グラジオ・シンプソンが故あってトリア市のガスペリ家別邸に来たとき、家畜小屋と別で見せられたものがあった。
「……エビの飼育施設?」
「はい、旦那様(カルロのこと)やリリアーナ様の所有するエビを世話する場所です。といっても、少し距離は遠いですが」
「はい、旦那様(カルロのこと)やリリアーナ様の所有するエビを世話する場所です。といっても、少し距離は遠いですが」
グラジオにとって、エビというのはハレの日に食卓に出るもののイメージしかなかったが。それを飼育するとは――と思ったところで、噂だけは聞いたことがあった生き物を思い出す。
ヴェネトオオエビ。人が乗れるほど大きく賢いエビ。富裕層が何頭か買い、レースをさせてると聞いたが……ガスペリ家も当然やっているに決まっている、と理解する。
ヴェネトオオエビ。人が乗れるほど大きく賢いエビ。富裕層が何頭か買い、レースをさせてると聞いたが……ガスペリ家も当然やっているに決まっている、と理解する。
「ああ、ヴェネトオオエビ」
「はい。基本的にデビュー前であったり、現役のエビを預ける場所もありますが。ここは引退した功労エビを保養する場所です」
「はい。基本的にデビュー前であったり、現役のエビを預ける場所もありますが。ここは引退した功労エビを保養する場所です」
さも当然のように功労馬の如く功労エビが出てくるが、そういう世界観なので仕方ない。
ということで早速施設を見せて貰うと、ふととあるエビが目に留まる。
そのエビには尖った岩が殻を貫通するように深々と刺さっており、人の身で見ても痛々しかった。だが、なんとなく元気に動いているのもわかる。
ということで早速施設を見せて貰うと、ふととあるエビが目に留まる。
そのエビには尖った岩が殻を貫通するように深々と刺さっており、人の身で見ても痛々しかった。だが、なんとなく元気に動いているのもわかる。
「あのエビは……?」
「アンフィテアトルム号。リリアーナ様の所有エビの一頭で、活躍を期待されていましたが……その、背中の岩の事故でデビュー出来なくなり。やむを得ずヴェネト共和国からトリア市まで運ばれてきた曰く付きのエビです」
「成程……その、ところで。ここは功労エビの施設ですよね?」
「はい」
「デビュー前の彼が入って大丈夫なのでしょうか」
「房に空きは結構ありましたし、リリアーナ様自ら「必要なら房を増築する」とまで言っていただけたので。それに本来ならデビューも出来ないし殺処分でしたが、せめて元気なうちは生かしてやってくれとも」
「アンフィテアトルム号。リリアーナ様の所有エビの一頭で、活躍を期待されていましたが……その、背中の岩の事故でデビュー出来なくなり。やむを得ずヴェネト共和国からトリア市まで運ばれてきた曰く付きのエビです」
「成程……その、ところで。ここは功労エビの施設ですよね?」
「はい」
「デビュー前の彼が入って大丈夫なのでしょうか」
「房に空きは結構ありましたし、リリアーナ様自ら「必要なら房を増築する」とまで言っていただけたので。それに本来ならデビューも出来ないし殺処分でしたが、せめて元気なうちは生かしてやってくれとも」
そこまで聞いて、グラジオはなんとも言えない表情をした。