勇者を自称するアストラムと太陽の教団所属冒険者組合付司祭ソフィア=サーキュレットの間で何度目かの交渉が開かれていた。一度や二度ではない。何度も交渉劇が続いたのだ。冒険者ギルドが何度もアストラムに対して要望を求めるもアストラム側が頑なとして譲らなかったのである。しかしソフィアは何度も冒険者ギルドとアストラムに対し交渉を重ねた結果、ようやくアストラムも冒険者ギルドも納得のいく案を捻出することが出来たのである。
「冒険者ギルドからの依頼を定期的に受ける、ただし冒険者としての登録は行わない。この条件に合意する。それでよろしいですね?」
「ああ、勇者の名に懸けて合意する。ようやく納得のいく条件が出てきてほっとしたよ」
「それはこちらが言うことですよ。全く……アストラムさんはここまでわがままだったとは……私まで困ってしまいましたよ」
「わがままって……僕は一個人として当然の権利を主張したに過ぎないよ」
その言葉を聞いてソフィアはむっとしたような表情を浮かべる。アストラムの物言いに不満を抱いたのだ。
「いいえ、アストラムさんはわがままです。冒険者ギルドもアストラムさんに対してだいぶ譲歩されていたのですよ。私が報告に行くたびにどれだけギルドの方々が頭を抱えていたか説明いたしましょうか?」
「……遠慮しておくよ」
「そもそもギルドの方々がアストラムさんに冒険者として登録することを求めたのは貴方の活躍と実績にたいして報酬を支払うためでもあるのですよ?」
冒険者ギルドがアストラムに冒険者登録を求めたのはソフィアの言うように報酬を支払うためでもあった。彼の行動で多くの人々が救われたのは事実だ。冒険者ギルドも彼の行動によって冒険者の損失を抑えられた側面もある。それに対して冒険者ギルドがアストラムに何もしないままでいるのは問題だと判断したのだ。しかし、冒険者でもない部外者に報酬を支払うための大義名分がなかった。そのため冒険者として登録してもらうことで報酬を支払う大義名分を用意しようと考えたのだ。もっともアストラムはそれをはねのけたため今回の条件を提示するまで大分苦労したわけであるが。
「報酬って……僕は勇者だ。人助けに報酬をもらうだなんてことは……」
「冒険者も人助けを行っています。それに対して報酬を支払うのは何もおかしなことではありません。冒険者の方々は人助けという社会貢献をなされているからです。貴方のその発言は冒険者組合付司祭として看過できません」
冒険者に報酬が支払われるのは彼らが社会貢献を果たしているからだ。その働きに報いるために冒険者ギルドは彼らに対して報酬を支払うのだ。そうして冒険者は日々の生活を送り、そして生活のためにギルドからの依頼を受け社会に貢献する。そしてその中には人々の助けになる内容の依頼も多いのだ。
「そもそもアストラムさんは無償で魔物討伐などを行ってきたそうですが報酬もなしに今までどうやって生活してきたのですか?」
「そりゃ……その辺の草を食べたり野宿したりして生活してきたけど。獣とかいたらそいつを狩ったりしたり魚を釣ったりもしたかな? でも獣や魚が手に入れられる機会なんてめったにないからその辺の草を食べるしかないんだけど」
アストラムのその言葉にソフィアは絶句した。予想していたよりも悲惨な生活をアストラムは送っているようだった。そして、彼女は彼に対する好感度が高いのだ。それ故に見過ごすことなど彼女にはできなかったのだった。
「……アストラムさん、今日御馳走しますので私の家に来てください。いえ……まともに宿を借りれるようになるまでしばらくアストラムさんを泊めます」
その言葉にアストラムは吹き出してしまった。女性が自分のような根無し草の男を家に泊める等、どう考えても危険なことであった。それ故にアストラムは抵抗を覚える。
「いや、それはまずいだろ……。ソフィアのようなきれいな人が僕のような男を泊めるとか……」
「いいえ、絶対に泊めます。貴方を放置する方がまずいです。貴方は一度人並みの生活を送るべきです。そう言うわけでさっそく私の家に行きましょう。ええ、反論は聞きませんから」
そう言って席を立つや否やアストラムの手を取り、彼を連れて交渉の場を立ち去るのだった。当然アストラムは抵抗したが逆にやり込められてしまいソフィアに逆らうことはできなかったのだった。
そしてアストラムはしばらくの間、ソフィアの家で強制的に人並みの生活を送らされることとなったのだった。
「冒険者ギルドからの依頼を定期的に受ける、ただし冒険者としての登録は行わない。この条件に合意する。それでよろしいですね?」
「ああ、勇者の名に懸けて合意する。ようやく納得のいく条件が出てきてほっとしたよ」
「それはこちらが言うことですよ。全く……アストラムさんはここまでわがままだったとは……私まで困ってしまいましたよ」
「わがままって……僕は一個人として当然の権利を主張したに過ぎないよ」
その言葉を聞いてソフィアはむっとしたような表情を浮かべる。アストラムの物言いに不満を抱いたのだ。
「いいえ、アストラムさんはわがままです。冒険者ギルドもアストラムさんに対してだいぶ譲歩されていたのですよ。私が報告に行くたびにどれだけギルドの方々が頭を抱えていたか説明いたしましょうか?」
「……遠慮しておくよ」
「そもそもギルドの方々がアストラムさんに冒険者として登録することを求めたのは貴方の活躍と実績にたいして報酬を支払うためでもあるのですよ?」
冒険者ギルドがアストラムに冒険者登録を求めたのはソフィアの言うように報酬を支払うためでもあった。彼の行動で多くの人々が救われたのは事実だ。冒険者ギルドも彼の行動によって冒険者の損失を抑えられた側面もある。それに対して冒険者ギルドがアストラムに何もしないままでいるのは問題だと判断したのだ。しかし、冒険者でもない部外者に報酬を支払うための大義名分がなかった。そのため冒険者として登録してもらうことで報酬を支払う大義名分を用意しようと考えたのだ。もっともアストラムはそれをはねのけたため今回の条件を提示するまで大分苦労したわけであるが。
「報酬って……僕は勇者だ。人助けに報酬をもらうだなんてことは……」
「冒険者も人助けを行っています。それに対して報酬を支払うのは何もおかしなことではありません。冒険者の方々は人助けという社会貢献をなされているからです。貴方のその発言は冒険者組合付司祭として看過できません」
冒険者に報酬が支払われるのは彼らが社会貢献を果たしているからだ。その働きに報いるために冒険者ギルドは彼らに対して報酬を支払うのだ。そうして冒険者は日々の生活を送り、そして生活のためにギルドからの依頼を受け社会に貢献する。そしてその中には人々の助けになる内容の依頼も多いのだ。
「そもそもアストラムさんは無償で魔物討伐などを行ってきたそうですが報酬もなしに今までどうやって生活してきたのですか?」
「そりゃ……その辺の草を食べたり野宿したりして生活してきたけど。獣とかいたらそいつを狩ったりしたり魚を釣ったりもしたかな? でも獣や魚が手に入れられる機会なんてめったにないからその辺の草を食べるしかないんだけど」
アストラムのその言葉にソフィアは絶句した。予想していたよりも悲惨な生活をアストラムは送っているようだった。そして、彼女は彼に対する好感度が高いのだ。それ故に見過ごすことなど彼女にはできなかったのだった。
「……アストラムさん、今日御馳走しますので私の家に来てください。いえ……まともに宿を借りれるようになるまでしばらくアストラムさんを泊めます」
その言葉にアストラムは吹き出してしまった。女性が自分のような根無し草の男を家に泊める等、どう考えても危険なことであった。それ故にアストラムは抵抗を覚える。
「いや、それはまずいだろ……。ソフィアのようなきれいな人が僕のような男を泊めるとか……」
「いいえ、絶対に泊めます。貴方を放置する方がまずいです。貴方は一度人並みの生活を送るべきです。そう言うわけでさっそく私の家に行きましょう。ええ、反論は聞きませんから」
そう言って席を立つや否やアストラムの手を取り、彼を連れて交渉の場を立ち去るのだった。当然アストラムは抵抗したが逆にやり込められてしまいソフィアに逆らうことはできなかったのだった。
そしてアストラムはしばらくの間、ソフィアの家で強制的に人並みの生活を送らされることとなったのだった。