トリア市が燃えた。その話は即座にフローレンシア市に伝わった。理由は単純、それほどまでに2つの都市が近いからである。
市の中枢はこれを冷静に受け止めて、美術品はフローレンシア城に、市民は市外に。淡々と避難や疎開を促した。
市の中枢はこれを冷静に受け止めて、美術品はフローレンシア城に、市民は市外に。淡々と避難や疎開を促した。
「いいか!土地の権利書は優先しろ!株券と債権がそのつぎ、最後は建物の権利書だ!ダークエルフどもは『節制』の神の素晴らしさをわかっちゃいない!権利書なんて紙屑にしか見えん!」
「兌換紙幣とか交換券とか公定通貨の紙幣も持ってけ!硬貨や金塊は動かすな!」
「優先度が決まっているのはなんでですか課長!」
「決まってるだろ?硬貨や金塊は溶かして固めれば近い形に戻る!何よりダークエルフどもには持ち出せん!だが権利書や紙幣は燃えてしまえば魔術師を引っ張ってこなきゃ復元できない!何より株券や債権、紙幣も交換停止だったりその企業が潰れてしまえば回収できなくなるって寸法だ!まあどれも写しはあるんだが……原本があった方が手続きは楽なんだ」
「では、建物の権利書は!?」
「戦災で壊れるのを考慮してるんだ!壊れてしまえば建て直すしかないからな!」
「ところで、持ち出せない分は?」
「その箱は対火魔法を施してある!金庫の中に炎が入ってこなきゃ燃えやしない!まあ持ち出す必要があるもんだってロストの危険性があるが……」
「兌換紙幣とか交換券とか公定通貨の紙幣も持ってけ!硬貨や金塊は動かすな!」
「優先度が決まっているのはなんでですか課長!」
「決まってるだろ?硬貨や金塊は溶かして固めれば近い形に戻る!何よりダークエルフどもには持ち出せん!だが権利書や紙幣は燃えてしまえば魔術師を引っ張ってこなきゃ復元できない!何より株券や債権、紙幣も交換停止だったりその企業が潰れてしまえば回収できなくなるって寸法だ!まあどれも写しはあるんだが……原本があった方が手続きは楽なんだ」
「では、建物の権利書は!?」
「戦災で壊れるのを考慮してるんだ!壊れてしまえば建て直すしかないからな!」
「ところで、持ち出せない分は?」
「その箱は対火魔法を施してある!金庫の中に炎が入ってこなきゃ燃えやしない!まあ持ち出す必要があるもんだってロストの危険性があるが……」
という具合である。つまり金塊や硬貨といった再度鋳造可能でダークエルフが苦手とする金属由来のものは放置、焼けてしまえば価値がなくなるものを優先。その中でも土地は権利書が焼けてしまっても土地そのものは焼けないので最優先、紙幣やなんかは焼けると価値がなくなるので二番目、よしんば権利書が残っても相手が焼けてしまえば価値のない債権や株券、建物の権利書は最後……という具合である。
ただ、結果からすればこの必死の脱出劇は必要なかった。
ガスペリ銀行の大金庫はとうとう、テルミドール戦役においてダークエルフ達に抉じ開けられることはなかったのだから――
ガスペリ銀行の大金庫はとうとう、テルミドール戦役においてダークエルフ達に抉じ開けられることはなかったのだから――
何より面白い話として。持ち出しきれなかった紙幣はフローレンシア市に残った行員によって地下組織の銀行の原資に使われた。それを行った当人はフローレンシア市解放の折に速やかに洗いざらい話してガスペリ銀行に全てを移管したのだから、凄まじい身の振り方である。
尚、これを行った当人は数年の禁固刑から釈放された後。監視役つきでガスペリ銀行の支店を任されて、何一つ問題を起こさず40代で早世したという。
それを知ったリリアーナは「禊のための支店で死んでるんじゃないの。まだやらせたいことだってあったというのに。最期まで人の銀行の金で勝手に銀行をやってた馬鹿行員のままだったのね」と言い放った。
それを知ったリリアーナは「禊のための支店で死んでるんじゃないの。まだやらせたいことだってあったというのに。最期まで人の銀行の金で勝手に銀行をやってた馬鹿行員のままだったのね」と言い放った。