:内田直哉

ジャックの叔父。演じるのはビートルズのベーシスト、ポール・マッカートニー。

●エリザベス・スワン
演:キーラ・ナイトレイ

現在は海賊を引退している総督令嬢。
ヘンリーとジャックが槍を破壊し、呪いが無効化されたことにより再び陸地に上陸できるようになったウィルと再会を果たした。


用語集

◆ジャックのコンパス
ご存じ、北ではなく所有者が望む方角を指し示すコンパス。
本作では持ち主がコンパスを裏切ると、その人物にとって最悪な相手を呼び寄せてしまうと言う、とんでもない副作用があることが明かされた。
これによって最も割を食わされたバルボッサは泣いていい。

◆磨の三角水域
現実では「バミューダ・トライアングル」の名前でも有名で、その地帯に立ち入った船や飛行機が次々と行方不明になることから名付けられた。

◆サイレント・メアリー号
サラザールが艦長の戦艦で、元はスペイン海軍の戦列艦。
ジャックの若い頃には84門にも及ぶ大砲の数による凄まじい火力と乗組員の狂気的な執念による強さでカリブ海を根城にする数多の海賊とその船を尽く蹴散らし、彼含めカリブの海賊らから非常に恐れられた存在であったが、サラザールがジャックの罠にハメられ魔の三角海域に封じられた際に火薬を満載していた船底を損傷、大爆発を起こして大破した後に海域の呪いにより沈まぬ亡霊船と化した。
船体の殆どが炭化する程焼け焦げ、ほぼ骨組みに近い悍ましい姿に変わり果てながらもブラック・パール号に追い縋る速力と船首の女神像を始め船そのものがサラザールの命に従う意思を持ち、怪物が獲物を前にして鎌首をもたげるかのように船体を反らして持ち上げ、そのまま相手の船目掛け叩き付けるという凄まじい攻撃も披露する。

◆ポセイドンの槍
海の神ポセイドンの水中墓にある不思議な力を持つ槍で、雷雨の制御や海の生き物の統括に使われたとされる。

海の呪いを司る能力があるとされ、ジャックとバルボッサはサラザールを退けるため、ヘンリーは父の呪いを解くため、カリーナは生き別れになった父の地図の秘密を解明するため、イギリス海軍は領海権を得るため、それぞれの思惑でポセイドンの槍を追い求める。






NEXT→???

追記・修正はポセイドンの槍を手に入れた後でお願いします。

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最終更新:2025年07月10日 18:45

*1 実際には『ワールド・エンド』のラストシーンが初登場。