登録日:2026/02/15 Sun 20:18:00
更新日:2026/06/10 Wed 10:11:54
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■トート/トト/テゥト
『トート(Thoth)』は
エジプト神話にて語られる叡智の神。
月の神としても知られ、最高神である太陽神ラーの補佐官、太陽と二分する夜の支配者とも考えられたことから“ラーの心臓(言葉)”とも呼ばれている。
文字や言葉を生み出した文化神としての性格も持ち合わせており、それ故に神々の書記官であるともされる。
ちなみに、ギリシャ語表記ではΘωθとなり何か可愛い。
現在までに知られているエジプト神話が、ヘリオポリス神話を基本としつつ
太陽神ラーの下に各地の神話と神々を集約させた形で紹介されている為に、最高神とは考えられていないが、ヘルモポリス神話では
主神にして創造神としての信仰も集めていた。
古代ギリシャでは
ヘルメスと同一視されており、上記のヘルモポリスも実はギリシャ語読みであり、意味合いは
“ヘルメスの都”である。
また、近年の研究では古代エジプトではジェフティ/ジェフゥティと呼ばれていたのではないか?とする説が出されており、耳聡い創作界隈などでも其ちらの名前で知られるようになってきている。
ちなみに歴代ファラオに「トトメス」という即位名の王が数名いるが、この「トト」もトートのことである。
【概要】
トートを示す聖獣(シンボル)は朱鷺と狒々であり、トート自体が其れ等の姿で顕されている場合もあった。
全く異なる二つの姿を持っていたことについては、トートを重要視していたヘルモポリスが、現在知られている下エジプトの他、
実は古代には上エジプトにも存在しており、その二つのヘルモポリスにて其々に同名ながら別の姿と属性の“トート”として信仰されていたのではないか?とも考えられているが故である。
そして、それが後に一つに統合される中で同じ神格(トート)として集約させられたのではないか……?という訳である。
エジプト神話では“獣の頭を持つ神格は同地でも古くから存在していた土着の神様なことが多い”……という事実があることからも、獣の頭部を持つどころか獣そのものの姿をしたトートは、その中でも特に古い世代に属する神格だったのではないかとも考えられている。
後には、他のエジプトの神々と同様に朱鷺の頭部を持つ男神としての姿が定着したようで、書記の女神であるセシャト、または正義を司る女神であるマアトを妻とするとされた。
作例は少ないものの、朱鷺や狒々の他にも犬の頭部を持つ姿で描かれているものもある。
非常に古い歴史を持つ……が故に、そのことが却ってトートを正体不明の神格としてしまっている面もある。
エジプト神話では一つの神格が地域によって別々の誕生神話を持つことは珍しくもないのだが、トートはその中でも特に複数の誕生神話と別々の働きをしている神話が混在している。
また、現在では特に月の神として知られ、実際に朱鷺や狒々の姿で顕わされる時にも新月や満月、月をイメージしたと思われる円盤、或いは三日月を頭上に掲げられた姿で描かれることが多いが、どうやら太陽そのものであると考えられていたラーに対して、トートの月神としての役割は後代になってから獲得した属性であったようである。
【主な神話】
現代に於いてトートの誕生譚とされるものはヘリオポリス神話とヘルモポリス神話に寄るもので、場合によっては其々の系統の中でさえ、全く異なるものが伝えられている。
【ヘリオポリス神話】
世界が出来た時に、自らを石(卵、睡蓮からという説もある。)から生んだとされる。
尚、無理やりに自らを生み出した影響から足が不具になったとしている場合もある。
エジプト神話でも
小ホルスに見られるように“不完全なもの”に聖性を見出す価値観が存在しているため、トートの場合も同じなのかもしれない。
他に、信仰の主体である創造神アトゥムから連なるヘリオポリス九柱神の末弟であるとする説もある。
また、オシリス神話の派生なのかセトが兄オシリスの子である甥の小ホルスに欲情してアーッを迫るが未遂に終わった……ものの、そのことに怒り心頭に達した小ホルスの母にしてセトの姉であるイシスが報復として小ホルスの精液をセトが食べようとしていたレタスに仕込み、
それによって反対に懐妊したセトが激しい頭痛に見舞われて頭を割ってみたところトートが生まれた……とする、色々と時系列を無視した強引な誕生神話もある。
……これは、ラー同様に元々はヘリオポリス神話には存在していなかったトートを、かなり強引な形であっても神話に組み込もうとした結果であろうと思われる。
何れにしても、後に太陽であるラーが後付けなれど九柱神をも越えた存在、空間としての宇宙をも生み出した存在として扱われるようになる中で、トートもまた月神としての属性を獲得させられると共に本来の信仰の主体であった筈の九柱神とは規格外の存在として定着した模様。
前述の(ラーによって)世界が誕生された時に、続いて自らを生んだという構図は古代のオリエントの創造神の誕生譚と共通した構図である。
ラーと共に、既に九柱神とは規格外の存在となっていたトートが月の神、そして時の神としての属性を獲得したのかを描いた物語としては以下の神話がある。
ラーが宇宙を創造した後に、子である創造神アトゥムが世界の形を作り、そこに大気(シュー)と湿気(テフヌト)が満ちて、その二神の交わりから大地(ゲブ)と天空(ヌト)が立ち現れた。
兄妹にして夫妻であった二神は、いよいよ子供となる神々を生み出そうとしたのだが、全知全能のラーはその子らが災いを為すと知っていたので二神に交わることを禁じた。
困ったヌトはトートを頼ると、トートはラーが休息して姿を見せない時間(夜)を支配する月に賭けを持ちかけて勝利して月が管理していた分の時間を自由にする権限を奪った。
トートは太陽暦と太陰暦のズレを利用して5日分の閏日を生み出してヌトとゲブに与えると、二神はその間に励んでオシリス、セト、大ホルス、イシス、ネフティスを生み出したという……。
登場する神々の名前こそ同じものの、一般的に知られている九柱神による創世神話では抱き合ったまま生まれたゲブとヌトがラー、またはアトゥムに引き離された時に世界が形作られたとされているので別バージョンの神話なのが分かる。
また、オシリス神話との関連からか、前述の(オシリスとイシスの子としての)小ホルスが登場してくることが多いヘリオポリス神話な訳だが、こちらでは(ラーの息子である)大ホルスが九柱神の一つとして数えられているという違いがある。
何れにしても、こうして世界が動き始めることとなったが、その手助けをしたトートは継続して自らが月の神、そして時の神としての役割も受け持つようになったのだという。
こうした、ヘリオポリス神話の“月の神”としてのトートは、ラーの従者として昼の船マンジェト、そして夜の船メスケトに乗ってヌト(天空)の体表と胎内を飛ぶとされていた。(日昇と日没、月の満ち欠けのこと)
また、単にトートが元からラーの従者であったとする説もあり、共にマンジェトでの旅をする中でトートの働きを認めたラーがトートに月とメスケトを作ることを許したことでトートは月の神の役割を引き受けることになったという。
……しかし、この役割は後に「ラーがいれば間に合う話じゃね?」……とか思われたか定かではないものの、セトに取られてしまったようである。
【ヘルモポリス神話】
古代オリエント神話にて共通して“宇宙が生み出された”と語られる原初の水である“ヌン”そのものを原初神として扱うヘルモポリス神話では、主神にして創造神とされている。
ヘルモポリス神話にて信仰の主体となるのは、ヘルモポリス八柱神と呼ばれる男女2組の夫婦神で、
数えられているのは“原初の水”のヌンとナウネト/“無限”のフフとハウヘト/“暗闇”のケクとケケクト……に、
“不可視”のアメンとアマウネト/“否定”のニアウとニアウト/“欠乏”のゲレフとゲレフト……の何れかを加えたものである。
多くは、最後の組は“不可視”のアメン(アモン)とアマウネトとされることが多く、後にヘルモポリス神話は勢力を弱めてマイナーな説となってこそいくものの、後にラーと習合して最高神アメン・ラーとなるアメンが入っているということでも興味深い信仰の推移が窺える。
……主神と言いながら「トートの名前が無いじゃないか」とツッコミたくなっただろうが、トートは創造神として、ここでも八柱神を越える別枠扱いである。
ただし、ヘルモポリス神話と同様に宇宙が生み出されると共に存在していて、トート自身が原初の水から八柱神を生み出したとされる場合と、世界を生み出し維持する力は持つ八柱神だが、世界の終焉と共に眠りにはつかねばならず、新たなる世界の再生/新生の為に八柱神を目覚めさせるもの(創造神)として八柱神がトートを生み出した、とする説も存在している。
このように、トートを重要視すると共に独自の創世神話体系を持っていたヘルモポリスな訳なのだが、後にはやっぱりラーの威光を無視できなくなったようで、それが部分的に融和したのが前述のヘリオポリス神話でのトートの姿となっていったのかもしれない。
【文字の神】
古代エジプト文明と云えば……の神聖文字を生み出した存在とされ、文字を司る神としても捉えられている。
故に書記の守護者であり、自身も神々の書記官である。
アヌビスによる死者の裁きの場にも付き従い、この時にはトートが書き記していた、その魂の生前の行いの仔細が述べられるとも、アヌビスが魂の重さを量る際の記録を執るのだとも言われている。
また、新たなファラオが即位した際には、その御名をイシェドと呼ばれる永遠に朽ちない葉に記すのだという。
【言葉の神】
創造神としてのトートは、言葉により万物を生み出したとされる。
前述のように宇宙が生まれた時にトートは自らを出現させ、その後にトートの発した言葉達が自ら存在を身に纏い、そうして世界は形作られたというのである。
こうした特徴はヘリオポリス、ヘルモポリスに続く神学センターであったメンフィス神話の主神プタハ、そしてエジプトにて虜囚とされていたユダヤ民族の神にもパクられた引き継がれた要素である。
ラーを補佐するという役目が出来てからは、ラーが思考により器となる宇宙を生み出し、その中に生じたトートが器の内を満たした=物質世界を生み出した、とも捉えられる構図となっている。
【魔術の神】
前述のようにトートは文字と言葉の神である……よって魔術の神とも捉えられ、エジプト神話……そしてヘレニズムによって古代ローマ帝国でも篤い信仰を集めた魔術の女王イシスの師でもあるという。強引に弟に生ませた息子の子じゃなかったのか……。
寧ろ、魔術の女王としてのイシスはトートの叡智を受け継ぐ存在として、神話によっては祖父であるラーをも脅かしたとする神話も残る。
【文化神】
文字と言葉の神であることから、記録(書記)の他にも数学、天文学、建築、設計…etc.の神ともされた。
ヘリオポリス神話では王権を受け継ぐ存在とされた、オシリスに文化指導をしたのはトートだともされている。
また、オシリス神話にて自分がセトの頭から生まれない場合にセトとの決闘により傷ついた小ホルスを癒やしたのはトートだとされ、そこから医術の神としての信仰まで受けている。
トートの持つ杖にはエジプト人にとっては不吉と捉えられつつも、やはり古代オリエントに共通して不死の象徴としての信仰のある蛇が巻き付いているとされ、このトートの杖から古代ギリシャ人はヘルメスやアスクレピオスの持つカドゥケウスを発想したと考えられている。
【ヘルメス・トリスメギストス】
前述のように古代ギリシャ人はトートとヘルメルを同一視していた。
そして、両者が神智的な合一を果たした存在がヘルメス・トリスメギストス(3倍賢いヘルメス)であり、錬金術士の始祖となる思想上の賢人て中世の魔術の世界に君臨した。
また、ギリシャ神話にて同じく叡智を司る女神アテナも父神ゼウスの頭を割られて誕生したとされていることから、何かしらの関係や影響があったのではないかとも見られている。
【余談】
女神転生シリーズでは『
真・女神転生if...』にて初登場。姿はトキではなくヒヒ。
同作の“裏ルート”とも呼べるアキラ編にて
言葉遊びの『デビルマン』ネタによりパートナーのアキラと“合体”すると共に実質的な主人公となるアモンの仲間として、ハトホル、セベクと共に選択次第で仲魔になる救済枠として登場する。
3体とも、仲魔にするか戦闘に勝利することで悪魔合体も解放される(なので“表ルート”ではお目にかかれない)。
以降は暫く出番が途絶えていたのだが『
真・女神転生SJ』にて再登場。
以降は登場機会にも恵まれるようになっており、一貫して魔神種族が定番化している。ホルスも完全に鳥の姿で描かれながら概ね魔神種族に属するので、同じグループ扱いなのだろう。
共通して最強格の種族として位置づけられている魔神種の中でも最低Lv帯の設定が多い。
なので、魔神としては……といった程度で能力も低Lv相応という扱いながらも、組み合わせさえ把握していれば最低Lvの悪魔同士から最も手軽に合体できる魔神=更に上を目指す際の中継素材としてお世話になることが多い。
『
鬼灯の冷徹』では
鬼灯がエジプト旅行に行くエピソードに登場。何故かアヌビスと一緒にいる事が多い。
追記修正お願いします。
- 書物の神だからジョジョのトト神が漫画本なのか -- ユーリィ (2026-02-16 15:23:32)
- 『鬼灯の冷徹』の第3シーズン来て欲しい、鬼灯様がエジプト旅行に行くエピソードを映像化して欲しいです。トトがどんな感じの声で喋るのかが気になる! -- 名無しさん (2026-02-16 21:00:26)
- ジョジョの『トト神』は外伝にてスタンドじゃなくてホンマモンの神様なんじゃないかって疑惑が…! -- 名無しさん (2026-02-16 21:43:28)
- メガテンだと本読んでるちっこいお猿っぽい感じのお爺ちゃん。ifでハトホルとかと一緒に初出だっけか -- 名無しさん (2026-02-17 14:53:03)
最終更新:2026年06月10日 10:11