アットウィキロゴ

J1昇格プレーオフ

登録日:2026/01/11(日) 00:30:45
更新日:2026/06/12 Fri 13:51:26
所要時間:約 11分で読めます






夢と絶望の90分。


J1昇格プレーオフとは、日本プロサッカーリーグ・JリーグにおけるJ1昇格最後の1チームの座を賭けたトーナメント戦。
誰が呼んだか通称「日本で最も残酷なトーナメント」

概要

2012年〜2017年、および「J1参入プレーオフ」への一時的な変更及びコロナ禍による中断を経て2023年より再び行われている。

Jリーグをはじめ、全世界のサッカーリーグの大半はチーム数の増加への対応とリーグの活性化を目的として複数のカテゴリによるチーム分け、及び上位リーグと下位リーグの入れ替えが行われている。
その一方で、下位リーグから上位リーグへの昇格はわずか1〜2チームと狭き門であることから、昇格(および降格)チームが決まった後の他クラブの選手によるモチベーション喪失による無気力試合の多発がかねてから問題視されていた。
この問題を解消し、多くのクラブに上位リーグ、日本で言うJ1への昇格の可能性を広げ、リーグを最後まで活性化させるための試みとしてJ1リーグ参入戦や入れ替え戦など数多くの施策を経て、2012年から海外のリーグの昇格プレーオフ制度を参考にして導入されているのがこの「J1昇格プレーオフ」である。
2024年からは、この大会方式を踏襲する形で、J2の下に位置するJ3でも「J2昇格プレーオフ」が開催されている。

大会方式

出場資格を持つのはその年のJ2で3位〜6位に入った4つのクラブ
組み合わせは「3位vs6位」と「4位vs5位」の間でまず行われ、それぞれの勝者が決勝に進出。
そして決勝戦に勝利した1チームのみが、来シーズンのJ1への最後の切符を手にする。

※J1への参加資格(ライセンス)を持たない*1クラブはこの順位に居てもプレーオフには出場できない。*2
その場合下の順位からの繰り上げはなく、3クラブになると上位1クラブがシード扱いとなり、下位2クラブの対戦で勝った方が決勝で戦う形になる。

ただし、単なるトーナメントではなく「プレーオフ」であるため、リーグの順位が上だったチームにはアドバンテージが与えられる。

具体的には
  • ホーム&アウェイ方式ではなく、一発勝負。2016年以降は決勝戦も含めて上位チームのホームスタジアムで対戦
  • 90分+ATでも決着がつかなかった場合は延長戦やPK戦は行われない。同点終了は上位チームが勝ち上がり
である。

一見するとリアルガチで上位チームが絶対有利だが、だからこそ頻発する番狂せがプレーオフの魅力である。
実際、3位チームがそのまま勝利するパターンは驚くほど少ない。


この項目では、そんなJ1昇格プレーオフの歴史を振り返っていく。


その激闘の歴史

チーム名はその年の参戦チーム。
そのうち、昇格を果たしたチームは赤字で記載。

  • 2012年
京都サンガFC(3位)
横浜FC(4位)
ジェフユナイテッド千葉(5位)
大分トリニータ(6位)

初のプレーオフは劇的結末

第1回大会から、有利と見られていた3位の京都が6位の大分に、4位の横浜FCが5位の千葉にともに0-4の大敗を喫する番狂せが起こった。

決勝は激しい雨が降る中、国立競技場で開催。
0-0のままゲームは終盤に突入し、このままいけばジェフのJ1復帰が決まる終盤の86分。
交代出場で投入された大分のFW林丈統が劇的ゴールを決め、そのまま1点を守った大分がJ1に復帰。

皮肉にも林は千葉から戦力外通告を受け退団し、大分に移籍した選手であった。
もっと言うと、林は千葉入団前の京都にて2009年に「大分をJ2に叩き落とすゴール」を決めており、自分のゴールで降格させたクラブを自分のゴールで昇格させたことになる。

  • 2013年
京都サンガFC(3位)
徳島ヴォルティス(4位)
V・ファーレン長崎(5位)
ジェフユナイテッド千葉(6位)

四国初のJ1クラブ誕生

初出場の徳島・長崎を迎えた今回は、打って変わって初戦は2試合ともロースコアドロー。リーグ上位の京都と徳島が順当に決勝へとコマを進めた。

再び国立に舞台を移した決勝戦は、前半から徳島が優位に試合を進めると39分、43分と立て続けにゴールを奪い、後半も京都の反撃を0点に抑えてタイムアップ。四国の地に、史上初となるJ1クラブが誕生した。

なお、翌年から国立競技場が東京五輪開催に向けた改装工事に入ったため、決勝が旧国立になったのはこの大会が最後。

  • 2014年
ジェフユナイテッド千葉(3位)
ジュビロ磐田(4位)
モンテディオ山形(6位)

GKが決めた!歓喜の決勝弾

5位のギラヴァンツ北九州がJ1ライセンスを持っていなかったため、3位の千葉がシードとなる。
そのため最速J1復帰を目指す磐田とプレーオフ初出場の山形がまずは対戦。
山形がディエゴのゴールで先制するも、前半ATに磐田が山﨑亮平のゴールで試合を振り出しに戻した。
このままいけば磐田の決勝進出が決まる後半AT。CKでパワープレーとしてキーパーの山岸範宏が上がってくると、彼がドンピシャのタイミングでヘディングを合わせ、山形が土壇場で勝ち越し。
彼は長年在籍してきた浦和レッズから出場機会を求め移籍してきており、キャプテンとしてチームを引っ張ったベテランのミラクルな一撃は今なお語り草となっている。
2023年のJリーグ誕生30周年を記念した表彰「J30ベストアウォーズ」における「ベストゴール」の「ヘディングシュート部門」でも、この山岸のゴールが選出された。

その勢いのまま千葉の待つ決勝へと進出した山形は、東京・味の素スタジアムにて前半37分の山崎雅人の1ゴールを守り切り、4年ぶりにJ1復帰を果たした。

  • 2015年
アビスパ福岡(3位)
セレッソ大阪(4位)
愛媛FC(5位)
V・ファーレン長崎(6位)

ホームなのにアウェイ!? 逆境を跳ね除け3位チームが初昇格

福岡が長崎との九州ダービーを制し、セレッソ大阪が愛媛と引き分けて決勝進出。

前年に引き続き中立地の開催となるはずが、事前の選考で選ばれていたのがなんとセレッソ大阪の本拠地であるヤンマー長居スタジアム
しかも運営の問題か福岡側がアウェイ席行きとなり、福岡としてはホーム扱いでありながら完全なるアウェイという前代未聞の逆境になってしまった。

試合も60分にセレッソの玉田圭司に先制ゴールを許す。
しかし、87分に福岡のベテラン中村北斗が意地の同点ゴールを挙げて土壇場で追いつき、そのまま引き分け状態を守りきってタイムアップ。
これにより、レギュレーション上は一番有利ながら今まで昇格がなかった3位チームが初めて昇格を果たした。

一方でこの事案が問題視されたため、決勝戦の中立地開催が廃止され、翌年以降は決勝も順位が上のチームのホームスタジアムでの開催に変更された。

  • 2016年
松本山雅FC(3位)
セレッソ大阪(4位)
京都サンガFC(5位)
ファジアーノ岡山(6位)

ピンクの大阪、一年越しのリベンジ

最有力とされていたのは、最後まで同年の自動昇格圏を清水エスパルスと争った3位の松本山雅FC。
しかし、北信越特有の極寒で冷たい雨まで降る過酷な環境と、松本サポによる大アウェイの中、6位の岡山が1-1終了間際での赤嶺真吾の劇的ゴールで松本を撃破し、決勝に躍り出る。

もう一方は2年連続でプレーオフ参加となったセレッソが1-0で京都との関西対決を制し決勝へ。

雨が降る中、セレッソの本拠地キンチョウスタジアムで行われた決勝は膠着した展開が続き、後半7分に清原翔平のゴールで先制したセレッソがそのまま逃げ切り勝利。
元代表クラスどころか現役代表の山口蛍をはじめJ2では破格とも言える戦力を有しながら2年連続で自動昇格には手が届かず、
さらに偶然とはいえ昨年は本拠地で戦いながら昇格を決められる屈辱を味わったピンクの大阪が、リベンジを果たす形でJ1昇格となった。

  • 2017年
名古屋グランパス(3位)
アビスパ福岡(4位)
東京ヴェルディ(5位)
ジェフユナイテッド千葉(6位)

初期最後のプレーオフ、スター軍団が意地を見せる

16年のセレッソが残留するまで、昇格プレーオフで昇格したチームが全て1年で降格していたためプレーオフの制度が見直され、初期制度では最後となった大会。

名古屋はホームで千葉と対戦。リーグ戦ではダブル(2戦2敗)を喫した相性が悪い相手で、この試合でもラリベイに先制ゴールを許すが、攻撃陣が爆発して4-2の大逆転。

もう一山は福岡が東京Vと対戦。会場の都合で熊本での開催となったが、前半14分の山瀬功治の弾丸ミドルであげたゴールを守り切って決勝進出。

上位同士の対決となった豊田スタジアムでの決勝は膠着した展開でスコアが動かず、途中福岡のウェリントンがゴールネットを揺らすも際どいオフサイド判定でノーゴール。
結局、プレーオフ決勝では初めてとなるスコアレスドローでの決着となり、J屈指の資金力と選手層を持ちながら前年まさかのJ2降格の憂き目にあった「スター軍団」名古屋が1年でのJ1復帰を果たした。


  • 参入プレーオフとコロナ禍における中断(2018年〜2022年)

上述する通り、2018年からは参入プレーオフへと形を変えた。
大会方式としては以前に行われたJ1・J2入れ替え戦の様式を一部取り入れており、昇格プレーオフを勝ち上がったJ2チームが、さらにJ1の16位だったチームに挑むこととなる。
しかし、この時J1側にも上位チームのアドバンテージがきっちり与えられるため、
J2側のチームは「明らかに自分たちよりも力が勝るであろうチームとのアウェイでの一発勝負で絶対に勝たなければならない」試合が従来より1つ増えるという厳しい条件になってしまった。

2018年には東京ヴェルディ*3、2019年には徳島ヴォルティスが参入戦決勝へと進出したが、どちらもJ1で苦しんでいた磐田や湘南の席を奪うには至らなかった*4

2020年、2021年はコロナ禍によるレギュレーション変更に伴い実施されず、J1への昇格は自動昇格チームのみとなった。

2022年に参入プレーオフとして復活し、5位のロアッソ熊本が参入決定戦に進出するも、京都サンガに1-1で引き分けて敗退。

このレギュレーション不利にクレームがついたのかは定かではないが、2023年にJ1のチーム数を拡大することに伴い参入プレーオフはこの年限りで終了し、従来の昇格プレーオフに戻ることになった。


  • 2023年
東京ヴェルディ(3位)
清水エスパルス(4位)
モンテディオ山形(5位)
ジェフユナイテッド千葉(6位)

緑の名門、16年ぶりにJ1へ

久しぶりの昇格プレーオフは磐田と最終節まで自動昇格枠を争った3位・東京Vと4位の清水、最終節での勝利でギリギリ食い込んだプレーオフ常連の山形と千葉が挑む。

準決勝は東京Vが千葉を2-1で撃破し、清水が山形に0-0と引き分け。決勝は上位同士の対決に。

東京Vの本拠地、味の素スタジアムを日程上の理由で使用できなかった事から、偶然にも決勝は11年ぶりに聖地・国立競技場での開催となり*5、J2の試合では異例となる5万超えの大観衆が集まった。
試合は、前半は無得点のまま折り返し、後半に東京Vの生え抜きでキャプテンの森田晃樹がPA内で痛恨のハンド。これをチアゴサンタナがPKを決めて清水が先制するも、後半ATの土壇場で東京Vが染野唯月のPKで追いつき同点で終了。

Jリーグ創設時代より現役の「オリジナル10*6」であり、それも前身の読売クラブ時代からJリーグ初期まで日本サッカーを牽引していた「緑の名門」は2度目の降格以来長年J2に甘んじていたが、16年目でようやくJ1への返り咲きを果たした。

  • 2024年
V・ファーレン長崎(3位)
モンテディオ山形(4位)
ファジアーノ岡山(5位)
ベガルタ仙台(6位)

晴れの国より全日本へ、16年目の悲願

リーグ戦で終盤絶好調だった3位の長崎、4位の山形が準決勝で敗れるという、前年とは打って変わって波乱の展開。
8年前雨の大阪であと一歩で涙を飲んだファジアーノ岡山が、3年ぶりのJ1への返り咲きを目指す杜の都の雄、ベガルタ仙台を岡山のホーム・JFE晴れの国スタジアムで迎え撃つ。

前半に先制した岡山が堅実な試合運びで仙台をいなし、後半にも1点を追加して2-0で勝利。Jリーグ参入16年目にして悲願を叶えた。
中国地方に2つ目のJ1チームが誕生したこの瞬間は、プレーオフで今まで唯一昇格がなかった5位からの初昇格が記録された瞬間でもあった。

余談だが、このプレーオフ決勝の1年後、ファジアーノ岡山に所属していた岩渕弘人がこのとき下したベガルタ仙台への移籍を発表し、
記者会見の場で「プレーオフではすいませんでした」と言って会場の笑いを誘った。

  • 2025年
ジェフユナイテッド千葉(3位)
徳島ヴォルティス(4位)
ジュビロ磐田(5位)
RB大宮アルディージャ(6位)

フクアリの奇跡再び、オリ10最後の古豪がついにJ1復帰

東京V同様、オリジナル10でありながら降格した2010年以来J2から上がりもせず落ちもせず、本項目内だけでもわかるように何度となくプレーオフ圏には食い込んでいながら万年J2クラブとしてお馴染みとなってしまったジェフユナイテッド千葉。
折しも、この年を最後に秋春制移行が行われる(シーズンの境目が半年分ずれる)影響で、今年昇格を逃せばもう半年をふいにしてしまいかねないというプレッシャーの中、
千葉は首位で一時2位との勝ち点差7と独走し、ついに時が来たかと思われたがシーズン後半に失速して3位に転落。そこから上位との差を詰め切れずあと一歩で自動昇格を逃してしまい、6度目のプレーオフへ。

ホーム・フクダ電子アリーナに大宮を迎えて準決勝に挑む千葉だったが前半から低調な入りになり、立て続けに失点して0-2で前半を折り返すと、後半にも1点を追加されて0-3。決勝進出は絶望的かと思われた。
ところが、後半26分から畳み掛けるようにゴールを奪い、瞬く間に3点差を追い抜き4-3。かつての「フクアリの奇跡*7を思わせる大逆転劇で決勝進出。
特に後半38分で勝敗を決する3点目を奪った姫野誠は2008年生まれでユース所属の17歳でありこの試合がプロ初出場。*8「フクアリの奇跡」の年に生まれた新世代がJ1昇格への希望を手繰り寄せたのである。

千葉は、5位の磐田と引き分けで勝ち上がった徳島との決勝でも、終始劣勢ながら徳島の猛攻を凌ぎ、後半で奪ったカルリーニョスジュニオの1ゴールを守り切って勝利。
ジェフ千葉がついに17年ぶりのJ1復帰を成し遂げたことで、秋春制移行に備えて行われる半年間の特別大会「百年構想リーグ」を、21年振りのオリジナル10勢揃いで迎えることができた。

余談

  • 普段はJ1と比べて注目度がどうしても下がってしまうJ2のゲームだが、Jリーグ全体におけるシーズン最後の公式戦として開催されるという日程と、J1を含めた他チームのサポーターが敵情視察という名目で観戦に来ることも多いため、観客者数はJ2の試合とは思えないほど多くなる。

  • 短期決戦かつ一発勝負による番狂せの多さが魅力ではあるが、当初は自動昇格圏内との勝ち点差にかなり開きがあるチームが勢いで勝ち上がった結果、J1の戦力を揃えられず苦戦した末に1年で降格してしまうことが続き*9、プレーオフ制度が一時見直される原因になった。しかし、2016年のセレッソ大阪~2024年のファジアーノ岡山まで、再開催された昇格プレーオフを優勝してJ1に登ったチームは全て1年以上J1での残留を達成している。


追記、修正はプレーオフを勝ち抜いてJ1に昇格してからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/




最終更新:2026年06月12日 13:51

*1 主にスタジアムの規模や財務など様々な条件から審査される。

*2 当たり前だが自動昇格圏内だとしても昇格できない。そのためシーズン終盤にライセンスを持たないクラブが昇格圏内に入っていたりすると、そのクラブの上位カテゴリの降格圏にいるクラブが降格圏の減少を願ってそのクラブを応援する、第三者から見れば胸が痛くなる光景が繰り広げられる。

*3 なお、この年はライセンスのない町田ゼルビアが4位だったため、3位の横浜FCは第2回戦からのシード参戦となり、6位のヴェルディは全て1戦目となる相手と3連戦する形となった。

*4 ヴェルディは磐田に0-2、徳島は湘南ベルマーレに1-1

*5 なお、中立地開催に戻ったわけではなく東京Vのホームスタジアムの一つであることにはご留意。

*6 ヴェルディ以外だと鹿島、千葉、浦和、横浜、清水、名古屋、ガンバ大阪、広島。現存9チームだが、これは横浜F・マリノスは旧横浜マリノスと元オリジナル10の横浜フリューゲルスの合併で生まれたチームであるため(そのためフリューゲルスの「F」が入っている)。

*7 プレーオフ導入前である2008年のJ1最終節にて「自身は勝利、残留争いの他2チームが敗北の場合のみ残留」という厳しい条件の中、後半20分で0-2という絶望的な状況から4-2の逆転劇を起こし残留を果たした。……もっとも、翌09シーズンであえなく降格し、あとは上記の通りだったのだが。

*8 状況的に、交代指示を出してピッチに送り出した時点では「試合を諦めてベンチ入りしていた選手に記念出場させた」だったのではないかとも。

*9 こうして昇格と降格を繰り返すクラブの事を、俗に「エレベータークラブ」と言う