LOCAL 58(アナログホラー)

登録日:2025/09/22 Mon 00:12:13
更新日:2025/09/22 Mon 02:25:20NEW!
所要時間:約 6 分で読めます















ANALOG HORROR

AT 476 MHz















local 58
W C L V - T V











『Local58』は、アメリカのデジタルクリエイターであるクリス・ストラウブによって制作されたアナログホラームービーである 。





概要

2015年に最初に投稿された作品である「Weather Service」を皮切りに断続的にYoutubeにアップロードされた一連の映像作品となっている。
内容はウェストバージニア州メイソン郡にある架空のテレビ局「WCLV-TV」(通称:Local58)の放送が超自然的な力を持つ何者かによって乗っ取られ改竄されてゆく様子を描いており、まるで過去の映像アーカイブから発掘されたかのような「録画映像」の形式を取りながら、独立した物語が不穏な世界観の全体像を構築していくアンソロジー形式で展開されてゆく。

この作品の特筆すべき点といえばやはり「アナログホラー」というジャンルを定型化し確立させたその巧みな映像演出だろう。
意図的な映像・音声の劣化、ノイズ、グリッチ、そしていわゆるアナログ放送のアスペクト比である4:3の画面といったアナログ時代のメディアが持つ物理的な制約をホラーの核心に据え、かつ「安全だと思われていたメディアが謎の存在による介入を受けて異常性を見せ始める」というテーマを巧みに利用することで「安全だと思われていた日常が次第に侵食され狂ってゆく」というこれまでにない恐怖体験を表現せしめている。
また「断片的な映像記録」という点と「アナログ時代のメディアゆえの時系列の不鮮明さ」という点を巧妙に利用した「視聴者に作中世界で何が起こっているかを想像させる」という一種の推理ゲーム的側面も持っており、単なる映像作品の集合に留まらない、「現実とフィクションの境目が曖昧になる」というメタ視点からの恐怖も提供する作品となっている。

こういった数々の演出・表現は後々数え切れないほどのフォロワー作品の共通の要素として受け継がれてゆき、同作品のキャッチフレーズである「ANALOG HORROR AT 476 MHz」はそのまま「アナログホラー」というジャンルそのものの名称として一般化していった。
『Local58』はまさしくこの「アナログホラー」作品の元祖と言える金字塔的な作品である。

ちなみに作者である「クリス・ストラウブ」の名前を見てピンときた人もいるかも知れない。
そう、何を隠そうこの人こそあの有名なCreepypasta、『Candle Cove』の作者なのだ。
作者は過去にウェブ漫画『Broodhollow』などのホラー作品も手がけており、『Local58』や『Candle Cove』とはおそらく世界観が共有されているとファンの間では考察されている。*1


作品一覧


上述の通り『Local58』はそれぞれバラバラに発掘された、「Local58で起こった放送事故の録画映像の集まり」という形式が取られており、映像内における作中世界での出来事と各動画の投稿順が一致していない。
視聴者は次々に投稿されてゆく不鮮明で断片的な映像を元に、どの順番で映像内の出来事が起こったのか、また作中世界でどのような出来事が発生したのかについて考察を重ねてゆくことになる。

動画は現在3シーズンにまたがって現在も投稿され続けており、#1~#3までがシーズン1、#4~#6までがシーズン2、#7がシーズン3となっている他、チャンネルやコンテンツの紹介などこれらのナンバリングに含まれない単発動画が数点投稿されている。

ちなみに元々は作者が知人と共同で運営する別のチャンネルに投稿されていたのだが、2017年にYoutubeに公式アカウントが開設されて以降は過去作品を含めそちらのチャンネルに投稿されている。
そのため投稿日に関しては最初に公開された際の日付基準で記載する。

■シーズン1


●#1『Weather Service(天気予報)

2015年10月26日投稿。シリーズの第一作目であり、当初はこれ単独の作品といった形だった。
深夜の放送中に突如として差し込まれた緊急放送、そしてそれに介入しようとする謎の存在が示唆される。



●#2『Contingency(有事対応)

2016年1月26日投稿。
架空の政府機関「アメリカ尊厳維持局(DPAD)」からの緊急放送という形式で、アメリカが「克服不能な敵勢力」に敗北したことを告げ、国民に人としての尊顔を保つための「行動」を促すという内容となっている。
『Local58』の作品中で最も知名度の高い作品の一つであり、「日本国尊厳維持局」などの多くのオマージュ作品を輩出することとなった。
特筆すべきジャンプスケア表現はなく、淡々と不気味な映像が流れるというだけなのだが、この作品にこそ作中最大にしてアナログホラーの真髄とも言える恐怖が詰まっていると言える。



●#3『You Are on the Fastest Available Route(最短経路)

2016年6月19日投稿。
深夜の放送が突然何者かによってジャックされ、2014年11月21日に撮影されたドライブレコーダー映像と思しき映像が流れ始める。
カーナビゲーションシステムの指示に従い、運転手が未舗装の森の奥へと進んでいくうちに、ルート案内の指示は次第に不穏なものに変わってゆき…



■シーズン2

初期3作から2年ほど時間が空き、以降の動画はyoutubeチャンネルが開設されて以降の動画となる。


●#4『Show for Children(子供向け番組)

2018年7月31日投稿。第二シーズントップバッターとなる作品。
「子供向け」の通り、作者の過去作品『Broodhollow』のキャラクターであるガイコツの「カダブル」が登場する短編アニメーション作品が放映される様子を録画したものであるが…



●#5『Real Sleep(真性睡眠)

2018年12月19日投稿。
他の作品とはかなり毛色が異なる動画となっており、「Thought Research Initiative(TRI)」なる組織が作成した「良質な睡眠を取るためには」という内容の学習番組となっている。
曰く、「夢を見ることで睡眠による心身の回復は妨げられる」「良い睡眠のためには夢は不要」とのことだが…



●#6『Skywatching(天体観測)

2019年11月1日投稿。第二シーズン最後となる動画。
アマチュア天体観測者による月の観測映像が流れる様子が記録されているが、その映像に「あるはずのないもの」が映り込んでしまう。



■シーズン3

シーズン2から5年もの時間を経て再始動した現状最新のコンテンツ。現時点で動画は1本だけだが、この後も新作の投稿は続いてゆくものと見られる。

●#7『Night Walk(夜の散歩)

2024年10月31日投稿。
Local58は既にデジタル放送への移行が完了しており、これまでの放送と違った鮮明でクリアな映像が流れるようになった。
内容は1977年に撮影されたとされる都市伝説を取材した架空のドキュメンタリー番組「Night Walk」が放映されているというものだが…



■その他

各シーズンに含まれていない番外編的な動画。

●『STATION ID(識別番号)

2017年11月2日投稿。ちょうどシーズン1と2の間くらいの時期に投稿されたもの。
18秒ほどのごく短い映像となっている。



●『Digital Transition(デジタル移行)

2021年10月31日投稿。投稿時期はシーズン2最後の投稿から約2年後。
歴代の番組ロゴとともにこれまでのLocal58の歩みを懐かしみながら振り返ってゆき、ついに訪れた地デジ移行の瞬間を視聴者皆で迎えようといった趣旨の映像だが…



余談


local58.tv

Digital Transition(デジタル移行)』でも言及されていた、「Local58」の公式Webサイト。2021年の9月に開設されている。
実際にアクセスできるが、アクセスするといきなり「500 Internal Server Error」というエラーコードと不気味な画像が表示される。サイト全体はいわゆる「WayBackMachine」*12を模した作りとなっており、そこかしこに本編とリンクする意味深なイースターエッグが隠されている。

フォロワー作品

先にも述べた通りこの作品はアナログホラーと言うジャンルが世に定着するきっかけとなった非常に有名な作品であり、この作品に影響を受けて作られたフォロワー作品も数え切れないほど存在する。
有名どころでは「The Mandela Catalogue」、「Channel7」、「GeminiHomeEntertainment」、「日本国尊厳維持局」などが挙げられる。
これらの作品は更にそれぞれ自体も極めて有名な作品となっており、更にこれらをリスペクトする形で作られた作品も登場している。
あなたもこれを機に奥深いアナログホラーの世界に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。





IF YOU ARE AFRAID(もし恐れているなら)

WE WILL ADD AND CORRECT IT TOGETHER(共に追記・修正しよう)  




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最終更新:2025年09月22日 02:25

*1 『Candle Cove』が放送されていたとされる「Channel 58」が『Local58』と同一の存在であることが明かされている他、後述する作品一覧でも触れるが、作中に登場する「カダブル」という骸骨のキャラも『Broodhollow』の登場キャラクターだったりする。

*2 ジム・ジョーンズがアメリカで興したカルト宗教。ガイアナに作られた信者コミュニティで信者たちが教祖の指示に従って集団で自殺を遂げた事件が知られている

*3 というよりそのの事件の発生が1978年なのでおそらくそれがモチーフの一部に含まれていると思われる。

*4 アメリカでアナログ放送が停波したのは2009年6月12日だが実は2021年と割と最近までごく一部の地方のローカルテレビ局ではアナログ放送が継続されていた。後にこのシリーズでもアナログ放送からデジタル放送への切り替えを取り扱った動画が投稿されている。

*5 a grave mistakeは「(一発でヤバいことになる)致命的なミス」という意味の英語のスラング。

*6 クライトマンはおそらくレム睡眠・ノンレム睡眠に関する研究で知られるアメリカの著名な脳科学者、ナサニエル・クライトマンのことだと思われる。またクライトマンマップと言う名称は同じく脳科学者であるコルビニアン・ブロードマンが作成した「ブロードマン・マップ」に由来すると考えられる。

*7 おそらく認知心理学における「フラッシュ顔歪み効果」を意識した演出だと思われる。はっきり確認できない視界の端などで連続で多数の人の顔を見た際、直前に見た人の顔の印象が残像のように残ることで次の見た人の顔がその残像に引っ張られるような形で認識されてしまい、まるで奇妙に顔面が歪んだかのように感じられてしまう現象のことを指す。

*8 いわゆる残影効果。ピンクの背景が表示された際、一瞬中央の顔があった部分に顔の画像の残像が残って見える。

*9 1959年のSF怪奇ドラマ「OneStepBeyond(邦題:世にも不思議な物語)」の一部。

*10 おそらく作中世界におけるFCC(連邦通信委員会。アメリカ国内の放送通信事業の規制監督を行う独立行政機関。)に相当する機関と見られる。

*11 「You Are on the Fastest Available Route」の項でも触れたが、アメリカでは2021年まで一部の地方放送局でアナログ放送が継続されていた。

*12 様々なURLの過去アーカイブを閲覧することができるサイト