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SCP-3060-JP

登録日:2026/09/12 Sat 22:22:19
更新日:2026/09/15 Tue 13:02:25
所要時間:約 14 分で読めます




SCP-3060-JPとは、創作コミュニティサイト『SCP Foundation』に登場するオブジェクトの一つである。
オブジェクトクラスSafe

この記事は、アンソロジー「始のいろは」に属する記事である。
「始のいろは」とは、数十人のSCP著者によって実行されたアンソロジー企画。
参加者には担当するひらがな1文字が指定され、そのひらがなから始まる単語をテーマにした記事が書かれた。
そして、それらの記事が、いろは順に毎日連続投稿されたのだ。
記事のメタタイトルは"◯"は「◯◯」の"◯"といった形式で統一された。
つまり、"い"は「異性/異星」の"い""ろ"は「労働」の"ろ""は"は「映え」の"は"……といった具合にSCPが投稿されていったのである。

この記事の担当はであり、
メタタイトルは「"へ"は「変死体」の"へ"」。

概要

SCP-3060-JPは20██/██/█に自殺した真桑友梨佳氏の死体
お気づきの方もいらっしゃるだろうが、この記事は、自殺した真桑友梨佳氏の死体について扱う連作「コウプス・コウパス」に属する記事である。

さて、この真桑友梨佳は、背面全体に火傷痕がある
また、その他の外見的特徴も、腐敗しつつあるヒトの死体そのものだ。
ただし、この死体の匂いは、腐敗臭ではなくいい匂いである。
記事中では、「柑橘類および酵母類に類似した芳香」とされている。
しかも、これを加熱した場合、より強い芳香となる。
死因的な意味でも、異常性があるという意味でも、「変死体」だといえるだろう。

そして、この真桑友梨佳の死体を料理に加えると、料理がとても美味しくなる。
ただし料理の成分には変化がないという。

SCP-3060-JPの異常性はこれだけだと考えられている。
毒性も依存性もない、単に美味しさをもたらすだけの死体であるようだ。

発見経緯

さて、この真桑友梨佳氏だが、死亡当時5歳であった。5歳で自殺を!?

真桑友梨佳ちゃんは、居住していた北海道██市のアパートでの火災により死亡した。
室内に設置されていた監視カメラ(←!?)には、「蓋の開いた灯油用のポリタンクを倒しライターで着火する」という自殺プロセスが記録されていたという。

火災現場では、SCP-3060-JPの異常性により、強い芳香が発生していた。
消防士は、この香りの発生源をたどって真桑友梨佳ちゃんを救出。
が、まもなく死亡が確認された。死因は重度のやけどらしい。

この死体だが、なんと左の薬指と小指が切断されていた
断面の状態からは判断すると、火災より前に切断されていたことになるという。

そして、周囲の住民からの聞き取り調査の結果、
友梨佳ちゃんの母親である真桑柳子氏 (25) が虐待を行っていたかもしれないという証言が得られた
更に、真桑宅の流し台からは、友梨佳ちゃんの血液反応が検出されていたという。
柳子氏は所在不明であり、財団は行方を捜索中。

……すでに十分な嫌な予感はするが、これだけではない。
友梨佳ちゃんの父親である羽黒隼人氏 (32)は、当時東京都にいたことが証明されている。
よって、この自殺に対する隼人氏の直接の関与は無い、と財団は記している。
……「父親」とは書いてあるが、柳子氏とは今も昔も結婚していないし、娘を認知していないという。
柳子氏は婚姻関係にないない相手の子を産んだことになるが……

……さて、こういう経緯で収容された友梨佳ちゃんだが、この1か月後、友梨佳ちゃんを収容していた財団のサイトが襲撃に遭う。

サイト襲撃

SCP-3060-JPを収用していたサイト-81K6が複数人による襲撃を受け、敷地面積の5%が壊滅した。
被害は大きいといえるが、対処には成功したようだ。

そして、襲撃者のうち、「イェンロン料理研究会」所属である金田喜久雄氏を尋問することに。
イェンロン料理研究会とは、「味は命より重い」をモットーとして美食を追求する要注意団体であり、時には非食品やSCPオブジェクトも料理に使う。
尋問の結果、
  • SCP-3060-JPの奪取が襲撃目的であることと
  • 真桑柳子はイェンロン料理研究会に所属する料理人であり、かつて友梨佳ちゃんの体組織を料理に使用していたこと
が判明した。
この母親、娘の異常性を知っていたようである。

さて、以下に、金田氏への詳細なインタビューの記録を載せる。
ちなみにこいつ、情報の提供と引き換えに、SCP-3060-JPを使用した料理の提供を求めたという。
財団は、真桑柳子氏が使っていた体組織とSCP-3060-JPの香りが同一かどうかを特定できるのがメリットと考え、取引に応じた。
確保された要注意団体メンバーへの司法取引みたいなものだろうか。


[記録開始]

インタビュアー: ではインタビューを開始いたします。まず、あなたの襲撃の目的を教えてください。

金田氏: もちろん、貴方がたが保有している"フィーユ"を手に入れるためですよ。

インタビュアー: "フィーユ"とは柳子さんが使用していた独自の調味料ということでしたね。しかし何故このサイトに襲撃を?

金田氏: 隠しても無駄ですよ。私は鼻が良いのです。あのかぐわしい香り、このサイトの外まで漂ってきましたからね。

イェンロン料理研究会には凄腕の料理人が多い。おそらく本当に鼻がいいのだろう。

インタビュアー: そうですか。収容の参考にさせていただきます。さて"フィーユ"について詳しく伺う前に、まずは真桑柳子氏についてお話を聞かせてください。

金田氏: 柳子さんと言えばここ数年前から裏社会でちょっとした話題になっている料理人です。まぁ私に言わせてもらえれば実力が伴っていない料理人気取りの小娘ですがね。"フィーユ"を使って多くのコンペで賞を取ったりセレブに売り込んで稼いだりしていました。

インタビュアー: なるほど。それでは"フィーユ"とはどのような食材なのでしょうか。

金田氏: 貴方がたもご存知の通り、彼女の娘とされています。彼女は娘を原料にした食材を使っていたんです。皮膚やら髪を粉末状に加工してね。おそらくそれを知っていたのは何人かの事情通だけだったのでしょうが、最近ではまぁまぁ知られるようになってきていますね。

やっぱりこの母親、娘の体の一部を料理に使っていたようだ。
ただ、皮膚や髪といった部位なのはまだマシかもしれない。

インタビュアー: あなたは"フィーユ"を食べたことが?

金田氏: ありません。彼女は大事な場面でしかそれを使いませんでしたから。私はとあるコンペで匂いを嗅いだことがあるだけです。そのコンペは審査員数名が料理を評価する大会で、彼女は温製のヴィシソワーズに"フィーユ"を入れて提出し優勝しました。一参加者であった私は味を見ることは叶いませんでしたが、会場一面に広がった芳醇な香りはしっかりとこの鼻が覚えています。

インタビュアー: わかりました。それではその時嗅いだ匂い、つまり柳子氏が使用した"フィーユ"が我々が確保した遺体と同一かどうかを確認したいのですが。

(職員が味噌汁の入った椀を3つ持って入室する)

インタビュアー: この中に一つだけ遺体の皮膚片(注: 0.050g)を入れてあります。

金田氏: もう蓋を開ける前から漂ってきますね。この右のお椀に入っているのがそうだ。当たっているでしょう?

インタビュアー: 確かにそうです。味噌汁とヴィシソワーズの違いはあるでしょうが、あなたが知っている匂いと同一ですか?

金田氏: 先ほども言った通り、私は鼻には自信があります。間違いありません。柳子さんの"フィーユ"はこの匂いでした。いや、厳密には少し熟成度合が違っていますかね。

金田氏の嗅覚は本物のようだ。
しかし、人体由来の食品と知ってなお超肯定的感想なのは、さすがイェンロン料理研究会といったところか。

インタビュアー: ありがとうございます。柳子氏が娘を食材にしたというのは間違いなさそうですね。しかしなぜ彼女は実の娘をそんな目に合わせたんでしょうか。

金田氏: さあてね。ですが彼女が"フィーユ"を手にする前は全くの鳴かず飛ばずでしたから、娘のことを気にする余裕はなかったでしょう。娘に当たってすらいたかもしれません。そんな中この絶大な魔力を手に入れてしまったら、娘に対する愛情なんて消し飛んだでしょうね。私だって今この匂いを前にして、すべてを投げ捨ていったいどれほどの味なのか確かめてみたくてしょうがない。もう飲んでもよろしいでしょうか?

インタビュアー: もう少し質問にお答えください。なぜ柳子氏の娘がそのような異常性を持つに至ったのでしょうか。

金田氏: それが分かっていたなら我々も同じことをしますよ。料理って言うのは宇宙なんです。一つの味を作るのに材料、処理、保存、環境、調理方法、数多の要素が関わってきます。だから彼女と夫の遺伝子や生育状況などが奇跡的に絡まった結果、出来上がった至高の食材が"フィーユ"なのだと私は思っています。わかっていますか?貴方がたはその奇跡を独占しようとしているのですよ。

インタビュアー: そうですね。

金田氏: アルウマスキャビアやホワイトトリュフなど足元にも及ばない希少で美味な食材を、貴方がたは独り占めしようとしている。これは料理界にとって大きな損失です。私には許せません。そう思っているのはおそらく私だけではないでしょうね。それに味を知らない輩たちでも、"フィーユ"が大金を産み出すことはわかる。気を付けた方がいいでしょう。

インタビュアー: 脅しですか?

金田氏: 忠告ですよ。

"フィーユ"は希少な「食材」だという。
監視カメラを室内に設置していたのも、襲撃に備えてだったのだろうか?

さて、ここから、インタビュアー母親の柳子氏について問う。

インタビュアー: 質問を続けます。柳子さんの行方はご存じですか?

金田氏: あれ、てっきり貴方がたに捕まっているのかと思ったのですが。ははぁ、それでしたら奴らに捕まったかな。うん、そうだ、それなら納得がいく。

インタビュアー: 一人で納得していないで話してください。

金田氏: いえね、少し前に彼女ヤクザを怒らしちゃったんですよ。何があったかと言いますと、彼女は当時大きな後ろ盾を求めていました。その頃は"フィーユ"の正体が知られていませんでしたから、彼女はある種守られてはいました。

インタビュアー: 下手に手を出して"フィーユ"が失われることを警戒していたわけですね。

金田氏: その通りです。ただまあ正体がいつかバレたらと思うと不安ではあったでしょうね。ですから彼女は有村組というヤクザとコネを作ろうとしたんです。

「有村組」とは、ここでは「超常的な社会(=SCPオブジェクトとかが流通しまくってるような、財団が介入できない/あえてしないような社会)で活動しているヤクザ」程度に理解しておけば問題ないだろう。

金田氏: "フィーユ"を使った料理を提供する代わりに彼女と"フィーユ"を守ってもらおうとした。それで実際に有村組の幹部に"フィーユ"を食べてもらう運びとなったんですが、ここは勝負所だと彼女は娘の指を丸ごと出しちゃったそうです。

インタビュアー: 確かに遺体の小指は切断されていました。

金田氏: あれはかなり強い材料ですから、調味料としてはなぐすり程度に足すのがいいに決まっています。まあその程度もわからない奴だったんですよ彼女は。結果ひどい味で、ヤクザさんはカンカン。彼女はなんやかんやで多額の借金を背負わされてしまい、実質的に有村組に飼い殺しにされる形となってしまいました。

インタビュアー: なるほど。

なるほど、この母は「美味だが、少量で十分な食材」を入れすぎて失敗したのだ。
借金を返すには、娘を適切な量だけ使った料理を作りまくるしかないだろう。
だた、おそらくはこの直後に、娘は自殺してしまったが……?

金田氏: ところが今回貴方たちに"フィーユ"が確保されちゃったでしょ?つまり彼女には借金を返すあてがなくなってしまったわけで。自身の食い扶持である料理も娘がいなければ素人に毛が生えた程度ですからね。そうなるとどうなるか。逃げるのも難しいでしょう、ああいった類は監視つけてるでしょうし。ですからおそらく彼女は今頃有村組に捕まってるんじゃないかと思った次第です。まあ私が推測できるのはここまでです。どうやって借金を返すのかは知りたくもないですね。風呂に沈められるか、もしくは──

インタビュアー: もしくは?

金田氏: 彼女自身を材料にするか。

金田氏: さ、これで私が知っていることは全て話しましたよ。味噌汁をいただいても構いませんかね?

(インタビュアーは記録を確認し、SCP-3060-JP研究担当者と連絡をとる)

インタビュアー: わかりました。どうぞお飲みください。ただし追加はありませんので。

金田氏: ありがとうございます。 (椀の蓋を開ける) おお、この上等な赤味噌の香りに加えゆずともかぼすとも違う柑橘の匂い。もうたまりませんね。それでは早速。 (味噌汁を啜る) うむ、美味しい。ああ間違いなく私がこれまで飲んできた味噌汁の中で一番です。芳醇な香りに負けず味も──

[以下、重要性が低いため省略]

[記録終了]

……まとめると、母親の柳子氏は、娘の友梨佳ちゃん(フィーユ)の皮膚とかを料理に使っていた。
友梨佳ちゃんの体組織を入れた料理は美味しくなるので、これらの料理は高評価を得ていた。
だが、ヤクザに料理をふるまう際、張り切って友梨佳ちゃんの指を料理に使った。
これはやりすぎであり、ヤクザの怒りを買う。
結果として、母親は、おそらくヤクザに捕まっているのではないか?ということだ。

ちなみに、これ以降、主に食事に関連する複数の要注意団体から、SCP-3060-JPを独占していることに対する抗議や襲撃が断続的に発生しているという。
これにより拘束された襲撃者は、なんと100人を超えているそうだ。
それほど友梨佳ちゃんの体組織が美味しかったということだろう。
(おそらく)これを理由として、現在、SCP-3060-JPは対要注意団体に特化した確保施設「エリア-81JH」に収容されている。



補遺

さて、ある日財団は、有村組(例のヤクザ)の拠点を襲撃した。
その際、「"フィーユ"(=友梨佳ちゃん)の模倣」を謳う物品が見つかった
これらは粉末・ペースト・液状に加工されており、
良い匂いや、食べ物に加えると美味しくなるという異常性を持っている。
確かにこれは友梨佳ちゃんの異常性に似ているが、友梨佳ちゃん本人のものよりは風味が劣るらしい。

唯一加工されていない「フィーユの模倣」として、右の薬指が発見されたが、
これは3~5歳程度の男児の死体のものであった。
そして、「フィーユの模倣」をDNA鑑定したところ、
このDNAは、友梨佳ちゃん本人ではないが、友梨佳ちゃんと兄弟姉妹のものである可能性が高かった。

更に調査がなされたところ、友梨佳ちゃんの父親である羽黒隼人氏 (41) が数年前から行方不明になっていることが判明
(隼人氏の年齢より、友梨佳ちゃんの自殺から9年経っていることがわかる)
ちなみに隼人氏の妻など周囲の人間の証言から、自発的に失踪する動機がないことが判明していることから、
財団は、隼人氏が誘拐されたと推測している。

そして、模倣品が発見される数年前から、SCP-3060-JPを目的としたサイトへの襲撃件数が著しく減少している。
かつては100人もの拘束者を出したのにもかかわらず、である。
また、有村組を含む複数の要注意団体を襲撃した際、その拠点から模倣品が発見されているが、
その内容や量は、SCP-3060-JP4体分ほどのものである。


……報告書はここで終了しているが、このことから推測が可能である。
カギとなるのは、
  • 「フィーユの模倣」が友梨佳ちゃんの兄弟姉妹であるということ
  • 友梨佳ちゃんの母親はもちろん、父親も行方不明になっていること
  • インタビューを受けていた金田氏の「彼女と夫の遺伝子や生育状況などが奇跡的に絡まった結果、出来上がった至高の食材が"フィーユ"なのだと私は思っています」という発言
だといえるだろう。

さて、至高の食材"フィーユ"は、多くの要注意団体らが欲しがっている人間だ。
しかし、財団の施設に確保されているのだから、奪い取るのは簡単ではないだろう。
奪い取るのが難しいなら、新たに作ればいいという発想になってもおかしくない

もし例のヤクザらが、友梨佳ちゃんの母親のみでなく父親も捕まえていたのなら、
遺伝要因が重要とされるフィーユを新たに産ませられるのではないか?
そして、どうやら友梨佳ちゃんの弟か妹は「模倣品」として十分だったようだ。
そうと分かれば、ヤクザらはもっと多くの模倣品を欲しがる。
そのため、少なくとも4人分の「フィーユの模倣」を産まされたのではないか……?

今日もヤクザは、料理のために、柳子氏を出産させ、その子供を裏社会に流通させているのかもしれない。


余談

冒頭にも書いたように、この記事は、数十人のSCP著者によって実行されたアンソロジー企画「始のいろは」の記事。
実はこのアンソロジー、すべての記事に「」という共通のテーマが存在していた。
著者の Jiraku_Mogana 氏によると、SCP-3060-JPは「真桑両親の破滅は娘の死によって始まった」という形で「始」要素を使っているという。


追記・修正は"フィーユ"を食べてからお願いします。

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最終更新:2026年09月15日 13:02