ミッキーの巨人退治(ディズニー)

登録日:2023/01/04 Wed 23:40:00
更新日:2025/02/08 Sat 16:45:15
所要時間:約 12 分で読めます





コ マ ギ レ ニ シ テ ヤ ル




ミッキーの巨人退治」(原題:Brave Little Tailor)とは、1938年9月23日に公開されたウォルト・ディズニー・プロダクションによる短編アニメーション映画である。




概要

おなじみミッキーマウスの短編映画シリーズ。ストーリーは、グリム童話「勇ましいちびの仕立て屋」が元になっている。




あらすじ

とある王国の城下町では、恐ろしく凶暴な巨人が大きな話題となっており、町民は皆恐怖で震え上がっていた。


…そんな事とはつゆ知らず、こちらは洋服屋を営むミッキー。いつものようにのんびり口笛を吹き鳴らしつつ洋服の修繕作業に取りかかっていたが、周囲をハエの群れが飛び回っていた。
鬱陶しく思ったミッキーは、両手にハエ叩きを構え、目にも留まらぬ素早さでハエを全て仕留めてしまう。

「すごい!7匹もだ!」

これには本人もびっくり。
思わず誰かに自慢したい衝動に駆られたミッキーは、ちょうど店の外で何やら会話をしていた人々の間に割って入るように叫びだす。

「僕なんか一発で7匹だぞ!」

「「「7人も!!?」」」


これを聞いた町民たちはどういうわけか蜂の巣を突いたような騒ぎに。

「たった一発で7人も退治したそうだ!」
     「一発で7人も!?」
           「たった一人で!?」     「すげぇ野郎だ!」
「誰が?」  「仕立て屋さん!」
「一人で!?」        「7人も!」
「いっぺんに!?」
「まさか!」  「本当だ!」   
「たった一人でいっぺんに!」       
      「7人も!?」


ミッキーのちょっとした自慢はあっという間に町中に広まり、やがて王城の衛兵の耳にまで届く。

驚いた衛兵は、勝手に持ち場を離れ国王へこの話を伝える。

「仕立て屋がたった一人で7人も…!」

「7人も!? 今すぐその者を連れて参れ!!」



そして、国王の命によって城へ呼び出されたミッキーは、わけがわからず困惑気味にその時の経緯を話す。



「仕事をしていたんです。そしたら音がして…ふと見上げると、もう取り囲まれてて…!」

「ここかと思えばあっち!それはもう至る所に飛び回り…!」

「ますます近付いて、それで僕は追っ払ってやろうと殴る構えをして、脅して脅して脅しまくったら…ついつまずき、そこへ奴らが…!」

「で、どうした!?」

「すぐに起き上がり、全部やっつけました!」


\Bravo!/

小さな仕立て屋の壮大な英雄譚、王室中が拍手と歓声の嵐に包まれる。※ハエの話です。

大いに賞賛され気を良くするミッキーだったが、まもなく国王から恐るべき勅令を受け全てを知ることとなる。


「勇敢なる仕立て屋よ!そちにこの国を脅かす憎き巨人を退治する事を命ずる!」


そう、ここまで読んだ皆さんは既にお察しのことと思われるが、あの時ミッキーの自慢を聞いた町民達は例の巨人を退治できる人がいないかについて談義していたのだ。そして勘違いと早とちりから、ミッキーが「巨人を7人も退治した強者である」という誤解を広めてしまったのである。一言も「ハエ」と言わなかったミッキーもミッキーだが…。

自身の知らぬ間に巨人退治の勇者候補に選ばれてしまったなど予想だにしていなかったミッキーは王の言葉に狼狽える。
慌てて真相を告げようとするが、ミッキーの話を鵜呑みにしてしまっていた国王は全く聞く耳を持たない。それどころか巨人退治の報酬として大量の金貨を与えると約束し、ついには王女・ミニー自らの提案により、彼女を娶らせるとまで宣言した。

初めは断るつもりだったミッキーも、ミニー姫の熱いキスを受け、のぼせ上がってしまう。そして短剣のようにハサミを振りかざし、こう声高に叫ぶのだった。



「よーし、奴を細切れにしてやる!」




こうして大勢の人々の声援を受けながら、ミッキーはいざ巨人退治へ出陣。どうしてこうなった…。

意気揚々と城下を出るミッキー。だが、普通の仕立て屋さんがどうしたってあの恐ろしい巨人を捕まえられるはずがない。その足取りはすぐに重くなり、一人項垂れてしまう。


そこへ、どこからともなく地響きと山よりも大きな影が近づく…。例の巨人がこちらへやって来たのだ。

巨人はその大きな足で木々をなぎ倒し、岩場を踏み砕き、川を大きく波立たせる。
巨人の前ではミッキーもネズミどころかアリンコ同然。踏み潰されてはたまったものではないと、命からがら巨人から逃げ続ける。

やがてミッキーは誰もいない農場まで逃げ込んだ。
巨人は疲れたのかその小屋に腰掛け、荷車いっぱいに載せられた大きなカボチャをまるでピーナッツのように次々と口へ放り込む。ところが、カボチャの山に潜っていたミッキーまで一緒に食べられてしまう。

なんとか巨人の喉ちんこに捕まったことで飲み込まれずに済んだミッキー。だが、その弾みでしゃっくりが止まらなくなった巨人は、続いてそれを止めようと手近の井戸を引っ張り出し、中の水を飲み始める。
口の中は大洪水。ミッキーは胃袋まで流されてしまうが、つるべに捕まっていたお陰で間一髪で脱出に成功する。

腹を満たし、喉を潤した巨人が次に目をつけたのは干し草の山。これを巨人は「タバコ」のように丸め、家屋の台所にあったストーブを「ライター」よろしく操り火を点け、そして一服を始める。

巨人の目線ではどんな道具も全く違う使い道に変わってしまう。この発想の数々はさすがディズニーと言うべきだろう。

しかし、干し草の中にはミッキーが隠れていた。火と煙でむせ返り、思わず巨大タバコから顔を出してしまう。

怒った巨人はミッキーを捕まえようとする。素早く逃げ回るミッキーは、巨人へ挑発しながら袖の中へ潜り込む。ハサミで穴を空け、巨人がその穴へ片手を突っ込んだところで、仕立て屋としての本領を発揮。
破れ目を針と糸で縫い付け、巨人が突っ込んだ手を抜けなくさせる。さらに糸の輪を巨人の鼻に括り付け、その糸を巨人の体中に巻きつけて一気に縛り上げる。
いくら怪力な巨人でも、丈夫な糸で何重にも巻き付けられればとても身動きは取れない。ミッキーは必死にもがく巨人をついに倒してしまうのだった。
倒れ込んだショックで巨人は眠り込んでしまう。


かくして巨人は一人の英雄によって捕獲された。

町に再び訪れた平和を祝福するかのように、遊園地に大勢の人々が集う。というのもこの遊園地は、眠りこけた巨人による「風力発電」で賄っているものだったが。

いろいろツッコミどころ満載な結末はともかく、見事に巨人をやっつけたミッキーとその花嫁となったミニー姫も、仲睦まじくメリーゴーランドを楽しむのであった。




登場キャラクター

  • ミッキーマウス
声:ウォルト・ディズニー(原語版)/後藤真寿美(旧吹替)/納谷六朗(ブエナ・ビスタ旧吹替版)/青柳隆志(ブエナ・ビスタ新吹替版)
ご存知世界のミッキー。今回は町で小さな仕立て屋を営む青年として登場する。
ひょんなことから国王より巨人退治を命じられてしまうが、裁縫の腕を活かし見事巨人を捕獲してみせる。

  • ミニーマウス
声:マーセリット・ガーナー(原語版)/下川久美子(旧吹替)/水谷優子(ブエナ・ビスタ旧吹替版)
今回はとある王国の王女として登場。巨人退治に消極的なミッキーに「巨人を倒せば自分がミッキーと結婚する」と国王に提案した。その後ミッキーを狂気的に奮い立たせるほどのキスを連発するなど油断ならない女に描かれている。

  • 国王
声:エディー・ホールデン(原語版)/江原正士(旧吹替)/塚田正昭(ブエナ・ビスタ新吹替版)
舞台となる国の王様。巨人の襲来にミニー共々頭を悩ませていた折、衛兵よりミッキーの噂を聞き、彼に巨人退治を命じた。肝心な主語を一切確かめずにミッキーを英雄扱いした辺り、町民共々そそっかしい王様のようだ。
厳格そうな雰囲気だが、ラストでメリーゴーランドに乗りながらアイスを舐めて大はしゃぎする様子から意外と茶目っ気がある模様。

  • 巨人のグスタフ
声:エディー・ホールデン(原語版)/内田稔(旧吹替)/西尾徳(ブエナ・ビスタ吹替版)
今作で元凶として登場する恐ろしい巨人。ミッキー達や町民は皆動物の擬人化だが、彼だけは人間のように描かれている。大きな赤い鼻が特徴。やたら虫歯だらけ。
普段は何処で何をして暮らしているのかはわかっていない。
ミッキーによって捕らえられたものの、特に殺されたりはしておらず縛り付けられた上で遊園地の動力に利用されていた。あんなに恐れていたくせに随分大胆な扱いをするものだ。

「グスタフ」という名前は本編には登場せず、アメリカのコミック「Thumper Meets the Seven Dwarfs」で判明した。
同じディズニー作品の巨人キャラであるランプルワット*1やウィリー*2との関係は不明。なお、グスタフの日本語吹替を担当した内田と西尾はそれぞれウィリーの吹替も担当している。

ディズニーのテレビアニメ「ガミー・ベアの冒険」ではグスタフにそっくりな男がゲスト出演するが、こちらは巨人ではなく普通の人間として登場する。

  • グーフィープルート
王国の衛兵として登場。プルートは本来擬人化キャラではないのだが、今回は特別に声付きで国王へ町の噂話を報告するという役回りとして登場した。

  • 町民
声:土井美加、牛山茂、関時男、金尾哲夫、小山武宏、遠藤征慈(旧吹替)/小形満、荒川太朗、伊井篤史、相沢まさき、真殿光昭梅津秀行、幹本雄之、中沢みどり(ブエナ・ビスタ新吹替版)
巨人が襲来するというニュースでパニックになっていた。その後、ミッキーが「巨人を一度に7人も退治した」という噂を聞きつけさらに大騒ぎに。

  • ナレーション*3
声:なし(原語版)/土井美加(旧吹替)/なし(新吹替)




余談

  • この回における屈指の迷台詞「細切れにしてやる!」は、青柳版吹替で聴くことができる*4。いくら相手が多くの町民を恐怖に陥れる巨人で、本人もミニーからの接吻に舞い上がった勢いで口走ってしまったとはいえ、とても世界のスーパースターの口から出たものとは思えないトンデモ発言として有名である。ネット上ではいわゆる「黒いディズニー」ネタとしてMAD動画などで用いられることがあるが、音声の継ぎ合わせではなく正真正銘公式の台詞である。結局、本当に細切れにしたりはせず、不殺によって町の平和を取り戻したところなんかはミッキーらしい解決法とも言えるが。
    • もっとも、クラシック短編映画全盛期のミッキーはテーマパーク等でよく知られた紳士的な優等生キャラとは違って腕白な性格だったこともあり、このような攻撃的な発言も決して珍しいものではなかった。
    • なお、旧吹替版では「奴を切り刻んでやるぞ!」となっており、「細切れ」に負けず劣らず物騒な表現となっている。
    • そもそも原語版では何と言っているのかというとI'll cut him down to my size!。「cut ~ down to size」は「身の程を思い知らせてやる」「鼻をへし折ってやる」という意味を持つ。吹替版の翻訳に関しては「僕サイズにまで切り落としてやる」といったニュアンスに変換したがために上記のような言い回しになってしまった可能性がある。ディズニー+版の字幕では「思い知らせてやります」となっている。




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最終更新:2025年02月08日 16:45

*1 「ミッキーの巨人征服」に登場。

*2 「ファン・アンド・ファンシー・フリー」より「ミッキーと豆の木」に登場。

*3 基本的に旧吹替版にはどの作品にもナレーションも入っており、土井の他、江原正士も担当していた。

*4 ディズニー+ではこちらが配信されている。