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D300系気動車
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D300系気動車
(D300けいきどうしゃ)は、ちばドリームエクスプレス(cdx)の一般形気動車である。本項では改造前の形式である
M3000系気動車
(M3000けいきどうしゃ)についても記述する。
概要
1999年5月の丹波山線・桧原線開業用に製造された気動車で、東日本旅客鉄道(JR東日本)キハ110系気動車をベースとしている。当初はアルコールエンジンのM3000系として登場したが、2010年代に一般的なディーゼルエンジンの
D300系
に改造されている。改造後はJR東日本のキハ110系とほぼ同一となっており、メンテナンスはJR東日本に委託している。
2022年時点で製造から23年が経過しているが、元々の車体が(第三セクター向けの軽快気動車と比較して)コストを掛けて丈夫に造られているために痛みが少なく、今なお奥多摩・山梨地区での主力車両として使われ続けている。
2022年時点で製造から23年が経過しているが、元々の車体が(第三セクター向けの軽快気動車と比較して)コストを掛けて丈夫に造られているために痛みが少なく、今なお奥多摩・山梨地区での主力車両として使われ続けている。
導入の経緯
当初、丹波山・桧原線では亀山線用に用意したM1000系気動車を増備して使用する予定であったが、両路線は奥多摩駅または武蔵五日市駅からJR線に乗り入れる計画があったこと、当時他のcdxの路線とは完全に独立していたことから、JR線でも扱いが容易な車両が求められた。そこで、JR東日本のキハ110系気動車をベースとした車を導入することで運用面の解決を図った。ただし当時のcdxの燃料事情から、燃料にメタノールを使用したアルコールエンジンを採用したほか、一部の仕様を変更しているため、完全にキハ110系と同一というわけではない。
設計コンセプト
基本コンセプト
設計にあたり、居住性とある程度の輸送力、そして低コストで運用出来ることを視野に入れた。本系列は前述の通りJR東日本キハ110系200番台をベースにしているが、キハ110系の基本コンセプトが要求する仕様を充分満たすため、キハ110系の構造をそのまま採用した。
外装
シンプルな造形とすることで製造コストを抑えつつ、スマートな印象を与えるデザインにした。
内装
居住性を保ちつつ通勤・通学輸送にも対応するため、シートレイアウトはセミクロスシートとした。キハ110系200番台のトイレは和式だが、バリアフリーに対応するため、本系列では車椅子対応の洋式トイレとしている。(この後に製造されたキハ110系200番台(後期型)も、このトイレの変更をフィードバックしている)
走行系
山岳区間の走行を考慮し、足回りは登坂能力を重視したセッティングとした。基本設計はキハ110系を基にしているが、アルコールを燃料としているため、エンジンと燃料が絡む部分は専用設計の部品を使用している。
基本構成
柔軟な運用に対応するため、運転台が片側にある車を2両1組と両側にある車を用意した。
編成例
1両
改造前 | M3000 |
改造後 | D300 |
ベース | キハ110 |
2両
改造前 | M3100 | M3200 |
改造後 | D310 | D320 |
ベース | キハ111 | キハ1112 |
仕様
主にM3000系として製造した初期ロット車について記述する。
車体
車体は普通鋼製で、直線的なデザインとした。車体長(連結面間距離)20,500 mm、車体幅2,928 mm、車体高さ3,995 mmの大柄な車体で、充分な居住性を確保している。
客用ドア
片開き式のドアを片側2箇所設置している。ドアエンジンは空気式で、押しボタン式の半自動モードに対応。本家のキハ110系と異なり、乗降ステップは無い。cdxでは非電化路線のホームの高さも電車と同じ基準としているためである。
側面表示器
幕式の行先表示器(方向幕)を、M3000形(→D300形)はドアとドアとの間の後ろ寄りに設置、M3200形(→D320形)は車端部に設置。M3100形(→D310形)には設置していない。列車種別も行先と同時に表示する。
このほか、転落防止幌を2両編成の車端部に設置している。
このほか、転落防止幌を2両編成の車端部に設置している。
空調装置
冷房はコンプレッサをエンジンで駆動する機械式で、キハ110系と同じAU26J-Aを2台搭載。除湿機能も付いている。暖房はエンジンの排気熱を利用した温水・温風方式である。
前頭部
正面も直線的でシンプルなデザインとした。中央に貫通扉を設け、その上にヘッドライトを設置。テールライトや表示器などの付帯物は全面窓ガラスの中に収めている。連結作業の手間を簡略化するため、ジャンパ線の代わりに電気連結器を備えている。
貫通扉
ライト
ヘッドライトは貫通扉の直上に設置。角形のシールドビーム灯を横に2個設置している。テールライトは前面窓の中に設置。LED式である。
前面表示器
小型の前面表示器を運転席側の前面窓の中に設置。列車種別のみを表示する前提で、動作は手回し式である。
走行機器
エンジン
エンジンはアルコール燃料用に設計したエンジンを採用。最大出力は330 ps(243 kW)。エンジンの制御は変速機と共にプログラマブルコントローラで行われ、変速段・直結段の切り替えも自動で行う。
台車
台車は、動台車がCDX-DT58B型で、付随台車がCDX-TR242A型である。ウィングゴム式(円錐ゴム)のボルスタレス空気ばね台車で、乗り心地の向上を図っている。動台車の駆動方式は2軸駆動である。
乗務員室・運転台
乗務員室は貫通扉の通り抜けとワンマン運転時の作業製を考慮した構造とした。
運転台はユニット式で、表示系・操作系を効率良く配置してコンパクトにまとめている。2ハンドル式で、左手がマスターコントローラ(マスコン・力行制御)、右手がブレーキハンドルとなっている。ベースとなったキハ110系が1990年の設計であるため、情報表示・各種制御用の液晶モニタは備えておらず、代わりにLEDランプの表示灯とブレーキインジケータを備えている。
なお、助士席側は折りたたみ椅子とヒューズボックスのみ備えており、運転台を使わない時は開放している。(正式な客室ではないが旅客の立ち席スペースとして利用出来る)
運転台はユニット式で、表示系・操作系を効率良く配置してコンパクトにまとめている。2ハンドル式で、左手がマスターコントローラ(マスコン・力行制御)、右手がブレーキハンドルとなっている。ベースとなったキハ110系が1990年の設計であるため、情報表示・各種制御用の液晶モニタは備えておらず、代わりにLEDランプの表示灯とブレーキインジケータを備えている。
なお、助士席側は折りたたみ椅子とヒューズボックスのみ備えており、運転台を使わない時は開放している。(正式な客室ではないが旅客の立ち席スペースとして利用出来る)
客室
客室はキハ110系200番台をベースにしているが、一部の仕様を変更している。ベースのキハ110系はグレーを基調とた内装だが、本系列はベージュを基調とした暖かな内装である。
座席
座席はセミクロスシートで、車体中央寄りをクロスシート(ボックスシート)、ドア寄りをロングシートとしている。ボックスシートは片側が二人掛け、もう片側が一人掛けとなっている。
側窓
窓は固定式の大型ガラスを採用。熱線吸収ガラスで、カーテンは備えていない。
トイレ
トイレは車椅子対応の大型洋式トイレで、M3000形(→D300形)は前位側運転台付近に、M3100形(→D310形)は車端部に設置している。
ゴミ箱
ゴミ箱は、各車両のドア付近に1箇所設置。
車椅子スペース
トイレ付き車両のトイレのある部分の向かいの空間を車椅子スペースとしている。走行路線の性格上、車椅子の利用が無い場合は自転車置き場として利用されることが多いため、自転車用の固定ベルトも備えている。
荷物棚
荷物棚はステンレスパイプを組み合わせて出来ており、座席のある区画全体にわたって設置している。
つり革
つり革はキハ110系で使用しているものと同等品で、ロングシート部分に設置。一部の車は後にボックスシート部分にも増設している。
貫通路
M3100形(→D310形)・M3200形(→D320形)の貫通路は両開き扉を設置。開放した時の車内の見通しを良くしている。
車内案内ディスプレイ
旅客案内ディスプレイは備えていないため、ワンマン運転時に限り後述する運賃表示器で代用している。
ワンマン運転
本系列はローカル型のワンマン運転に対応しており、以下の設備を備える。
- 運賃箱:M1000系気動車ではバス用の運賃箱をカスタマイズして使用していたが、本系列では鉄道用として新たに開発されたものを使用。千円札の両替機能も備えている。運転台の扉も兼ねており、貫通路を使用するときは運転台側へ収納することが出来る。
- 整理券発行機:運転席の背後に1台、M3100形(→D310形)・M3200形(→D320形)の後ろ寄りのドア付近に2台づつ設置。
- 運賃表示器:乗務員室側にデジタル式運賃表示器を1台設置。駅名が表示可能なLED式ディスプレイを備えており、旅客案内装置も兼ねている。ただし、ワンマン運転を行わない場合は電源が切られてしまうため、この表示器を使用することが出来ない。
カラーリング
- 車体 :白地に窓周りを帯状に黒く塗り、その下に緑の帯を配置。扉は青の一色塗りとした。前頭部は窓から上を黒く塗り、貫通ドアは青、スカートは緑に塗装。
- 客室 :ベージュを基調とした、明るく、温かみのある雰囲気とした。壁面はベージュ、天井は白(アイボリー)、座席はモスグリーンでフレームは黒としている。ドアはステンレス無塗装とした。
- 床下機器 :屋根上・床下機器はグレーで塗装している。
製造後の変化
D300系への改造については次の項目を参照。
D300系への改造後
ヘッドライトのLED化
2020年から順次、ヘッドライトを白色高輝度LEDへ交換している。
前面・側面表示器の更新
2019年度から2021年度にかけて、前面と側面の表示器をフルカラーLEDのものに交換している。同時に設定器がICカードによる自動設定に変わり、特に手回しで行っていた前面の表示器の切り替え作業が大幅に軽減された。
車内案内ディスプレイの設置
車内案内用の超横長液晶ディスプレイを設置し、これまで運賃表示器でしか確認出来なかった行先と次の駅の案内表示を行えるようにした。これにより、運賃表示器を使用していない時でも車内案内が行えるようになり、旅客サービスが向上した。
設置箇所は車内中程に2箇所で、D320形はさらに車端部の貫通路上にも設置している。
なお、2015年度にD300系へ改造された2両編成×2本については、改造時にディスプレイを増設している。
設置箇所は車内中程に2箇所で、D320形はさらに車端部の貫通路上にも設置している。
なお、2015年度にD300系へ改造された2両編成×2本については、改造時にディスプレイを増設している。
D300系への改造
登場の背景
クリーンな排出ガスと燃料代抑制が期待できたメタノール燃料であるが、実際に使用してみると様々な問題が生じてきた。
- 軽油と比較して確かに排出ガスはクリーンだが、メタノール自体に人体にとても有害な物質が含まれており、安全とは言い難い。また、メタノールの精製に天然ガスを使用するため、トータルでの環境負荷は大きい。
- アルコール自体が金属とゴムを腐食しやすく、エンジンから他の関連機器に至るまで腐食対策を施した専用部品が必要である。このため、修理のために配管1本、パッキン1個を交換するにも特殊な専用部品が必要となり、メンテナンスが難しい。
- 燃料用メタノール自体の調達が難しくなってきた。
- 環境に配慮したクリーンディーゼルエンジンの登場により、わざわざ高い維持費を支払ってまでアルコールエンジンを使う必要が無くなって来たこと。
特に4番目の理由が決定打となり、cdxでは全てのアルコールエンジンを一般的なディーゼルエンジンに改めることにした。M1000系・M2000系についてはD100系・D200系へ置き換えて車体は売却することとしたが、本系列は足回りを更新して今後も使用することにした。形式名はD100系・D200系に続く
D300系
に改めることとした。
主な改造内容
走行系の改造が主であるが、内装の一部もリニューアルしている。
走行系
走行系はベースとなったキハ110系ではなく、2012年当時最新系列のD100系をベースにしている。
エンジン
軽油を使用した一般的なディーゼルエンジンに換装した。コマツ製のSA6D140HE-2型で、出力は335 kW(450 ps)/ 2000 min-1。
変速機
D100系と同じ液体変速機(コマツ製。変速1段・直結4段)に換装した。登坂性能を重視しつつ甲府盆地での高速走行を実現するため、直結段はギア比が高めのワイドレンジとなっている。
このほか、燃料タンクや配管、関連機器を軽油用のものに交換している。
このほか、燃料タンクや配管、関連機器を軽油用のものに交換している。
内装
内装は基本的にそのままだが、吊り革の増設とディスプレイの更新を行っている。
吊り革
ボックスシート部にも吊り革を増設し、ラッシュ時の安全な輸送に配慮した。
運賃表示器
デジタル式からレシップ製の液晶ディスプレイ(15インチXGA ×2面)に換装した。2015年度に改造された2両編成×2本については、21インチワイドディスプレイ1面に換装している。
車内案内ディスプレイ
2015年度に改造された2両編成×2本に限り、車内中央部2箇所とD320形の妻面寄りに超横長ディスプレイを使用した車内案内ディスプレイを増設した。
スペックシート
M3000系 | D300系 | |
---|---|---|
起動加速度 | 2.0 km/h/s | 2.5 km/h/s |
営業最高速度 | 100 km/h | |
設計最高速度 | 100 km/h | |
減速度(常用最大) | 3.5 km/h/s | |
減速度(非常) | 3.5 km/h/s | |
車両定員 | xxx名 | xxx名 |
最大寸法(長×幅×高) | 20,500×2,928×3,995 mm | |
車両質量 | xx.x t | xx.x t |
軌間 | 1,067 mm | |
機関 | ディーゼルエンジン | ディーゼルエンジン |
機関形式 | コマツSA6D140HE-2 | |
機関出力 | 242.8 kW (330 ps) | 335 kW (449.2 ps) |
燃料 | メチルアルコール | 軽油 |
動力伝達方式 | 液体式 | |
変速機 | DW14A-B-M (変速1段・直結2段) |
トルクコンバータ (変速1段・直結3段) |
ブレーキ方式 | 電気指令式空気ブレーキ 排気ブレーキ | |
保安装置 | ATS-G・ATS-P ATS-SN※1・ATS-Ps※1 |
※1 当初はATS-SNを搭載していたが、JR八高線の保安装置切り替えにあわせてATS-Psに換装している。
姉妹車両
JR東日本キハ110系:本系列はこの車をベースにしている。
所属・運用
2022年6月現在、D300系のみ奥多摩営業所に在籍している。
現在所属・運用している線区
奥多摩営業所(東オタ)
D300系全車が在籍。JR青梅線・五日市線の乗り入れに備えてJR用のATS-PとATS-Psを搭載している。(2022年現在はJR線に乗り入れる運用には就いていないが、メンテナンス時にJR線を走行するため、JR用の機器は引き続き残している)
主に奥多摩側の山岳区間での運用がメインだが、2両編成は甲府盆地で使用する編成が多い。また、同営業所に所属するD200系との併結も行われる。
D300系はJR東日本の工場でメンテナンスを行うため、メンテナンスの際は奥多摩駅からJR青梅線・八高線経由で一旦高崎駅まで回送する。
主に奥多摩側の山岳区間での運用がメインだが、2両編成は甲府盆地で使用する編成が多い。また、同営業所に所属するD200系との併結も行われる。
D300系はJR東日本の工場でメンテナンスを行うため、メンテナンスの際は奥多摩駅からJR青梅線・八高線経由で一旦高崎駅まで回送する。
2022年6月現在の運用線区は以下の通り。
定期列車における過去の使用実績は以下の通り。
JR東日本
JR東日本
- 青梅線:立川駅 – 奥多摩駅間
- 五日市線:拝島駅 – 武蔵五日市駅間
ちばドリームエクスプレスの気動車・ハイブリッド車・バイモード電車 | ||
---|---|---|
現役 | 特急形 | M30000系 – キハ40系 |
一般形 | D100系 – D200系 – D300系 | |
バイモード | (HED500系 →)BM-ED500系 | |
ハイブリッド | HED400系 | |
引退 | 特急形 | |
一般形 | M1000系 – M2000系 – M3000系(→D300系) | |
D1200系 – D1500系 – D2000系 | ||
キハ20系 | ||
バイモード | HEM5000系(→ HED500系 → BM-ED500系) |