日が暮れ始める頃合い、無数の魔晶石の結晶が柱のようにそびえたつ平原を鮮やかな桃色の髪を振り乱しながら少女は逃げていた。旅の途中でオルミガという業魔の群れに襲われたのだ。その数二十体ほどである。少女は魔法使いであるがその腕前は大変未熟であり魔物との戦闘など無謀と言ってもいい。それ故に逃げるという選択肢しかなかったのだ。逃げながら身を隠せそうな場所を探そうと目を向けるも周囲は開けていて隠れられそうにない。魔晶石の柱を登ってやり過ごそうにもオルミガであれば登っている間に追いつきあっという間に食い殺されることだろう。いつもなら魔物とかち合いそうになれば事前に察知できていたのにと少女は思考する。普段は感知できていたのだ。今回感知できなかったのは魔物の群れから敵意が感じられなかったということなのだろう。もしかしたら虚空から出現したばかりなのかもしれない。そんなことを考えていた時であった。なにもない場所で足を滑らせてしまい少女は受け身をとる間もなく転んでしまう。オルミガにとって獲物に追いつくには十分すぎるほどの隙であった。見る見るうちに距離を詰めていく。少女は逃げようとするも足首から痛みが走り立ち上がることができない。足首をひねったためか赤く腫れている。自分はこのまま目の前の蟻の業魔に貪られるのだと少女は悟った。死にたくないと思うも死が迫りくるのを感じ恐怖で身がすくむ。
「……誰か助けて……」
涙をにじませながら口から助けを求める言葉がこぼれる。その時だった。
少女に迫っていたオルミガの群れ、その先頭の一体に横から何者かが突っ込んできた。その者は少年と思わしき人物で両手で握り締めていた大剣で鉄のように固いオルミガの身体を一撃で両断したのだ。そして続け様にその後ろにいた数体を横薙ぎに切り裂き沈黙させる。剣身から発せられる唸りが周囲に響き後続の群れをひるませる。その様子を隙と捉えたのかそのままオルミガの群れに突っ込んで行き、ある個体は足の関節部を斬って行動不能にしてから殺し、ある個体は頭部を斬り落として沈黙させるなどして一体ずつ斬り伏せていく。
その光景を少女はぽかんとしながら見ていた。怪我をしていたこともあるがたった一人で魔物の群れを処理していく様に衝撃を受けている様子であった。そんな少女を余所に突っ込んできた少年は最後の一体を正面から両断し群れを全滅したのであった。そして地面にへたり込む少女に近づく。少女は群れを全滅させた少年が近づいてきたことに怯えたのか恐怖で表情をこわばらせ後ずさる。それを受け近づくのを止めてかがんで視線を合わせる。
「アンタ大丈夫か?」
少年が武器を地面に置いて敵意がないことを示してから少女に向かって声をかける。少女を少しでも安心させるためだ。しかし少女の怯えは止まず逃げ出そうとしたところで呻きながら足を庇いだす。それを見た少年は少女がけがをしていることを察する。
「オレは冒険者だ。アンタに対して危害を加えたいわけじゃない。だから怯えないでくれ」
少女を安心させるべく更に言葉をかけていく。少年の言葉と様子から敵意がないことを理解したのか少女は少し警戒を緩める。そして少年はゆっくり少女に近づき怪我の様子を確認する。足をひねったのだろうと判断し懐から適当な布を取り出し患部に巻いていく。
応急処置として患部を固定するためだ。そして地面に置いていた大剣を背負い少女を抱きかかえる。
「この先に街がある。そこまで行けば安全だ」
突然のことに驚く少女を余所ににそう言って平原を歩きだす。少女は抱きかかえられた状態で少年の顔を見る。
「あなたは誰なの?」
少年にそう尋ねる少女。
「レクト=ギルノーツ。さっきも言った通り冒険者だ」
少年はそう答えて街を目指して魔晶石の柱が至る所にそびえたつ平原を進むのであった。
「……誰か助けて……」
涙をにじませながら口から助けを求める言葉がこぼれる。その時だった。
少女に迫っていたオルミガの群れ、その先頭の一体に横から何者かが突っ込んできた。その者は少年と思わしき人物で両手で握り締めていた大剣で鉄のように固いオルミガの身体を一撃で両断したのだ。そして続け様にその後ろにいた数体を横薙ぎに切り裂き沈黙させる。剣身から発せられる唸りが周囲に響き後続の群れをひるませる。その様子を隙と捉えたのかそのままオルミガの群れに突っ込んで行き、ある個体は足の関節部を斬って行動不能にしてから殺し、ある個体は頭部を斬り落として沈黙させるなどして一体ずつ斬り伏せていく。
その光景を少女はぽかんとしながら見ていた。怪我をしていたこともあるがたった一人で魔物の群れを処理していく様に衝撃を受けている様子であった。そんな少女を余所に突っ込んできた少年は最後の一体を正面から両断し群れを全滅したのであった。そして地面にへたり込む少女に近づく。少女は群れを全滅させた少年が近づいてきたことに怯えたのか恐怖で表情をこわばらせ後ずさる。それを受け近づくのを止めてかがんで視線を合わせる。
「アンタ大丈夫か?」
少年が武器を地面に置いて敵意がないことを示してから少女に向かって声をかける。少女を少しでも安心させるためだ。しかし少女の怯えは止まず逃げ出そうとしたところで呻きながら足を庇いだす。それを見た少年は少女がけがをしていることを察する。
「オレは冒険者だ。アンタに対して危害を加えたいわけじゃない。だから怯えないでくれ」
少女を安心させるべく更に言葉をかけていく。少年の言葉と様子から敵意がないことを理解したのか少女は少し警戒を緩める。そして少年はゆっくり少女に近づき怪我の様子を確認する。足をひねったのだろうと判断し懐から適当な布を取り出し患部に巻いていく。
応急処置として患部を固定するためだ。そして地面に置いていた大剣を背負い少女を抱きかかえる。
「この先に街がある。そこまで行けば安全だ」
突然のことに驚く少女を余所ににそう言って平原を歩きだす。少女は抱きかかえられた状態で少年の顔を見る。
「あなたは誰なの?」
少年にそう尋ねる少女。
「レクト=ギルノーツ。さっきも言った通り冒険者だ」
少年はそう答えて街を目指して魔晶石の柱が至る所にそびえたつ平原を進むのであった。