時計じかけのオレンジ

登録日:2011/07/11 Mon 21:11:09
更新日:2025/03/26 Wed 12:40:05
所要時間:約 4 分で読めます


タグ一覧
1971年 DQN R15+ おっぱい つけまつげ みんなのトラウマ アンソニー・バージェス イギリス ウォルター・カーロス オッパイ オレンジ カリギュラ カルト映画 シンセ スタンリー・キューブリック ダメな大人の万国博覧会 ダークナイト ダーティハリー ナッドサッド言葉 バイオレンス ファシズム ベートーヴェン マルコム・マクダウェル リア充鑑賞推奨映画 ルドヴィコ療法 レイプ ロンドン 不朽の名作 不道徳 世紀末 予言 予言書 余韻 傑作 傑作or問題作 元祖オヤジ狩り映画 名作 問題作 地獄への道は善意で舗装されている 映画 映画秘宝 時計じかけのオレンジ 暴力 洋画 洗脳 海外小説 海外文学 爆弾じかけのオレンジ 牛乳 狂気 町山智浩 社会風刺 神作? 神映画? 管理社会 腐敗 薔薇の葬列 衝撃のラスト 警鐘 超問題作 近未来 難読 雨に唄えば 風刺映画 麻薬



レープと超暴力とベートーベンだけに
すべてのエネルギーを費やす
恐るべき若者たち!



『時計じかけのオレンジ(原題 A CLOCKWORK ORANGE)』は1971年公開の映画。
アンソニー・バージェスの同名原作小説を下地に制作され、監督・脚本・制作は『フルメタル・ジャケット』や『2001年宇宙の旅』のスタンリー・キューブリック。主演は『カリギュラ』、『ブルー・サンダー』のマルコム・マクダウェル。

退廃し、全体主義国家となった近未来のイギリス・ロンドンの街を舞台に、当時はまだ無名だったマルコム・マクダウェルが主人公アレックス・デラージを怪演し大きな話題を呼んだ。
また本作では、英語とロシア語のスラングを合わせたナッドサット(作中における若者言葉)があちこちで話されている。
ちなみに映画『ダークナイト』ジョーカーを演じたヒース・レジャーは、本作の原作小説と映画を共に参考にして役作りをしたという。

半世紀が過ぎても尚も余りに過激なテーマと内容に驚く人もいるが、アカデミー賞では作品賞をはじめ4部門にノミネートされている。


【あらすじ】

近未来のイギリス・ロンドン。
不良グループを率いる15歳の少年アレックス・デラージはコロヴァ・ミルク・バーで仲間のジョージー、ディム、ピート達と共に麻薬入りミルク(モロコ・プラス)を飲みながら超暴力(アルトラ)思案(ラズードックス)を巡らせていた。
その後、彼らは外に出かけ酔っ払いのホームレスを袋叩きにし、敵対する集団ビリー・ボーイ一派が少女を押し倒す寸前の所で乱入し、大乱闘を起こし全員叩きのめす。興奮冷めきらぬ彼等仲間(ドルーグ)は盗難車で爆走し、郊外に向かう。とある作家の家にサプライズ訪問(※奇襲強盗)し、作家を暴行して作家の妻をレイプ(フィリー)する。
その後コロヴァ・ミルク・バーに戻る一行だったが、突如アレックスが仲間の一人に制裁(トルチョック)を加えた事で仲間内に亀裂が生じ始めていた。

やがてその事が、アレックス自身の人生を少しずつ狂わせつつあった……



【登場人物】


  • アレキサンダー・デラージ(演:マルコム・マクダウェル)
通称アレックス。本作の語り部にしてドルーグのリーダーを務めるDQN。車の運転もできる15歳。
リーダーだけあって頭も切れて喧嘩も強く、しかもイケメンでナンパの成功確率も高い無軌道不良少年。彼が統率するドルーグは全員が黒いハットに全身白ずくめの奇抜な服装(エドワード7世時代風)をしている。武器は両刃ナイフの仕込みステッキ。ベートヴェンの交響曲第9番を好む。
しかし、物語の後半からそれが仇となる……

  • ジョージー(演:ジェームズ・マーカス)
ドルーグのメンバー。離反を企むDQN。無愛想で目付きが悪い。上記のものと思われるステッキを所持。後にディムと共に警察官へ就職する。

  • ディム(演:ウォーレン・クラーク)
同じくドルーグのメンバー。陽気なお調子者のDQNでややピザ。こいつだけ何故か武器が鎖。アレックスから頻繁に制裁のトルチョック(殴打)を受けたり海に落とされたりと結構酷い目に遭う。

  • ピート(演:マイケル・ターン)
同じくドry 台詞が一度しか無い。ステッキ所持。唯一のベレー帽。殆ど空気。
尚、原作完全版*1の最終章ではエピローグの時点で家庭を持ち暴力から引退しており、一人だけ合法的に暴力を振るえる警官になっていなかったのはこの為。
そして、この時には新しいチームを率いていたアレックスだが、ピートとの再会を機に、自らも家庭を持ち引退を決意するという展開となっており、全ては“若気の至り”であったと自分なりの決着を付けてしまうという、ある意味では世間をも巻き込んだ無軌道少年としては平凡な、物語の余韻を奪いかねない結末となっているのがカットの原因かもしれない。
何れにせよ、極めて邪悪な予感が残る映画のエンディングだが、原作通りならはアレックスは一年後には普通の人間になるということになる。

  • ビリー・ボーイ(演:リチャード・コンノート)
ピザその2。メンバーはナチス親衛隊をイメージしたかの様な衣装と制帽を被っているDQN。アレックス達にジャックナイフで挑むが、返り討ちに合い全員即退場となる。

  • 作家夫妻(演:パトリック・マギー、エイドリアン・コリ)
郊外の屋敷に二人で住んでいる初老の男性と美人の若妻の夫妻。アレックス達の超暴力(アルトラ)の標的になってしまい妻は夫の目の前でレイプされてしまう。

後年、夫*2は洗脳実験の末に精神が壊れると共に全てを失ってボロボロの状態となって来訪したアレックスを助け、当初は自身が追及しようとしていた政府主導の人権を無視した洗脳実験の被害者として保護しつつ利用しようとした。
……のだが、そのアレックスが呑気に風呂で歌っていた「雨に唄えば」から、アレックスこそがあの日のレイプ犯だと気づき、仲間との政府の追及計画を反故にしてまで復讐することを決意。アレックスの証言通りにトラウマを植え付けられた『第9』を利用して自殺未遂にまで追い込んだ。

アレックスがミュージカルソング「雨に唄えば」を歌いながら妻をレイプするシーンはこの映画を象徴する有名なシーン。

  • デラージ夫妻(演:フィリップ・ストーン、シェイラ・レイナー)
アレックスの両親。共働きで家にはあまりいない。アレックスが深夜徘徊をしているのを怪しんでいるが深入りするのを恐れて真相を知れずにいる等、公開当時から問題になっていた親子間の干渉の少なさを皮肉った描写が多い。
更に後半ではアレックスに対し……


【ルドヴィコ療法】

作中でアレックスに施された治療法。
そのやり方は
  1. 拘束衣で一切身動きできない状態にし、さらに瞬きすらもできないように瞼を固定(目が乾かないように点眼は注される)
  2. 残虐な映像を延々と見続けさせる(この映像のBGMは奇しくもアレックスが好きな『第9』)
  3. さらに投薬により吐き気や嫌悪感を催させ、残虐性や暴力性に対し拒絶反応を引き起こすよう「連係」させる
というもの。(上述の「人権を無視した洗脳実験」というのは大体合ってる)
映画を見たことがなくとも、「なんか似たようなの見たことある」と思う人もおられるだろう。
「雨に唄えば」を歌いながらのレイプシーンも象徴的な本作だが、こちらもまた象徴的なシーンと言える。

仲間の裏切りで収監された後に、早く娑婆に戻るためにこの人格矯正プログラムに参加したアレックスは、生来のものとも思われる暴力性を矯正するためにこの“大好きな『第9』が流される中で、アレックスですら嫌悪を催す人類の負の歴史と暴力の記録映像を強制的に見せ続けられるプログラム”を施され、確かに暴力(それに『第9』)に嫌悪感を抱くようにはなったが、半ば廃人となってしまった。


【余談】

劇中で印象的に使われる「雨に唄えば」だがこれはマルコム・マクダウェルがそらで歌える歌がこれしかなかったために採用された。しかし「雨に唄えば」で監督・主演を務めたジーン・ケリーは本作に使われていたことに大変憤慨していたという。……強姦シーンで使われたならそりゃ憤慨するのも無理ない話である。

マルコム・マクダウェルは一貫してアレックス役を演じきれたが、案の定波乱塗れであった。アレックスが更生プログラムの一環として瞼を固定されて映画を見せられるシーンがあるが、このシーンの撮影中に失明しかけたと言われている。
他にも後半のリンチを受けるシーンで危うく窒息しかける……上記「雨に唄えば」監督に拒絶される……やたら暴力的な配役に注文が来る……など。しかし最終的には本作で主演できたことに感謝してると発言していた。

映画ではカットされているが、前述のピートの項に記した様に、本来の原作では復活したにもかかわらず結局は普通の大人となることを決意するという、アレックスのその後が描かれている。
原作者はその部分まで描いて欲しかったらしいが、米国での出版及び、映画の監督を務めたキューブリックは蛇足だと判断してカットしてしまったために原作者が裁判を起こす事態となった。
……原作のままならば、最高潮まで盛り上げた物語の意味を無くしてしまうような展開であることも確かではあるが。

本作が公開後にイギリス国内ではアレックス達の扮装を真似したり、ホームレスへの暴行事件が多発したという。その為、この映画は暴力を誘発する作品であるという意見もある。
キューブリック監督の元には大量の誹謗中傷や抗議文が集まり、各地の映画館でも上映中止を呼び掛けるデモまで起きた始末。(最終的にイギリス全土とアイルランドで上映中止になった。 監督の死後 となった1999年まで)
原作者は映画における改変と社会的影響力の大きさに晩年に至るまで悩まされ、「こんなことになるならあんな小説書かなければよかった」とまで発言している。

日本の作品である『HiGH&LOW』ではアレックス達をモチーフにした「White Rascals」というチームが登場しており、白ずくめの衣装やステッキといった共通点を持っている。
ただし、あちらは男に傷つけられた女達を守ることをモットーとしたフェミニストであり、平気で女をレイプするアレックス達とは正反対な集団と言える。


あと、語感は似ているが機械じかけのオレンジとは全くの無関係である。




追記・修正は交響曲第9番を聴きながらお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 映画
  • 洋画
  • スタンリー・キューブリック
  • マルコム・マクダウェル
  • イギリス
  • ロンドン
  • 近未来
  • バイオレンス
  • レイプ
  • 世紀末
  • ファシズム
  • 狂気
  • 腐敗
  • 暴力
  • 洗脳
  • DQN
  • 麻薬
  • 不道徳
  • 牛乳
  • ナッドサッド言葉
  • 名作
  • 傑作
  • 問題作
  • ベートーヴェン
  • シンセ
  • 余韻
  • 不朽の名作
  • 衝撃のラスト
  • 元祖オヤジ狩り映画
  • 時計じかけのオレンジ
  • オレンジ
  • 爆弾じかけのオレンジ
  • ルドヴィコ療法
  • おっぱい
  • オッパイ
  • 地獄への道は善意で舗装されている
  • 傑作or問題作
  • 雨に唄えば
  • R15+
  • 風刺映画
  • 神映画?
  • 神作?
  • ダメな大人の万国博覧会
  • リア充鑑賞推奨映画
  • 超問題作
  • ダークナイト
  • ダーティハリー
  • カリギュラ
  • 映画秘宝
  • 1971年
  • 町山智浩
  • アンソニー・バージェス
  • 予言
  • 予言書
  • カルト映画
  • 社会風刺
  • 海外文学
  • 難読
  • 海外小説
  • みんなのトラウマ
  • 薔薇の葬列
  • ウォルター・カーロス
  • つけまつげ
  • 管理社会
  • 警鐘
最終更新:2025年03月26日 12:40

*1 最初に米国で出版された際には本来の最終章である21章がカットされてしまっており、映画もその不完全版を元に撮影されていた。日本では1980年のバージェス全集2には収録されていたが、08年に早川書房から完全版と称して完全な翻訳版が発売されている。

*2 ちなみに妻は事件後に自殺。自身も暴行されたことにより下半身不随に