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穴の中の獣(クトゥルフ神話)

登録日:2026/07/14 Tue 02:01:39
更新日:2026/08/01 Sat 02:04:06
所要時間:約 4 分で読めます





今その不浄なるものが完全に見えてきた。その不自然な暗黒が私達を捕まえようと上昇するのを見た。わずかに残った正気が、私の脳からはぎ取られていった。それはまだ暗闇にいたが、ひだと恐ろしい数の貪欲な口がついた触手の塊がぼんやりと見えてきた......そして決して人のものではないのどから声が聞こえてきた。

――『The Return of the White Ship: The Quest for Cathuria』より引用


穴の中の獣(英名:Beast in the Pit)クトゥルフ神話に登場するクリーチャーである。
別名:絶望をもたらすもの、不浄なるもの、穴の暗黒に潜む憎悪

穴の中の獣の初出は、1989年のアーサー.W.L.ブリーチ(Arthur William Lloyd Breach)の小説『The Return of the White Ship: The Quest for Cathuria』(訳題:白い帆船の帰還:カトゥリアを求めて)である。
より細かい肉付けがされたのはクトゥルフ神話TRPG(Call of Cthulhu RPG)のサプリメント『ラヴクラフトの幻夢境』(原題:「H.P. Lovecraft's Dreamlands」)である。

■概要

クトゥルフ神話の世界観における夢の世界「ドリームランド(Dreamlands)」に生息するクリーチャーで、西の玄武岩の柱を超えた先にある、全世界の海洋が無の深淵へと流れ落ちる「大瀑布」の暗闇に潜んでいる。
この存在はドリームランドの幻の土地「カトゥリア」の門の守護者とも、カトゥリアを滅ぼそうとする存在であるともされる。穴の中の獣自身の目的は後者と推察されるが、カトゥリアに入ろうとする者がいると出現するため、結果として前者の役割もこなしている。

穴の中の獣は、クトゥルフ神話の存在としては異色ともいえる特徴を持っている。
それは「人類の卑しい欲求や負の感情から生まれ、それらが強まるほどに強くなる」というものである。
通常、クトゥルフ神話の神々や神話的存在は人間の感情や善悪の基準、倫理観が適用できない本質的な恐怖を体現した存在であるとされる中で、このように人間の欲求や感情そのものを体現した存在は稀である。
また、この説明の通り、穴の中の獣は物理的な存在ではないため、物理的な影響や攻撃を受けない(あちらは噛みつきや触手などの物理的な攻撃をしかけてくるが)。魔術の影響は受けるものの、その性質上穴の中の獣はすぐに再生し、その魔術を無力化してしまう。

また、恐ろしい点はこのクリーチャーが日増しに強くなっていることである。カトゥリアの破壊は星辰正しきときまで行われないとされるが、すでにこのクリーチャーの力は非常に強力なものとなっている。
神格でないのにもかかわらず、その力はすでに旧支配者(Great Old Ones)を上回り、アザトースヨグ=ソトースといった外なる神(Outer Gods)に匹敵しうるものになっている。正気度喪失もしっかり1d10/1d100である。
人間の負の感情や卑しい欲求がこの存在に絶えず生命を与える以上、穴の中の獣を傷つけ、無力化するほぼ唯一の方法は「欲望や憎しみ、怒りといった欲求や負の感情を減少させる」ことである。そのため、必然的にこのクリーチャーを無力化し大瀑布の深層に落とせば、人類に理解、平和、調和の新しい時代がもたらされることになる。
しかし、穴の中の獣はクトゥルフ神話の神々同様に不滅であり、人間に卑しい感情が湧き起これば再生し、再び力をつけるといわれている。

■ 外見

ひだと恐ろしい数の貪欲な口がついた触手の塊という、クトゥルフ神話内では比較的オーソドックスな見た目をしている。憎悪や暗黒、不浄を体現したかのような存在とも形容されるほか、触手の1つ1つが竜のようにもみえるようである。
特徴的なのは極めて巨大なこと。大きさが描写されているクトゥルフ神話の神格の中でも巨大であることで知られるクトゥルフを優に超える巨体である。

■カトゥリアとは?

カトゥリア(英名:Cathuria)の初出はH.P.ラヴクラフトの『白い帆船』(原題:The White Ship)。
「今だに人の目に触れざる地、しかし西方にある玄武岩の柱の向こうに広がるという地」として言及され、主人公バザル・エルトンがその地を目指すも、航海は荒れ狂う海と瀑布によって破綻し、結果たどり着くことは叶わなかった。

西の玄武岩の柱を船で通ると見えてくる大瀑布の空中にある穴の先にある。穴からは光が放たれ、その光が船を捕らえてカトゥリアまで導くという。
カトゥリアは「希望の地」と呼ばれ、素晴らしい地である。その素晴らしさと美しさはソナ=ニル(Sona-Nyl)をも上回る。
美しい音楽、豊かな緑と自然、アロエやビャクダンの香りの森林、素晴らしい宮殿と水晶の塔が立ち並ぶ都市、眩しいほどの太陽の光と美しい虹、飲んだ者を無垢な時代まで運ぶ水が流れるナルグ川(時代の川とも呼ばれる)が特徴であるとされる。

大昔、欲望の強い人類から神はこの地を取り除いた。そして、時代が進むにつれ、人類はさらにこの地にふさわしくなくなっていった。そのため、神は人間のこの地への訪問を短時間に制限した。
これによって人類から希望が失われていき、その結果として穴の中の獣が生まれたという。
穴の中の獣がやがてカトゥリアを破壊したとき、人類から希望は永遠に失われることになるといわれている。

■余談

クトゥルフ神話の中でも、ドリームランドはその性質上ファンタジー的な要素が強い地となっている。そのため、寓話や従来より存在する神話をイメージしたであろう要素がところどころに散見される。
穴の中の獣についても、海から現れること、人類の卑しい欲求や負の感情の化身であることなどから、海外では「黙示録の獣」と結びつける考察が存在している。

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最終更新:2026年08月01日 02:04