2008年最終節(Jリーグ)

登録日:2011/08/24(水) 02:53:13
更新日:2024/11/01 Fri 02:19:22
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2008年のJ1は、残留争いが最終節までもつれていた。


この年のJ1は16位のチームがJ2との入れ替え戦。17位・18位のチームは自動降格となっていた。
札幌の降格はすでに確定してしまったものの、あと一つの自動降格枠は最終節の時点で3チームに可能性が残されていた。

中でも同年、特に絶望視されていた降格候補がジェフユナイテッド千葉。
前年オフのアマル=オシム(元日本代表監督イビチャ=オシムの息子)監督解任の影響で、代表クラスの主力選手が一挙5人も移籍。
大幅な戦力ダウンを被ることとなる。


戦前の予想通り、千葉は大苦戦。開幕から実に11試合勝ちなし(2分け9敗 勝ち点2)という泥沼状態に。

シーズン序盤から早くも降格決定的と思われていたが、当時プレミアリーグの名門リバプールFCのヘッドコーチを務めていたアレックス=ミラーを監督に招聘。
これ以降チーム成績は上昇し、優勝争いをしていた鹿島・名古屋・浦和をホームフクダ電子アリーナにて次々と破り、9月~10月上旬には5連勝を果たすなど、
一時は残留圏の14位まで浮上した。

しかし終盤息切れし、最終節を降格圏内である17位で迎えることになった。
最終節前の順位

15位 ジュビロ磐田 勝ち点37 得失点-7 残留
16位 東京ヴェルディ 勝ち点37 得失点-10 入れ替え戦
17位 ジェフユナイテッド千葉 勝ち点35 得失点-19 自動降格


ジュビロとヴェルディは勝てば残留確定。引き分けでも入れ替え戦にチャンスが残るという状況。
一方千葉は負ければ即降格。勝ってもジュビロとヴェルディが負けない限り残留出来ないという圧倒的に不利な状況であった。
おまけに、千葉は守備の要である元豪州代表DFボスナーが累積警告の為に出場停止だった。





そして12月4日―――訪れた最終節

前半戦キックオフ。


東京V-川崎戦。
前半から優勝争いをしてした川崎が猛攻。

さらに26分、ヴェルディのさわやか893こと福西崇史が、かなり微妙な判定ではあったが相手への暴力行為でなんと一発退場。川崎にPKを与えてしまう。
(ちなみに福西はこのシーズンで現役を引退した為に、現役最後の試合が退場で終わった)
しかし、キッカーを務めたFWジュニーニョがこれを外してしまう。
このままヴェルディは10人で踏ん張り前半を0-0で折り返した。


一方千葉も上位のFC東京と対戦。
もはや残留のためにも勝つしかない千葉だが、39分CKからFWカボレにヘディングを決められて失点。
そのまま前半を0-1のビハインドで折り返すことになる。


磐田は当時残留マイスターの一角として知られた大宮アルディージャと対戦。
(大宮にも僅かながら入れ替え戦行きになる可能性が残されていた)
こちらは前半を0-0で折り返した。


前半終了時点の順位

15位 ジュビロ磐田 勝ち点38 得失点-7 残留
16位 東京ヴェルディ 勝ち点38 得失点-10 入れ替え戦
17位 ジェフユナイテッド千葉 勝ち点35 得失点-20 自動降格


勝利が絶対条件である千葉は勝つためには最低2得点が必要となり、
それに加えて残留の為には先に述べた通り他会場の結果次第と、極めて困難な状況に立たされてしまった。

そして後半戦キックオフ。



いきなり試合が動いたのは千葉-FC東京。
後半開始早々にFC東京DF長友佑都(現インテル)に強烈なミドルを決められ0-2に。
この時点で千葉は残留まで3得点が必要となってしまう。残留の可能性が大きく大きく遠のいた。

そして東京ヴェルディも川崎に先制点を決められ0-1に。ビハインドを許してしまう。


後半20分過ぎの時点での順位

15位 ジュビロ磐田 勝ち点38 得失点-7 残留
16位 東京ヴェルディ 勝ち点37 得失点-11 入れ替え戦
17位 ジェフユナイテッド千葉35 得失点-21


千葉は残り25分で3点が必要というあまりにも絶望的な状況であった。





………しかし、誰もが予想出来なかったドラマがここから始まった。



74分、千葉は途中出場のMF谷澤達也のロングフィードに抜け出した同じく途中出場のFW新居辰基が決め、1点を返す。
更に77分。DF青木良太のクロスを元日本代表FW巻誠一郎が胸で落とし、谷澤が強烈なボレーを突き刺す。
あっという間の3分間で、2-2の同点に追い付いたのだ。

80分。FWレイナウドが日本代表DF今野泰幸にエリア内で倒されてPKを獲得。
フクアリの全ジェフサポーターが祈る中、レイナウドが自らPKを決めて遂に3-2と逆転。
ここまで僅か7分で、試合をひっくり返した。

同時刻。0-0が続いていた磐田-大宮戦が動く。
大宮はMF小林大梧がヘディングを決めて先制。磐田がリードを許してしまう。


この時点での順位
15位 ジェフユナイテッド千葉 勝ち点38 得失点-18 残留
16位 ジュビロ磐田 勝ち点37 得失点-8 入れ替え戦
17位 東京ヴェルディ 勝ち点37 得失点-11 降格


千葉が降格圏から一気に残留圏に浮上。
ジュビロは入れ替え戦・ヴェルディは降格と一気に崖っぷちに追い込まれた。

更に千葉は谷澤がカウンターから再びゴールを決めて4-2となり、勝利を決定的なものに。
FWである巻誠一郎が最終ラインまで下がり相手のクロスを必死で跳ね返すなどの執念のプレ―が続いていた。
後のないヴェルディは必死で攻めるも、川崎MF中村憲剛にミドルを決められて万事休す。0-2で敗れた。
磐田もその後ゴールを決められず0-1で試合終了。

以て、ジェフユナイテッド千葉の残留が決定。
フクダ電子アリーナは選手・サポーターがあまりにも劇的な結果に号泣していた。



最終順位
15位 ジェフユナイテッド千葉 勝ち点38 得失点-17 残留
16位 ジュビロ磐田 勝ち点37 得失点-8 入れ替え戦
17位 東京ヴェルディ 勝ち点37 得失点-11 降格

余談


  • 入れ替え戦に回った磐田はベガルタ仙台相手にギリギリの戦いを演じるも何とか残留。
  • 自動降格に終わってしまったヴェルディは後日、日テレが経営から撤退。チーム規模を大幅に縮小することに…
    引導を渡したのは因縁のチーム川崎フロンターレだった。

  • 奇跡の残留を果たした千葉と磐田だが、奇跡は2度は起こらず翌年はどちらもJ2降格となった。千葉は2024年現在もJ2を脱せてはいない。


  • 千葉が残留を遂げた大きな要因のひとつに、MFミシェウ(現新潟)、FW深井正樹などシーズン途中から加入した選手が
    すぐさまチームにフィットし、大活躍したことが挙げられる。
    (降格危機に瀕したチームが夏に慌てて選手を補強するのはよくあることだが、多くの場合は失敗に終わる)
    • 前年は長期のスランプに陥りリーグ通算僅か5得点に終わっていた巻は、この年はチーム最多の12得点を叩き出した。
  • 2005年J1最終節でのセレッソ優勝の夢を打ち砕いた一発からDCK(ドリームクラッシャー今野)と呼ばれていた今野泰幸だが、
    今回、千葉にPKを与えたことによって残留を賭けていた自軍ヴェルディをJ2に落としてしまった為に、流石DCKと言われることに…
  • 当時FC東京の監督を務めていた城福浩氏は千葉に劇的勝利を献上したことで、間接的とはいえヴェルディを降格させてしまうことになった。
    それから14年後の22年にヴェルディの監督に就任した城福氏は、翌年ヴェルディをJ1昇格プレーオフの末、16年ぶりのJ1昇格に導く。同年は千葉もJ1昇格プレーオフ準決勝でヴェルディと対戦したが1-2で敗れ、この時(結果論とはいえ)救われた城福監督に、今度はJ1昇格の夢を砕かれてしまうことになった。

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