「久し振りですね、ニルス」
そう話すカルメンは、首のあたりで纏めたふわふわの長髪、常に眠そうな真紅の目と(当時のエルニアではガラス自体高級品である)丸眼鏡、エルニア帝国の商人が好む藍で染めた背中がぱっくり開いたドレス、そのドレス越しでうっすらわかる(ニルスの好みではないけど)好きな人が多そうなスタイル、そして天空人らしい大きな角と翼。
ニルスはなんとなくそんなカルメンを学者っぽいと思っていました。
ニルスはなんとなくそんなカルメンを学者っぽいと思っていました。
「だね、カルメン。しかし君は働きすぎだよ。そのぶんだと、昨日は寝てないだろう?」
「まさか。昨日は朝の食事を摂ってから仕事場が、太陽が真上から落ちて少しした頃に寝て。太陽が沈む頃に起きました」
「それでは短すぎるよ!」
「まさか。昨日は朝の食事を摂ってから仕事場が、太陽が真上から落ちて少しした頃に寝て。太陽が沈む頃に起きました」
「それでは短すぎるよ!」
ニルスが激怒するのも当然でした。カルメンの寝た時間は、我々で換算するならば48時間働いて4時間しか寝てないようなものでしたから。
普通に過労死ラインまっしぐらです。
普通に過労死ラインまっしぐらです。
「……私は問題ないのですが」
「君にとって問題ないように見えても、アルカナ団全体からすれば死活問題だよ。団の本部についたら、しかとドクターに診て貰うからね」
「またですか。まあいいでしょう」
「そこは懲りるべきところだよ」
「君にとって問題ないように見えても、アルカナ団全体からすれば死活問題だよ。団の本部についたら、しかとドクターに診て貰うからね」
「またですか。まあいいでしょう」
「そこは懲りるべきところだよ」
そう言いながら、カルメンは立ち上がってフードのついた毛皮のコートを羽織ります。
こうすることで最低限角を隠し、コウモリの獣人に見せかける……ということになっていましたが、実際はこの時期が寒いからなのもあります。
こうすることで最低限角を隠し、コウモリの獣人に見せかける……ということになっていましたが、実際はこの時期が寒いからなのもあります。
「ささ、行こうカルメン」
「ですね。ということで皆さん、私が不在の間はよろしくお願いします」
「ですね。ということで皆さん、私が不在の間はよろしくお願いします」
そう、カルメンが信頼している部下達に店を託してから、ニルスの使う馬車に乗り込み。二人の旅が始まります。
とは言いますが、実際はニルスについてくる馬車もあるし、ニルスと交代する御者もいるので二人きりではないのですが。
とは言いますが、実際はニルスについてくる馬車もあるし、ニルスと交代する御者もいるので二人きりではないのですが。
そうして二人の旅が始まって暫くして、ニルスが代わりの御者と交代する頃。
カルメンはこんなことを言い出しました。
カルメンはこんなことを言い出しました。
「……ニルス。少し冷えますから、抱き締めても良いでしょうか」
「カルメン。毛布があるだろう?」
「毛布が清潔でないのか、埃とシラミがあります。これで私にシラミがつけば。そこからアルカナ団の一員だと露見するかもしれません」
「こっちにシラミがいないという保証は?」
「ニルスはドクターの検査を受けているでしょうから」
「カルメン。毛布があるだろう?」
「毛布が清潔でないのか、埃とシラミがあります。これで私にシラミがつけば。そこからアルカナ団の一員だと露見するかもしれません」
「こっちにシラミがいないという保証は?」
「ニルスはドクターの検査を受けているでしょうから」
そのやり取りの末に、仕方なくニルスはカルメンに身体を預けます。ニルスには件の毛布を見てもシラミがついているようには見えませんでしたが、カルメンは割と強情なのを知っていたので仕方なくです。
カルメンはぎゅっとニルスを抱き締めて、その暖かみを楽しむのでした。
カルメンはぎゅっとニルスを抱き締めて、その暖かみを楽しむのでした。