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威風堂々(楽曲)

登録日:2025/08/25 Tue 01:38:16
更新日:2026/08/25 Tue 07:25:55NEW!
所要時間:約 6 分で読めます






「威風堂々」とは、イギリスの作曲家エドワード・エルガーによって作曲された5つの行進曲であり、彼の代表作の1つである。作品番号は39番。




概要



エルガー本人の手によって作られた管弦楽の行進曲であり、どの曲も1曲あたり5~6分ほどで構成されている。
第1番・第2番が1901年に作成され、その後第3番が1905年、第4番が1907年、そして第5番が一気に年が飛んで1930年に作曲される、という風に、いっぺんにではなく小出しに出す形で発表がなされた。

第1番の知名度は特に高く、聞いた事があるという人も少なくないだろう。
事実、この曲は初演であるロンドンのプロムナード・コンサートで2度もアンコールが行われるという盛況ぶりになっている。

また、第1番の中でもとくに有名なパートとされている中間部には別途アーサー・クリストファー・ベンソンによって歌詞が付けられ、1902年に「希望と栄光の国」と言う独立した曲として「イギリスの第2の国歌」的な立ち位置になっている。

日本でも卒業式などの式典の場や使用されるほか、平原綾香が歌詞付きでカバーを行ったり、アニメ「あたしンち」のエンディング「来て来てあたしンち」が、この曲の展開部・中間部をメロディに使用している。*1


その他、ファンタジア2000では第1番から第4番を挿入曲として織り込んだ「威風堂々」のパートが存在している。



曲名について


原題は「Pomp and Circumstance」で、この言葉を直訳すると「華やかさと物々しさ」と言う意味になる。
これを意訳する形で日本語で表現したのが「威風堂々」となる訳だが、このフレーズはシェイクスピアの四大悲劇の1つである「オセロ」の中で用いられるものになっている。

「引用元が悲劇…?」と言う部分に引っかかった人もいるかもしれないが、実はこのフレーズが使用されている箇所を抜き出すと以下のようになる。


Farewell the neighing steed and the shrill trump,
The spirit-stirring drum, the ear-piercing fife,
The royal banner, and all quality,
Pride, pomp, and circumstance of grorious of war !

和訳
さらば、いななく軍馬よ、甲高いラッパの音色よ、
魂を奮い立たせる太鼓の音色よ、耳をつんざく横笛の響きよ、
王者の軍旗、そしてあらゆる威容よ、
そして栄光ある戦いの誇り、華麗さ、そして威厳よ


こうしてみると分かるが、原作である「オセロ」ではこの曲の題目として挙げている「pomp, and circumstance」を決別の対象として否定的に記載している。

それもそのはず、何故ならこの部分は「オセロ」の第3幕第3場のセリフで、主人公のオセロが謀略によって「自分の妻が不貞を働いている」と勘違いし、嫉妬に狂うシーンで発せられたもの。
その為セリフそのものも否定的な場面でのものになっている。

セリフの一部分だけを切り取って訳している関係で、周囲の意味が見えなくなっているが、
実際に上記のような命名の経緯を辿ると、また違った印象を抱いた人もいるかもしれない。


各曲について

続いて、威風堂々を構成するそれぞれの曲について簡単に記載する。
第1番がとくに有名だが、それ以外の曲についても華やかさや勇敢さなど、それぞれ行進曲として異なる性格を見せつつ美しい曲になっている。


第1番 ニ長調


前述の通り最も知名度の高い曲であり、行進曲らしく勇壮な曲調で始まり、2つの主題を経が展開されていく。
その後、ゆったりとした雰囲気の中間部のトリオの箇所に移るが、このパートが特に知名度の高い部分になっている。
その後は展開部分のパートと中間部のパートを繰り返す形で再度曲が展開されていく。


第2番 イ短調

第1番と同じタイミングで作成・発表された曲で、力強い始まりを見せたかと思うと、そこから一度音を弱め、再度少しずつ引き上げていく形で緩急をつけたテーマを展開、その後中間部のホルンが織りなす悲哀のあるトリオを経ながら、再度助走部分が勇ましく展開される。

第1番と比べると、敵陣に攻め込む際の軍歌の様な雰囲気を纏っているのが特徴になっている。


第3番 ハ短調

第2番に輪をかけて軍歌的な特徴が強まっており、それまでの2曲と異なり、静かな始まり方をするのだが、その後こちらに軍隊が近づいてくるかの如く音圧が徐々に上がっていき、厳然とした主題が展開されていくのが特徴。

途中で一度、穏やかさを纏った中間部が挟まれた後に、再度軍歌然とした展開に切り替わっていく流れになっており、単純な曲調の激しさは他の「威風堂々」よりも高いと言える。


第4番 ト長調

第1番以外では比較的知名度の高い曲で、単純な曲の華やかさでは第1番にも全く引けを取らない。
また、本曲は第1番共々「時計仕掛けのオレンジ」の挿入曲にもなっている。

ファンファーレの様な華やかな始まり方の後に中間部に入っていくのだが、この部分は第1番の中間部と良く似たゆったりとした内容のテーマが展開されていく為、「第1番が好き」と言う人はぜひ聞いてみて欲しい。

第1番から第4番は比較的作曲された時期が近いが、曲のイメージが近いもの同士でペア組みとするとしたら、第1番と第4番、第2番と第3番、と言う具合になる。


第5番 ハ長調

前4曲はエルガーが40代半ばから50代になるまでの期間に作成されたが、本曲は一転して、晩年に作成されたものとなる。
雄大かつ豪華な雰囲気を纏いながら始まるが、中間部はそれまでの雰囲気から一転して寂しさを感じさせるトリオが展開されており、この部分が人気の高いパートになっている。



第6番について

さて、ここまで各曲について触れてきたが、実は「威風堂々」には第6番が存在している。

「冒頭で『5つの行進曲』って言ったじゃん。」と思った人もいるかもしれないが、エルガーが生前発表したのは上述の通り第5番までになっている。

と言うのも、エルガー本人は1934年に亡くなっているのだが、第6番は元々は未完成の状態の楽譜スケッチが死後に見つかり、その後それらを主要部とした上でイングランドの作曲家アンソニー・ペインによる補筆がなされ、2006年に完成版が作成された。*2

出来上がったのが21世紀に入ってからで、第5番発表から70年以上も経った後の事である事から「『威風堂々』が第5番まである事は知っていても本曲の存在は知らない」と言う人も少なからずいるだろう。


第6番 ト短調

他の5曲が5~6分で構成されているのに対し、本曲は8分とやや長い。
他の曲に比べてメランコリックでうっすらと異国情緒を感じられる曲風が全体を支配しつつ、その中でも行進曲らしい格式を持ったパートが展開されていく。

曲全体の内、アンソニー・ペインが補筆を行ったのは4割程度であり、補筆するにあたり、俳優の様にエルガーに「なる」事を強く意識して作業に取り掛かったと述べている。


余談


  • 作曲者であるエルガーは、楽器商の父のもとで生まれており、幼いころから音楽に触れる機会は多かったものの、作曲家としては長い間中々成功が出来ずにいた。
    その状態から「エニグマ変奏曲」の発表で一気に人気が高まり、その後「威風堂々」の発表によって、地位を不動のものとしていくこととなった。

  • 第6番の補筆を行ったアンソニー・ペインだが、実は他にも生前未完成であったエルガーの「交響曲第3番」の草稿にも補筆を行っており、1998年に完成させている。

  • 1990年代にNHK教育で放送されていた音楽ファンタジーゆめでも取り上げられている。
    アニメーションの内容としては、宇宙船の事故でタコ型の住民の住む惑星に墜落したイカ型の宇宙人が、タコたちの協力を得て再び宇宙へと帰る、というもの。
    緩急のある曲調に合わせて展開される物語により、とても心に残る短編となっている。あとタコたちの技術力がかなり高いのに驚愕する



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最終更新:2026年08月25日 07:25

*1 アニメでの曲のクレジットも「作曲:エルガー(「威風堂々」より)」となっている。

*2 なお本曲初演は2006年8月2日に行われたが、この日は補筆者のアンソニー・ペインの70歳の誕生日となっている。