とあるポセイディアの少年が、深海都市カンの施設にて資料とにらめっこしていた。彼の名はローレッド・カンレス・ゼラ・ムゥ・テルッハ。ポセイディア全ての王の子供たちの一人であり、深海の研究者でもある。資料には最近の深海の魔物の動向について記されており、その内容こそが彼の悩みの種であるようだ。そうやっていくつかの資料を並べながら頭を悩ませる彼のもとに、静かに近づく人物がいた。十分に少年に近づいたその人物は、彼の頭辺りに顔を持ってくると突如、大きな声で叫んだ。
「ワッッ!!!」
近くに人が来ているなど想像もしていなかった少年は、その声に驚いて身体ごと縦回転した。驚かせた下手人は、その反応に満足したかのように彼に話しかけた。
「びっくりしたかな、殿下?」
笑顔で話しかけてきた下手人に対して、彼は怒りの表情を浮かべながら言葉を紡ぎ始めた。
「深く沈みし青の波にて……」
「待って待って!?謝るから魔法はやめて!?」
「待って待って!?謝るから魔法はやめて!?」
聞こえてきた言葉が魔法の詠唱であることに気づいた下手人の少女は、慌てながら魔法を止めようとする。そんな少女の様子に留飲を下げたのか、少年は行っていた詠唱を取りやめた。
「で、何か用かい?エオニオティタ」
「ちょっと確認したい資料があってね。キミが見ているのは魔物の資料かな?」
「ちょっと確認したい資料があってね。キミが見ているのは魔物の資料かな?」
エオニオティタ・カロシーニ・アメテュストス・リィ・ルッタ。それが少年同様深海の研究者である少女の名前だった。
「その通り。君もご存知の通り最近深海から上ってくる魔物の量が増加していてな。軽く過去の事例と比較していた」
「なるほどね。何か今までと違うところは発見できた?」
「増加ペースに関しては歴代の大量発生にしては遅い部類だな。ただ……魔物の種類が偏っている」
「なるほどね。何か今までと違うところは発見できた?」
「増加ペースに関しては歴代の大量発生にしては遅い部類だな。ただ……魔物の種類が偏っている」
少年の言葉に少女は首をかしげる。魔物の大量発生において現れるのが一部の魔物に偏るのは当たり前のことだからだ。
「大量発生なんだよね?確かに最近ディープシーガレオスとか良く見かけるけど……今まで通り何か繁殖に特化した個体が生まれてるだけじゃないの?」
少女の問いかけを少年は否定する。曰く、種族というよりは種別が偏っていると。
「種別というと……魂妖とか死妖とかの分類のことかな?」
「そうだ。特定の種族が増加しているのも間違いではないが……発見される魔物がやたらと業魔に偏っているんだ」
「そうだ。特定の種族が増加しているのも間違いではないが……発見される魔物がやたらと業魔に偏っているんだ」
その話を聞いた少女は、すぐに少年の見ていた資料を確認し、納得した様子で答えた。
「ホントだ。特定の魔物が増えているというより、業魔そのものが増えているって感じだね。過去の事例だと……400年前の邪妖の大量発生が近いかな?」
「雷の魔王の討伐直後のときだな。つまり、いつものように繁殖を得意とする個体の出現が原因ではない可能性が高い」
「そうだね……今回の原因の心当たりはある?」
「雷の魔王の討伐直後のときだな。つまり、いつものように繁殖を得意とする個体の出現が原因ではない可能性が高い」
「そうだね……今回の原因の心当たりはある?」
少女の問いかけを受け、少年は困ったようにため息をついた。
「いや、まったくもって見当がつかない。アタリすらつけられてないよ」
「これはなかなかの難敵みたいだね。先生方に相談はした?」
「まだだな。ただ、オレが気づける内容だし先生方が気づけない筈もないだろう」
「とはいえ、まだ周知はされていないみたいだし、相談しておくべきだろうね」
「これはなかなかの難敵みたいだね。先生方に相談はした?」
「まだだな。ただ、オレが気づける内容だし先生方が気づけない筈もないだろう」
「とはいえ、まだ周知はされていないみたいだし、相談しておくべきだろうね」
その後、少女は少し思索したのち、いまいち研究者らしくないことを言い出した。
「直感なんだけどね、今回の件はなかなか危険な気がするんだ。だからボクたちのような研究者以外にも相談するべきだと思う」
「相談するべきとは言うが……例えばどんな人だ」
「ボクなら護衛の人たちかな?あの人たちならボクたちとは別の視点で今の状況を知ってるだろうし……殿下なら王様とかかなぁ」
「確かに……相談するなら適切だな。よし、次に家族で集まるとき相談してみよう。皆知らなくてもスピロ兄なら知ってそうな人のツテを持っているだろうし」
「相談するべきとは言うが……例えばどんな人だ」
「ボクなら護衛の人たちかな?あの人たちならボクたちとは別の視点で今の状況を知ってるだろうし……殿下なら王様とかかなぁ」
「確かに……相談するなら適切だな。よし、次に家族で集まるとき相談してみよう。皆知らなくてもスピロ兄なら知ってそうな人のツテを持っているだろうし」
そう言いながら手元の資料をまとめる。とりあえず報告に行くことにしたようだ。
「確かに、スピロ殿下なら地上の人とかでも繋げてくれそうだね。地上といえば……もうそろそろメリエプア殿下がお帰りになられるんだよね?」
「確か次の集会の時だな。地上の話……専門外だが楽しみだ!」
「王様たちへの報告を終えて帰ってきたら、ボクにも地上の話聞かせてね!」
「確か次の集会の時だな。地上の話……専門外だが楽しみだ!」
「王様たちへの報告を終えて帰ってきたら、ボクにも地上の話聞かせてね!」
資料をまとめ終わった少年はその言葉に任せろと返し、部屋から去っていった。